カンダミサコバイブルサイズシステム手帳

カンダミサコバイブルサイズシステム手帳
カンダミサコバイブルサイズシステム手帳

当店の新しいシステム手帳リフィルのブランド筆文葉(ふでもよう)に賛同してくれたカンダミサコさんが、新たにシステム手帳を作りました。

書きもの愛好家金治智子さんとリフィルを作るので、システム手帳を作りませんかとカンダさんに伝え、金治さんからの平らに開くものを、という言葉を受けて、試行錯誤して下さったものが今回のシステム手帳です。

しばらく考えさせて欲しい、アイデアが浮かんだら作りますと言った数週間後には、ほぼ完璧な試作品が出来上がりました。
初めてこの手帳を手にとった時、まず美しいと思いました。
縦横比が手帳の黄金比(が存在すると私は思っている)になっていて、背表紙は緩やかにカーブしている。ペンホルダーや装飾は付けず、むしろ使う人にカスタマイズを楽しんでもらえる自由度の高いシステム手帳です。

そして一番の特徴は、今までのシステム手帳とは全く違った構造にあります。
平らに開き、表紙を折り返しても使うことができる。それができるのは、リングの取り付け方を工夫しているからです。
左側の後ろ表紙でのみリングを固定しているため表紙が180度以上開きますが、その構造により左側にポケットができました。
このポケットも活用できそうです。背表紙の丸みもこの構造のために生まれています。
11㎜リングというシステム手帳用の金具としては細めのもので、それにより手帳を薄くできて、携帯性も高くなっています。

しかし、細めのリングは携帯性が高い代わりにリフィルがたくさん入りません。逆にリングが太くなるとリフィルは入るけれど、重く、大きくなって携帯に不向きになります。
システム手帳のリングにおいてこんなジレンマがありますが、携帯性に優れた細めのリングを持つカンダミサコシステム手帳を使いこなすには、手帳を薄く保つことがコツなのかもしれません。

・ダイアリーはウィークリーではなく、マンスリーを使う。
・収納するリフィルの枚数はなるべく少なくする。
・書いたものは別のバインダーに保存する。

以上のようなメンテナンスを心掛けると、薄型のシステム手帳でも十分お仕事でお使いいただけると思います。
筆文葉のリフィルは、最近の流行に逆行する少し厚手の紙で、書いた時紙の感触が手に伝わり、インクの風合いも紙に表れます。
でも色々なものを使ってきた人こそ、こういう紙を使いたいのではないかと思っています。

カンダミサコシステム手帳もまた、以前システム手帳を使っていて、綴じ手帳に移行した人がまたシステム手帳に戻るきっかけになるものだと、自信を持ってお勧めします。

⇒カンダミサコシステム手帳(Pen and message.仕様)
⇒システム手帳リフィル筆文葉

筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます

筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます
筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます

当店は新たにシステム手帳リフィルをメインとしたブランド「筆文葉(ふでもよう)」を始めます。
筆文葉では、手帳を楽しくそして実用的に使うために、関連する商品や使い方などを提案していきたいと思っています。

筆文葉は書きもの愛好家かなじともこさんと当店の共同企画ブランドです。
書きもの愛好家というささやかな肩書がついていますが、金治さんはかなりの才女だと見込んでいます。
筆文葉の企画のために打ち合わせを重ねるようになって、彼女にできないことはないのではないかと思うようになってきました。

それはささやかな歓談から始まりました。
お客様として来店されていたかなじさんから、ノートや手帳をどんな風に使っているかを見せていただいているうちに、この人は商品化できるアイデアをたくさん持っているのではないかと思いました。
手帳への思いや理想などを話し合ううちに、自然発生的にシステム手帳のリフィルを作ることになりました。

万年筆を使う用途で一番多いのは手帳に書くことだという人は多いと思います。
当店も万年筆で書くことによって書く楽しさを多くの人に知ってもらいたいという想いで9年前に始まりましたが、その原点は「手帳を書くことを楽しむ」ことでした。
どんな手帳でも書く楽しみはもたらしてくれるけれど、一番楽しく、趣味的にも使えるのはシステム手帳だと思っていました。今ではマイナーな存在になっていますが、システム手帳を以前のように多くの人に使って欲しいと思っていましたので、その想いと金治さんの才能が巡り合って始まったものが筆文葉です。

