年賀状と万年筆

年賀状と万年筆
年賀状と万年筆

1年で最も万年筆を使う絶好の機会が年賀状を書く今の季節で、毎年今だけは万年筆を使うという人はかなり多いようです。

11月下旬から12月中旬にかけて、万年筆の修理の依頼件数は増えるし、通常よりもカートリッジインクの売れ行きも良いと思っています。
このシーズンは多くの人が万年筆のことを、あるいは手書きのことを思い出す季節なのかも知れません。

そう考えると手書きするために万年筆を使いたいと思うのは我々だけでなく、一般的に思うことなのだと気付いたりします。
でも一年に一度だけしか、文字を書くことを意識する機会がないというのは少し寂しい気がします。

一年中万年筆で文字を書いておられる皆様には無縁な話ですが、一年に一度年賀状の時だけ取り出して使うのに適した万年筆は、キャップの機密性が高く、ペン先が乾きにくいということが最も大切な条件になります。

それぞれインクを入れっぱなしにしてテストした訳ではありませんが、私の経験やお客様方のご意見を総合すると、その条件をクリアするのはパイロットカスタムシリーズ、ペリカンスーベレーンなどになります。

特にカスタムシリーズの乾きにくさはダントツで、そのペン芯の構造が特長的で、インクが通る溝と空気が通る溝が別になっていること、カートリッジなどの純正のインクの乾きにくさなどの要件がそれを可能にしていると思われます。
ペリカンもキャップの機密性、ペン芯の性能の高さがあっての評判だと推測します。

今年プラチナから3776センチュリーという新しいシリーズが発売になっていますが、この万年筆もキャップの機密性の高さに気を配っていて、ペン先の乾きを長期間防止することを謳っています。

万年筆には長期間放っておいてもペン先が乾きにくいものと、乾いてしまうものがあります。でもただ単に乾かないものが良いという事ではなく、構造の違いで起こる現象というだけで、通常の使用には何ら問題はなく、ただ気を付けるというだけなのです。

お年玉付き年賀はがきの用紙についても注意が必要です。

再生紙とインクジェット紙があり、宛名面はそれほどの違いは今までなかったので今年も大丈夫だと思われますが、本文面の紙質がかなり違います。

再生紙は普通のはがき用紙ですが、インクジェット紙は写真などの高精度画像の出力をきれいに印字できる表面加工が施されていて、万年筆のインクが異常ににじんでしまいます。
インクジェット紙の本文面に万年筆で書かれる時はカーボンインクなどの顔料系インクを使わなくてはいけません。

万年筆用の普通のインク、染料系の万年筆用インクを比べるとかなり少なめのにじみになるはずです。
しかし、顔料系のインクを入れて、1年間置いたままにしておくと、インクが完全に固まってしまいますのでご注意ください。

一年に一度かもしれませんが、書く事をより楽しいものにする万年筆をぜひ使っていただきたいと思います。

⇒パイロットカスタム743

満寿屋の原稿用紙

満寿屋の原稿用紙
満寿屋の原稿用紙

原稿用紙を上手く書くのは意外と難しい。
縦書きに慣れていないといけませんし、あの枠の中にバランス良く文字の大きさを合わせないといけない。
適当に枠からはみ出して文字を書いたりするのは、何でもないようで実はセンスが要求されたりします。
文豪たちの真似をしてたまに原稿用紙にチャレンジしますが、私は上手く書けた試しがありません。

そんな私が言っても説得力がありませんが、原稿用紙に使ってサマになる万年筆の字幅はB以上なのではないかと、原稿用紙を使った少ない経験から思っています。
あまり細くて小さい字だと文字が連続しないというか、原稿を書いているという勢いがなく小学生の作文のような体裁になるので、無理をして大きく書こうとしていました。

当店では原稿用紙もご用意しています(店頭販売のみ)。
原稿用紙の中でも最も紙質に優れ、バリエーションも豊富だと思っているのが満寿屋の原稿用紙で、定番ラインを揃えています。

