革の色~コンチネンタルのシステム手帳とペンケース~

革の色~コンチネンタルのシステム手帳とペンケース~
革の色~コンチネンタルのシステム手帳とペンケース~

最近ではあまり言われなくなりましたが、靴と鞄、靴とベルトの革の色はなるべく同じにしたいと思っています。
朝間違えて持って出たり、身につけてしまったらとても後悔するし、一日中少し憂鬱になってしまいます。
それと同じように思っているのが手帳とペンケースの色で、その二つは同じ色にしたい。
色だけでなく革質も同じにしたいと私は思っています。
色合わせをして、合う色同士を組み合わせた方が絶対にお洒落に見えるし、当店の女性目線ブランド「DRAPE」ではそれをなかなか上手に提案できていると思っています。

でも私は感性が古いのだと思うけれど、どうしても革の色は統一したい。
革の色が服装のコーディネートの中でアクセントになることくらいは分かっているので、その中に革が溶け込めばいいなあとは思っているけれど。
オリジナル商品で、と、
A7メモカバー(商品名クリックで移動します)は、シュランケンカーフの黒にこだわって、必ず黒をカラーバリエーションに入れています。
それは同じシュランケンカーフの革でいろいろなものを持って、統一感を楽しんでもらいたいと思ったからで、その中でも革の表情や質感に集中できる黒を選択しました。
美しいカラーバリエーションが多くあるシュランケンカーフの中で黒を選ぶというのは、本当にもったいないと思われるかもしれないけれど、黒のシュランケンカーフには他の色にはない飽きない魅力があると思っています。

当店オリジナルのに使っているダグラスという革の色、少し使い込んだ時のキラキラしたような艶が気に入っています。
こういう表情が見たくて、私はこの革にこだわっていて、そのような変化が大陸的だと銘打ったこの手帳らしさだと思っています。
コンチネンタルシステム手帳の内革はアノネイ社のバーガンディカラーのボックスカーフで、少し男性的な外革のダグラスと比べると対照的なノーブルなイメージの革になっています。この二面性が当店の地味な遊びで、この手帳の面白みになっています。
革の色を揃えたいといつも思っていますので、コンチネンタルシステム手帳と同じダグラスの革を使った当店の看板商品ペンレスト兼用万年筆ケースをカンダミサコさんに作ってもらい、コンチネンタルシリーズのペンケースとしています。
正直に言うと、使いやすさはしなやかなシュランケンカーフの方がいいけれど、太めのペンを入れて盛り上がったところにできる艶はこの革独特の色気があり、とても気に入っています。
革の色あわせがあって、服装のワンポイントになる。
ステーショナリーの革製品も、私は服装と調和していて欲しいと思うし、それを考える遊び心のような余裕を持っていたいと思っています。

⇒コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース
⇒コンチネンタルシステム手帳

ダイアリーについて考える

ダイアリーについて考える
ダイアリーについて考える

カンダミサコさんのA5ノートカバーが再入荷しました。外側のシュランケンカーフ、内側のブッテーロなど、上質な革を贅沢に使ったものです。
特長的な構造で裏表紙にあたる内側のブッテーロ革を幅広くとっていますので、下敷き効果もあり、とても書きやすくなっています。更に外側に適度な丸みを持たせる効果もあって、考え抜かれた革カバーだと思っています。

12月は来年のダイアリーの試用期間かもしれません。
ほとんどのダイアリーが1月からではなく、前年の12月くらいから始まっていますので、今までの手帳と併用したりしながら新しく導入しようと思っているものを使い始めてみるといいのかもしれないと思い、私も始めてみました。
先日来店されたお客様が、来年は正方形のダイアリー(当店のオリジナルダイアリー)のマンスリーとデイリー(フリーの1日1ページ)を組み合わせて使おうと思っているとおっしゃっていて、私も同じことを考えていたので驚きました。