手帳用のツルツルして薄い紙質のものはたくさんあって、それらは厚みを抑えて、にじみや裏抜けしてほしくない手帳にとって適切なものかもしれないけれど、違うものを作りたい。
紙1枚1枚はしっかりしていて、丈夫で、書いた内容とともに大切にできるもの、そして紙に質感が感じられて、インク映えが自然なもの。
たくさんの手帳を使ってきた人はきっとこんな手帳に行き着くのではないかと思っていますが、金治さんはそれに相応しいリフィルのアイデアを用意してくれました。
どれも自分が書き込んだものを大切にできる、美しく書くことができる罫線のレイアウトを目指して作りました。
どれも他所にはない特徴のあるものだと思っています。

筆文葉ではバイブルサイズのリフィルを作りましたが、カンダミサコさんも筆文葉に賛同してくれて、システム手帳本体を新たに作ってくれました。
これに関しては次回のペン語り(9月30日)でご紹介させていただきます。

・かなじともこプロフィール・
1978年高知県生まれ。大手印刷会社に勤務後、絵を描く生活を諦めきれず退職。
縁あってPen and message.の商品企画に参加することになり、紙製品や手帳アクセサリーの考案、制作に携わっている。
書くこと、書くもの、書かれたものに肩入れする、自称書きもの愛好家。

⇒筆文葉バイブルサイズシステム手帳リフィル

工房楔の名品~使うべき素材を無理なく使い、需要を作り出したもの~

工房楔の名品~使うべき素材を無理なく使い、需要を作り出したもの~
工房楔の名品~使うべき素材を無理なく使い、需要を作り出したもの~

9月24日(土)25日(日)のイベントまでは工房楔について考えたい、語り続けたいと思っています。
工房楔のものに詳しい人ならご存知だと思いますが、コンプロットは銘木をくり抜いてペンが収納できるように革の内装を施したペンケースで、現在1本用、4本用、10本用があります。

1本用は最近作り始めましたので在庫できるほど数がなく、イベントだけで販売しています。いずれは当店のホームページにも載せて、イベントに来られなかった方にもご購入いただけるようにしたいと思っています。
4本用には、ミニとロングがあり、ミニはペリカンM800程度まで、ロングはM1000や中屋シガーロングのサイズまで収めることができるようになっています。
10本用はロングの長さでたくさんのペンを収めることができますので、コンプロットをはじめて使う人は10本用から使い始める人が多いようです。
10本用にペンを収めて、普段引き出しの中や本棚に収納しておいて、万年筆を使う用事がある時に机の上に開いて立てると、10本の万年筆が一覧できて、どの万年筆を使うか選びながら取り出すことができる。
本棚に収納できたり、開いて立てることができたりできるペンケースはあまりなくて、しかも銘木の木目や手触り、エージングを楽しめるものはコンプロット以外にないと思っています。

コンプロットは、木を使うべきところで使い、大きな板面で銘木の景色を見せる。内装は革張りになっていますので、ペンを固定しながら保護しています。
その作りや使う素材に強引なところが全くなく、オリジナルのアイデアで需要を作り出したものだと思っていますが、こういうものは、飽きられることがないので、いつまでも作り続けることができます。

パイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912の首軸から先のペン先ユニットを使うことができる万年筆銘木軸こしらえは、国産万年筆に「持つ楽しみ」を与えてくれる軸が欲しい、という要望で商品化することができたものです。

気に入って長く使い育ててきたペン先を、愛着を持てる軸で使うことができ、また違う素材の軸に付け替えることができる。
潜在化していた需要に応えた、こしらえもまた長く作り続けることができるものだと思っています。
今回のイベントで永田さんはコンプロットもこしらえもたくさん持ち込んでくれます。
他にもたくさんのものがあるけれど、イベント前にまず2つの名品について知ってもらいたいと思いました。

