新しい世代の価値観 ツイスビーダイヤモンドアイリス

本日9/30(金)から3日間、ツイスビー(KA-KU)さんとの共同出張販売 「巡回筆店福岡」を福岡のギャラリートミナガ(https://www.p-n-m.net/?tid=5&mode=f15)にて開催します。

神戸の店舗は通常通り営業しています。巡回筆店には当店から森脇直樹が行っており、ペン先調整を承ります。

KA-KUを運営されている株式会社酒井さんは、国産から海外のものまで幅広く扱う筆記具問屋です。当店は酒井さんのおかげで万年筆店としてやってくることができました。

酒井さんがツイスビーの取り扱いを始められた時、私は台湾の万年筆についてあまり知りませんでした。

しかしお客様から教えてもらったり、酒井さんを通じてツイスビーを知るうちに、今までの万年筆の固定感念に捉われない新しい価値観を示すものだと気付きました。

これまでの万年筆は重厚な存在のものか、ジュエリーのような華やかなもの、大人になったら持っていたいと思わせるものが多かった。インクは万年筆の補助的な存在で、黒、青、ブルーブラックの基本的な色をを使う人がほとんどでした。

しかし、今はインクが中心にあり、そのインクを使うために筆記具を選択するという考え方を持つ人も多い時代です。

気が付いたら万年筆の価値観が変わっていました。

そこにツイスビーはピタリとハマりました。

5000円代という価格で大量のインクを吸入するピストン吸入機構を備えたECO、プランジャー吸入式のバキューム700Rもいいですが、ツイスビーの代表的な万年筆はやはりダイヤモンドではないかと思っています。

ヨーロッパのレギュラーサイズの万年筆のように、バランスが良く握りやすい軸径で、遊び心だけではない、本気で使うことができる万年筆です。

バキューム700R アイリスが発売された時、そのレインボーカラーの金属パーツの良さが私にはよく分からなかったけれど、お客様の反応を知って、固定観念を修正しました。

そのレインボーカラーの金具が装備されたダイヤモンド、ダイヤモンドアイリスは、虹色に輝く金属パーツを持つツイスビーの決定版的な万年筆だと思っています。

私たちは初めての万年筆をサファリや国産1万円クラスの金ペンで始めたけれど、今の人はツイスビーで万年筆を知って、その楽しさを知るのかもしれません。

コロナ直前に行った台湾は今も強いインパクトを心に残していて、惹かれ続けています。

日本と似たところもあるけれど、日本では感じることができないエネルギーがその国の根底にはあって、今を生きる国の勢いを感じました。

それはツイスビーの印象と重なるもので、日本の万年筆にはない遊び心、デザインのセンスそして、今の時代が求めるものをツイスビーは持っていると思っています。

⇒TWSBI ダイヤモンド580アイリス

⇒TWSBI TOP

オリジナルインク メディコ・ペンナ~北野異空間SAGE BLUE~

札幌に出張販売に行った時に、北晋商事の金さんからローラーアンドクライナーの青騎士インクの350mlをプレゼントされました。

青騎士は10年に1度発売される鮮やかなブルーの限定インクで、ローラーアンドクライナーらしい滑らかなインク出と、紙にスッと沈む紙馴染みのいいインクでした。

350mlもあるのでなくなる心配をせず思いっきり使えると、海外の万年筆に入れて主に手紙に使っています。

カリグラファーである金さんの奥さまも愛用されていて、お二人が大切にしているインクをプレゼントしてくれたのだと思うと嬉しく、私にとって特別なインクになりました。

私はそのモノの評価や口コミよりも、今回の青騎士のように、人との交流を象徴したり、個人的な思い入れが感じられるものを使いたいと思います。

モノはやはり単なるモノだけど、そこに想いが加わることでそれはモノ以上の存在になる。

Pen and message.という店名にはそういう想いを込めていて、それは創業以来変わらない店の活動を通して皆様にお伝えしたい当店からのメッセージです。

今回ご紹介するインクも、小説「メディコ・ペンナ」を読んで、小説に特別な思い入れを持って下さった方の愛用のインクになると思います。

あれこれ準備を進めていましたが、昨年11月の「メディコ・ペンナ」出版から1年近く経ってやっと完成しました。

「メディコ・ペンナ」は蓮見恭子先生の神戸の万年筆店を舞台にした小説で、当店をイメージして書いたと先生も公言して下さっていて、お店としてこの小説に共鳴することをしたいと思っていました。

