M1005デモンストレーター オーバーサイズへの誘い

M1005デモンストレーター オーバーサイズへの誘い
M1005デモンストレーター オーバーサイズへの誘い

現在発売されている万年筆の中で最も柔らかいペン先で書き味の良い万年筆がペリカンM1000だということに賛同してくださる方は多いと思います。

大きなペン先は毛筆の穂先のようにしなやかに、筆記の方向にさからうことなくついてきてくれて、たくさんのインクを紙に送り出しながら良い感触を手に伝える。
でも、ペン先調整をする者にとって、M1000ほど不思議に思う万年筆はありません。

それはペン先とペン芯の関係が、他の万年筆の常識とあまりにもかけ離れている。
普通ペン先はペン芯にピッタリと密着していないと書いている途中でインクが途切れてしまうため、調整する時はペン先とペン芯が離れることのないように調整します。
これはイリジュウムを削るなどの加工以前の最も注意しなければいけないところですが、M1000の構造は違っています。

ペン芯はペン先の一部分にしか接していないし、書いている時には離れていることもあるのに、たくさんのインクをペン先に伝えて途切れることがない。
なぜかインクが流れてくれる。
でもペン芯の押し返しがないので、ペン先は柔らかく自由に動いてくれるのは事実で、M1000の書き味が非常に柔らかいのは、このペン先とペン芯の関係によるところが大きいと思っています。
しかし多くの人がM1000の書き味の良さを知りながらM1000に踏み切れない理由は、そのサイズにあるのだと思っています。

ペリカンにはM800という実用において完璧とも言える万年筆があります。
M800はM1000とは対照的で、非常に硬いペン先を持っています。そのためハードな筆記もペン先のことを気にせずに書き続けることができるヘビーユーザーのための万年筆となっています。そのボディサイズは万年筆のお手本とも言えるサイズなので、M800を使う人は多くてもM1000にたどり着く人は少ない、M1000は大きすぎると考える人が多いようです。

しかし、M1000のボディが完全に実用を無視しているかというとそうでもありません。
私は余分な力が入らずに一番きれいな文字を書くことができる筆記具はゼブラのハイ・マッキーだと常々思っています。
万年筆の話でいきなりマジックペンの話をして妙に思われるかもしれませんが、マッキー極太のボディを持った時の手の中での座りは、手があまり大きい方ではない私でも良い印象を持っているので、きっと他の方でも同様に感じていただけるのではないかと思います。
ハイマッキーの印象から、M1000のサイズもそれほど実用からかけ離れているサイズではないと最近は思うようになりました。

ペリカンは、ペリスケ、M205デモンストレーター、M205ブルー、M800デモンストレーターM205DUOなどのデモンストレーターモデルをここ10数年で5種類も発売していますが、デモンストレーターはそれらの過去の限定品とは迫力が違うオーバーサイズならではの魅力を備えています。
M1000のデモンストレーターモデルは金具をシルバー色にしてM1005としています。
キャップ内の処理、吸入機構周辺、ペン先ユニットのソケットまでも専用パーツとして、まるで医療機器か実験器具かのように見せていて、書き味同様にボディもまた、オーバーサイズでないとできない楽しむための仕掛けがされているのです。