⇒工房楔・銘木万年筆軸「こしらえ」(Pen and message.オリジナル)cbid=2557546⇒工房楔・銘木万年筆軸「こしらえ」(Pen and message.オリジナル)csid=1″ target=”_blank”>⇒工房楔・銘木万年筆軸「こしらえ」(Pen and message.オリジナル)
⇒工房楔・コンプロット「万年筆ケース」cbid=2557546⇒工房楔・コンプロット「万年筆ケース」csid=4″ target=”_blank”>⇒工房楔・コンプロット「万年筆ケース」

オリジナルダイアリー2017完成~万年筆で書く~

オリジナルダイアリー2017完成~万年筆で書く~
オリジナルダイアリー2017完成~万年筆で書く~

2017年版のオリジナルダイアリーが完成しました。
分度器ドットコムさん、大和出版印刷さんとの共同企画のオリジナルダイアリーを作るようになって7年になります。
このダイアリーを企画したコンセプトは万年筆で書く、書くことが楽しめるというもので、その目標を今も追究し続けています。

当初は完璧なダイアリーができたと思って世に送り出したけれど、お客様のご意見を参考にしたり、自分たちで気付くこともあって、少しずつ変更を加えてきました。
今回、内容に関しての変更点はないけれど、ウィークリーダイアリーの製本をデイリーダイアリーと同じものにすることができて、押さえなくても簡単に平らに開くようになりました。
用紙は大和出版印刷さんが万年筆用に開発した紙、グラフィーロを使用しています。
グラフィーロは、書き味がカリカリした極細のペンでもヌラヌラと滑らかに書けるほど、平滑性を目指した紙です。
平滑さを目指したため、インクの吸収が普通の紙よりも少し遅いので、吸い取り紙を使うか、インク乾きの早めの外国の筆記具メーカーのインクを使う方が良いと思います。
私が使っていて合うと思ったのはペリカンのインクで、パイロットなど国産のインクは少し出過ぎるように感じました。

ダイアリーを書き込む時には、あまり太い字幅の万年筆は使わないと思います。
細字の万年筆、それらは太めの字幅の万年筆に比べるとどうしてもカリカリ引っ掛かる感じがあります。
細字をなるべく滑らかに書けるようにするために、私のようなペン先を調整する者がいるのだと思いますが、それにも限界があります。
しかし、グラフィーロは細字の万年筆と相性が良く、ダイアリーは細字の万年筆で書くと考えると、グラフィーロはダイアリーに最適な紙だと言えます。

罫線のレイアウトは、使い方が決められてしまうものにしたくないといつも思っています。
そのレイアウトを見て、自分ならこう使おうと思ってもらえる自由度の高いものにしたいと思っていて、ウィークリーダイアリーにはその考えが反映されています。
マンスリーダイアリーは、週の初めに予備のスペースがあるので「日は決まっていないけれど、だいたいこの週にあるスケジュール」などの曖昧な予定も書き込めて、それは仕事の実情に合っていると思っています。
一か月の形として、やはりカレンダータイプは目に馴染んでいるし、俯瞰して予定が一目で分かり、その月のトピックスも書き込める余裕がある、後からでも見返しやすいダイアリーだと思います。

ウィークリーダイアリー単体でも使ってもいいし、マンスリーダイアリーだけでもいい。あるいはマンスリーダイアリーと日付なしのデイリーダイアリーを組み合わせ使ってもいい。
これらのダイアリーを組み合わせ使うことができて、より満足感を持って使うことができる革カバーも、例年通りル・ボナーの松本さんが製作してくれています。
革カバーは10月の発売になります。
一人でも多くの人に、このオリジナルダイアリーを使っていただきたいと思っています。

⇒オリジナルダイアリー(オリジナル商品TOPへ)cbid=2557112⇒オリジナルダイアリー(オリジナル商品TOPへ)csid=1″ target=”_blank”>⇒オリジナルダイアリー(オリジナル商品TOPへ)

