5回目のお礼

5回目のお礼
5回目のお礼

9月23日(日)、開店5周年を迎えます。
今年もまた開店記念の日を迎えることができて、時世を考えると本当に幸せなことだと思っています。
新しくできた事業の半分以上は3年も持たずになくなっていると言われていることを知らず、良い結果だけを信じて始めた店で、今から考えると冷や汗ものの開店でしたが、皆様に支えられて今まで続いて来ることができました。

何度も言っていることですが、今まで続いてくることができたのは、何の取柄もない、未熟な私を支えてくれたスタッフと、応援してくれている取引先の人たち、そしてもちろんお客様方のお蔭以外の何ものでもありません。

当店のような小さなお店にとってお客様の次に大切なことは、魅力的な商品を作って納めてくれる職人さんたちとのつながりであり、このつながりがあるからこそお客様が立ち寄って下さる店となっています。

ル・ボナーの松本さん、工房楔の永田さん、カンダミサコさん、イル・クアドリフォリオの久内ご夫妻、Sky Windさん、これから商品を納めてくれることになっているベラゴの牛尾さんや万年筆、文具メーカーの人たちには助けてもらってばかりで本当に感謝しています。
これからもそのつながりを持ち続けていきたいと心から願っています。

たくさんの商品がなくてもいい、限定品がどこよりも早く入らなくてもいい。
(本当はそうだといいのですが)そういったことよりも、作り手の顔の見える、私自身が使いたいと思えるもの、楽しいと思っているものを提供することが当店の価値なのだと、最近思えるようになりました。

自分が使いたいもの、使っているものを皆様にご提案できることにとても喜びを感じています。
そういったモノづくりや、楽しんでいる事をお客様に見てもらったり、自分の書いた文章でお伝えしたりする。
ある意味大きいお店では絶対にできないやり方なのかも知れませんが、とても幸せだと思っています。

5周年と言ってもほんの少しだけ特別に感じられる節目となる日くらいに思っていますが、これからも今までと同じように続いていくために、今まで以上に何かしていこうと改めて思う日になりました。

そのひとつとして、以前からぜひやりたいと思っていた、文集を作りました。
テーマは「はじめての万年筆」。
ブログや店頭で原稿を募集したところ、40人の方々がそれぞれの「はじめての万年筆」について書いて下さいました。
読むたびにそれぞれの情景が見えるような文章ばかりで、味わい深いものが揃っています。
また、最後のページには当店の略年表や4コマ漫画のキャラクターのイラストが載っています。

当店はマイペースでこれからも続けていきたいと思っています。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

*文集「雑記から」~はじめての万年筆~は、9月22日(土)から販売致します。1部200円(メール便の場合280円)となっています(製本代実費の一部負担)。文集をご希望される方は、メール penandmessage@goo.jp にて承まりますのでぜひお申し付け下さい。
ホームページでもご紹介させていただく予定です。

IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催

IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催
IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催

イル・クアドリフォリオの工房は、久内さんご夫妻がフィレンツェに修行に渡る前に在籍していた革学校の仲間たちと共同で借りている一軒家の中にあります。

外観は昭和40年代に建てられた民家ですが、内装は自分たちで壁や天井を変えて間取りも作り替えられている、今の感覚のクリエイティブな空間になっています。
ここでご夫妻は仲間たちと刺激し合いながら、日々革小物・靴の製作をされています。
仕事を始めて1年半しか経っていないので、暮らしは決して楽ではないと思うけれど、お二人はとても明るく、そして好きなことを仕事にできる幸せを噛みしめながらマイペースな毎日を送っておられるようです。

私はお二人からイタリア人の職人のライフスタイルを見ますし、実際お二人はフィレンツェの工房でのライフスタイルが染み込んでいるようです。
イル・クアドリフォリオのブログ http://ilquadrifoglio.blog53.fc2.com/ 「La Dolce Vita~気ままな生活」というタイトルはあまりにもはまり過ぎている。

私たちは久内さんたちにいつまでもそんな風に暮らして欲しいけれど、作品はなるべく早く見たいと思いますし、お願いしている新製品をどんどん出してもらいたいと思っていますので、イル・クアドリフォリオのお二人について考える時、とても複雑な気持ちになります。