「メディコ・ペンナ」の世界観を表現したインクを作ろうと思い、今年初めに小説を発行したポプラ社さんにコラボインクの企画を持ち込み、蓮見先生の口添えもあり了承されました。

蓮見先生の担当編集者森さんのお力添えで、本の装丁をされたブックウォールさんにパッケージをデザインしていただけることになり、画家の名司生さんの絵を使わせていただけることになりました。

「メディコ・ペンナ」の魅力は、もちろんその小説自体にありますが、小説の世界観を見事に表現した名司生さんの表紙絵も魅力のひとつです。

インクの色名「北野異空間SAGE BLUE」は蓮見先生が命名して下さいました。

インクの色は、強く主張しないけれど存在感のある色、クラシックさと今を生きるみずみずしさのある色にしたかった。

それが小説「メディコ・ペンナ」の世界観に合っていると思ったし、万年筆店「メディコ・ペンナ」の店主冬木透馬の生き様を表現した色だと思いました。

少しくすみのあるセージブルーは万年筆インクの古典的なブルーブラックの色を今風にアレンジした染料インクです。

流れも良くて、安心してお使いいただけるインクでもありますので、多くの人にいろんな万年筆で使っていただきたいと思っています。

予定よりも時間は掛かってしまったけれど、9/23の創業15周年という節目となる日にこのインクを発売することができました。

小説を書いた蓮見恭子先生の想い、その本の出版、装丁に関わった人たちの想い、そして本を販売している私たちの想いがひとつのインクになりました。

⇒オリジナルインク メディコ・ペンナ~北野異空間SAGE BLUE~

⇒小説「メディコ・ペンナ~万年筆よろず相談~」(蓮見恭子著・ポプラ社)

虹紙製作所の銘木鉛筆とカッターナイフ

最近メモ書きにパーフェクトペンシルを使うようになって、文字を薄く書ける醍醐味を知りました。

書いた文字、書いている文字が近くにいる人から読まれにくい安心感。それは誰かに読まれたら困る内容でなくても思うものだし、電車の中など公共の場所で書きものをする時などには特に思います。

今までは、シャープペンシルの2Bや4Bなど濃く柔らかく書ける芯を使っていましたが、パーフェクトペンシルにはHBしかありません。

使ってみると、濃い芯に比べて硬い分減りにくく、しょっちゅう削らなくてもいいということも分かりました。

東大阪市にある虹紙製作所の銘木鉛筆、ラグジュアリーペンシルもHBですが、最近は鉛筆をフル活用していて、パーフェクトペンシルと並行して使っています。銘木の鉛筆ということだけあって木目や質感が良く、書いていても気分の良いものです。

パーフェクトペンシルは小さなハンドシャープナーでスルスルと削ることができますが、ラグジュアリーペンシルは銘木なだけあり硬く肥後守などのナイフで削る方が向いています。

これは独断と偏見かもしれないけれど、使っていると通っぽく見られる筆記具は、一位は万年筆で、その次は鉛筆なのではないかと思っています。

それほど鉛筆は奥が深く、使う楽しみのある筆記具で、銘木で鉛筆を作ろうと思った虹紙製作所のセンスが素晴らしいと思いました。

パーフェクトペンシルのキャップにラグジュアリーペンシルも入るので、時々入れ替えて使っています。

「レザーユーティリティナイフM」という銘木ハンドルのカッターナイフにも、虹紙製作所の大人のセンスがよく表れています。

カッターナイフの老舗NTから製作を認証されたカッターナイフで、ハンドルの造形、握り心地など銘木を素材にしているという甘えが一切ない完璧な仕上がりの素晴らしいカッターだと思っています。

ベースとなっているNTカッターのプレミアム2H型は刃の送りが滑らかなので音も静かで、切れ味の良さも抜群です。

カッターナイフは刃物の中では通っぽさはあまり感じないかもしれませんが、むしろ革職人さんのようなプロの方が、革包丁に代わる道具として使っているという話をよく聞きます。