良い素材のシンプルなものたち

良い素材のシンプルなものたち
良い素材のシンプルなものたち

長く作り続けてきているカンダミサコデスクマットでターコイズ色を新たに作りました。
夏に間に合わなかったのではないかと思われそうな色ですが、一年を通じて使える、気持ちを上げてくれそうな色だと思っています。
薄茶、濃い茶色、どちらの色のデスクに置いていただいても合う色です。

デスクマットはブッテーロ革でできていて、これは使っていくうちに艶が出てくる革です。当店でも使っていますが、デスクマットは知らないうち手や紙でこすれているものなので、気付くと良い艶が出ています。
普段のお手入れとして、革用ブラシをかけていただいても良いかもしれません。
滑らかで張りのあるブッテーロ革はデスクマットにも合った素材で、それを3層構造にして反らない工夫がされています。
デザイン的にはとてもシンプルな仕様ですが、こういうものが一番使いやすくて美しい。

当店でお付き合いのある職人さんたちのものを見ていると、良い素材を使っていることが当たり前のように感じますが、それは良い素材を形にする技量や傷や取りなど扱いの気配りが要求される、どのメーカーでもできるものではないと思います。

そして、良い素材を使うからこそシンプルでいられるということも、世の中にある様々なモノを見て思います。
素材が作り出す景色だけで余計な意匠を加えなくてもモノは際立っていて、それがオリジナリティにもつながる。
オリジナリティとは作り手の心であるとよく思います。
自分が表現したいこと、伝えたいことをしっかりと思っている職人さんは、そのモノが売れるように世間に媚びることをしないし、他のモノを真似たりしない。

パイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912などのペン先を使うことができる工房楔が作る当店オリジナル企画万年筆用銘木ボディ「こしらえ」は、どっしりとした安定感のあるフォルムで何の飾りも付いていませんが、それぞれの素材の景色がデザインとなっているので装飾の必要はないと思っています。
花梨は地図のような花梨の模様が特徴だし、ブラックウッドはこの素材らしい艶やかな光沢をもっています。
ブラックウッドには真鍮の金具の金色の輝きがあれば、他に何も要りません。

こしらえの金具には、エボナイト、真鍮、ステンレスがあります。
エボナイトは木の模様や質感と相性が良く、ステンレスと真鍮は重めの素材でキャップを尻軸にはめない仕様のこしらえにはちょうどいい重さのアクセントになります。
ずっと理想の万年筆は、素材感そのままの切りっ放しで、余計なものがついていないシンプルなものだと思ってきました。
こしらえはそれを体現しています。
しかし、そのように見せるためにはかなりの努力が必要であることを、工房楔・永田氏の後ろ姿から知りました。

永田氏がこしらえの他にも、コンプロット、ジェットストリーム用カスタムグリップ、ノック消しゴムなど様々なものを持ってきてくれるイベントを9月24日(土)25日(日)の2日間、開催いたします。
普段見られない数の商品が並びますので、ぜひご来店下さい。

⇒カンダミサコ ブッテーロ革デスクマット
⇒銘木万年筆軸「こしらえ」cbid=2557546⇒銘木万年筆軸「こしらえ」csid=1″ target=”_blank”>⇒銘木万年筆軸「こしらえ」

万年筆を洗う

万年筆を洗う
万年筆を洗う

書道教室の宿題で小筆の練習をした後、毎回筆にシャンプー、リンスをして、硯は石鹸で洗います。
筆は洗いすぎだと言われるかもしれないけれど、そのモノもそれを使う時間も大切に思っているので、手を入れないと気が済まない。
それに道具をきちんと手入れしておけば、次に使うときに気持ちよく使うことができる。
たとえ翌日すぐに使うもので、そこまでしなくてもいいと思っても、次に使うときの気持ちよさを大切にしたいと思うようになってきました。
NHKの朝のドラマ「とと姉ちゃん」で唐沢寿明氏演じる編集長が、シェーファーシュノーケルの万年筆を丁寧に洗浄しているシーンがあり、それはその万年筆で書いているよりも、仕事の相棒であるその万年筆を大切にしていることがよく分かる印象的なシーンだったと思いました。

