また小説関ヶ原(司馬遼太郎著)を読んでいます。
大きな勢力が西と東に分かれたことで、大多数の小さな勢力は自国の継続を願って得だと思う方につき、ほんの一部の武将が正義という理想のもとに信じた側につく。
戦国末期の淘汰の時代、力の大きな者はさらに大きくなり、力のない者は大きな者に吸収されていきました。それは今の時代にも全ての分野で起っていることで、関ヶ原が競争社会の縮図だと言われるところだと思います。
でも万年筆の業界においては、私たちのような力のない小さな存在でも生きる場所があるのではないかと思います。
品揃えの多い大きな店を好む人もいれば、小さなお店でそのお店の品揃えを楽しむという人もいます。お店に対してお客様は様々な好みがあって、自分が買いたいと思えるお店で買われているのだと思います。
小さな存在でも万年筆の世界で生きていくことができると思ったから、私は万年筆を扱うこの小さな店を始めようと思えたし、続けてくることができました。
当時それを理論的に考えることはできなかったけれど、それまでの経験で直感が働いたのだと、今なら説明できます。
関ヶ原でも、勝たないまでも力の小さな小大名がそれぞれの考え方を持っていて、信念を貫く面白い存在として描かれています。それは所領の小ささからくる自由さかもしれません。
当店のような小さな店にも、理想を追うことができる自由さ、気楽さがあります。業績は良いにこしたことはないけれど、それほど大きな売り上げを狙わなくてもいいので、一般的にならずに自分たちが良いと思うもの、面白いと思うものだけを扱うことができます。
万年筆と上質な革を使った革製品とのコーディネートもそのひとつで、当店の特長だと思っています。
画像にありますが、カンダミサコさんに作ってもらっている長寸用万年筆ケースとセーラーエボナイト彫刻万年筆の組み合わせは、侍の刀を思わせるようで気に入っています。そしてイルクアドリフォリオさんが作っているペンケースDUEトリムドロッソは、全体が黒でコバの部分にだけ赤を使っているので、黒のモンブラン149を2本入れるとものすごくかっこいい。
こういう異なるブランドを組み合わせたコーディネートは、楽しみながら今後も続けていきたいと思っています。
当店の強みであり特長なのはやはりペン先調整だと思いますが、最近ペン先調整の需要の高さをより感じています。
ペン先調整のために来店されるお客様、全国から送られてくる万年筆の多さで、いかに多くの人が万年筆に対してこうあって欲しいという希望を持っているかということを感じています。
お店の仕事もありますので一日に数本しかできないため、お送りでの調整依頼の場合、現在一ヶ月ほどお待たせしています。
私は一人一人の書かれるところをイメージしながら、そして書きやすくなった万年筆を使って喜ぶお顔を想像しながらペン先調整をします。
そういうことができるのも当店のような小さな店の強みだと思っています。
当店も独自の考え方を持って、自由に生きるユニークな存在でありたいと思っています。
⇒WRITING LAB. IL Quadrifoglio (イル・クアドリフォリオ)シガーケース型ペンケース・ Due(ドゥエ)ネロ×トリムドロッソ