こういう良いものを長く道具として使って、自然に艶が出てくるほど愛用したいと思います。

⇒ファーバーカステル パーフェクトペンシル

⇒虹紙分室・ラグジュアリーペンシル(銘木鉛筆)

⇒虹紙分室・レザーユーティリティーナイフM

クロム鞣し(なめし)の革

今人気のある革は、磨いたり使ったりするうちに艶が出て、比較的短期間で劇的なエージングをするものです。

使い始めた時はマットな質感の革が、どんどん艶が出てきて膜が張ったようになってくると、愛着が湧いてきていいものです。そういう革は自然の渋でなめしたタンニン鞣しのものが多い。

それに対して科学的な薬剤でなめした革は「クロム鞣し」と言って、タンニンよりも早く鞣すことができるし、以外にも環境に優しいため今ではほとんどの革に「クロム鞣し」が採用されています。当店でも多く扱っているシュランケンカーフもクロム鞣しになります。

クロム鞣しの革は変化がゆっくりで、長くきれいな状態で使うことができます。傷や汚れがつきにくく、水に強く、扱いやすいのもクロム鞣しの革の特長です。

タンニン鞣しのような劇的なエージングではないけれど、少しずつ柔らかくなったり、光沢が増したり、シボがつぶれてきたりして、クロム鞣しの革なりに馴染んできます。

この馴染み方や仕上がった革がスマートな印象なのもの良いと思って、当店では機会があるごとに使うようにしています。

最近ではフランスの老舗タンナー、デギャーマンのドーフィン革を特に気に入っていて、ボールペンサイズに特化したレザーケースSもこの革で作ってもらっています。元々5色のラインナップでしたが、新たに2色を追加しました。

パウダーブルーとパウダーピンクは9月9日、本日から開催の京都手書道具市でお披露目しますが、同時に店でも販売スタートします。

なるべくスリムで、スマートにペンを収納したいと思って作ったペンケースで、腕の良い職人さんは細かく狂いのないステッチ、端正なコバ処理を施してくれて、シンプルなペンケースの印象を変えることなく仕上げてくれています。

フリースピリッツさんの元町の工房で作っている人気商品「レンマバルコペンケース」は、プエブロという劇的なエージングをする革で作られています。素材感が感じられる革と、左右の端まで届くファスナーは大きく開閉するので、出し入れもしやすくなっています。

同じ形でドーフィン革のトープで作っていただいたペンケースを先日発売しました。かわいらしいバルコの形はそのままに、全く違う印象になったと思います。

劇的なエージングをするタンニン鞣しの革も、洗練されたようなクロム鞣しの革も、それぞれに合ったものを見極めて使っていきたいと思っています。

⇒オリジナル レザーケースS ドーフィンレザー

⇒バルコ ペンケース Pen and message.特別仕様革・ドーフィンレザー

2023年オリジナルダイアリー

開いてすぐ手帳に書き込めるように、ファーバーカステルクラシックのボールペンにカランダッシュのゲルローラー芯を入れて使っています。

ゲルローラーは書き味が滑らかなのと、筆跡にインクの感じがあって万年筆のように書けるところが気に入っています。

カランダッシュは油性ボールペンも滑らかで評判がいいですが、専用規格のため他メーカーのボールペンでは使うことができません。でもゲルローラーはパーカータイプの汎用規格なので、ファーバーカステルのボールペンにも使うことができます。中の芯を換えるだけで用途が変えられるので、使い道に困っていたボールペンを生き返らせることもできます。

ゲルローラー芯のパッケージを見ると日本製と書いてあり、細かい文字を書ける仕様であることに納得しました。

来年の正方形のオリジナルダイアリーが出来上がりました。

オリジナルダイアリーは、ウィークリーとマンスリーの2種類があります。

ウィークリーには、1ページ1か月のマンスリーダイアリーも収まっていて、オールインワン的なもので、これ1冊で予定から記録まで全てをこなすことができます。

マンスリーは壁掛けカレンダーそのままの見慣れたレイアウトで、1ページに様々な情報を書き込んで、そのページをパッと見れば感覚的に全てが分かるようになっています。

このダイアリーを作り始めて12年経ちますが、どちらも特長があっていまだにどちらを使おうか迷います。

私たちがダイアリーですることをスケジュール管理とToDo管理と毎日の記録だと考えた場合、1冊に全て収めることができるのがウィークリーダイアリーで、ウィークリーダイアリーさえあれば、あとはメモ用のM5手帳があればたいていの人は足りるのではないでしょうか。