スケジュールはなるべく広く見渡せた方いいし、後からもう一度見たい事項も、なるべくページ数が少ない方が見つけやすい。そこでマンスリーダイアリーに書き込むことにしようと思いました。
1日1ページの効果は、その日あったことをそのページに全て書くという潔さを持たせることで、後から見つけやすくなります。
その日やるべきことも、あったことも全て同じページに書く。
とてもシンプルで無理のないやり方なのではないかと思います。

来年からは、自分なりのやり方で日記をつけたいと思っています。
あまり大きなものは自信がないので、サニーゴールド手帳などは自分の日記帳としていいのかもしれない。
ページ数が206ページなので1日1ページというわけにはいかないけれど、それくらいのコンパクトさがいい。
これも先日メールでやり取りしていたお客様がおっしゃっていて、ハッとしました。

最近、手帳用にエルバンの「TERRE DE FEU(ティエラ・デル・フエゴ)」というインクを使い始めて、とても気に入っています。
南米パタゴニア地方の最南部ティエラ・デル・フエゴという土地をイメージしたインクで、赤みがかった茶色のインクです。
見ようによっては落ち着きのあるボルドーのようにも見えて温かみがある。

ティエラ・デル・フエゴは非常に寒い、自然の厳しい最果ての地ですが、火山活動が活発で地熱あり温泉も出る場所。
そういったイメージをインクの色にしたらこうなるのかもしれないと思い、知らない土地へのロマンも感じられて楽しい。
大陸的と銘打ったコンチネンタルのシステム手帳に託した想いと、内側のボックスカーフのバーガンディカラーにもピッタリの色とイメージだと思っています。

ダイアリーひとつで仕事の効率も変わります。
ダイアリーが変われば、気分も大きく変わります。
1ヶ月間練って、来年1年快適に楽しみながら使うことができる手帳について、そして何か皆様にご提案できるものを考えたいと思っています。

カンダミサコ 文庫手帳カバー

カンダミサコ 文庫手帳カバー
カンダミサコ 文庫手帳カバー

先週に続けてカンダミサコさんの商品をご紹介することになりますが、それだけ年末に向けてカンダさんの製作のピッチが上がっているということと、当店とカンダさんとの距離が近くなっていると(色々な意味で)感じています。カンダさんは最近納品などでよく当店を訪れて下さるので、色々話をしています。

ただ良いものを作るだけではなく、店の様子や需要をその目で確認して、ご自分が作るべきだと確信を持ったものとのバランスを測っているプロフェッショナルな仕事をカンダさんから感じています。
カンダミサコさんの商品は、男性寄りの商品が多い当店の品揃えの中で異彩を放っているけれど、女性のお客様に来ていただくきっかけのひとつになっています。

カンダミサコさんの文庫サイズノートカバーが入荷しました。
厚さ10mmくらいまでの文庫サイズ(A6)サイズのノートなら収めることができる革カバーです。
私は買う必要もないのに、あちこちの文具店でシーズン真っ只中のダイアリー売り場をウロウロしていますが、文庫サイズのダイアリーの多さに改めて気付きます。
コンパクトだけどそれなりに書くスペースもある文庫サイズは手帳やノートにとってもちょうどいいサイズで、何よりもいつも鞄の中に本を入れておきたい活字中毒の方には最も馴染みのあるサイズだと思います。
このカバーの特長は、一般的なカバーに比べ比較的太径の万年筆も収めることができるバタフライストッパーの存在と、上質な革を使用しているところです。
バタフライストッパーはノートが広がらないようにする役割も担っていて、ペリカンの万年筆でM600まで収めることができますので、携帯用の万年筆には充分なサイズと言えます。

素材であるシュランケンカーフはその発色の良さと、色数が特徴的ですが使い込むことで艶が出てきたり、しっかりとしていながらしなやかさを合わせ持っている理想的な革です。
さらにカンダミサコさんの多くのカバーの特長として、表紙から折り返した前後の裏表紙部分を大きく、革を贅沢に使うことで表紙を補強していることもあります。
このしっかりとした表紙は書き込みがしやすくなるというメリットがあって、カンダミサコさんのこだわりどころになっています。