イル・クアドリフォリオのお二人とは、昨年12月頃旧居留地に工房兼ショップを構えるベラゴの牛尾さんから紹介されてお会いしました。
WRITING LAB.として作ってもらいたいと牛尾さんに打診したものがイル・クアドリフォリオの久内さんたちの作るものと合うのではないかと、牛尾さんが気付いて紹介してくれたのです。

今は革製品作りに専念しているけれど、お会いした時久内さんご夫妻はそれぞれアルバイトをされていました。
副業しながらというと、何か悲壮感のようなものがあるのではないかと私の感覚では思いますが、アルバイトをしていることも笑い話にしてしまうような明るくポジティブなお二人と一緒に仕事をしたいと思いました。

その出会いから第1作目のペンケース「SOLO」が出来上がるまで半年近くの時間が経ってしまいましたが、7月にWRITING LAB.とIL Quadriofoglioの共同企画商品として発売することができ、趣味の文具箱vol.23でも取り上げていただきました。
イル・クアドリフォリオの革小物を作る技法「絞り」は木型に革を巻きつけて固めていきます。
巻きつけるのは染色されていない革なので、色を重ね塗りしていく「パティーヌ」技法で色付けしていきます。
この作り方は型の精度がポイントで、試作を繰り返しながら型を修正していくのに労力も時間も掛かりますので、初回ロットが出るまでがとても大変だということが分りました。

パティーヌ技法はイル・クアドリフォリオの革小物に雰囲気を与えています。
奥行きのあるムラと透明感が同居していて、革製品ではないような色合いを感じ、私がイル・クアドリフォリオの製品に惹かれる一番のポイントとなっています。
「SOLO」のペンケースは個人的にも大変気に入っています。
蓋と胴の締まり具合が絶妙で、閉める時に空気が抜けていくのが分ります。
サイズがピッタリ合う、ペリカンM1000、アウロラ88、オマスミロードを収めていることが多く、これらの万年筆の使用頻度が高くなります。

9月15日(土)16日(日)にイル・クアドリフォリオのイベントを開催しますが、革小物の新製品の発表も予定していて、またご報告できると思います。

*画像は前回のイベント時の様子です

インクと香水

インクと香水
インクと香水

昨年から使い出して、とても気に入っていつも使っている香水がなくなってしまったので買いに行きたいと思っていますが、最近の休みの日は他の用事があって(先週は靴を買った!)京都のショップに行くことができずにいます。

インターネットの通販でもしかしたら買えるのかもしれませんし、大阪の百貨店内にあるショップでも買うことができますが、仮に毎回同じ香水を買うにしても気に入っているその空間である京都のお店に行って、一応メニューを見て、何種類かの香りを試してから買いたいと思っています。

当店に来られて、インクを選ばれている方も同じようなお気持ちなのだろうかと思います。
毎回選ぶインクは一緒だったとしても、一応色見本帳で他の色も見て、迷ってから買いたい。あるいはまた違った色を選んで気分を変えてみたい。

香水はサンタマリア・ノヴェラ薬局の香水を使っています。
修道院の一角にある、とても厳かで静かなフィレンツェ本店の雰囲気に気後れしながら香水を選んだ思い出も含めて、その香水を使う理由になっています。

京都のお店は小さいけれど、フィレンツェのお店の雰囲気と京都らしさが良い感じでミックスされていてとても好きなので、なるべくそこに行きたいと思う。
サンタマリア・ノヴェラの香水はとても有名で、多くの人が知る存在だと思いますが、そういうものがよりたくさんの人と共感し合えて楽しいと最近思うようになりました。

万年筆でも定番のものの方が、良いものを見つけた時に多くの人に勧めることができる。
香水とインクはどちらも液体で、なくなっていくもの、瓶の形や素材も重要な選択基準になっているところが、面白いくらいに似ています。
ちなみに私はほとんどの万年筆に当店オリジナルの「朔」のインクを入れています。
まだまだ暑さは厳しいけれど季節は確実に変わりましたので、次は秋の色「山野草」のインクでも使ってみようかな?と思っています。
オリジナルインク山野草は定番としていつでもありますので、多くの人と紫と青の中間のこの色の味わいについて共感し合えると思います。

