想いを綴る ファーバーカステルパーフェクトペンシル

今年最後のペン語りとなりました。今年も良いことも悪いこともありましたが、個人的にはあまり良い年ではなかったかもしれません。

春から夏にかけて出張販売にも行けたし、イベントにも出店したりして充実した忙しい時間を過ごせたけれど、10月に狂言師の安東伸元先生が逝ってしまわれたことが大きく影響しています。

生き方の師と仰いでいた人とのもう2度と会うことのできない別れに、心の支えを失って茫然としました。先生が亡くなって気付いたけれど、私は人生の別れの季節を迎えたのかもしれないと思っています。

それは齢の順で仕方のないことかもしれないけれど、これから大切な人との別れが何度もあるのだと思うとやはり悲しい。人は皆大切な人との別れを経験して、その悲しみを抱きながらも生きているのだと思うと、生きるということも辛いものだと思います。

それでも、毎日の仕事の中ではいくつもの出会いがあります。お一人お一人との出会いが有難く、大切で仕方ない。失ったことで本当に大切なものに気付けたことは少し情けないけれど、それが今の心境です。

毎日の出会いやこの店での時間が大切に思えて書き残しておきたいと思い、ダイアリーに毎日店で起こったことを書いています。

それでも、モノとの出会いはいくつもありました。特にパーフェクトペンシルとの出会いは毎日の淡々とした時間に楽しみをくれました。

20代で文具店に就職したばかりの時から、豪華な箱に入ってシルバーのホルダーのついた、ファーバーカステルの贅沢な鉛筆の存在は知っていました。

その時はまだ鉛筆削りはキャップに内蔵されておらず、シルバーの削りが別で付属していました。名称もパーフェクトペンシルではなかったと思います。

こんなに高い鉛筆を誰が買うのだろうと漠然と思ったのを憶えています。

でも今年の夏頃、趣味の文具箱の清水編集長がパーフェクトペンシルファンクラブを立ち上げたのを聞いて、ふと興味が湧いてきました。

色々見ているうちに、パーフェクトペンシルは持っているだけで嬉しくなるもので、誰かに語りたくなるものだと初めて認識しました。

それが分かると、文具に限らず自分はこういう存在のものをいつも追い求めていたと気付きました。

万年筆の定番品にもこういう存在のものはあって、モンブラン149、ペリカンM800、アウロラ88クラシック、ファーバーカステルクラシックなどが近い存在かもしれません。

そこで早速パーフェクトペンシルを手に入れて、原稿書きや手帳書きに使い始めました。

最初は鉛筆削りで削っていましたが、思いのほか早く短くなることに気付いて、近くの590&Co.さんで肥後守を買ってきて、チビチビと削るようになりました。

万年筆のインクを吸入したり、書道で墨を磨ることが気持ちを静めるのと同じで、鉛筆をナイフで削ると無心になれて、気持ちを落ち着けてくれます。

それに気のせいか、ナイフで削った方が鉛筆削りで削るよりも丸くなるのが遅い気がします。

原稿を書く時も、頭の中でほぼ内容が決まっていて、一気に書きたい時は万年筆で書きます。逆に考えながら少しずつ書き進める時は、パーフェクトペンシルで書いています。パーフェクトペンシルを使い始めて書くことがより一層楽しくなりました。

自分が書くものに思うことは、せっかく読んで下さった方が時間の無駄だったと思わないものにしたいということです。

動画全盛の時代にも関わらずブログを読んでいると言って下さる方も多く、心から感謝申し上げます。

私のブログを読んで下さる方はきっと、書くことが好きで、大切にされている方なんだろうと想像しています。

私も唯一自分を表現できる手段が書くことで、いまだにそれに飽きることがありません。私が楽しいと思ったことをこれからもお伝えしていきたいと思っています。

来年もよろしくお願いいたします。

*次回の店主のペン語りは、1月6日(金)更新です

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