古い話で恐縮ですが、20年ほど前は文庫サイズの手帳というのはほとんどなく、手帳の多くが男性をターゲットにしていて、スーツの内ポケットやYシャツの胸ポケットに入る、各メーカーオリジナルサイズになっていました。
以前から革の表紙にダイアリーを入れて、毎年中身を交換して使いたいという需要は少なからずあったけれど、サイズの問題がありなかなか難しかった。
それでも最近は文庫サイズなど、本や紙の規格に合わせたものが女性をターゲットに出始めたこともあり、カバーなどは作りやすくなったと思っています。

気に入った革の手帳カバーは長く使うと味が出てきて、毎日使えることが喜びになってきます。
手帳の内容は使ってみないと自分に合うか合わないか分からない。
複数の選択肢がある文庫サイズのダイアリーなら、表紙をそのままに中身をまた買い替えることもできるので、ぜひ来年用のダイアリーの候補にしていただけたらと思います。

革を敷く

革を敷く
革を敷く

私にとっての理想的な大人の仕事風景は、机の上に紙を1枚だけ置いて愛用の万年筆が1本ある・・というもの。
テレビも音楽もついていない静かな部屋で紙を前にじっと考えて、思いついたアイデアをポツポツと書いていく。
そんな風に仕事したいと思うし、そうやったからと言って古臭いアイデアしか出ないわけではないし、パソコンを点けてネットを駆使していろいろ調べまくってもいい仕事ができるとは限らない。
万年筆の愛用者だったという、先日亡くなった高倉健さんはそんな風に著書の原稿を書いていたのではないかと想像している。

地味な毎日の繰り返しの我々にとって、健さんの演じる寡黙な人物はお手本のような存在だったので、ご高齢だったとはいえ早すぎる、もっと健さんの演じる男を観たかった。
惜しい人を亡くしたと思っています。

紙1枚の下に革のデスクマットを敷くとさらに快適に書くことができるので、そのシンプルな仕事の装備に、デスクマットと机上にわずかに彩りを与えてくれる少しの小物も加えて欲しいと思います。

カンダミサコのデスクマットはブッテーロという良質な素材を使っているので、使えば使うほど艶が出てくるし、傷が目立ってきたらブラシ掛けや水拭きで目立たなくすることができます。また、銀面、床、フェルトの三層構造になっていて、革のデスクマットが最も直面する反りに強い構造をしています。

私たちの机上事情に合った小さめのサイズというところも、発売から4年半経っても作り続けていることができる理由だと思います。
机の天板に革を敷くことは、机上用品を揃える基本だと思っています。

デスクマットの上に紙1枚だけ置いて万年筆で書くととても書き味が良くて、気持ちいいですが、その下敷き効果だけでなく他の働きもあります。

私はとても大事なことだと思っていますが、革のデスクマットがあれば、万年筆をその上に安心して置くことができるし、アクセサリーや時計なども同様だと思います。
大切にしているものをなるべく硬いものの上にそのまま置きたくないので、革の上に置くということも革のデスクマットの存在意義なのです。

デスクマットが敷けたら、あとひとつ小物も追加してほしい。
当店の品揃えの中にはペントレーなど様々なものがありますが、その中で私がとても気に入っているものは、借景のペンレストです。
ペンを1本置ける後ろにポストカードを1枚立てられるようになっていて、背景のポストカードでペンのある風景を演出するものです。
当店では、SkyWindさんの写真のポストカードを全て揃えていて、このポストカードと万年筆を組み合わせるために作った商品です。

SkyWindさんは女性の写真家ですが、道具に全くこだわっていなくて、お使いのレンズの倍率やスペックなどを興味津々に聞いても、何を使っているのかよく分かっていないことが多い。
上手な人というのはそういうものなのかもしれない、撮る前からレンズの性能とかカメラが、とかと言っている(それも楽しいことだけど)我々男性とは違っている。
でもその姿勢は、紙1枚と愛用の万年筆1本でまず何を書くかを考える、私が思い描く大人の男の姿勢に近い、理想的な表現者の姿だと思っています。

