靴をプレゼントするとその相手がその靴を履いて逃げるという迷信を私は信じていて、靴をプレゼントすることはないし、もらったこともありません。
若い頃、彼女からワークブーツを贈ってもらった後にすぐに別れたことが迷信を本気で信じる経験になっているけれど、靴をプレゼントするというのは、サイズ、足の形、好みなど様々な要素があるものを贈るのはそれだけ難しいということなのかもしれません。
でもペンは個人に合わせたサイズなど存在しないので贈りやすい。
ペンというのは何本あっても邪魔になるものではなく、絶対に使わないということはないのではないかと思います。
万年筆店をしているから思うのかもしれませんが、何かの時にペンを贈るというのは特別な意味のようなものがあって、良い贈り物です。
ペンを贈る心には親愛の情のようなものが込められていて、ペンを贈られた人は、そのペンを使うたびに贈ってくれた人のことを思い出すだろう。
それは男性同士の友情の証にもなって、例えば別れのときにお互い大切にしていたペンを交換し合う。
余程の仲でないとそんなことはできないけれど。
バレンタインデーが近づいているので、こんなことを書くのですが、万年筆を使っていて詳しい人にあえてペンを贈ることに臆しないで欲しいと思います。
そこにこうやって使って欲しいというメッセージのようなものが込められていれば素晴らしい。
私は休みの日専用の小さな手帳を持ち歩いていて、そこに行動記録をその都度書いています。
何時から何時、どこにいて、何をしていたかを箇条書きに、客観的事実だけを淡々と書いていくのだけど、もっと早くからやっておいたらよかったと思いました。
それが記録として何かの役に立つような気がしませんが、休みの日一日の意識が今までと全く違います。
場所を移動したり、何か違うことをするたびに時計を見て書き入れるだけ。歩きながらでも書くことができます。
今まで、もう一日が終ってしまったと漫然と休みの日を過ごしていましたが、時間の経過にいちいち意識あって、何か時間に流されていないような、時間を自分の意思で泳いでいるような感覚になりました。
こういう自分の経験から、奥様から旦那さんへのバレンタインデーのプレゼントとして提案したいのは、休みの日も仕事の時と同じように気を入れて過ごしてもらうための、小さなノートと小さな万年筆です。
小さなノート(A7サイズ)にはカンダミサコさんの革のカバーをつけることができて、それならより愛着を持つことができる仕様になります。
そんなノートに似合うのは、やはり小振りな万年筆。
パイロットレグノ89Sなどはキャップがパッチンと閉める勘合式で、さっと外して、ちょっと書き込んで、パチンと仕舞うことができる。
14金のペン先は書き味が良く、柔らかく気持ちは小さな万年筆といって侮れないものがあります。
木のボディは使っていくうちに艶が出てくるので、これもまた愛着が湧く仕様です。
普段の何でもない休日をより輝きのあるものにするのは、本当は大したことではなくて、小さなノートと万年筆で充分でした。
きっと旦那さんに感謝されて、ホワイトデーには何倍にもなって返ってくるかもしれませんが、それは保証できません。