色々な手帳を使い分けたいという人はスケジュール管理用にマンスリーダイアリーを使って、記録はM6やバイブルサイズのシステム手帳に任せて、ToDoとメモはM5手帳という使い方もできるでしょう。

ダイアリーの発売に遅れてしまって申し訳ないけれど、この正方形ダイアリー用カバーを企画して、いろいろ動いています。

表紙にも質感の良い丈夫な紙を使っていますので、カバーを付けなくてもコンパクトに使うことができますが、色々な人の好みに合わせたいとも思います。革カバーもいいですが、薄く使いたい人のための透明のビニールカバーもご用意しています。

私は今ゲルローラーで使っていますが、もちろん万年筆で使うことを念頭に置いて選んだ紙なので、万年筆でもお勧めです。書きごたえがあり、裏抜けもありません。少し厚みがある紙はインクを含んでもいい感じになります。

当店のような小さな店がオリジナルダイアリーを持っているというのは、分不相応ですがとても恵まれたことだと思います。

このダイアリーを毎年作ってくれている大和出版印刷さんという強い味方がいることと、ともに販売してくれる神戸派計画の人たちや、分度器.com/590&Co.の谷本さんがいるからです。

私たちはこの正方形ダイアリーをもっと多くの人に使ってもらいたいと思っています。

⇒正方形ダイアリー「マンスリー」

⇒正方形ダイアリー「ウイークリー」

別注のレンマバルコペンケース

神戸元町にある当店から、南に下ってすぐのところに乙仲通りという東西の通りがあります。

港の近くで、乙仲業者(海運貨物取扱業者)のオフィスが連なる通りですが、雑貨店や作家さん、職人さんの店も多く軒を連ねていて、平日でもお客様がショッピングを楽しんでいる姿をよく目にします。

比較的静かな住宅街にある当店とは違う華やかな雰囲気があって、近所なのに遠くに来たような気分になります。

15年前、店を始める時に不動産屋さんに行って万年筆店をやりたいと言ったら、最初に紹介してくれたのは乙仲通りの物件でした。

当時すでに多くのこだわったお店が並ぶ人気のブランド地区だったので、家賃が高くて借りることはできなかった。

結局自分の足で探した今の物件で良かったと思っているけれど、あの時乙仲通りの物件を選んでいたら、また違う15年があっただろうなと思います。

その乙仲通りの東端にフリースピリッツさんという革製品のお店があって、そのお店のレンマというブランドのペンケースを少し前から扱っています。

プエブロという今とても人気のある革を使っていて、ファスナーが左右に大きく開いて出し入れしやすく、15センチ定規がぴったり入る位の持ち運びしやすい大きさです。

そんなレンマバルコペンケースで、当店オリジナル仕様の別注モデルを作っていただきました。

当店のお客様、特に大人の女性の方にバルコペンケースを使ってもらいたいと思って、より高級感のあるドーフィンレザーを使いました。この革は最初の綺麗な状態を長く保つ、とても丈夫な革です。

細かくシボの入ったドーフィンレザーはクロム鞣しで、タンニン鞣しのプエブロと違って経年変化はほとんどしませんが、洗練された印象を受ける革です。

今の流行ではないけれど、長く使っていただける定番品として、大人のためのいいペンケースができたと思っています。

さりげなく店名を入れたくて、15年ぶりに新しいロゴを作りました。ファスナーを開けた内部にブッテーロ革を縫い込んでもらったのですが、その感じも気に入っています。

当店も開店して15年が経ってしまいました。気付けば、店を始めた時と世の中の状況は全く変わっています。変わりたいとも変わりたくないとも思わないけれど、時代から変化を要求されていることは分かります。

私は自分達の暮らしが成り立って、続いていければ幸せだと思っているけれど、そのためにしなくてはならない変化なら、あってもいいと思っています。

⇒バルコ ペンケース Pen and message.特別仕様革・ドーフィンレザー

⇒ペンケース(3本以上収納)TOP

パーフェクトペンシルの居場所

「趣味の文具箱」の清水編集長が、大人の部活「パーフェクトペンシルファンクラブ」を立ち上げられました。パーフェクトペンシルという存在にはずっと興味があったので、いいきっかけだと思い私も新たに購入して入会することにしました。