シンプルに生きる、シンプルに仕事をすることを考えた時、革のデスクマットを敷いてポストカードを1枚飾り、少しの彩りを添えた机上を想像しています。

⇒カンダミサコ ブッテーロ革デスクマット
⇒WRITING LAB.借景のペンレスト(栃・黒檀)

連用日記を始めよう

連用日記を始めよう
連用日記を始めよう

私は若い頃、一日を振り返る日記を書くという行為が後ろ向きなことのように思っていましたが、それは書いた事が無かった私の勘違いでした。
日記を書くということは、その時の自分の行動を記録するだけでなく、自分の考えを練り固める役に立つのではないかと思っています。
例えば同じテーマについて考えたことを日記に繰り返し書いていくと何かしらの解決の糸口のようなものが見えてきて、自分の中でストンと落ちるような答えが見つかることがあることは私も経験したことがあります。
やはり繰り返し書くということは何らかの効果をもたらすことなのだと思います。

毎日書く日記を読み返して振り返ることは過去の自分と向き合うことで、それは自分自身に教えられることもあるので、たくさんの本をひたすら読むことも勉強に違いないけれど、書き残すということも同じくらいか、それ以上の勉強だと思います。
なかなか出ないことの答えは、外にあるのではなく、自分の中にあるということも結構あるのだと思います。
過去の日記をわざわざ読み返さなくても、昨年の自分、あるいは一昨年の同日に自分が書いたものを書きながら読み返すことができるのが、連用日記です。
きっとかなり以前からあるものですが、私は最も進んだ日記帳の形式だと思っています。
連用日記の良いところは少しネガティブかもしれないけれど、一日の書く欄が小さいので、続けなければというプレッシャーが小さくなる所かもしれません。

当店のお客様で3年ないし5年、10年の連用日記を継続して書かれている方は多く、そんな方々を私は尊敬しています。
連用日記を始めるのはその年数が長くなればなるほどプレッシャーが強くなることも理解しているけれど、ぜひ私も始めたいと思っています。

日記帳にどんなインクで書くのかはその人の自由ですが、ブルーブラックなど少し落ち着いた感じの色で日記帳の最初のページをスタートさせたい。
私がブルーブラックのインクを使うのはその色だけでなく、ある効果を期待して使うことが多いのです。
冬以外の季節はあまり気にならないけれど、冬になるとインク出が多くなったり、ボタ落ちしそうになる万年筆が結構あります。そういう場合は万年筆のインクをペリカンのブルーブラックに入れ替えます。
以前はインク出を抑える効果のあるブルーブラックのインクは何社かありましたが、今ではペリカンとプラチナだけになってしまいました。

春先に最近インクもれするようになった、という相談を受けることが多いですが、それは冬の方が外気との温度差があって、手で握って書いているうちにインクタンク内の空気が膨張して、インクを押し出そうとする力が、他の季節よりも強く働くためです。
ちなみに手の熱を伝えやすいのは、金属やプラスチックのボディで、伝わりにくいのはエボナイトや木のボディのペンになりますので、冬は特にそれを中心に選ぶと快適に日記を続けることができると思います。

一日の終わりに日記を書く。それは楽しみに充分なり得ることなのではないかと思っています。ぜひ始めてみて下さい。


オリジナルダイアリーカバー完成

オリジナルダイアリーカバー完成
オリジナルダイアリーカバー完成

ル・ボナーさんが製作してくれているオリジナルダイアリーカバーの新作が完成しました。
今回はダイアリー本体にもかなり手を加えていて、今のところできることは全てやったと思っていますので、お客様の反響が楽しみです。
その声を聞いて、ダイアリーをもっと良いものにしたいという気持ちはいつも持っています。
今回は、評判の良い大和出版印刷さんの新製品「グラフィーロ紙」を採用できたこともあり、万年筆で書くということをコンセプトにしているこのダイアリーの使い勝手にどのような影響を及ぼすか見てみたいと思っています。