黄色っぽい紙のオリジナル紙と白いデラックス紙があります。
オリジナル紙は、黒やブルーブラックなどの暗めの色が合うようで、なかなか文豪風。
インクにじみが少なく、書いた文字のまま出る紙質です。
白いデラックス紙は、インクの伸びが良く、書き味が特別良い紙です。
少しにじむ傾向にありますが私はとても好きな紙です。

罫線の形も選ぶことができます。
一般的な原稿用紙の罫線の形、大きな字が書きやすいルビなしの罫線。
書かれる文字のスタイルや好みに合わせて罫線を選ぶことができます。
インクの色も非常に重要で、原稿用紙の罫線と同じくらい気分を盛り上げてくれるものです。例えば罫線の色とインクの色を合わしてみるのもいいかもしれません。

原稿用紙で原稿を書く人は今や非常に少ないと思いますし、原稿用紙で原稿を書くことができるのは本当に有名な作家の先生しかいないのではないかと思います。
今ではあまり使われなくなった原稿用紙ですが、狂言師の安東先生はこれで手紙を書かれるそうです。

これからペリカンM1000の3Bを使って何でも原稿用紙に書くという事に挑戦してみようと思っています。

*ちなみに満寿屋というのは、原稿用紙の商品名で、会社名は桝屋と言います。
*満寿屋の原稿用紙は店頭でのみ販売いたしております。ご要望の方はお問い合わせ下さい。

⇒ペリカンM1000万年筆

大和出版印刷 CIRO 白にこだわったノート

大和出版印刷 CIRO 白にこだわったノート
大和出版印刷 CIRO 白にこだわったノート

小学生の時でも、新しいノートをおろして名前を書く時に多少の緊張感はあって、今度はきれいなノート使いをしたいと思ったことがよくありました。

表紙の名前を書く時油性ペンで書きましたが、きれいに書こうと気負いすぎて、強張った変な字になったり、マジックの色のチョイスを間違ったりして、がっかりしてしまうことが本当に多かった。

その時の反省もあって、ノートやダイアリーの表紙どころか、1ページ目には絶対何も書きません。失敗してもカッターで切ってしまえばいい。
さらの(新品の)ノートにペンを立てるというのは小学生の私にとっても、緊張するくらい厳かな行事で、きれいに書きたいと白いページに願ったのだと思います。
この手帳を見て、30年以上前に思っていたそんなことを思い出しました。

大和出版印刷の手帳CIROは、白にこだわった手帳です。
表紙は厳選したリネン素材、中紙は万年筆用紙として極上の書き味を持つ白いLiscio-1(リスシオ・ワン)紙。

でもこの手帳の一番の特長は、罫線も白であるということ。
白い紙に白い罫線を印刷すると見えないのではないかと思われるかもしれませんし、実際遠めに見てこの手帳に罫線が入っていることに気付く人は少ないかもしれません。
でも万年筆のキャップを開けて紙面に向かって文字を書こうとした時罫線が浮かび上がってくるような感覚を覚えます。
光を吸収する紙の質感とわずかに光沢を持つ罫線の白いインクの光の反射の違いが、書こうと思って紙面を意識したに罫線を認識させてくれるということなのかもしれません。
これなら罫線というガイドがありながら、無地の手帳のように使うことができるかもしれません。

製本は大和出版印刷が万年筆用紙製品事業に参入するきっかけになった上製本ノートを製本した今永製本。
加工の上手さには定評があって、開きやすく丈夫な製本を実現しています。
しかし、白い罫線の紙を製本する作業は困難を極め、たくさんの手帳を作ることができませんでした。100の限定生産ということになっています。

すでに多くの注文が寄せられている活版印刷の名刺、あじ名刺を始めた大和出版印刷がまた実験的で面白い企画を始めました。

当店の他、ル・ボナーさん、山科のRiver Mailさんでも販売しています。

⇒CIRO 万年筆専用ノート

大人が初めて使う万年筆

大人が初めて使う万年筆
大人が初めて使う万年筆

新たに靴が欲しいと思い始めて数ヶ月が経ちました。
今までビルケンシュトックで満足していましたが、高価でももっと違うものを手に入れたいと思っていました。
オールデンを買うならコードバンのものがいい、そしてブルックスブラザーズとのコラボものがいいとか言っているうちに生産終了してしまい、オールデンが目の前を通り過ぎていったこともありました。