ペリカンM600ルビーレッド 才色兼備な存在

ペリカンM600ルビーレッド 才色兼備な存在
ペリカンM600ルビーレッド 才色兼備な存在

靴が欲しいと思いました。

でも今回はデザインや細かな色の違いよりも、自分の足にピッタリと合うものが欲しいと思いました。
売れ筋から言うと私が履くようなサイズは規格より少し小さめで、それを作ることで効率は悪くなるかもしれません。
でもそれぞれのメーカーや輸入代理店の考え方で、多くの人にピッタリと合うものを提供したいと考えるかどうかが、ラインナップに表れていると思いました。
ネットでいろいろ調べてみて、パラブーツの靴に小さいサイズがあることが分かりました。
歴史があり、日本国内にしっかりした代理店があるところはサイズを揃えていることが多いということが分かり、それはペリカンの万年筆にも言えることだと、今回の自分の買物で分かったのでした。

ペリカンの万年筆もパラブーツと同じように、誰にでもピッタリ合うように、手帳のペンホルダーやベストの浅いポケットにも差すことができるミニペンM300から、筆達者な人にこそ使いこなして欲しいオーバーサイズのM1000まで、それぞれとても意義のある5つのボディサイズをラインナップされていて、誰にでもピッタリ合うようにできています。

ペン先の種類もEFからBBまでありますので(M800とM1000は3Bまで)、それぞれの用途に合うものを見つけることができます。
最近では売れ筋のFとMしか揃えていないメーカーもあって、それは靴で言うと7から9までしか揃えていないことと同じものを感じます。

万年筆のボディサイズやペン先の字幅のサイズも、多く、細やかに揃えている方がピッタリ合って、より快適に満足感を持って使うことができるからペリカンを愛用する人は多いのだと思い当たりました。
携帯性に優れた最もペリカンらしい万年筆M400、タフなペン先とバランスの良いボディで最も万年筆らしいM800という2つの名品の間で、M600は異色な存在だと思っています。
アウロラオプティマと太さ以外は、ほぼ同じ長さと重さのM600の中間的なサイズがペリカンらしくないと考えていました。

しかし、昨年発売し、特別生産モデルグリーン・オ・グリーンや今年限定生産したM605など、ペリカンの中でM600のシリーズを活性化しようとする動きが見られますので、ペリカンとしてはM600をニュースタンダードとして位置付けたいのかもしれません。
そんな動きをさらに強化するような限定生産品M600ルビーレッドが限定1000本で発売されました。
ペリカンでは以前、都市シリーズという世界の都市をイメージした限定品を発売していて、各都市のイメージと合った色合いでとても人気がありましたが、ルビーレッドはその時のマドリッドから透明感をなくして、しっかりとした赤色の強い色を出している、よりイタリアの万年筆に近い色合いをこのルビーレッドに感じます。

ペリカンの、ドイツ仕込みの実用性、耐久性とイタリアの万年筆の美しさを兼ね備えたものに仕上がっているのが、M600ルビーレッドです。
M600はボディが軽いので女性にも使いやすいと思いますし、調整していて言うことをよく聞く、とても素直な柔らかいペン先も特長的だと思いました。
自分にとってピッタリサイズの万年筆を探している時にデザインや色合いは優先されるべきことではないかもしれません。
でも実用的にピッタリ合って、モザイク柄の美しいボディを持つM600ルビーレッドのような万年筆もまた、異色の存在なのかもしれません。

色合わせ~イル・クアドリフォリオメモノート~

色合わせ~イル・クアドリフォリオメモノート~
色合わせ~イル・クアドリフォリオメモノート~

現在発売中ステーショナリーや新たに製作する革小物、オーダー靴の受注を中心としたイル・クアドリフォリオのイベントを9月15日(土)、16日(日)に当店で開催します。
イベント時に私と駒村氏、当店スタッフ久保が久内さんにオーダーした靴の仮履きが出来上がっておりますので、その試し履きも公開します。