中身同様、ダイアリーカバーも変わり始めています。
ル・ボナー松本さんが企画してくれたものは、従来通りシンプルな仕様のものをクリスペルカーフで作っていますが、限定色のネイビーが追加されています。
クリスペルカーフはパリッとした見え方で、スーツなどのキチッとした服装にも合うのと思っています。
クロームなめしの革ですがわずかにエージングもあり、使い込むと艶が出てきます。

当店には以前から支えてくれている女性のお客様が何人かおられて、その方々のためにも、最近多く来られるようになった女性のお客様のためにも、何かしたいと思っていました。
そんな当店の女性のお客様をイメージして女性スタッフKが企画しているのが「ドレープ」で、今回の当店のダイアリーカバーはドレープとして企画しています。
今までシンプルに徹するために装着を拒んでいた、ベルトとペンホルダーを付けて、ダイアリーカバーとペンのコーディネートも楽しめるようになっているし、何よりもダイアリーを書こうとした時にペンがすぐあるというのはやはり便利でした。
かなり太目のペンまで入れることができて、パーカーデュオフォールドセンテニアルも入ります。

女性じゃないと企画できない、そして女性が使うことをイメージしていないと使わないようなきれいなサーモンピンクの革、仏アノネイ社のボックスカーフとブラウンのコンビ。
少し男性も意識しているブラウンは、使い込むとピカピカになって艶を出してくれるエージングも楽しみな革、伊フラスキーニ社のブレンダボックス革を使用しています。
昨年から販売し続けている手触りの柔らかさと傷つきにくさを両立したシュランケンカーフと、さらに傷つきにくく、水気にも強いノブレッサーカーフと、バラエティに富んだ種類の中から選んでいただけるようになっています。

私たちのオリジナルダイアリーは、これらの革カバーと組み合わせて使うことが前提になっています。
ウィークリーとマンスリー、又はウィークリーと大和出版印刷の正方形方眼ノートrect(レクト)と組み合わせることもできるし、マンスリーと厚みのある方の正方形ノートあるいはマンスリーと分度器ドットコムオリジナルの正方形ツバメノートと組み合わせて、革カバーに収めることができる。

ル・ボナー製のこれらのカバーも、オリジナルダイアリーを使いたくなる魅力のひとつになっていると思います。

⇒オリジナルダイアリーカバー(Pen and message.オリジナルTOPへ)gid=2127777″ target=”_blank”>⇒オリジナルダイアリーカバー(Pen and message.オリジナルTOPへ)

工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」

工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」
工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」

「こしらえ」はペン先のついていない、あるいは書くことができない当店のオリジナル万年筆だと言うと乱心したのかと思われるかもしれないけれど、ペン先をつけなくても、持っているだけで嬉しくなるほどのものだと思っています。
それほど銘木の魅力に溢れたもので、眺めていても、触っていても、磨いても楽しめるものなので、仮に書くことができなくても楽しい万年筆(?)なのです。

パイロットカスタムヘリテイジ912/カスタム742という、字幅の選択肢が多く、どれを選んでもペン先の厚みのようなものが感じられる頼もしい書き味を持つ名刀を仕込むことができる「こしらえ」は、工房楔の永田氏が作る当店のオリジナル万年筆で、私はこのこしらえを誇りに思っています。

こしらえは使い馴染ませたペン先をボディを交換して使うことができるということと、使い込んで美しく艶が出たボディをペン先を交換して様々な用途で使うことができるという両側面において、万年筆を長く、より楽しみながら使う役に立つ演出だと思っています。

日本の万年筆は、海外の状況に比べてこういったカスタムボディが少なく、保守的な印象をずっと受けていました。
今ついているプラスチックのボディはメーカーが専用に設計したもので、それがベストの組み合わせだという見方もあるかもしれないけれど、それは大量生産が可能で、好き嫌いの出ないという、当たり障りのなさの追求に思え、この上質なペン先には物足りないと思っていました。

長年私や万年筆をある程度使い続けた人たちが思い続けてきたことに対して、永田さんがこしらえという軸で答えてくれました。
ボディの素材がプラスチック以外のもの、木であればいいというわけではなく、工房楔が作って意味のあるもの、一人の木工家が自身の作品として伝えるために残したいと思えるものがこしらえです。