私も毎日使っている万年筆をそのように丁寧に大切に扱いたいと思いました。
理想は1日使い終わった後、インクを抜いて洗浄して、また翌日使う時にインクを入れ直したら気分が良いのではないかと思いました。
本当は何本もある万年筆を交互に使っているので、毎日インクを入れ直すことは難しいと思うけれど、せめてたまには使いっぱなしの万年筆を洗浄して、インクを入れ直してあげたいと思いました。

万年筆の洗浄をする時にとても便利だと思っているのが、ローラーアンドクライナーの「ライニガー」と吸い取り紙の組み合わせです。
インクの入った万年筆をある程度水洗いして、インクの色が出なくなってからライニガーを吸入させて、それで5分くらい紙に書くというのが本来の使い方ですが、紙に書く代わりに吸い取り紙に吸わせるようにすると、より早くインク溝に絡んでいるインクなども吸い取ることができることが分かりました。

毎日の洗浄でここまでやるかどうか、やる必要があるのか分からないけれど、万年筆の内部をよりきれいにしたい方にはお勧めの方法です。

万年筆を気分良く使うために道具を手入れする。
万年筆が仕事の道具でなくても、それで書くことが自分らしくあるための行為で、とても大切なことだという人は多いと思います。
そんなに大切なものだから、毎日きちんと洗浄したとしても手を掛け過ぎということはないと思います。

⇒万年筆洗浄液 ライニガー(reiniger)

プラチナ出雲 ~民芸の趣き~

プラチナ出雲 ~民芸の趣き~
プラチナ出雲 ~民芸の趣き~

プラチナ出雲のシリーズは、子会社である中屋万年筆のプラチナ版と言えるものですが、その印象はかなり違っています。
中屋万年筆のシガーやライターモデルは贅肉を削ぎ落としたような洗練されたシンプルなデザインに仕上げられていますが、出雲のシリーズからは力強さのようなものを感じ、対照的なものだと思っています。
グリップ部は誇張したように太く、大きなボディ、尻軸へ向かうほど細くなっていくデザインは握りやすさとバランスを考慮した結果生まれた形なのではないか、キャップを尻軸につけずに書くことを考えたらこういうデザインになったのではないかと思っています。

ペン先は、厚みがあってかなり固めの18金のものが使用されており、使い込むと弾力が生まれ、しなやかに育っていってくれていることが実感できるものになっています。
実際に万年筆を道具として書くことを考えると、柔らかくて馴染みやすいペン先よりも、硬いものの方が使いやすいし、この18金ペン先は非常に書きやすいと多くの方が評価しています。

出雲のベーシックなものは、エボナイトのボディに中屋万年筆の代表的な溜め塗りが施されています。
溜め塗りは、下地に何層にもしっかりと色漆を塗り重ね、その上に黒漆や生漆が一回だけ塗られています。
一回塗りの漆は紫外線を受けると少しずつ透明化していき、年月が経つと下地の色が少しずつ露出してきて、使い手も気づかないほど時間をかけて変わっていってくれます。
首軸やボディの際の部分だけは下地の色がうっすらと透けて見えるようになっていて、それも溜め塗りの特徴で、外観上に良いアクセントにもなっています。

ボディの塗りは中屋万年筆と共通のものが施されていますが、出雲のシリーズからは中屋万年筆と正反対の素朴さのようなものを感じます。
都会的で洗練されたものよりも、道具としての使いやすさを追求した質実剛健さに惹かれます。

作品としての美しさを狙わず、作り手のエゴが見えない道具としての姿に徹した出雲のシリーズに、昭和のはじめに民芸運動を起こした柳宗悦の言った「用の美」を認めます。
出雲シリーズには、白檀塗りなど地方に伝わる様々な塗りを取り上げている高級バージョンもあり、土着のものでありたいという出雲シリーズの考え方、有り方が分かります。

