今秋も、9月23日(土)・24日(日)工房楔のイベントを開催いたします。
実は9月23日は当店の10周年記念の日ですが、特別な日だから何かしなくてはとあまり思っていませんでした。
でも工房楔の永田さんが10周年だから記念になるイベントにしようと、色々準備してくれていて、本当に感謝しています。
もちろん私もやる気がないのではなく、今年は次の10年につながる仕事をしたいと思って日々過ごしていて、静かに動いてはいるのだけど。
イベントにどんなものを永田さんが用意してくれているかは、永田さんのブログ「切々と語る楔」(http://blog.setu.jp)で毎日紹介されていて、私もそれを見たり、永田さんと電話で話したりしているので、楽しみにしています。
今回のブログで紹介されているものは目新しく、めったに見ることができないものばかりですが、個人的に気になったものをいくつか挙げたいと思います。
象牙は10周年の記念に相応しい素材として、永田さんがかなり良いものを仕入れてペンにして下さっています。当店オリジナル企画こしらえでも製作しているようですので、実はすごく楽しみにしています。
インクウッド。花梨に似た木ですが、さらに色が濃く、濃厚なワイン色をしている何とも色気のある木だと思っています。その名前もすごくいいですね。あまりお目にかからない木です。
そして今回一番注目しているのは、ヒマラヤ産のローズウッドです。
私はなぜかこのような山の木に惹かれます。そして、条件、環境が厳しい場所に育つから密度が高く、キメの細かい、そして色が濃いと言われるとたまらない気持ちになります。
工房楔定番の素材では、ウォールナットやチークこぶ杢、ブラックウッドの良さも知っていただきたいと思います。
ウォールナットは数も多く珍しい木ではありませんが、しっかりした木肌、色合いなど、この木の良さがあります。
様々なものでよく目にする木ですが、永田さんがウォールナットでペンを作る時は杢の出た部分をいつも使って、少しアクセントのあるものに仕上げています。
チークこぶ杢は、油分を感じるネットリとした手触りが何とも言えず素敵な木ですが、チーク杢の地図の等高線のような模様に何とも惹かれます。
花梨やチューリップウッドのように華やかで色鮮やかな木ではなく、侘び寂びとも言える美意識で観る木ですが、当店では人気があるし、私も強く惹かれる。
工房楔の木を選ぶということは、自分の好みや背景を反映させて選んだ自然の一部をいつも手元に置いておくということでもあります。
永田さんのブログを見ていて、彼の木へのこだわりを強烈に感じます。
彼にとって木、銘木とは、商品にするために仕入れるというビジネスの資源ではなく、完全にコレクターの視点で木を見ていて、それぞれの木に強く惹かれるから手に入れているという感じで、売れるから仕入れるという視点はありません。
売れるからという視点がないので、それぞれの木に対して、はっきり分かっていることだけを付言する。
本当かどうかわからない産地や、謂れのようなことは一切言わないのが永田さんの誠実さだと思いました。
永田さんを見ていると、木の世界にドップリと浸かりながらもどこか客観的で、高く売るために様々な飾り文句を付け加えることに批判的な姿勢が見られます。
永田さんのそんなところを私たちは信じるからこそ、彼の作る銘木のペンに惹かれます。
永田さんが材木市場でそれぞれの材に心が躍り、強く手に入れたいと思ったように、楔のペンを強く手に入れたいと思います。