ノートのサイズ

ノートのサイズ
ノートのサイズ

本当は全ての規格のサイズの紙製品を置くことができたら、素晴らしいと思っています。
私自身も正方形のオリジナルダイアリーをいつも使っているけれど、大判のものに惹かれる時もありますし、小さな手帳に惹かれる時もあります。

それはだいたい服装との兼ね合いのことが多く、冬は大きめの手帳、夏は小さな手帳に気持ちが向くような気がします。
でもどのサイズにも共通しているのは、革のカバーに納めたいというもので、これによって、使いたいと思う気持ちがより強くなります。

当店に置く紙のサイズは、革のカバーのあるものと決めてから、それまで迷走していた紙製品の取り扱いがスッキリしたと思っています。
A5、B6、オリジナル正方形、文庫、A7というものに革カバーがあって、当店が扱うべきサイズだということにしました。

その中でもA7サイズは、モノとしてとても魅力があって、何とか自分の日常に取り込みたいと思っていました。
A7サイズはノートとしては少しユニークなサイズなのですが、ピッタリとくる中身が少ない実情がありました。
どこか事務的で、万年筆の書き味にこだわったという訳でもありません。

しかし、やっと万年筆で書きやすい良い紙のA7サイズのノートを、いつも万年筆を意識した渋い紙製品作りで定評があるライフが作ってくれました。
小さくて薄いけれど、革のカバーに入れるに足る上質な、万年筆で書きやすい紙を使った、ノーブルノートのシリーズです。

ちょうど、カンダミサコさんの革カバーも製作が追いついて全色出来上がりましたので、とても良いタイミングでした。
このA7メモカバーは、表紙にカンダミサコさんがよく使う上質な革シュランケンカーフを使っていて、内側もまた上質なブッテーロ革になっています。

これは当店オリジナルのペンレスト兼用万年筆ケース、カンダミサコさんと当店のダブルネームのA5ノートカバーなどと、お揃いの色使い、革使いになっていて、揃える楽しみもあるシリーズのひとつです。

内側のブッテーロ革の部分が普通のノートカバーと違って、長めに作られているので、下敷き効果があって、とても記入しやすくなっています。
こういう小さなメモ帳をポケットに忍ばせておいて、必要な時サッと取り出して一言、二言メモをして、またポケットに戻す姿はかっこいいと思っています。
そういう姿にはA7サイズが最も合っていて、それよりも大きくても、小さくてもいけない。
手の大きさとのバランス、確保しないといけない筆記面のサイズなど、やはりA7サイズが良いと思う。
A7サイズのメモ帳に合う万年筆については見解が分かれるところだと思います。

私はこういった小さなメモ帳でも大きな万年筆、愛用のM800なども使っていいと思っています。
しかし、ペリカンM800をポケットに差していること自体があまりなく、ペンケースから取り出して使うということが多いと思いますので、メモをするのにそれはあまりにも無理があるような気がします。
するとやはりペリカンM400のようなペンを背広の内ポケットから取り出して、筆記するということになります。

実際的、機能的には片手で書き出すことができるパイロットキャップレスが最も合っているような気もしますが・・・。
でも愛用の紙製品があったら、それを革のカバーで包みたいというのはステーショナリーにこだわる人の常なので、それはこれからの課題にしたいと思っています。

⇒Pen and message.オリジナルA7メモカバー
⇒ライフ ノーブルノートA7

日本限定企画万年筆 ペリカンM625-14Cレッド入荷

日本限定企画万年筆 ペリカンM625-14Cレッド入荷
日本限定企画万年筆 ペリカンM625-14Cレッド入荷

ペリカンは最もクラシックなペン、縞模様のスーベレーンシリーズのイメージが強く、私たちもペリカンにクラシックさを、その歴史を回顧した懐古趣味を求めていました。
しかし、ペリカンは途中途絶えたこともありましたが、伝統的なスーベレーンも大切にしながら、その時代時代の感覚を取り入れた新しいペンも作っています。
ペリカン60、シグナム、ニュークラシックなどなど。

スーベレーンがお客様から最も支持されていることは十分に分かっていても、常に時代感覚も捉えようとする姿勢は、まるで万年筆の業界に居続けて、そのお客様のためにその場所を活性化しようと努力し続けている老舗の義務であるかのように、途絶えることなく続けられてきました。
スーベレーンのシリーズに含まれていますが、M625もそんなペリカンの取り組みの中のひとつだと思っていました。