具体的な活動内容はまだ分かりませんが、何か面白くなりそうという思いと、入会したら送られてくる金属製の会員カードとPPのロゴが入ったパーフェクトペンシル用のエンドキャップも魅力でした。

会員カードはもう少し先になるようですが、エンドキャップはすぐに送られてきました。でももったいなくて使えず、持ち歩いているもののまだ一度も使っていません。

パーフェクトペンシルは調べてみると品薄な状態でしたが、何とか入手できたので、とにかく使ってみています。

今まで出かけるたびに買っていた安いシャープペンシルをジョッターにつけてメモ用に使っていましたが、その役割をパーフェクトペンシルに代えて使っています。

世界で最も贅沢な鉛筆は使っていて気分もいいし、今まで使っていた2Bや4Bとは違う、海外の硬めで滑りのいいHBの書き味も好きになりました。

パーフェクトペンシルを使っていて思うことは、早く短くして使い慣れた風にしたいけど、もったいなくて削れないというジレンマでした。

私は鋭く尖らせた鉛筆の書き味が好きなのですが、使って削るうち、イメージより早く短くなってきました。いい長さになったら鉛筆削りではなく、ナイフで芯だけを削って尖らせるようにしようかと思っています。

もったいないという言葉がこの鉛筆に一番相応しくない言葉で、庶民がパーフェクトペンシルを使うとこうなるのだというお手本を私がやっているのかもしれません。付属のシャープナーもまだ一度も使ったことがなく、昔から使っている小さな鉛筆削りを持ち歩いて削っています。

別持ちの鉛筆削りと消しゴムを使っていたらパーフェクトペンシルの意味がないと思われるかもしれませんが、これもパーフェクトペンシルの楽しみなのかもしれません。

パーフェクトペンシルに惹かれるのは、この「何かできそうな佇まい」ですが、何かと組み合わせてパーフェクトペンシルの居場所を作ってあげると、私たちの生活に溶け込んで自然に使える筆記具になると思います。

私は愛用のメモジョッターにパーフェクトペンシルがピッタリと収まりましたので、そこがパーフェクトペンシルの居場所になっています。

万年筆の筆跡に比べて鉛筆は薄いけれど、例えばアイデアなど確定的でないことを書き出すときには薄いくらいがちょうどいい気がします。濃く書きたければ力を込めればいいのです。

自分がこの鉛筆を手にした時、どんなインスピレーションを受けて、何が書けるかということに今はとても興味があります。いいおじさんが新しいおもちゃを手にした子供のように、書くこと、パーフェクトペンシルを持つこと、が今は楽しくて仕方ありません。

*現在パーフェクトペンシル自体が品薄な状態ですが、入荷したものをWEBサイトに掲載しています。

パーフェクトペンシル ブラック

パーフェクトペンシル プラチナコーティング ブラック

新たな選択肢「アウロラタレンタム・デダーロ」

イタリアや日本のメーカーの万年筆作りは、イギリスやアメリカで作られていた万年筆を模倣するところから始まりました。イタリアの古い万年筆メーカーも日本の古くからある3社もほぼ同時期に100周年を迎えるのは、当時イタリアと日本で同時発生的にそういう動きがあったからだと思っています。

そのイタリアと日本のメーカー、特にアウロラとパイロットは、今では万年筆の業界をリードする重要な存在になっています。

コロナ禍にあっても、アウロラの限定品攻勢は続いています。

アウロラの限定品の品番は、オプティマ365などの「オプティマ型」は定番のオプティマと同じ品番996と表記されます。(オプティマネロは997)。

ヴィアッジオセグレート(神秘の旅)シリーズなどの「88型」は品番888、スターリングシルバーを使ったアンビエンテシリーズに代表されるシリーズは品番946で表記され、それぞれの番号のうしろに名称を略したアルファベットがついています。