靴の出来上がりばかり楽しみにしていられず、イベントの準備で話し合わなければならないことはいくらでもあります。
この日和田岬の工房を訪れたのもそのイベントの話と、WRITING LAB.とイル・クアドリフォリオとで作ろうとしている商品の打ち合わせでもありました。

服と靴と鞄のコーディネートなど、自分なりにできるだけ同じ素材・同じ色調で統一感のあるものにしたいと思っていて、革は服装の中でアクセントになるものなので、特にそうしたい。
それは服装でなくても、小物でも同じことが言えますので、イル・クアドリフォリオが得意とする革のカラーバリエーションは魅力があると思っています。

ペンケースの色が決まっていたら、手帳も財布も名刺入れも合わせたいと思います。
そういうふうに色合わせをしたいと考えて、WRITING LAB.で企画したイル・クアドリフォリオのペンケース「SOLO」が生まれました。
定番色が5色あるので、ご自分の好みの色、個性に合う色を選ぶことができます。
色展開が可能になったのは、パティーヌという無染色の革に色付けする技術のためで、有名なところでは革ブランドベルルッティがその技法をよく使うことで知られています。

イル・クアドリフォリオの久内さんたちは修行先のフィレンツェの工房でこの技術を習得し、日本ではあまり見られないイタリアの香りの強い、奥行きと透明感のある色調のものを生み出しています。
パティーヌによる色展開がペンケースSOLOで上手く行ったので、他のものにも広げて同じ色で揃える楽しみを追究していきたいと思い、サマーオイルメモノート用のパティーヌ技法の表紙を作ってもらいました。

素材に使う革は無色であれば何でもいいわけではなく、しかもメモノートの表紙に使えるしなやかなもので、パティーヌに適したものを久内さんが苦労しながら探し出してくれました。
ペンケースSOLO,サマーオイルメモノートと、仕事の道具をフィレンツェらしいムラのあるアンティーク風のもので揃えることができるようになり、今後もこのバリエーションを増やしていきたいと思っています。

*パティーヌ仕上げのサマーオイルメモノートの表紙は、表紙革だけでもお求めいただけるようになりました。近日中にホームページでご紹介致します。
*画像は店主の私物です。

⇒WRITING LAB. IL Quadrifoglio ペンケース「SOLO」

B5サイズの紙製品とWRITING LAB.革封筒

B5サイズの紙製品とWRITING LAB.革封筒
B5サイズの紙製品とWRITING LAB.革封筒

15年ほど前、多くのお店の定番から、メーカーの製品ラインナップから、B5サイズのファイルが急速に消滅しました。
それは単純に紙が大型化したからだと言ってしまえばそれまでですが、コンピューターの打ち出しによるA4サイズの社内用紙が、B5サイズの手書きに代わりほとんどを占めるようになったためだと考えられます。

そこから逆に考えると、手書きにはB5サイズが適していることになり、A4サイズの紙に文章を書いて収まりの悪さを覚えたのはそういうことだったのかと思いました。
実際、万年筆で文章を書くのにB5サイズはちょうど良く、太字の万年筆で書いても、細字の万年筆で小さな文字を書いてもそれなりに収まってくれるのではないかと思います。
身の周りにあるB5サイズの筆記用紙、原稿用紙、大学ノートなどを使って顧みてみると、一行の分量・見渡せる範囲などがいかに使い易いものであったのかが分かります。
それらを机に置いてみても(環境にもよりますが)邪魔にならない最大の大きさは大学ノートを開いたB4なのではないかと思います。

今まで規格のサイズから外れるからと、選択する候補にも挙がらなかったB5サイズというキーワードで紙製品について考えると、バリエーション豊富にいくつも浮かび上がります。
定番のキャンパスノート、ツバメノート、当店定番で2種類の罫線が交互にあるライフのデュエットノート、綴じ方に特長がある薄型の活版印刷ノート、原稿ノート、満寿屋の原稿用紙、無地の試筆紙など。

B5サイズの紙製品の使い方は、1冊に何でも書くのではなく、用途によって使い分ける方が向いていて、内容別に使い分けているそれらをその日の予定や必要に応じて持って出る。
学校での科目ごとにあったノートのようなイメージで使い分けるのがこれらのノートの正しい使い方なのかと思います。