残念ながら数年間作られた後、今年のカタログから消えていました。
ペリカン日本の限定企画万年筆M625-14Cレッドは、廃番になったM625を18金から14金のペン先に換装したものです。

全面プラチナ装飾の14金のペン先は、先日発売されたM605マリーンブルーと共通で、余分に作ったペン先と売れ残ったボディを組み合わせたものだという見方もあるかもしれませんが、それは意地の悪い見方だと反省しています。

M625は定番のスーベレーンを現代的に解釈した製品で、基本的なフォルムはそのまま残しながら、ボディのリング類をなくしクラシックさを消して、キャップ、首軸、尻軸をコーティングされたスターリングシルバーにしています。

キャップが金属ということで、少しリアヘビーなバランスになりますが、少し後ろを握って書くような、ネジ部から1cm後ろくらいに指先がくるような持ち方でしたら、中心にバランスがあって書きやすいし、キャップをつけずに書かれる方には、首軸、尻軸の金属パーツの恩恵で適度な重量感があって、どこを握っても大変書きやすいバランスになっています。

M600は適度な握りの太さで大変持ちやすい万年筆ですが、重量が軽く、力を抜いてペンの重さで書くという感じのものではありませんが、M625はM600と同径の握りやすいボディに、重みで書くことができる重量があって、力を抜いて軽い筆圧で書かれる方、筆圧が強いので、力を抜いて書きたいと思っている方に向いていると思っています。

全く新しい斬新なものではないかもしれませんが、その歴史の延長にあるものを作り換えることが、今のペリカンの新しいシリーズを作る気分なのか、M101Nリザードをスターリングシルバーのキャップトップ、ボディエンド、首軸にして175周年の記念万年筆としたことと共通したものを感じます。

M625-14Cレッド、今のペリカンの時代の取り入れ方を象徴するもので、現代的な解釈のペリカンも私は認めたいと思っています。

WRITING LAB.オリジナル吸取紙発売

WRITING LAB.オリジナル吸取紙発売
WRITING LAB.オリジナル吸取紙発売

文字を書いて、インクが乾くのを待つ時間が万年筆らしい心の余裕を感じさせる時間だと言う人がいますが、仕事中はそういう訳にもいかない。

でも実は忙しくなくても私はインクが乾くのを待っていられない方で、すぐにページを閉じてしまって、向かい側のページにインクを付けてしまったり、FAX用紙に書いたものを乾かさずにFAXに挟んで、ガラスにインクをつけてしまったりしています。
インクが乾く少しの間くらい待ってもいいと思っていますが、なかなか改まらずついついインクの汚れを作ってしまいます。

ライティングラボのノート・ダイアリーのサイズをB6サイズとしてから、私たちはB6サイズのモノについて毎週土曜日の打ち合わせで話し合ってきました。
その中で皆で面白いと認め合ったものを少しずつ商品化していくつもりで動いています。

B6サイズのノート・ダイアリーカバーテクスチャーシリーズとともに発売しました3冊パックのオリジナルノートに続いて今回、吸取紙を作ってみました。

1950年代頃のフランスではこの吸取紙に広告を印刷して配布していて、今も様々なデザインのものが残っていて、コレクターも存在します。
これは以前からやってみたいと思っていて、WRITING LAB.の吸取紙をどこかのコレクターが手に入れて数十年後に誰かが見ていたら、と思いました。

ライティングラボのロゴは前回のノートの時に作った新しいもので、これを一面に配していて、反対側は全くの無地になっていますが、どちらの面もインクをよく吸います。
吸取紙を作りたいという意見が出て、皆がノートやダイアリーを美しく書きたいと思っていることを知りました。
ノート・手帳を美しく書くことができれば仕事もより楽しくなる。
そんな想いを皆抱いて、この吸取紙を作りました。

太字のペンやインク出の多いペンは特にインクがなかなか乾かなくて、すぐにページを閉じることができませんし、細字であっても紙質やインクの銘柄で乾きが遅いこともありますので、吸取紙はなかなか便利だと思います。