工房楔の永田氏の場合、求められるもの、売れそうなものを相応の数作るのではなく、良い素材との出会いがあって、それが一番引き立つものを作る。そしてひとつひとつの木目が美しく出るように作るので、そもそもその作る動機というか、根源的なところから、大量生産のものや木であっても画一的に作られているものとは違っている。
そういう思想から生み出されている永田氏が作るものを私は製品ではなく、作品だと思うし、そのひとつひとつのモノには品格が備わっているように思っています。

このたびこしらえのバリエーションを増やし、ステンレスだったパーツを今回はエボナイトで作りました。
ステンレスパーツは木の素材とのコントラストが作品自体を締ったものに見せていましたが、エボナイトは木との親和性のようなものが感じられ、自然な印象。
ステンレスパーツのアクセントのあるバランスに対して、エボナイトは本当に軽く優しい感触です。

私もエボナイト仕様のこしらえを使い始めています。
工房楔の永田さんにお願いして桑の木で作ってもらいました。
海外の個性溢れる素材も大変面白いし、興味もありますが、やはり日本の木を1本持っておきたいと思いました。
パイロットの10号ペン先を名刀と見極めて、そのための装身としてのこしらえと名付けたからには日本の木を使いたかった。

道具類の柄などに使われる素材で、経年変化は削ったばかりの黄金色からこげ茶に近い色まで変化する。
桑の杢の日本の木らしい穏やかな表情が気に入っています。
手触りも、永田さんの仕上げのセンスによるところだと思いますが、サラサラとわずかな手応えがある手触りが気持ちいい。
実は桑のこしらえは2本あって、1本はSF、1本はフォルカンのペン先をつけています。
エボナイトのパーツのこしらえはステンレスに比べて10gほど軽いので、弾力の強いペン先よりも、柔らかめのペン先の方が向いていると思いました。
SFはプラスチック軸の時、そのペン先の柔らかさが少し使いにくく感じましたが、エボナイト仕様のこしらえでは全く気になりません。
かすかな柔らかさを感じながらダイアリーにゆっくりと書き込むのに使っています。
フォルカンの軽い筆圧で書いた時でも濃淡が出るような、フワッとインクが出てくるようなフィーリングはとても心地いい。
ダイアリーのようなものに書くには少しくどい感じがして、向いていない気がしますが、手紙や日記、報告書のような感情を込めてもいいようなものには合っていると思いました。

今まで両サイドが深くえぐられたようなペン先の形が気になっていて使ってみたことがなかったけれど、もっと早く使っていればよかったと思いました。
柔らかいペン先は本当に使い手を選ぶところがあって、筆圧のコントロールができる人でないとなかなか使いこなせない。

ペン先が開いて内面がガリガリと引っかかったり、インクが途切れたり、書き出しが出なかったりと、フォルカンのようなペン先を手に入れるには相当な覚悟が要ることだけはお伝えしておかなければなりません。
でも、そういう使いこなしが難しいけれど、攻略したいと思っている優れたペン先をつけたいと思わせるところがこしらえにはあります。

出会った時から永田氏の木の杢へのこだわりは相当なものだと思ったけれど、最近ではその作るものに何かが宿り始めているとさえ思えます。
上手く表現できないけれど、神がかってきたというと大げさかも知れませんが、永田氏の作品に迫力が出てきている。

こしらえにもそれが宿っていて、名刀を収めるというコンセプトに充分に沿ったものだと思っています。

ペリカンM101Nトータスシェルレッド

ペリカンM101Nトータスシェルレッド
ペリカンM101Nトータスシェルレッド

ペリカンのビンテージ万年筆の限定復刻シリーズ「M101Nトータスシェルレッド」が入荷しました。
入荷数が少なく、EFに関しては次回入荷(11月)までお待ちいただく状況になっています。申し訳ありません。

