当店のオリジナルインクは8色あって、お店限定のインクが大流行している今となっては、それは決して多い方ではないけれど、落ち着いたいい色が揃っていると思っています。
ここに何色を足せばいいのか今のところ思いつかないし、インクブームだからと無理に発売しようとは思いません。
オリジナルインクはそれぞれの店の万年筆にまつわる世界観を表現するものとして大切な商品だと思って、当店も創業間もなくから扱ってきました。
最初、四季に応じてインクの色を変えたらいいと思って「朱漆・朔・山野草・冬枯れ」の4色だけを作りました。
ブームが始まるまではそれほど売れるものではなかったけれど、京都のインディアンジュエリーのお店リバーメールさんとのコラボ企画「WRITING LAB.」のオリジナルインクも増えて、今では8色になっています。
今回は当店のオリジナルインクのCigarについて少し触れてみたいと思います。
四季に当てはめて企画した「朱漆・朔・山野草・冬枯れ」に対して、Cigarは少し異色に感じられるインクだと思います。
色は、書いたばかりの時クアドリフォリオのインクと同じくらい緑色ですが、インクが乾くと葉が枯れたように茶色っぽく変色するというもので、面白い存在のインクです。
季節で言うと秋と言えなくもないけれど、今では時代遅れになってしまった男っぽさのようなものを、同じく時代遅れになってしまったCigarというもので表現してみました。
しかし、このインクで表現した男っぽさとは裏腹に、女性の方にも多く使われていて、そして色が変わるというのが新鮮に思われて、インクとしては時代遅れでもなかったのかもしれないと思いました。
でも枯れていくような感じ、落ち着いた色合いから、このCigarのインクはやはり大人の色、大人の人にこそ似合う色だと思っています。
Cigarのインクに最も似合う万年筆として、当時オマスで金キャップの当店別製の万年筆を作りましたが、それも完売してしまいましたので、同じく金キャップに黒ボディのアウロラ88クラシックを挙げたいと思います。
黒ボディに金色キャップの万年筆は、1980年代から90年代はじめまでは各メーカーからよく発売されていましたが、現代ではほとんどなくなってしまい、アウロラ88クラシックが唯一の存在になってしまったと思われます。まさに時代遅れの万年筆です。
Cigarのインクが似合う万年筆として、アウロラの限定品シガロもよく似合います。
このインクを入れるためにアウロラが作ったのではないかと思えるくらい、ピッタリのペンです。シガロはアウロラでは珍しく真鍮にラッカーと塗装を施したボディの万年筆で、そういった点でも発売当時はアウロラの意欲が感じられました。
ズシリとした重量感がありますので、より18金ペン先の柔らかさが伝わりやすく、書き味の良い万年筆。
アウロラは定番の万年筆には、14金ペン先、限定品には18金ペン先を装着して、差別化しているけれど、書き味の違いは非常に大きいと思います。
14金は硬めで柔らかく書けるまでに時間がかかりますが、18金はわりと初めから書き味良く感じられます。
そしてCigarのインクに似合う万年筆として、もう1点だけどうしても載せたかった、アウロラの限定品「オプティマ365タルタルーガ」。
鼈甲をイメージしたレジンをボディに使用していますが、こんな色の万年筆を見たことがありません。鼈甲なのにオリーブ色のような緑色も感じられて、Cigarのインクがこの万年筆から出てくるのは、ピッタリとはまり過ぎなのかもしれません。あまりにも良い組み合わせです。
気がついたら、アウロラのペンの紹介になってしまったけれど、シガロもタルタルーガも過去の限定品ですが、あと数本だけ、在庫がございます。大人にふさわしい万年筆として、お勧めのモデルです。