平穏無事に生きたいと思って地道に生きてきた人が、晩年に自分は生涯何をやってきたのかと虚しくなることもあれば、アヴァンギャルドに生きることを実行してきた人が、中年を過ぎた時に後悔しながら平凡に憧れる。人生というのはそう思い通りにならないもののようです。
そう言う自分も、運の良さがあって今までやって来れたので恵まれていると思うけれど、自分の思った通りに生きているとはとても言えません。
それはどこの国の人でも同じで、ただ生きた場所が違うだけだと思います。
もちろんイタリア人でも同じだと思います。
そんなイタリアの光と影、見聞きした普通の人の人生をエッセイにして語る内田洋子氏の本で、私はリアルなイタリアを垣間見て、夢中になって読みました。
内田氏の本は飾りのない読みやすい文体で、現実を飾ることなく冷静に書いています。
ただのイタリア賛美や、一部のお金持ちのゴージャスな暮らしを読んでも多分心は動かない。内田氏は、イタリアに住む私と同じ一般の人のほとんどが送っているであろう上手くいかないほろ苦い日常風景の人生を書いていて、そんなところに惹かれ、イタリアの地に思いを馳せながら人生について考えることが多くなりました。
一時期ずっと読んでいましたので、私がイタリアについて語ることの多くは、内田氏の本の受け売りだったような気がします。
イタリア人の日常の中にアウロラは溶け込んでいて、辛い現実を時には忘れさせてくれるのではないか。書き味もデザインもいいものが多いイタリアの万年筆の中でも、アウロラは書く道具としての機能も高い次元で備えていて、最も好きな万年筆ブランドです。
店主が好きだと公言しているからか、店での販売機会も多いし、当店でペン先調整したアウロラは良い書き味をしていると自負しています。
本日3/1(金)から31(日)まで、アウロラフェアを開催いたします。
期間中55,000円以上のアウロラ製品をお買い上げのお客様に、アウロラのペン先を模したブックマークか、フラコーニ100のボトルインクのお好きな色を1つプレゼントいたします。
これはブランドのフェア特典ですが、当店独自の特典として、内田洋子氏の著書の中から、アウロラのあるトリノ周辺の北イタリアが舞台になっている話が入っているものをプレゼントいたします。
当店の特典である本は、55,000円未満のアウロラ筆記具(インクなど消耗品は除く)でもプレゼントいたします。
ちょうどアウロラでは非常に珍しいエボナイト軸の万年筆88エバニテジャーラが発売になったばかりです。
エボナイトはグリップがよく滑りにくい上に、熱伝導率が低いため手の熱でインクが漏れたり、インク出が多くなるのを防ぐ効果がある素材で、万年筆に適した素材だと言われています。
近年アウロラは華やかでキラキラしたアクリルレジン系の素材ばかりを使っていましたので、エボナイトを軸に使う万年筆を発売したのには驚きました。
イエローのマーブルエボナイトを使用しているのがエバニテジャーラ(黄)で、今後エバニテロッソ(赤)、エバニテベルデ(緑)などが発売されることも予想できます。
黄色のエボナイトの88にはただ華やかだけではない渋さが感じられて、イタリアの光と影を表現したものだと思います。