ファーバーカステルは今年創業260年を迎えました。
万年筆をルーツとする高級筆記具メーカーの歴史は長くても百数十年ですが、ファーバーカステルは鉛筆製造業が起こりなので、長い歴史を持っています。
会社が長い歴史を重ねるには同じことをやり続けていてはいけない。それぞれの時代のニーズを捉えながら、オリジナリティのあるものを世界に示していく必要があります。
ファーバーカステルの伯爵コレクションクラシックは、伝統を踏まえながらも革新的なシリーズで、貴族たちの粋なアクセサリーだった豪華な鉛筆ホルダーをベースにデザインされた、筆記具の偉大な発明だと思っています。
書くための黄金バランスを持った万年筆はたくさんあり、それらの多くは似たデザインになってしまいますが、このデザインは違っています。
多くのメーカーがひしめく「書くための筆記具」というところで勝負せず、独自の筆記具のあり方を示したと思います。元々のルーツが違うということもあるのかもしれないけれど、会社としての戦略だったと思っていて、大いに学ぶべきところだと思います。
上手くクラシックさを表現したデザインだけど、ノスタルジーのような緩さは感じられず、現代に生きる筆記具という趣がファーバーカステルにはあり、惹かれていました。
スプリングを仕込んだ可動域が大きく、丈夫なクリップ。半回転で開き、スピーディーに書き始めることができるキャップネジなどの機能的な装備もちゃんと備わっています。
他のメーカーの場合はたいてい万年筆だけで満足するけれど、ファーバーカステルクラシックコレクションは万年筆とボールペン、ボールペンとシャープペンシルなど、セットで持ちたくなります。
ファーバーカステルクラシックをセットで持つのに最も合っていると思っているものがカンダミサコさんの2本差しペンシースです。
最近、自然な風合いをそのまま残した革クードゥーで2本差しペンシースを作ってもらっていますが、これとクラシックのサイズと素材感がよく合っています。
ピタリと入るだけでなく、速やかにペンを出し入れすることができるペンシースになので、仕事の場面など相手を待たせたくない時にも使えて、機能的でもあります。
ファーバーカステルクラシックの木軸は、楽器を製作した時に出る端材を利用しています。もちろん端材と言っても高級素材で、本来なら捨てられてしまうものを、そのセンスと技術で一級品に仕立てています。
いくらお金を積んだからといって、限られた地球の資源を貪り尽くしていいはずはない。私たちは地球を同じ状態、あるいはもっと良くして子供たちの世代に引き継がなければいけない。自分たちの楽しみで使う趣味の道具だからこそ、そういう配慮は大切だと思う。
そういったことも含めて、ファーバーカステルクラシックコレクションは長く愛用したい筆記具だと思い、カンダさんの2本差しペンシースに入れて、私も毎日使い続けています。
10年以上使った私のファーバーカステルは、ペン先も柔らかくこなれてきて、思い通りにインクの出る、書いていて楽しい万年筆になっています。
デザインが良くていつも持っていたいペンと、それを組み合わせて使うことでそのペンがもっと使いやすく、モノとしての魅力をさらに高めてくれるステーショナリーを提案することが当店の価値だと思っています。
ペンを販売するだけでなく、作り手や自分たちの販売者のメッセージも伝えたいというのが、当店の名前の由来ですが、それに相応しい仕事をこれからもしていきたいと思っています。