WRITING LAB.の革封筒の存在がそれらのB5サイズの紙製品を使いやすくしてくれます。
原稿用紙、大学ノート、当店試筆紙などのB5サイズの製品は他のノートやファイルと大きさの違いから、使いづらく敬遠していたところがありましたので、そういったものをまとめて鞄に入れたり、そのまま持ち歩いたりすることができる革封筒はひとつのファイルだと言っていいと思います。

そして何より、持って歩く姿がかっこいい。

上質な栃木レザーのボーノアニリン革は、私とRiver Mailの駒村氏とともに四天王寺にある革問屋さんを訪ねて厳選して、その色気や手触りが気に入って決めた革です。
しっかりとした硬さもある革なので、ふた部を省いて取り出しやすさ、シンプルな造形にこだわった革封筒に非常に適しています。

ステッチなしの張り合わせ加工で仕立てていますので、縫い代や折り返しのデッドスペースが内側になく、バラの紙を入れても端がよれたりすることがありません。
B5サイズにすることによって、使う人を限定してしまうけれど、手書きにこだわる当店やWRITING LAB.ならでは革封筒なのです。

ラミーサファリ ~万年筆の世界を教えてくれる存在~

ラミーサファリ ~万年筆の世界を教えてくれる存在~
ラミーサファリ ~万年筆の世界を教えてくれる存在~

万年筆に初心者用というものはありませんが、万年筆を初めて使ってみたいという人に、それほど値段の高くないものとしてお奨めするのはラミーサファリにおいてないと思っています。
理由はサファリは万年筆の楽しみ方や良い万年筆とは何かを教えてくれる存在だと思うからです。
サファリは万年筆を使う人を増やすのに一役かってくれる万年筆です。

万年筆の楽しみ方のひとつにメーカーの物作りに触れるというものがあります。
その万年筆がどのような背景で作られ、どういう人に使ってもらいたいかを考えた機能があり、どういった所に特長があるか。
もちろん使いたいと思わせるデザイン的な魅力も重要な要素です。

サファリには何にも似ていないオリジナリティがあり、ラミーの万年筆哲学だけでなく、良いプロダクツとはどのような考えで作るのかも教えてくれものです。

サファリを味わうことは、良いプロダクツとはどんな考え方で機能を盛り込むべきかを知ることにも繋がり、私たちのような万年筆を仕事にしている者も参考にできるところがたくさんあります。

サファリは学校で万年筆を使うヨーロッパの学童向けの万年筆として、1980年に作られましたので、かなり新しいデザインに見えますがすでに30年以上も継続して作り続けられています。

サファリには、メーカーが定めたコンセプトやターゲットに必要な万年筆像を見据えたコンセプトがデザインを崩すことなく、機能に盛り込まれています。
学生の鞄のストラップやポケットに留めても壊れない頑丈なクリップ、キャップを外して机に置いても転がらない面のあるボディ、インク残量が一目で分かるボディに空けられた窓、くびれた部分に指を添わせて持つだけでペン先の書きやすい所が紙に当たるようになっているグリップ、コンバーターを使う時にコンバーターが外れないように、ノブを回転させた時に一緒に回って空回りしないように固定する切り込みなど、サファリのそれぞれの機能からは万年筆を使い始めたばかりの子供たちへの優しさが感じられます。

万年筆を使い始めたばかりの人でなくても、サファリを愛用している人はたくさんいます。
それはこの万年筆を好きで使っているという雰囲気さえ持っています。
デザインや機能にオリジナリティがあって何の真似もしていないので、値段が安い万年筆ですが貧しいところが全く感じられないのが、その理由かもしれません。
ペン先はステンレスですが、しっかりと調整されたサファリは滑らかで愛用に足る書き味を持っています。

値段は安いですがとても優れたプロダクツであるラミーサファリ。万年筆でなくてもこんなに優れたプロダクツにはなかなか出会えないかもしれません。

*画像のカタログは1986年のものです

⇒ラミーサファリ

透明ボディへの思い

透明ボディへの思い
透明ボディへの思い

私の暑い夏の過ごし方で、一番好きでこれが夏の醍醐味だと思っているのは、最近時間がなくて少なくなったけれど、暑い日中に板の間の床の上に枕だけ置いてズボラな姿で寝そべって本を読むことです。