⇒WRITING LAB.オリジナル吸取紙

ブルーのインクで使いたい ペリカン特別生産品M605マリーンブルー

ブルーのインクで使いたい ペリカン特別生産品M605マリーンブルー
ブルーのインクで使いたい ペリカン特別生産品M605マリーンブルー

店ではいつもブルックスブラザーズのオックフォードシャツのブルーを着ていて、1週間ローテーションできるように同じものを6着常備しています。
生地が厚く丈夫なところが気に入っていて、今では少なくなってしまったメイドインUSAというところが嬉しく、こだわっています。
ノーアイロン仕様ではないので、妻には迷惑をかけているけれど。
ブルーのシャツを着るのは、服が合わせやすいということもありますが、インクが飛んでも目立たないからです。

ペン先調整器を回して調整していると、たまにインクが飛ぶことがあります。
ほとんど顔に飛びますが、たまに服に飛ぶこともあるためにブルーのシャツにしているわけですが、それだけブルーのインクが入った万年筆を調整していることが多いということを表しています。

やはり万年筆のインクにブルーのインクを使われている方が多く、その中でもペリカンのロイヤルブルーが絶対的な売れ筋のインクです。
万年筆に入れても、ボディの内側に付着しにくく、水に流しやすい万年筆にも優しいインクですし、他のインクに比べて紙に書いた時に乾きが早いのも特徴です。
ペリカンからはロイヤルブルー専用の消しペン、スーパーシェリフが発売されていて、これを使うとロイヤルブルーが本当にきれいに消えます。
例えばスケジュール帳に書いた予定が変更になった時など、きれいに書きなおすことができますので、万年筆を鉛筆やパイロットのフリクションボールペンのように使うことができて、大変便利です。

世にたくさんのインクが発売されていて、いろいろ目移りしますが、最もスタンダードなインク、ペリカンロイヤルブルーを見直してみてもいいと思います。

先日、ペリカンから特別生産品M605マリーンブルーが発売になりました。
2001年にもマリーンブルーという万年筆がM600で発売されましたが、それは金具の色が金色で、今回のM605マリーンブルーはシルバーの金具になっていて、よりシャープですっきりした印象の万年筆になっていて、よい現代的な仕上がりになっています。
ブルーの透明軸は、ブルーのインクを入れてほしいと誘っているように見えてしまいます。

程よいインクの出で、キレが良く書くことができるのはやはりペリカンのインクで、やはりとても相性が良いと思います。
でもインクがたくさん出てヌラヌラと書きたいということでしたら、パイロットのインクを入れるとかなり出が多くなって、書き味もさらに良くなります。
愚直なくらい真っ青な、ブルー、濃く強い青の色彩雫の朝顔、赤みがかった紫陽花などはヌラヌラ書くことができるインクの代表です。

ブルーのインクと決めつけてしまうのはあまり好きではありませんが、新しく発売されたペリカンM605マリーンブルーには、好みの書き味が得られる理想的なブルーのインクを入れて使いたいと思う人が多いのではないかと思います。

仕事を楽しんでいるか

仕事を楽しんでいるか
仕事を楽しんでいるか

自分が好きなことを仕事にしているので、毎日が楽しい。
でも同じ楽しい日々の中でも、本当に身が入っていたかどうかは、自分のダイアリーを見返してみると明白に表れています。

前日やそのずっと前に、やるべきことを押さえて、ToDoリストに使っているオリジナルのウィークリーダイアリーに記入しておく。
仕事中にそれをこなせていればいいけれど、ダイアリーに向かう時間が取れなければ、次の日の行動もバラバラなとりとめのないものになっています。
店でしかできないことと、その前にやっておくべきこと、あるいは家で一人でないとできないことがあって、それをコントロールするのがダイアリーの役目です。
それは仕事の出来とは全く関係がないと思うけれど、ダイアリーが自分の文字で埋まって、しかもきれいに書くことができればとても気分が良くて、満足感の中で幸せな睡眠をとることができる。
手帳の出来と睡眠は、私には大きな関係があると思っていますが、それ以前に仕事に身が入っていることと、睡眠とが関係があるのかもしれません。

9月にオリジナルのリスシオダイアリーが完成して、毎年使って下さっている方々や興味を持って下さっている方々が来てくれたり、インターネットで注文してくれたりしています。
自分たちが企画して、売っているものに共感して、買ってもらえることは本当に有難く思えて、当たり前ですが、私はこのダイアリーを使う最後の人になっているだろうと思います。
自分で使っていて改良を少しずつ続けていきたいと思っていて、それはいつまでも完成しない、変化し続けるものになると思っています。