この万年筆を見て私は赤インク用の良い万年筆が出たと思いました。
赤インクは、他のインクに比べて粘りがあるのか、色を変えたとして、いつまでも万年筆のどこかにあって次に入れたインクに混ざって出てくるようなところがあります。
また付着しやすくもありますので、色が目立つペン、例えばペリカンでしたらM400ホワイトトータスのようなペンは赤インクには適さないと思っています。

その点、キャップ、首軸、尻軸が赤色のトータスシェルレッドでは、赤インクでも全く気にならないと思いましたし、ブラウンの窓も赤インクが気にならない仕様です。
赤色のインクと言っても色々な色があって、それについての好みは本当に人それぞれだと思いますし、インクとして私は最も面白い色種だと思っています。

私の赤インクの好みをいくつかお話させていただくと、まずパーカーのレッドが血のような赤で最も印象的だと思っています。
プラチナの赤は、最も採点ペンらしい赤色で、私はこの色を見るとノスタルジックな気分になります。
それはピンク色とも言える色で、あんまり赤々とした色で採点したくなという心優しい先生方に重宝されています。
手紙など文字も書きやすい赤色になると、私は少し暗めの色の方が使いやすいと思っていて、それにお勧めなのがWRITING LAB.のオリジナルインク オールドバーガンディです。

さすがに採点には使う感じではありませんが、落ち着いた深みのあるバーガンディカラーの手紙はなかなか粋な感じがします。
エルバンのトラディショナルボトルインクは、赤インクの宝庫で、ピンクからボルドーまで様々な赤インクがあり、色見本を見ていても楽しい。
赤インクを探している人は、まずエルバンのトラディショナルインクを検討してみて下さい。
ペン芯の性能が高く、インクの性質の影響を受けにくいペリカンだから、様々なインクを試すことができます。

少しくすんだ赤色のキャップ首軸、尻軸で、年月を経てきたような飴色を再現したボディの独特の色合い。
ビンテージの復刻という遊びの趣向をペリカンはこのトータスシェルレッドで強めたように思います。

トータスシェルブラウン、リザードでは無難に、手堅く現代風にそれを表現していたけれど、トータスシェルレッドではなかなか遊んでいて、賛否両論分かれる予感がしています。
でも、ペリカンのそんな遊び心を私は「おもしろい」と思っています。
私が店で何かを実行するかどうかを判断する時、「おもしろい」かどうかは最も大切な最優先するべき要素だとしているので共感できるのかもしれません。

シンプルな美学の2本差しペンケース “ピノキオ”

シンプルな美学の2本差しペンケース “ピノキオ”
シンプルな美学の2本差しペンケース “ピノキオ”

コードバンは冬の素材だと思っています。
コードバンの靴を夏に履くと、そのネットリとした光沢がいかにも暑苦しく、何よりも履いている自分が暑いと思ってしまう。
梅雨から9月までは何となくコードバンの季節ではないように思えます。
履いていて暑いと感じる理由は、見た目もそうですが、その革の強靭さにつながる通気性の悪さにも一因していると思います。

繊維が緊密で相当な強度があり、張りのある手触り、磨くとピカピカに光る革質はペンケースにとって大変魅力のある革で、クロコなどのエキゾチックレザーと同じくらい特別な革だと思っています。
最上だと思っているコードバンの革を使い、厳選した2本だけを収納するペンケースは、特徴的なギボシの形から愛情を持って“ピノキオ”と呼んでいます。

コードバンの代表的な色で、その特徴が現れるNo.8と呼ばれるバーガンディでピノキオを作ってきましたが、今回ライティングラボのメンバーの駒村氏の強い希望もありブラックでも作ってみました。
コードバンの魅力のひとつであるネットリとした光沢は、ブラックの方が上かもしれないと思いました。

バーガンディは微妙な色合いを楽しみ、ブラックはその光沢を楽しむ。
ピノキオに収まるペンとして、ペリカンM710トレド、M400など愛用者の多い万年筆をイメージしていましたが、ビンテージペリカンの復刻版M101のシリーズも入ることが分りました。