これらの限定品を代わるがわるに発売することで、私たちを飽きさせることなく今まできましたが、新しいパターンができました。

アウロラタレンタムは日本市場では廃番になってしまいましたが、本国では作り続けられている定番品で、このタレンタムをベースにした限定品デダーロが発売されました。

タレンタムはオプティマや88よりも一回り大きなレギュラーサイズの万年筆で、筆記性に優れた、書くことにおいて最もバランスが良いとされているサイズです。

タレンタムと同サイズの万年筆というと、ペリカンM800、モンブラン146、パーカーデュオフォールドなど錚々たる万年筆が揃う激戦カテゴリーですが、その中でもタレンタムはイタリア万年筆らしいデザインの良さで個性を放っていると思います。

アウロラがタレンタムを発売して、アウロラの吸入式でない本格万年筆を世に問うたのも20年以上前のことになります。その時はまだ、パイロットにカスタム845はありませんでした。

名品万年筆パイロットカスタム845とタレンタムは近いサイズで、カートリッジ/コンバーター両用式という機構も同じです。個性は違うけれど、満を持して激戦カテゴリーに参入したという点で、メーカーの想いは近かったのかもしれません。

アウロラの代表的な万年筆オプティマや88は、リザーブタンク付きピストン吸入機構というユニークな機構を備えていて、それがアウロラの特長にもなっています。

しかしタレンタムは、カートリッジ/コンバーター両用式というシンプルな機構でアウロラの深みのある書き味を楽しめるというところが価値だと思います。

書き味の良い万年筆は世の中にたくさんあるけれど、繊細な深みのあるアウロラの書き味と柔らかい中に粘りのあるカスタム845の書き味は抜群だと思っています。

今の時代、その国民性について言うのは時代遅れかもしれないけれど、日本人とイタリア人というのはともに繊細な感性を持ち合わせているから、この書き味を創り出すことができたのだと思います。

タレンタムの限定品デダーロは、彼の作った迷宮ラビリントスがテーマになっていて、テーマに沿った迷路のエングレイビングがキャップに施されています。

金属キャップの万年筆を尻軸につけて書くとかなりリアヘビーになると思われているかもしれませんが、88ゴールドキャップでも定評のあるアウロラの金属キャップはさほど重くもなく、通常のバランスで書くことができます。

初めてのアウロラとしても、安心してハードに使えるタレンタムデダーロという新しい選択肢ができました。

⇒アウロラ タレンタムデダーロ ブルー

⇒アウロラ タレンタムデダーロ ビアンコ

アウロラ Viaggio Segreto(ヴィアッジオセグレート) MATERA(マテーラ)

東京に出張販売に行った帰り、新神戸駅で新幹線を降りた途端に全身が包まれるような熱気と湿度を感じました。東京もかなり暑かったけれどどこかカラッとしていて、例えるなら東京は砂漠の暑さ、こっちは熱帯雨林の暑さということになるのだろうか。おそらくイタリア南部は、カラッとした暑さになるんだろう。

アウロラの新しい限定品シリーズが始まりました。シリーズ名はViaggio Segreto in Italy (イタリアの秘められたる旅)です。

イタリアの8つの神秘的な街をテーマにしていて、天冠と尻軸が丸い88がベースモデルです。

天冠・尻軸が丸い、いわゆるバランス型と言われる形の万年筆はたくさんありますが、アウロラ88の形は特に自然で美しいと思います。

アウロラはカレイドスコーピオシリーズでボディと同柄の素材の首軸を持った万年筆を発売し、この神秘の旅シリーズでもそれを継承し、発展させました。

イタリア最南端にあるマテーラは、岩山にできた自然の横穴を利用した洞窟住居サッシが有名で、8世紀から13世紀にかけてイスラム勢力から逃れてきた修道僧が住みついたと言われています。

マテーラの周囲では旧石器時代の出土品も発掘されていて、古くから人が住んでいたようです。

イタリアには1度しか行ったことがありませんし、マテーラもグーグルアースでしか見たことがありませんでしたが、ここに人が住んでいるということが驚きでした。陸から発見されにくいこの場所に移り住んできた人たちには、それぞれ事情があったのでしょう。

マテーラのサッシも南部イタリアの貧しさの象徴だったそうです。

20世紀になって、半ばスラム化したサッシの住民を移住させて、今の美しい場所に整備し直しました。自然の石灰岩から成るサッシ群の地下には広大な貯水槽があり、それをイメージした色を軸の色としています。