こんな風に靴を買おうと思うと雑誌をいつまでも見たり、インターネットで調べたりしましたが、こういう時間というのは本当に楽しいと思いました。
その時、万年筆を初めて買おうとしている方も私と同じような思いをしているかもしれないと思い当たりました。

調べていくうちに少しずつ訳が分かってきたり好みができてきたりして、欲しいものが固まります。自分が使っているところをイメージしていると楽しくてすぐにでも買いたいと思うけれど、自分が買おうとしているものが果たして正しい選択なのかどうか不安になると思います。

そのメーカーは万年筆メーカーとしてどのような評価を受けているのか。
そのメーカーの代表的なものを選ぶことができているのか。
他者の真似ではなく、オリジナリティのあるものを選ぶことができているかなど。
私もどうせ買うなら、長く作られている靴の世界を代表する超定番のものが欲しいと思ってイギリストリッカーズ社のカントリーブーツというものを選びましたが、オリジナリティもあると思いました。

それは万年筆において最初に買うべきスタンダードモデルを自分が理解しているから、余計に靴において心配になったのかもしれません。

当店は初めて万年筆を使うという方が多く来店され、とても嬉しく思っています。
そのため初めて万年筆を使うという方にお勧めしたい万年筆は揃えるようにしています。
長く作られていて、機能的にも使いやすい、万年筆の定番でオリジナリティのあるもの。
初めて使っていただくお勧めの万年筆の中には、ペリカンM400とM800がいつも入っています。
ペリカンの万年筆は、ペリカンらしい個性的なデザインを持っていますし、バランスも良い。優れたペン芯はインクによる性能の差が少なく、初めて万年筆を使う人にも扱いやすいところがお勧めの理由です。

M400は細めで軽いボディで、ボールペンやシャープペンシルに慣れている方にも違和感なくすぐに使い出すことができます。1950年代から作られている(60年代に中断していますが)ペリカンを代表するモデルです。
シャツのポケットに差すことができるくらいのコンパクトなボディなので、携帯用の万年筆としても選んでいただけます。

M800は全ての万年筆の中で最も万年筆らしいバランスを持った万年筆です。
大きなボディとハードでタフなペン先により、筆圧の強さを気にせずにガンガン使うことができる、まさに書くための万年筆です。

初めての万年筆選びでM400とM800の2つも候補に加えてご検討ください。

⇒ペリカントップへcbid=2557105⇒ペリカントップへcsid=6″ target=”_blank”>⇒ペリカントップへ

オリジナルダイアリーカバー完成

オリジナルダイアリーカバー完成
オリジナルダイアリーカバー完成

大和出版印刷の武部社長がル・ボナーの松本さんに万年筆の良さを教えてもらって万年筆に目覚めなかったら、極上の万年筆での書き味を持った紙リスシオワンは生まれなかったし、私が武部社長と知り合うこともなかったと思います。

私がある問屋さんの紹介で分度器ドットコムの谷本さんと知り合わなかったら、ダイアリーをオリジナルで作るという発想も生まれなかったと思います。
それらの縁があって、このダイアリーとダイアリーカバーは一昨年に生まれました。

縦横差のない正方形の形は日頃書類などで使う規格のサイズとは違いますので、目を引いて何か気になる。
この正方形の形が平面で見た時に最も美しい形なのかなと思います。
ダイアリーを作ろうという話になった時、正方形という形に最もこだわったのは、分度器ドットコムの谷本さんでした。
谷本さんは筆記スペースと携帯性を両立し、形としても面白い正方形ならユニークで使いやすいダイアリーを作ることができると思っていたのです。
そして私たちはアイデアを持ち寄って正方形が生きる罫線フォーマットを作りました。

様々なダイアリーを試して、万年筆でダイアリーを書くならこうあって欲しいという希望を持っていましたので、フォーマットはすぐに出来上がりました。
万年筆で書くことを楽しむためのダイアリーはこうして生まれましたが、このダイアリーになくてはならないものが、ル・ボナーさんが製作してくれるカバーです。

