日本の歴史から大陸に興味が移って、井上靖の西域ものを立て続けに読んでいるうちに、西域や中国への興味が湧いてきました。
そういったものを読んでいるうちに、以前習っていた毛筆の練習を再開したりして、「文字を美しく書く」と言うことに興味が向いてきました。
私は気を抜くとすごいクセ字になるのですが、お手本をしっかり見て、なるべく端正な楷書が書けるように練習するのも楽しいと改めて思いました。
練習は筆ペンで始めたけれど、万年筆でもやれるのではないかと思います。
筆で何かを書けるようになるよりも、いつも使う万年筆で美しい楷書が書けるようになれた方が毎日仕事に役立てられます。
ペン習字は、デスクペンの細字や極細で行われていることが多いようです。
それほど小さな文字を書くわけではないのになぜそういう字幅を使うのか。万年筆で筆のようなトメハネハライを表現するのに、細字あるいは極細の方が向いているというの理由ですが、それは何故なのか。考えてみたら、ペンポイントの形状なのではないかと思い当たりました。
細い線、細かい文字を書くために尖らされたペンポイントは、漢字・ひらがなの線の美しさを生みやすいのではないか。
国産の万年筆でも、細字くらいまでは先が尖っていて、極端に言うと矢尻のような形をしているのに、中字以上になると丸くなります。
中細というのは中字と細字の中間の太さですが、ただ単に太さだけの問題ではなく、ペンポイントの形は細字と同じであって欲しいような気がします。
中字になると書き味がヌルヌルして気持ち良く書けるけれど、筆のような筆致を表現するのには丸く、紙にペタッとあたるペンポイントはあまり適していないのかもしれません。だけど書き味を優先するとどうしてもこうなってしまうし、むしろこういうペンもあって欲しい。
ある程度太くて、書き味が良くて、でも毛筆のような文字の形を表現したいという時は、セーラーの長刀研ぎの万年筆が必要になってくるのかもしれません。
長刀研ぎには、中細、中、太という字幅があります。その中でも一番細い中細が、先が鋭く筆文字を意識して書くのに一番適しているように思います。
中細と言っても、長刀研ぎのペン先は普通の研ぎのペン先よりもかなり太いので、心の準備が必要です。
当店でも55,000円の長刀研ぎ万年筆を扱っていますが、ネット販売が禁止されていますので、店舗での販売かメールでの販売となります。ご希望のお客様にはご用意させていただきますので、ぜひお申し付け下さい。
長刀研ぎはプロフィット21がベースになっているレギュラーサイズの万年筆ですが、新しくオーバーサイズのキングプロフィットベースの長刀研ぎ万年筆が発売されました。
ボディ、キャップ、首軸が磨き込まれたエボナイト製で、その艶は漆塗りが施されたように見えるほど磨き込まれています。
レギュラーサイズの長刀研ぎとはかなり違った柔らかいペン先で、万年筆で筆文字を書くためのペン先と言えます。
こういったものを書く時は、黒インクを使って書の気分を盛り上げたい。
通常の黒インクはなかなか濃淡が出にくいのですが、当店オリジナルインク「冬枯れ」は少し薄めの黒になっていて、濃淡が出やすく長刀研ぎとの相性も良いので、文字を書いていても楽しい。当店で開講しているペン習字教室の講師堀谷龍玄先生も愛用してくれていて、書のインクだと思っています。
中国の書聖と言われた人の文字に憧れて万年筆で書道をするのも、本を読むのと同じくらい楽しいと思います。