六甲アイランドの鞄工房ル・ボナーさんが製作してくれたオリジナルダイアリー用のカバーが出来上がりました。
携帯に向くシングルタイプはマンスリーダイアリーとウィーウリーダイアリーを入れるイメージですが、もちろんマンスリーダイアリーとノートやデイリーダイアリーと組み合わせてもいいと思います。

ダブルは1冊で仕事の全てを記入したいというものです。
その1冊を打ち合わせや会議に持って行って仕事ができる。スケジュール機能とメモ/ノートのドキュメント機能を一緒にすることができるのがこのダブルタイプです。
革質とカラーバリエーションは抑えた色で、実用性を重視したものになっています。
シュランケンカーフはカーフならではの柔らかい手触りですが、シュリンク加工により傷が付きにくい丈夫な革で、ル・ボナーさんは鞄でもこの革をよく使います。

キャメルのみノブレッサーカーフを使用しています。
ノブレッサーカーフは艶と張りのある革で、いつまでも最初の状態を保ちきれいに使うことができる。インクなどが付いてもすぐに拭けば取り除くことができます。
昨年はわずかな数しか作ることができず、お客様にご迷惑をかけてしまいましたが、今年はル・ボナーの松本さんのおかげでたくさん作ることができました。
年頭に、今年一番作りたいものを自問自答してダイアリーカバーを作りたいと思いました。
個人的にも思い入れがある、ル・ボナーさん、分度器ドットコムさん、当店のロゴが入った共同企画品。

私好みの渋めの色展開ですが、こういうものが大人には一番使いやすい。
派手ではないけれど、いつまでも傍らにあって欲しいものができたと思っています。

⇒オリジナルダイアリーcid=⇒オリジナルダイアリーkeyword=%A5%AA%A5%EA%A5%B8%A5%CA%A5%EB%A5%C0%A5%A4%A5%A2%A5%EA%A1%BC” target=”_blank”>⇒オリジナルダイアリー

ラミーの良心

ラミーの良心
ラミーの良心

万年筆は値段が高くなるほどどこか良いところがあって、高いものと安いもので購入を迷った時は、予算に問題がなければ高い方を買うべきだと私は信じています。
その時財布は苦しくなって、お昼ご飯を抜いたりしなければいけない事態になったりする人もいるかもしれないけれど、値段にそれなりの理由があるから万年筆は安心して買うことができるのだと思います。

それは他のどんなものでもそうだと思いますし、商品を提供する側はその辺りをきっちりと守る義務があるのではないかと最近強く思います。
その物の価値に値段が見合っていれば、お客様はその物を買って下さるし、高いと思うとその物は売れる数が少なくなります。
万年筆はペン先の仕上げ以外は人の手を借りずに大量生産品として作ることができて、たくさん作るほど値段が安くなる。
そしてハンドメイドにこだわれば生産数も少なくなり、1つずつの値段が高くなる。
イタリアの万年筆の値段が、ドイツの万年筆に比べて高いのは、もちろん値付けセンスの違いもあると思いますが、作る数が大きく関係していると思っています。
たくさん作ってたくさんの人に使ってもらうことを前提にしているドイツのものと、あまり数は作らず、大胆なデザインを採用するイタリアのものとは狙っているターゲットの人の数が全く違う。
その辺りに気を回すと、イタリアのペンが高いことに腹が立たなくなりませんか?

ラミーは最もドイツらしい物作りを体現しているメーカーのひとつだと思います。
1本ずつの値段をなるべく抑えて、多くの人に機能とデザインの優れた万年筆を使ってもらおうとするラミーの物作りの考え方は、本当に立派だと思います。
あまり予算はないけれど万年筆を使いたいと考えている人には、私は迷わずラミーを勧めて、その考え方も知ってもらいたいと思っています。

ラミーの最も代表的な万年筆は2000だと、誰もが認めるところだと思います。
1966年に、2000年まで通用する万年筆を目指して発売された2000は、ラミーの価格についての考え方もすでに込められていて、14金のペン先で吸入式でありながら破格の24150円という価格を維持している。

もちろんその価格で売るために安く仕上げているところもありますが、万年筆の世界の少しでも良いもの、満足感をより高めたいという考え方が一般的で、価格上昇がついて回ることに逆行する考え方にも好感を持ちます。

