オーバーサイズロマン

ペリカンM800やモンブラン146のような計算され尽くした、高い次元で均整のとれたレギュラーサイズの万年筆もいいですが、万年筆好きの欲望を形にしたようなオーバーサイズの万年筆にどうしようもなく魅力を感じます。

オーバーサイズの万年筆の魅力は、大きなペン先だということは間違いありませんが、余裕のあるサイズからくるオーバースペックではないかと思います。

モンブラン149であれば「肉厚なボディとペン先によるタフな仕様」で、使っている時の安心感はその性能をいっぱいまで使っていない私でも分かりますし、握っている時の塊感のようなものも嬉しい。

私はウォールエバーシャープのデコバンドを149の対の万年筆としていますが、デコバンドは149とは対照的で、じっくり書きたくなるような、趣味的な万年筆です。重量があって、大きく柔らかいペン先の書き味の良さがより一層感じられます。意外にもきれいな文字が書ける、コントロールしやすいペンでもあります。

今やオーバーサイズ万年筆では定番のモンテグラッパエキストラ1930は、大きなペン先とボディのサイズが何とも言えず美しい万年筆です。粘りを持たせたペン先の書き味は上質で、クラシックな印象のセルロイドのボディとともに、落ち着きと上質さを感じさせる大人のイタリアの万年筆だと思います。

セーラーの限定万年筆紅炎は、ボディに真紅の積層エボナイトを使い、長刀研ぎ仕様のキングプロフィットペン先を装備して、書くことの楽しみを追究しています。オーバーサイズのうま味を生かした限定万年筆と言えます。

こうやってオーバーサイズの万年筆をひとつずつ紹介していくとよく分かるけれど、当店にあるものだけでも良いものが揃っていると思います。

魅力のあるオーバーサイズの万年筆で困ることは、それらを収納するペンケースが少ないということです。

使っているペンはどんなものでも、硬い机の上にコツンとそのまま置くのではなく、柔らかいものの上に置きたいと思います。神経質に、絶対に傷がついて欲しくないわけではありませんが、何となく置く場所は選びます。

オーバーサイズの万年筆をすぐに使える態勢にしておくために、カスタム漆のような特大サイズの万年筆も収納することができる長寸ペンケースを、カンダミサコさんに作ってもらっています。

今回は、シャークの革で作ってもらいました。

昨年はアルランローズゴールド革を2020年限定の革として使いました。コロナ禍という、普段と違う時間を過ごした年の革として、力と明るさをくれるような革で良かったと思います。

今年の状況もあまり変わっていませんので、普段カンダミサコさんがあまり使わないシャークを今年の限定革として、いろいろなものを作りたいと思います。

カンダさんは最近、様々なエキゾチックレザーで定番のものを作るという挑戦をされていますが、全て限定製作品になります。

シャークの革は柔らかくて丈夫ということもありますし、革に模様があって、シンプルな形のこのペンケースに合っていると思います。

何か書き出す時に、このペンケースからペンを取り出して、キャップを外して書き始める。オーバサイズの万年筆を一連の所作のように使えるペンケースだと、作っていただくたびに思っています。

⇒オリジナル長寸用万年筆ケース・シャーク革