床の冷たさを背中に感じて本を読む。
子供の頃の記憶で、父もいつもそうやって重そうな本を読んでいました。
しばらくして見ると、寝てしまっていることもあったけれど。
本が好きな人にとって、こんな幸せな時間はないのかもしれません。

本を読んでいるとメモをとらなくてはいけないこともあります。
後で書こうと思っても、絶対に忘れてしまうのですぐに書かなければいけない。
寝転んだ状態で書くのに一番いいのは軽い鉛筆、ではなく、筆圧をかけなくても逆さ向きでも書くことができる万年筆です。

鉛筆は筆圧をかけないと薄くなってしまうし、ボールペンは一部のものを除き、逆さ向きではかくことができません。
万年筆は毛細管現象の働きでペンポイントまでインクが流れてきていますので、ちゃんと調整された万年筆なら、紙に当てるだけで上を向いていても書くことができます。
その体勢で長時間書くとペン芯内のインクがなくなって書けなくなりますが、ペン先を下にするとタンクやカートリッジ内のインクがすぐにペン芯に補充されます。
枕に寝転んで書くことはないけれど、ソファにもたれた上体だけ起こした体勢での書きものは休みのたびにしています。

こんな体勢でものを書くことが多いから、私には立派なノートよりも軽く切り取りができるメモ帳の方が良くて、でも何でもいいわけでなく、罫線はちゃんと書く気持ちを盛り上げてくれるものの方がいい。
そこで原稿用紙罫のサマーオイルメモノートの替紙を原稿用紙罫で作りました。

そういう背景からも分かるように、これはデザイン的な面白さを求めたものではなく、大真面目に実用的な理由があって作っています。

寝転んだ体勢で書くのに適した万年筆の条件は、ボディが軽く、ペン先は硬め。更にインクがペン芯まで降りてくることが確認できる透明ボディであれば最高に条件が整い、M200クラシックデモンストレーターはぴったりだと思います。

そういうズボラな万年筆の使い方にも、ペリカンM200は妙にはまってしまう。
透明のデモンストレーターボディに金の金具は、何となく古臭い印象もあるし、下手をすればチープにさえ見えます。
でもこの古臭さやチープさに味わいが感じられて、何か懐かしい気分にさせてくれます。

全然関係はないけれど、透明のものを見るといつも連想してしまう観覧車の話をしなければいけません。

一昨年の夏、家族で横浜へ行った時に泊まっていたホテルの向かいにあった大きな観覧車に乗りました。
私は岩国の錦帯橋の上で足がすくむほど高所恐怖症であるにも関わらず、45度おきにある透明の部屋に乗ろうと言い出してしまいました。
外壁だけでなく、椅子も床も透明で、高さを忘れるために目を反らすところがありませんし、目をつぶるのはお金がもったいない。

私たちが乗った部屋が地上を離れ始めた時にしまったと思いましたが、もう逃げ道はなく、手に汗を握りなるべく遠くだけを見るようにして、何とか1周を耐え、地上に着いてドアが開いたと同時に、転がり出るように一番最初に外に出ました。
高所恐怖症で高いところに上がることなど考えられない私を惹きつけるほど、透明のものというのは、特別なふうに見えて魅力があります。

観覧車の話はこの万年筆の良さと全く関係がないけれど、ペリカンM200クラシックデモンストレーターには心を動かす趣と私が勝手に見出した実用性を感じます。

カンダミサコ「風琴マチ名刺入れ」とあじ名刺

カンダミサコ「風琴マチ名刺入れ」とあじ名刺
カンダミサコ「風琴マチ名刺入れ」とあじ名刺

大和出版印刷の活版印刷の名刺「あじ名刺」は、派手さはないけれど、ひとつひとつの文字に力強さがあって、とても味わいのある大人の名刺だと思います。
この名刺を渡して気付いてくれた人がいると、この名刺について語りたくなるし、相手が気付かなくても活版印刷についての説明をしたくなる。

