当店が輸入しているアメリカのウォール・エバーシャープ社のデコバンド万年筆用ペンケースを、イル・クアドリフォリオの久内夕夏さんに作っていただきました。
久内さんは木型に革を巻き付けて縫い目のない革製品を作る、型絞り技法を日本で作る数少ない職人さんの一人です。
久内さんはそのフィレンツェ伝統の技法をフィレンツェの工房に弟子入りして習得されました。
ビスポークシューズ職人である、ご主人の淳史さんと新神戸駅近くに工房兼ショップを構えられ、従業員も抱えておられるので本当に立派だと思います。お二人ともすごい職人さんなのに、気さくに話ができる方々です。
当店に作品を卸して下さる職人さんたちは皆さんタイプは違うけれど、ご自分たちのペースを守りながらそれぞれの仕事でちゃんと採算をとられて、長く活動されています。
新しいデコバンド用ペンケースは、今発売しているシガーケース型ペンケースSOLOに切り込みをいれただけのようにも見えますが、木型からデコバンド専用のものを作り、厚みも増した専用設計になっています。
サイズ合わせにこだわったため製作に少々時間がかかってしまいました。
大型で机上での使用が中心だと思われるデコバンドですが、出先で使いたい時に安心して持ち運べるペンケースが作りたかった。
デコバンドは、偶然にも工房楔の銘木製ペンケース「Complotto-1(ウーノ)」にもピッタリと誂えたように入ります。
いつもより多めにご用意していますので、こちらから選んでいただいてもその微動だにしないフィット感が楽しめると思います。
日本にまだ紹介されていない、ウォール・エバーシャープ社のデコバンド万年筆を当店で扱い始めたのは、それが私が求める万年筆の形をしていたからだと言うと語弊があるかもしれませんが、クラシカルでシンプルなデザインは最近の万年筆にない素朴さと力強さがあると思っています。
自分の好みで判断して、輸入した商品を皆様にお勧めすることの責任の重さはもちろん感じているけれど、やっと出会えた理想の万年筆の姿を皆様に見て欲しかった。
この輸入はオリジナル万年筆を作ること以上に、当店にとっては価値のあることだと思っています。
デコバンドはオーバーサイズ万年筆のカテゴリーに入る万年筆ですが、書き味にも特長があり実も伴っているものだと思います。
世界中の万年筆の書き味は何通りかに分けられると思っていて、個性が際立っているものは少ないと思っています。
でもデコバンドは書き味もオリジナリティを持っていて、どれにも似ていないものだと自信を持って言える。
繊細な筆致にも反応する大きなペン先と、必要十分なインクを供給するエボナイト製のペン芯による書き味は、豪快なドイツ製とも、繊細な国産とも違っています。
ひたすら文字を書くことが気持ち良くて、なぜが整った文字が書きやすい。
この万年筆をもっと使いたいと、所有する人には思ってもらえると思いますが、そんな時に中身を守ってくれる、安心して持ち運ぶことができるペンケースの存在が必要不可欠で、どうしてもそれをシガーケース型ペンケースSOLOで作りたかった。
今後もウォール・エバーシャープデコバンドを楽しみながら使うためのものを作っていきたいと思っています。