⇒プラチナ出雲 八雲白檀
⇒プラチナ出雲 溜塗り

ペリカンM400~手帳用に使いたい万年筆~

ペリカンM400~手帳用に使いたい万年筆~
ペリカンM400~手帳用に使いたい万年筆~

書くことを楽しむことを伝えたり、書くことを楽しむ人を増やすために万年筆店をしています。
万年筆が書くことを一番楽しくしてくれる筆記具だと信じているし、万年筆で書いたものが一番美しく見えると思っています。
それは私自身が書くことが一番楽しいと思っているからですが、中でも特に楽しいと思えるのが、手帳に小さな文字を書いている時です。

私にとってそれは趣味と言えるものだけど、同じように手帳に書くことが趣味だと思っている人が少なからずいることをこの店を始めてから知りました。
手帳をきれいに楽しく書くためには太いペン先のものは不適切ですが、かと言って極細ではなく、国産細字が一番合っていると思っています。
細すぎず少し線に柔らかさがあって、見ていて心地よい線。
心地よい線が国産細字だと正解は分かっているけれど、せっかく趣味とも言える手帳を書くのだから、色々なブランドの万年筆を使いたい。
そんな風に考えておられる方は多かったようです。

ペリカンM400の極細を国産細字くらいの字幅に研ぎ出す、「細字研ぎ出し」を始めたのは、そのようなお客様の声を多く聞いたからでしたが、始めてみるとかなり需要が多いことが分かりました。
それはM400というコンパクトで軽い万年筆を、手帳と組み合わせて考えておられる方が多いことの裏付けにもなりました。

M400に関しては良いニュースと少し残念なニュースがあって、良いニュースは以前限定で発売されたことがあって、すぐに完売してしまった茶縞が10月にまた限定発売されることになったということです。
茶縞は枯れたような味わいのあるもので、特に日本では人気のある色で、今回も売り切れ必須だと思っています。

残念なニュースは、11月1日にM400が値上げになるというもので、現在34000円(税別)の価格が35000円(税別)になります。それでも海外の万年筆で、14金ペン先、M800やM1000と同じ量が入る吸入式を備えた万年筆としてはまだまだ安い価格だと思います。
ポケットに差したり、手帳用万年筆として最適なサイズのM400は、万年筆の定番中の定番で、他に代わるもののない、伝統も中身も伴っている良い万年筆だと思っています。

⇒Pelikan M400細字研ぎ出し特別調整万年筆

工房楔イベント 9月24日(土)25日(日)開催

工房楔イベント 9月24日(土)25日(日)開催
工房楔イベント 9月24日(土)25日(日)開催

年2回恒例の工房楔のイベントを9月24日(土)25日(日)11時から開催いたします。
通常当店で在庫していない、たくさんの木製品を工房楔永田さんが持ち込んでの開催となり、木目などもお好みのものをお選びいただけます。どうぞご来店下さい。

当店は9月23日(金)で開店9周年を迎えます。大きな後ろ盾もなく、組織にも属していない当店でも今まで何とかやってくることができたのは、当店の力になってあげたいと思って下さったお客様方のおかげです。
そして、当店と同じように自分の道を自ら切り拓いてきた独立系の職人さんたちが商品を供給してくれているからだと思っています。

世の中の構造や慣習などからは一線を引いて、自分たちのポリシーで物づくりをしていく独立系の生き方は誰からも干渉されないけれど、守られていないということにもなります。
約束された仕事があるわけでもないし、大きな販売ネットワークもない。
その代わり自分の仕事を始めるのも終わらせるのも、何もかも自分の意思で決めることができる。
そんな独立系の生き方を仕事のやり方として選んだ職人さんたちの作品は、当店においてそれぞれ品揃えの柱のようになっていて、それによって店も締まるし、売上においても大きな力になっています。