初対面の人との雰囲気を和やかに、心を近付けるのにも役立つものだと考えると、あじ名刺は相手に自分の名前や立場を知ってもらうという名刺の役割以上の効果を持っていると思います。

当店でもあじ名刺の受付をしていて、すでに多くの人に名刺を提供していますが、ビジネスでも使うことができる大容量の名刺入れがありませんでした。
あるお客様に、「名刺印刷を受けているのに、名刺入れは扱っていないの?」と指摘されたりしていて気になっていたのですが、やっと名刺れらしい名刺入れを揃えることができました。

あじ名刺を収納するのに相応しい品質と設えを持っている、カンダミサコさんの風琴(ふうきん)マチ名刺入れです。
革はル・ボナーさんなど多くの革職人さんが使っているブッテーロ革で、油分を多く含んだタンニンなめしの革で、布やブラシで手入れしながら使い込むとピカピカの艶が出てくれるのが特長です。
傷が付いても、指で擦ったり、革用のブラシをかけたりすると、消えたり、薄くなったりする。
しなやかなブッテーロ革の特長を生かし、さらに風琴マチという技術を盛り込んだことがこの名刺入れの一番の特長で、たくさんの名刺を収納することができるのに薄くなっていて、それが風琴マチの効果です。

風琴マチという蛇腹状のマチをつける技術は革を薄く剝いて、張り合わせなくてはならず、とても難易度の高いものですが、カンダさんはさりげなくこれをやってのけます。
見た目はシンプルでオーソドックスな名刺入れのスタイルでありながら、実は手間と高度な技術が込められた一味違う仕様になっているところは、活版印刷という職人の腕によるところがその出来栄えを左右するあじ名刺と近いものを感じます。
テクニックや仕様が先にあるのではなく、理想的な製品の形があって、それを実現するために技術を駆使する。

そんなカンダミサコさんらしいスマートさと腕の良さ、丁寧な仕事が感じられる名刺入れです。

*活版印刷名刺「あじ名刺」は店頭にて見本帳をご覧いただいております。興味がおありの方はお問い合わせ下さい。

サマーオイルメモノートに原稿罫

サマーオイルメモノートに原稿罫
サマーオイルメモノートに原稿罫

出勤や帰宅中、本を読んでいない時は何か書くことを考えていますので、鞄に入れているサマーオイルメモノートを使わない日はありません。

まとまったものは机に向かってノートや原稿用紙に書きますが、自分が書くものの大半はこのメモノートで充分用が足ります。
メモノートに書いたものはパソコンに打ち込んで形にしないと、いつまでも書いたものがメモに残っていますので、それで自分を追い込んでいるようなところもあります。
でも相当な頻度でメモノートを使っていますので、このメモノートへのこだわりも強く、もっと良くしたいという欲求がいつも出てきて、改良点も出てきました。
綴じる紐も当初37cmでしたが、現在は55cmに変更して、和綴じのようにすることによって、表紙の穴から上の部分が反り上がるのを防止しています。

また製造工程上実現していないので、個人的に行っている作業なのですが、穴から上方向に切り込みを入れることでスムーズに中紙を切り離すことができ、ちぎれた小紙片が紐周辺に残らなくなります。
このメモに向かっている時間が長いので、いろいろ気になることが出てくるのだと思います。

今回の中紙を原稿用紙にしてみるというのも、文字数を把握しながら書くことができればとても便利だと思ったからです。
原稿用紙罫を模様としてではなく、本気で原稿用紙として使おうと思っています。
紙の大きさ、一マスの大きさの加減で1枚140文字という変わった文字数になっていますが、無地の状態よりも更に書く気分を盛り上げてくれる罫線が原稿用紙罫です。
もちろん、原稿用紙罫をただの模様としてとらえることも可能です。
私の場合、あれほど色々なメモを使っていたのが嘘のように、他のメモ帳を使わなくなりました。

上質な素材で、シンプルなものを作るWRITING LAB.のイメージが顕著に表れているのが、このサマーオイルメモノートで、メモ帳に本気で使うことができる原稿用紙罫を入れるのもWRITING LAB.的だと思っています。