このダイアリーカバーも万年筆で書くことを強く意識している仕様になっていて、ペンホルダーやベルトなどのシステム手帳などには当たり前の装備を省いて、開きやすさ、書きやすさに特化しています。

書く機能を優先して、一切の装備を省いたこのダイアリーカバーですが、そのシンプルさが結果的に美しい造形に一役買っていると思います。

美しい張りと光沢のあるクリスペルカーフのカバーは、静謐な雰囲気を湛え、スーツなどのフォーマルな服装により似合うものだと思いますし、シュランケンカーフのカバーは内側のブッテーロ革との色合わせが見所になっていてより明るい雰囲気でカジュアルな服装に合うと思います。

革の表情の違いで全く違うものに見えるので、クリスペルカーフとシュランケンカーフというふたつの素材の違いは対照的で、使われる方の層を広げることに繋がっています。

両方のお客様の共通点は万年筆を使う、ということだと思っています。
手帳カバーに当たり前についているものを削ぎ落として、その形の美しさを見せるダイアリーカバーは、ル・ボナーの松本さんのキレの良い仕事ぶりが伝わるモノです。
私もクリスペルカーフのダブルを使っていますが、収めることのできる情報量の多さ、姿形の美しさが特に気に入っています。

今回シングルのみの完成になりますが、最大4冊まで収納できるダブルタイプもクリスペルカーフで11月15日頃に完成する予定になっています。

⇒Liscio-1オリジナルダイアリーカバーcbid=2557544⇒Liscio-1オリジナルダイアリーカバーcsid=2″ target=”_blank”>⇒Liscio-1オリジナルダイアリーカバー

ファーバーカステル250周年エレメント オリーブ

ファーバーカステル250周年エレメント オリーブ
ファーバーカステル250周年エレメント オリーブ

どんな企業でもターニングポイントとなるような変革の年というものが訪れて、時代の求めに応じて変化していくのだと思います。

創業して250年もたつファーバーカステルにはそんなターニングポイントとなる年が何度も訪れたのではないでしょうか。
今から考えると10年前、240周年の年。

翌年から始まる限定万年筆のシリーズペンオブザイヤーの試金石となるモデルオリーブが発売されましたが、それがカステルが限定万年筆を手掛けることになったターニングポイントで、それによってファーバーカステルの万年筆の世界での存在感が大きくなったと思っています。

ペンオブザイヤーは万年筆ファン全てから注目を集めていて、話題に上りますので、240周年のオリーブを世に問うたカステルの戦略は相当の効果があったことになります。
今回発売された250周年エレメント・オリーブもファーバーカステルが自社の新しい展開を予告する、ターニングポイントを自ら作り出したペンになっていると見ています。

250周年エレメント・オリーブ、そして今後に続くストーリーは数年前から始まっていました。
エレメント・オリーブのベースとなっているイントゥイションは2009年に発売されました。
万年筆としては独特のバランスを持っていて、異端的な存在だったクラシックコレクションと違って、他の万年筆から持ち替えても使いやすい標準的なボディバランスを持ちながら、カステルらしさを持った、カステルの世界戦略的な万年筆です。
イントゥイションのバランスの良さ、使いやすさはそれなりに評価されましたし、実際良いペンでペリカンM400と比較しても見劣りしないものですが、クラシックコレクションにあった、どうにも仕方なく惹かれるような強烈な説得力が薄いように思っていました。

イントゥイションは実用万年筆として、好意的に万年筆ユーザーに受け入れられ、カステルらしい金属キャップのイントゥイション・プラチノという発展モデルを生み出します。

エレメント・オリーブはこのイントゥイション・プラチノを木製ボディにして、ペン先、ペン芯を大型にして、最上の書き味を持たせたものです。

エレメントオリーブは今後、クラシックコレクションのようなペルナンブコ、グラナディラボディのものが発売され、新しいカステルの伯爵コレクションの中心的な存在になっていくと思われます。
数年前に始まった250周年の展開のための点が今やっと線になって、これからもっと太いものになっていくのだと思うと、このエレメントは非常に上質は書き味やボディの色合いや質感という、その物自体の価値以上の重みのあるペンだと思います。


WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー

WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー
WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー

山科のインディアンジュエリーとステーショナリーのお店「River Mail」との共同企画のブランド WRITING LAB.(ライティングラボ)を立ち上げました。

万年筆を使う人たちが面白いと思うモノ、コトをステーショナリーに限らず形にすることを目的にしたブランドで、私たちが企画するものの中にはどこかに楽しめるような面白い要素を持たせたいと思っています。

そのモノに興味のない人から見ると馬鹿馬鹿しいとさえ思えるところにこだわり、それを優れた技術、良質な素材で真剣に作る。そんなモノ作りを柱にした活動をしていくつもりです。
私たちは既に機能を満たしたものは持っているし、たくさんのモノを見てきました。
そういったモノに溢れた現代の中で、ずっと大切にできて、日常の生活を潤いのあるものにしてくれるモノとは機能一辺倒なものではなく、無駄だけど面白いと思えるモノ、愛でる楽しみも持ち合わせたモノだと思っています。

WRITING LAB.ではそういったモノ、コトを理解して下さる遊び心を持った人のための活動をしていきます。

WRITING LAB.のご提供する商品は、キャンバス製ダイアリーカバーに始まり、岐阜の木工家永田篤史氏製作によるデスクと机上用品、神戸旧居留地にアトリエを構える革職人ベラゴ牛尾龍氏による革製ステーショナリーなどを発売していきますので、楽しみにしていてください。

地図が好きです。

それが世界地図でも、どこかの街の地図でも時間を忘れて見ていられる。
同じ地図でも毎回そんな調子でいつも何か新しい発見があります。
私のように無条件で地図が好きな人って、結構おられるのではないでしょうか?
地図にはロマンがあって、世界の知らない街に思いを馳せてイマジネーションが広がります。
それが毎日使うダイアリーのカバーになったら楽しいと思い、キャンバス地のダイアリーカバーをWRITING LAB.で企画しました。
地図は世界地図と神戸の中心元町、三宮の2種類を用意しています。
7つの海を表示し、旅へ誘うコンパスをあしらっている世界地図。
(ちなみに7つの海とは、北太平洋、南太平洋、インド洋、北大西洋、南大西洋、北極海、南極海の7つだということを私は知りませんでした)

世界の切り取り方に気を配って位置を決めています。
神戸の地図は、元町、三宮の観光スポットを表示しています。
この地図を見ながら神戸の街をブラブラと散策しても楽しいかもしれません。
非常にシンプルな作りのカバーですが、何度も試作を重ねて現在の形になっています。
表表紙と裏表紙の回りこみの部分をかなり深くとっているのは、紙面に段差を無くすための工夫で、これで紙面が平らになります。
外周を回るステッチは中身のダイアリーやノートを一定の位置に保ち、端まで出てこなくなっているので、ノートの小口を痛めません。

キャンバス地のダイアリーカバーは、自分たちで使っているオリジナルダイアリーの良さをもっとたくさんの人に伝えたい、一人でも多くの人にこのダイアリーを使ってもらいたいという想いを持って作りました。

丈夫なキャンバス地なので、気軽にどんどん使っていただける。最初硬い感じがするかもしれませんが、使い込むと柔らかく馴染んできてくれて使いやすくなってきます。
安価なのでダイアリーだけでなく、方眼や横罫のリスシオノートを用途別に複数冊このカバーをつけて使い分けることもできます。

現在、ル・ボナーの松本さんが自ら製作してくれていて11月上旬に完成する革のカバーの上質さも魅力ですが、何も気にせず使い倒せるキャンバス地のカバーもぜひ使ってみてください。


⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧cbid=2557112⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧csid=1″ target=”_blank”>⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧

パイロット キャップレスマットブラック 名作の復刻

パイロット キャップレスマットブラック  名作の復刻
パイロット キャップレスマットブラック 名作の復刻

10年近く前にもマットブラックのキャップレスが存在していました。

当時キャップレスにもカラーバリエーションは存在していましたがあまり斬新な色はなく、マットブラックは異色の存在でした。
カラーバリエーションのあるキャップレスは18金のペン先で真鍮のボディ、マットブラックのキャップレスは14金のペン先にプラスチックのボディでしたので、カラーバリエーションのあるキャップレスとは違う、下位モデル的な存在でした。

しかしその下位モデルが最もデザイン的に優れていたと思っていたのは私だけではなかったと思いますし、当時のパイロットの無難な製品展開の中ではかなり過激に見えていました。

余談ですが、当時のキャップレスには5000円でスチールのペン先とステンレスのシンプルなモデルもありました。

話を戻すと、前のマットブラックが存在していた当時、万年筆とはキャップを開けて使うものだという特別なイメージが強かったためか、キャップレス自体それほど注目されるものではありませんでした。

しかし、時代は変わって万年筆を日常の仕事の中で使いたいという人が増えて、キャップレスが再評価され始めています。
キャップを開ける手間がないため、片手で立ったままでも手帳に書き込むことができる。
ノックしてペン先が出てくるため、万年筆を使っていることを気付かれずに会議や打ち合わせでも万年筆を使うことができるなど、キャップレスならでは用途は数多く存在します。

そういった時代の移り変わりの中で、最も過激でカッコ良かったキャップレス、マットブラックの復刻を望む声は多く聞かれていました。
そんな中で登場したのが、新しいマットブラックです。

ボディはスタンダードのキャップレスと同じになり大型になっていますが、真鍮製でより頑丈になり、ペン先も18金にグレードアップされています。
これらは主に書き味を追求しての結果だと思っています。
キャップレスはボディが細くて軽いアルミ製を採用したデシモの方が、キャップレス本来の目的に合った仕様であると思いますが、書き味においては重量のあるキャップレスの方が18金のペン先の柔らかさを感じることができて上質に感じられます。
携帯性、利便性を兼ね備えて、書き味も良いもの。万年筆を1本だけ所有する人にも万年筆の良さを感じていただける万年筆になっています。
キャップレスはその性格を考えるとカートリッジが合っていると思っていますし、インク量の多いパイロットのカートリッジを使えることはメリットだと思いますが、コンバーターも使うことができます。

普通のキャップ式の万年筆と違い、とてもコンパクトなボディになっているため、コンバーターが使えないと思っている方がおられますが、スクリュー式のコンバーター50とゴムチューブ式のコンバーター20なら使うことができます。
おすすめとしては、棚吊りの少ないコンバーター20がキャップレスには合っていると思っています。
その形状からキャップレスは異端に思われますが、万年筆を使う人を増やすことのできる万年筆のひとつだと思っています。

⇒パイロット キャップレスマットブラック

万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙

万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙
万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙

日本の文字は黒でありたいと思うことがよくあります。

それは例えば月1回のペン習字教室の時や、達筆で豪快なお葉書などを狂言師の安東先生のような方からいただいたような時など、日本の文字はやはりかっこいいと思うし、どうせ日本の文字を書くのなら最も美しく見える黒インクを使いたいと思います。

黒インクは実は結構好みが分かれていて、大きく分けると「真っ黒系」と「濃淡系」に分けることができるのではないかと思っています。

真っ黒系はあまり濃淡の出ない、本当に黒い線を書くことができます。
それを好む人は、セーラー、デュポン、シェーファー、プラチナカーボンインク(使用には注意が必要ですが)などが選ばれることが多いようです。

濃淡系は少し薄めの色合いの黒で、インクが溜まっているところと薄いところの差があって、自然な濃淡が出ます。これを選ばれる人は、当店オリジナルの冬枯れ、パーカー、パイロットの黒などを選ばれることが多いようです。

私は濃淡のでる黒インクが好きでよく使いますが、このインクが似合うような美しい文字を書きたいと思います。
書道の墨の色見本を見ると本当にたくさんの「黒」があって、昔から日本人がその文字を最も美しく見せる色としての黒にこだわってきたことがよく分かります。
皆様がインクの色にこだわるのも、この辺りに理由があるのかもしれませんね。

