当店のお客様の男女比率は、店を始めた頃は男性のお客様が多かったけれど、今は半々くらいになっているかもしれません。
それは当店に限ったことではなく、万年筆を趣味とする女性が増えたことを表しているのだと思います。
でも考えてみると、当店は女性のお客様や取引先さんにも助けられてきました。
店を始めたばかりで苦しかった時に当店を見つけてくれて、口コミでたくさんのお友達を連れてきてくれたのも女性のお客様が多かった。
加古川の写真家SkyWind さんも女性の方で、作品を当店に卸してくれて、お店に個性を与えてくれています。SkyWindさんの知り合いやファンの方の来店も多い。
「暮しの手帖」に記事を書いてくれたのも女性のライターさんで、その記事の影響で全国から大人の女性のお客様が来てくれました。私が勝手に師と仰いでいる狂言師の安東先生と出会うことができたのも、この暮しの手帖の記事を読んだ奥様と一緒にご来店されたからでした。
昨年末の蓮見恭子先生の小説「メディコ・ペンナ」も当店に多大な恩恵をもたらしてくれていますし、普段来てくださるお客様も女性の名前をたくさん挙げることができます。
女性のお客様にとって、当店は決して華やかなお店ではなかったと思います。それを少しずつ女性が好むような商品も扱うように増やして行きました。
昔から当店を知る万年筆が趣味の男性には、当店が軟弱な店になってしまったと言われたけれど、私は今のこの店の状態が「いずれこうなったらいいな」とイメージしていたものに近いと思っています。
女性は万年筆をスペックや評判ではなく、好みのデザインのものをそれぞれの方の価値観で自由に選ばれることが多い。男性のお客様にもそのような万年筆選びをとずっと訴えてきました。
気が付いたら男性でもモノをファッション的に選ぶお客様が増えていた。
カナダのフェリスホイールプレスのインクは、自由にモノを選ぶ当店のお客様に間違いなく喜ばれる商品だと思いました。
このインクを扱うためには初回導入数が決まっていたので、それなりのスペースも金額も確保する必要があったけれど、このインクを楽し気に手に取られているお客様を見ていると頑張って導入して良かったと思います。
フェリスホイールプレスのインクは、香水の瓶と言っても通るほど美しいデザインのボトルで、しかも外箱のデザインは色によってそれぞれ違う凝ったデザインのイラストが描かれています。
38mlと85mlの2種類があり、85mlの球形のボトルは、そのインクの色に合わせた巾着に入っています。
通常の万年筆用インクとガラスペンにお勧めのラメ入りのインクがあり、どちらも淡い色のものがあって、時流を捉えていると思います。
店をする醍醐味は、お客様が楽しそうに商品を選ぶところに立ち会えるところですが、このインクを選ぶ方々はとても楽しそうで嬉しくなります。
インクもある程度集まったら、次は机に置いておくだけでも気持ちがわくわくするものを選ぶというのも選択肢だと思います。
フェリスホイールプレスのインクは、新しいインクの選び方として当店からのお勧めインクとして、なるべく揃えておきたいと思えるものです。
このインクには、今までのインクとは全く違う、作り手も楽しんでいるような世界観と楽しさがあります。