私の万年筆の原点は、手帳に書くというところから始まりました。
若い時から手帳が好きでした。20代の頃は立ち仕事だったこともあって、スーツの内ポケットに入る能率手帳のようなものを使っていました。
夜一人の時間に、そこにスケジュールや覚書、データなど、仕事を回すために必要なことをきれいに書けたら嬉しかった。
最初はボールペンから始まり、それが水性ボールペンになり、万年筆になっていきました。こんなに気持ちよく、きれいに書けるペンがあるなんて知らなかった。
私にとって細字の万年筆が手帳を一番きれいに書ける筆記具で、後から読み返した時にとても読みやすく、インクの雰囲気もあって、ページ全体の出来が全く違っていました。
手帳がきれいに、きっちり書けたら仕事がとても楽しくなりましたし、これを書く時間も楽しくて仕方なかった。
手帳を書くだけで、自分の時間の大半を費やしている仕事が楽しくなるということは、毎日が楽しくなるということで、そんな幸せなことはないと思った。
自分がそんな風に思っていたので、より多くの人にも同じように感じて欲しいと思いました。ささやかな願いですが、そのために私はこの仕事を続けています。
手帳のページを楽しくしてくれるものは、万年筆だけでなく、スタンプを押すという方法もあると、システム手帳リフィルの筆文葉・そら文葉を使ってみて初めて知りました。
智文堂のかなじさんが作るリフィルはシンプルで余白があり、自分で手を入れる余地が残されています。
それらにスタンプを押して、自分らしいページを作りあげていく。そんな作業が楽しいということにも、長く手帳を使ってきたけれど気付きませんでした。
日付や曜日のスタンプなどを使って、M5サイズの1日1ページのリフィルを自作して、365日欠かさず使っています。
実はもっと色々なスタンプを使って見たかったけれど、50歳を過ぎたおじさんが使ってもいいと思えるスタンプを見つけられませんでした。
大人の男性でも気後れすることなく使うことができるようなスタンプを作りたいと思い、当店にクラシカルなデザインの文具を収めてくれている、佐野酒店の佐井健太さんに相談しました。
佐井さんは、アールヌーヴォー調、アールデコ調などの絶妙なクラシックさを持ったものをデザインしてくれて、スタンプにしてくれました。
窓枠のようなスタンプは、切手を貼るスペースを作る切手枠ですが、ノートや手帳のタイトル枠にもなります。
L字形のスタンプは、ページの余白に押すとフレームのようにすることができる、手帳用を意識したものです。
今は、性別や年代に関わらずだれでもスタンプで気軽に手帳を楽しめる時代だと思います。殺風景な手帳のページがそれだけでぐっと手を掛けた感じになって、ますます良いアイデアが浮かぶかもしれません。