黒インクが日本の文字を最も美しく見せてくれる色なら、日本の文字を最も美しく見せてくれる紙は和紙だと思います。

和紙の柔らかな質感やインク映えなどはパルプで作られている洋紙のすっきりとしたそれとは違う温かみがあって、深みがあるものです。

和紙は楮などの繊維の長い原料を漉いて紙にしているため、繊維同士が絡み合って大変丈夫で、水に浸かっても乾かすと元通りになると言われています。でもその代わり万年筆のインクではにじんでしまう、そして引っかかりが出るという欠点がありますので、和紙と万年筆の相性は良いとは言えませんでした。

エイ出版のノートアンドダイアリースタイルブックvol.4でも紹介されたことのある、きよこハウスの浦部喜代子さんは美濃和紙の伝統的な技法を守りながら紙漉きを行っている作家さんで、今は神戸にお住まいになられているという縁もあって、その和紙作品を拝見し、試筆させていただける機会に恵まれました。

その書き味とにじみのなさから、数ある浦部さんが漉かれた和紙の中でも最も万年筆との相性の良い和紙として、「みつまた紙」の製品を当店で扱い始めました。
一枚一枚漉いて作られる手漉き和紙は、工場で大量に作られる紙と比べるとどうしても高価になってしまいます。

でも日々の使用ではなく、大切な人への手紙を書く時など、黒インクを入れた万年筆で書くような特別な時間もあっても良いと思います。

カランダッシュ RNX316

カランダッシュ RNX316
カランダッシュ RNX316

万年筆の楽しさは書くことだけではなく、その姿形を愛でたり、感触を確かめたり、素材を感じたりすることにもあるのに、私は書くことについてばかり言及してきたような気がします。

もちろん書くことは万年筆の使用目的ですが、それならば書き味の良いペン先とインクを絶やさずにペン先に送り込み続けてくれる優れたペン芯があれば、その他の部分は何もいらない。
それは万年筆の楽しみの半分でしかないし、万年筆を非常に偏った側面だけでしか評価していないことになるのではないかと、カランダッシュの最新作RNX316を見て思いました。

ペン先を金ペンではなく、ステンレスにして、非常に凝った黒のPVDコーティングのペン先からもカランダッシュのその主張は伝わってきます。

この万年筆の直線と曲線が作り出す複雑な造形や、表面処理、装飾的な刻印などを見ていると時間を忘れるほどおもしろい。
ラインをたどったり、小さな刻印を見つけてその精密さに感心したり。

でも、この万年筆を距離を置いて全体を見てみると、安定感のある普遍的でクラシカルなフォルムなのではないかと、ふと思いました。

ペンはこういう形であって欲しいという、中央辺りにやや太さのある、見ていて安心できる形に、万年筆や他の筆記具のデザインセオリーをちゃんと守って作られた落ち着きを感じます。
そして、斬新だと思える首軸の外し方も実はこのクラシカルなデザインを演出するのに一役かっています。

この万年筆は尻軸を回転させることで、首軸のネジが緩んで外れる構造になっています。
首軸を直接回転させる方式だと首軸とボディの角が合わないということも起きやすく、それを防ぐための工夫だと思われますが、回転させるための尻軸ができたことで、金属の塊に見えそうなこの万年筆をクラシカルな雰囲気にさせているのかもしれないと思いました。

もしかしたら、このRNX316の企画者はボディに尻軸のラインをどうしても入れたかったのではないかと思ったりします。
まあこの万年筆が吸入式で、この尻軸が吸入ノブだったら一番面白いのかもしれませんが、それはあまりにもカランダッシュらしくない。

尻軸を回すことでボディ内側にシリンダーが回り、首軸のネジが緩む。これも何度も回して遊びたくなるような機構で、書く以外の楽しみはここにもあります。
新しいものは好きだけどただ斬新なだけでは好きになれない。
どこか古典的な要素も感じられながら、新鮮な要素があるもの。
そんなものに特に男性は惹かれるのではないでしょうか。

メカ好きの男心(女性でもこういった面白さを理解する人もおられますが)をくすぐる万年筆。それがステンレスの名を冠したRNX316です。