遊び心を感じさせる万年筆~ピナイダーフルメタルジャケット、アヴァターUR

万年筆メーカーの多くは、昔ながらの仕組みを変えて効率的にモノ作りをするようになり、一社で全てのパーツを作らなくなったと言われています。

例えばペン先はそれだけを作る専門のメーカーがあって、多くのメーカーが同じペン先を付けているということが起こっています。

同じペン先と言っても、ボディのバランスや調整の具合など様々なチューニングが異なるので、書き味が全く同じということではありません。

ペン先を専門の業者が作ることによって、メーカーは投資を少なく抑えることができます。そして万年筆の価格自体も抑えられるので、私たちにとっても悪いことではありません。それが今のモノ作りということになっています。

でも個人的には、万年筆はよく書けて値段が安ければいいというものではなく、何か遊び心を感じさせる存在であって欲しいと思います。

考えてみると多くの万年筆が100年前とほぼ同じ構造をしていて、そこから抜け出せずにいます。伝統を守ることも、私たちが求めていることではあるけれど、そうでないものもあって欲しい。

ペリカンやモンブランや国産の万年筆とは違う、少し変わった万年筆が欲しいという人にお勧めしたいのが、ピナイダーの万年筆です。

ピナイダーは、1774年創業のイタリアフィレンツェの老舗高級ステーショナリーショップが起こりで、そのお店自体フィレンツェという世界の観光地に存在し、多くの著名人がその顧客名簿に名を連ねた輝かしい歴史を持つメーカーです。

しかし、その万年筆は今万年筆に求められているものを具現化した、現代的な万年筆の姿をしています。

一番特長的なのはペン先です。

今の万年筆のトレンドは、筆圧をかけるとフレックスして文字の太さを変えられるペン先で、それは万年筆でカリグラフィのような文字を書きたいという需要から出ています。

ピナイダーのペン先は硬めの14金でありながら、その独特な形状によって筆圧の変化に反応して、フレックスさせて書くことができます。

もともとが薄く柔らかいペン先だと、筆圧をかけた時に線が割れてしまったり、ペン先が開いて戻らなくなってしまいますが、このペン先はちゃんと戻ってくる弾力も持ち合わせています。筆圧を抜いて書くと、普通のペン先のように書けるので、奥深い楽しみのあるペンだと思います。

キャップはマグネット式なので、開け閉めが素早くできてとても便利です。私もそうですが、万年筆を使う人の中には、キャップの開け閉めの早さを気にする人が意外と多いので、ポイントの高い機能です。

そんなピナイダーの定番ラインが今年から代替わりしました。その中の「フルメタルジャケット」と「アヴァターUR」の14金ペン先仕様のものを、当店で扱っています。

フルメタルジャケットは吸入式で、その吸入機構にはちょっとした仕掛けがあります。

尻軸部の小さなダイヤルを回して吸入ピストンを作動させるのですが、回しやすくするために専用のツールが付属しています。そのツールをダイヤル部に被せて回すと、楽に吸入できるようになっています。

フルメタルジャケットは前作のラ・グランデ・ベレッツア同様太軸で、男性の方に好まれそうなものになっていますが、アヴァターURは軸径を細めにして、手の小さな方や女性の方をターゲットにしています。

ボディ素材に美しいマーブル模様のウルトラレジンを使い、華やかな仕上がりです。他にも細くて繊細な模様を彫刻したクリップ、フィレンツェの街並みを表現したキャップリングなど、見所の多い万年筆になっています。

これだけ見るべきところの多い、趣向を凝らした万年筆であるピナイダーは、気持ち良く書くだけではない多くの楽しみを持った万年筆なのです。

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