パッケージの細長いボックスの中にはターコイズブルーのインクと取り扱い説明書、そしてQRコードが描かれた栞が同梱されています。QRコードを表示させると、マテーラの街の映像が美しい音楽とともに流れてきます。

アウロラの強みは魅力的なテーマを美しい軸の色で表現できることで、首軸、天冠、尻軸全てのパーツを同じ素材にすることが可能です。それでさらに魅力を増したのではないかと思います。

アウロラの万年筆はペン先が馴染むまでに少しクセがありますが、そこはお任せいただければ、最初から気持ちよく書けるようにしてお渡ししています。軸の美しさに見劣りしないウットリする書き味を楽しんで下さい。

インクにも相性があるけれど、ローラーアンドクライナーのインクはアウロラに入れても快適にお使いいただけると思います。

先日、ローラーアンドクライナーの2022年限定インクディープパインフォレストが発売されました。

ラメ入りやフラッシュするインクを作らないローラーアンドクライナーは、今の時代において保守的な昔ながらのインク作りをするメーカーで、安心して使うことができます。

ローラーアンドクライナー本社のあるチューリンゲンの深い森をイメージしたディープパインフォレストも、ローラーアンドクライナーらしい渋い色合いのダークグリーンは定番品にはない色です。

あまり色の濃いインクは粘度が高くなるのか乾きが遅くなる傾向にありますが、ローラーアンドクライナーのインクは色の濃さと乾きの早さのバランスが取れているのでお勧めです。

⇒Viaggio Segreto(ヴィアッジオセグレート) MATERA(マテーラ)

⇒ローラー&クライナー 2022年限定インク Deep Pine forest(ディープパインフォレスト)

590&Co.さんの3周年と万年筆店のシャープペンシル

590&Co.(コクエンアンドコー)さんが3周年を迎えましたので、お祝いに3人でお店にお邪魔してきました。

当店の閉店後なので、お邪魔するのはいつも遅い時間になりますが、いつもお客様がおられます。木曜日と金曜日は22時まで営業されているので、仕事帰りに行きたくなる人も多いのだと思います。

王子公園近くにあった最初のお店に遊びに行った夜もものすごく暑かった。それからすぐに事情があって元町高架下に移転して、2周年を迎えた後に今の場所に落ち着かれました。

短い間に2回移転しなくてはいけなかったけれど、谷本さんは気持ちを切らさずに、その度にどんどんいいお店を作っていきました。

たった3年で590&Co.は有名になって、出張販売に行くとお客様が店先に並ぶほどの店になりました。

谷本さんのしていることを真似しても仕方ないけれど、その仕事ぶりや気持ちの持ち方には教えられることが多い。見習えるところは見習って、当店らしさについて考えています。

ずっと何を書くのも万年筆しか使っていなかったけれど、谷本さんが590&Co.を始めたあたりから鉛筆やシャープペンシルもいいなと思い始めて用途に応じて使うようになりました。

いろいろ使ってみてこれはものすごく良い、万年筆店らしいシャープペンシルにたどり着いたと思ったのがペリカンD400でした。

D400はそれほど大きくない軽めのシャープペンシルです。垂直に立てて書くことを前提にした製図用シャープのように前重心ではなく、万年筆のように中心にバランスがあるので、自然に寝かせて書くことができます。

D400に万年筆メーカーのシャープペンシルはこうあるべきだという主張を感じました。行き詰っている原稿を少しずつ書いたりするのにシャープペンシルはすごく使いやすく、万年筆と使い分けられると思いました。

芯が尻軸をノックして出てくるのも感覚的に操作できて、使いやすく感じます。何もかも自然な分特別感は少ないけれど、実は隠れた名品なのではないかと思っています。

芯は標準仕様は0.7mmでこのままでもノート書きにはいいかもしれませんが、0.5mmの機構に当店で入れ替えることもできます。私は使い慣れた0.5mmで使っています。

ペリカンD400はずっと以前から存在していたシャープペンシルですが、590&Co.さんというお店と出会うまでは顧みることがなかった。

学生の時や若い頃だったらこのシャープペンシルにこれほど惹かれなかったかもしれません。

実用的な渋い存在の、玄人好みのシャープペンシルです。

⇒ペリカン ペンシルD400