すでにM101のシリーズは、トータスシェルブラウンとリザードが限定発売されましたが、近々(10月末から11月予定)トータスシェルレッドが発売されます。
抑えた色調の赤色のキャップのビンテージペリカンの中でも人気のあるモデルだけにとても楽しみで、このペンケースに収めていただきたいと思います。

M600も近いうちに(10月末から11月)発売される限定品があります。
M600バイブライトグリーンです。
明るめの、華やかな色エメラルドグリーンのボディとキャップの煌びやかなペリカンも、定番品と同じくらい魅力を感じます。

ペリカンM400やM600は万年筆の代表的なものと比べると小さく、それが大人の粋な道具のように思えます。それらのペンに合わせて、粋な大人のペンケースをつくりたいと思いました。

2015年オリジナルダイアリー完成

2015年オリジナルダイアリー完成
2015年オリジナルダイアリー完成

毎年発売しているオリジナルダイアリー、マンスリーとウィークリーの2種類が完成しました。

今年から用紙が今までの「リスシオ・ワン」から、大和出版印刷の新しい紙「グラフィーロ」に変更になっています。
リスシオ・ワンは書き味は大変良かったし、大らかな私はとても好きでしたが、一部のインクでにじみや裏抜けがが少しありました。グラフィーロではそういった症状を全て取り除いています。

万年筆で書きやすい紙を使っているというのは良いダイアリーの絶対条件のようになっていて、どのメーカーもそれぞれの手帳哲学を込めたダイアリー用紙を使っています。
太字の万年筆で気持ち良く書くことができるのは当たり前だけど、手帳用紙は細字でも何ら変わることなく、むしろ細字の方が気持ちよく書くことができるのはどのメーカーもさすがだと思っています。
私は手帳には線の太さに関係なく国産の万年筆の方が向いていると思っています。
それはインクの出が海外のものに比べて少ないからで、いくらペン先が細くてもドイツ製のペンの多くがそうであるように、インク出が多いと文字もつぶれやすくなってしまいます。

日本製の細字あたりが当店のオリジナルダイアリーに最適の太さだと思っていますが、好みに合わせて中細や極細を使っていただいてももちろんいいと思います。
日本のメーカーの他に、少しインク出は多くなりますが、イタリアのアウロラ、パーカーデュオフォールドなどの極細なら合っているようです。
以前にもご紹介しましたが、今回はオリジナルダイアリーに大改革を行ったと思っていて、出来上がりに満足しています。

ウィークリーダイアリーには1ページ1か月のミニマンスリーを付けて、これ1冊で多くの人の用途を満たすようになりました。
そういう声もあるにはあったし、便利だとは思っていましたが、別にマンスリーを作っているので禁じ手のような気がしていました。
それぞれの週の始め、月曜日の横に週番号を入れるようにし、毎日の経過日数と残り日数のカウンターをつけました。
巻頭にある1年計画表も月の並びを変えただけですごく使いやすくなりました。

マンスリーもウィークリーとともに祝祭日の色を濃くして認識しやすくなりました。
週番号と残り週のカウンターもつけて、今自分が一年のどこにいるのか、把握しやすくなっています。
細かいことだけれど、ページ端にインデックスをつけて、目的の月のページをすぐに開けられるようにもなりました。

毎年少しずつは手を入れて改良していましたが、今回は大和出版印刷の川崎さんの協力もあって、思い付く限りのことができたと思っています。

分度器ドットコムの谷本さん、大和出版印刷の多田さんと集まって、5年前に何もない状態から少しずつ積み上げて作り込んだもので、途中もしかして継続して作ることができないかもしれないと思うような危機もありました。
でも大和出版印刷の武部社長、谷本さん、革カバーを作ってくれているル・ボナーの松本さんや他の仲間がいてくれて心を強く持つことができて継続することができている。

ダイアリーは継続できて当たり前だけど、それをとても誇りに思っています。

⇒オリジナルダイアリーはこちらから(Pen and message.オリジナル商品TOPへ)gid=2127777″ target=”_blank”>⇒オリジナルダイアリーはこちらから(Pen and message.オリジナル商品TOPへ)