アウロラの最初の100年を記念する万年筆 チェント・アニベルサリオ レジーナ

久し振りに再度山の展望台から神戸の街を見下ろしてみました。

散歩で登ってくる人も多いその山は、三宮、元町の街並みがはっきりと見えるくらいの近さにあります。日本の都市でこんな間近に山から見下ろせる街は少ないのではないだろうか。

神戸で仕事をしてきた私は、こんな小さな街の狭い範囲で右往左往してきたのだと思うと、自分の存在の小ささを思わずにはいられません。

インターネット上にペンにまつわることを書いて、それを仕事の一部にするようになって、20年ほどになります。

万年筆やステーショナリー、そして「書くこと」。自分が唯一できることを仕事にして生きていられることは、本当に幸運なのだと思います。

私はこれしかできないから、これからも自分が良いと思ったもののことを書いて、皆さんにも楽しんでもらおうと思います。それが多くの人の心に届けばいいけれど。

自分の楽しみを届ける方法は時代とともに変化していて、文章を読んでもらうという私の方法は古くなりつつあるような気がします。でも自分の扱っているものはペンなので、まず自分が書いていなければ説得力がありません。私自身が書く者だから、私の言葉を聞いてくれるお客様もおられるのだろうと思っています。

原稿を書く時、私はまずノートに下書きします。

考えながらパソコンに直打ちする人もいるし、その方が早く書けるという人もいるけれど、私にはできない。

ゆっくりああでもない、こうでもないと無駄な下書きを何ページも書いて、その中から抜き出したものをパソコンに打ち込みながら推敲しています。

ノートに書くということは、電車の中でも公園のベンチでもすることができて、場所や時間を決めずに書くことができるというのも、私に合っていた。

当時は万年筆をペリカンとアウロラの2本しか持っていなかったけれど、こういう原稿を書き始めたばかりのとき、アウロラオプティマをよく使っていました。

アウロラの万年筆はどれもそうですが、オプティマはキャップを閉めると短くなって、Yシャツのポケットでも差しやすくなります。書く時は持ちやすい長さになり、太さも充分にあって、意外に思われるかもしれませんが、実用的で、非常に使いやすいサイズの万年筆です。

硬めのペン先も様々なシチュエーションで書くのに適していて、いつどこで書いても同じように書けました。

私の印象では、日本の万年筆の方が繊細な印象を受けます。同じ条件で書かないとその時々で書き味が違うように感じられます。

その代わり条件が合えば、極上の書き味を味わわせてくれるものもあるのが日本の万年筆だと思っています。

いつ書いても同じように書けるアウロラのそんなタフさも気に入っていて、当時それほど知名度の高くなかったこのイタリアの万年筆メーカーの良さをたくさんの人に知ってもらいたいと思いました。

その時アウロラは、80周年を迎えていました。細かい模様を彫刻した総シルバーの80周年万年筆を発売していて、数年後にアウロラの名を有名にした85周年レッドを発売することになります。そして20年後の一昨年アウロラは100周年記念万年筆チェント・アニベルサリオ・レジーナを発表し、昨年発売しました。

スターリングシルバーにギロシェ模様を彫刻して、エナメル塗装を施して滑らかに仕上げたボディや細部の繊細な細工。

80周年万年筆の力強さも85周年万年筆の華やかさも兼ね備えて、気品さえも漂わせている。アウロラの魅力を出し尽くした、できることは全てやったと思える完璧な万年筆です。

⇒AURORA チェント・アニベルサリオ・レジーナ