工房楔も書くことを楽しむというテーマを掲げる当店の中において、それに添いながら、銘木やその杢を楽しむという楔のテーマを満たしたものを供給してくれています。
工房楔の商品は本当にたくさんの種類があるけれど、発売当初より大変人気なのは「ジェットストリーム用銘木カスタムグリップ」で、私も気に入って使っています。
混んだ電車の中など、万年筆よりもボールペンで書いた方がいいと思う時はブラックウッドのグリップをつけた3機能のジェットストリームボールペンを使います。
傍目から見ると普通の事務用3色ボールペンですが、手に当たる部分は銘木の滑らかな手触りで、自分にしか分からない上質さを感じながらガシャガシャとノックするのは何とも気分の良いものです。
500円くらいのボールペンに4000円のグリップをつけて、これは安いと思っているのはもしかしたら普通の感覚ではないのかもしれない。
でもこれが工房楔の木製品に惹かれる人たちの感覚なのだと思います。

全く同じ形のパトリオットボールペンの価格が5500円から3万円近くまであって、値段の違いがボディの材質の違いで、機能的には全く関係がないというのもまた文房具的ではなく、工房楔の感覚なのだと思っています。
永田氏は今回のイベントに向けて、暑い中毎日作品作りのために工房にこもってくれています。
今回は新しいネタがないと言うけれど、コンプロット1もイベントでしか販売することができていないし、新型のクローズドエンド万年筆もまだわずかしか製作していない。
こしらえの真鍮パーツ仕様もまだ目新しいし、ジェットストリーム用グリップもまだまだ人気があると思うので強迫観念に迫られて新作を作らなくてもいいのではないかと思っています。

仮に用途が同じでも、材質や杢が違えばそれはまた違うものであるという感覚が、銘木のステーショナリーを楽しむということで、今回のイベントもまた違う素材、美しい杢との出会いがあると思います。

葉書を送る~SkyWindポストカード~

葉書を送る~SkyWindポストカード~
葉書を送る~SkyWindポストカード~

手紙、封書ではなく葉書という飾り気がなく、限られた紙面に便りを書いて送る行為が好きです。
書ける文章量が限られているからこそ、言葉を厳選して伝えたいことを手短に書く。相手に時間を取らせないところも葉書の良いところだと思います。
封を切らずに見返すだけで本文を読める葉書は、手紙の簡易版のようなものなのかもしれないけれど、飾らない草(そう)の趣が葉書にはあると思っています。
文字の上手い下手ではなく、葉書を上手に書く自分の型を持つことは何かたしなみのような気がします。

それは何枚も書くうちに出来上がってくるもので、私も上手く書けなくていまだに試行錯誤しています。
工夫としては、住所のスタンプを作ってみたり、葉書の紙質に合うインクを選んだり、葉書サイズで自分の文字が一番きれいに見える字幅の万年筆を選ぶようにしたりしています。

葉書と自分の文字に合った万年筆やインクを探すのもまた楽しいと思います。
満寿屋のはがきサイズの原稿用紙メモに書いたものを官製はがきなどに貼るというアイデアを堀谷龍玄先生に教えていただいて、私も早速実践しましたが、とても面白い。
葉書サイズの原稿用紙も普通の原稿用紙と同じ上質な紙で、インクにじみがなく、紙自体もしっかりしています。はがきに貼り付けても丈夫で、インク映えもいいと思います。

当店にはSkyWindさんが作っている154種類ものポストカードがあって、はがき文化に貢献するものだと思い、密かに自慢に思っています。
毎年新作も出されていて、独特の世界観を持つこのポストカードのファンの方ももちろんおられますが、もっと多くの人に知ってもらうようにすることが当店の責任だと思っています。

SkyWindさんが撮った日常や旅先での写真は撮り方や印刷方法にもこだわっていて、彼女の世界観が伝わってくる。
少し影があって懐かしい気持ちにさせてくれる、彼女の世界観に共感しています。
SkyWindさんは、自分の型を持った「分かっている」女性だと思っています。
その作品やライフスタイル、ご飯は白いままで食べたいという大いに共感する小さなこだわりまで理解できる気がしています。
SkyWindさんが示すものの中から共感できるものを選んで、皆様も草(そう)の便りを出していただけたらと思っています。

⇒SkyWind ポストカード