艶を消したボディにはラミーのマークはどこにも入っていなくて、ペン先も他の万年筆と比べると極端に小さい。
写真で見るだけではコンパクトに見えるラミー2000ですが、手に取って書いてみると、握り応えのある太目のボディの、本格的な万年筆であることが分かります。
私はラミー2000は、ペリカンM800・モンブラン146・149にも対抗できる万年筆なのではないか、ラミーがその良心に基づいて作った万年筆の中の万年筆が2000なのでは、とさえ思うのです。

⇒LAMY 2000

一本だけというわけにはいかない万年筆の使い分け

一本だけというわけにはいかない万年筆の使い分け
一本だけというわけにはいかない万年筆の使い分け

恩師に手紙を書く時も、仕事について考える時も、立ったまま手帳に書き込む時も、1日を振り返ってコーヒーでも飲みながら日記帳に向かう時も1本の万年筆だけでこなすことがかっこいいのではないかと、万年筆屋をしていても未だに思います。

そんな万年筆はまさに生涯の友であり、その人にとって代え難いものだと思います。
生涯の友に相応しい万年筆だと私がイメージするのは今の心境ではペリカンM1000です。
手帳も書かないといけないので、ペン先はEFを選択します。
ペリカンM1000はペン先が極端に柔らかいので、筆圧を抜いて手帳に書く、強弱をつけて手紙を書くという使い方ができます。
シガーのように太くて長いペリカンM1000をシガーケース型ペンケースSOLOに入れて持ち歩く。
そんなふうに万年筆と付き合うことに憧れます。

でも10数本を用途に応じて使い分けているのが現実で、それぞれに出番があることを思うと、私は1本だけを使い続けることができる人間ではないようです。
数多くある万年筆をいろんなカテゴリーに分類できますが、私は大きく二種類に分けることができると、自分の使い方から勝手に思っています。

ひとつは25g以上の重量がある大型と言えるレギュラーサイズ以上の万年筆と、それ以下の重さのコンパクトな万年筆。
そのままでは単なる大きさの違いによる分類ですが、その違いは万年筆の使い方、使用感を左右する重大なものであると言うと少し大袈裟ですが、万年筆を選ぶときに考慮してもいいことだと思っています。

手紙や原稿用紙を書く時に使いたくなる万年筆と、メモ帳やノートに使う万年筆とはいつの間にか使い分けしていて、例えばいつもメモ書きに使っているペリカンM450を手紙に使うと何か座りが悪いような、文字が軽いような気がしたり、ノートにいつも手紙で使っているペリカンM800を使ってみると持て余すような感覚にとらわれることがあります。

それは他の人の共感を得られるかどうかは分らないけれど、単純に大きさが違うだけではない、と思うようになりました。
ペリカンM800は大きくて重量があるので、机に向かって長時間書き物をするのに向いていて、M400はコンパクトなので、胸ポケットに差して携帯するのに向いているという説明を今までお客様にしてきました。
用途としてそれは間違っていないと思っていますが、その理由はもっと深いところにあるのではないかと思います。

M800やパイロットカスタム845など大きな万年筆・レギュラーサイズの万年筆は重量があって、手の力を抜いて、その重さで書くようにするととても楽に書くことができます。
重量があるので力を入れなくてもインクがよく出てくれて、より滑らかに書くことができる。
大型の万年筆が長時間筆記しても手が疲れない机上用の万年筆だと言われるのは、このあたりにあります。

それに対して小型で軽い筆記具、M400やM600は机に向かわなくても扱いやすい、極端に言うと立ったままでも使いやすい。
その筆記具の重さに任せて文字を書かない人、身近なところで言うと万年筆でも毛筆のように腕で文字を書くような人にはこの軽い万年筆の方が向いているのかもしれません。

レギュラーサイズの万年筆は便箋や原稿用紙に、小型の万年筆をノートやメモ帳に使いたくなるのは、そのインク出も関係があるのかもしれません。
便箋や原稿用紙は表面だけの筆記なので、裏写りなど気にしなくても問題ないですが、ノートは裏面にも筆記するため、あまりインクが出すぎる万年筆は向いていません。そのため直感的にインク出が多くないものを選んでいるのかもしれません。
レギュラーサイズの万年筆としてはペリカンM800、M1000、パイロットカスタム743、823、アウロラマーレイオニア、デルタドルチェビータ、ビスコンティ、オマスミロード、パラゴンなどなど、昨今の万年筆の中心はこの辺りにあるようです。

ノートやメモに合った万年筆はペリカンM400、M600、パーカーソネット、国産の1万円クラスなど、こちらは実用品的で簡素だけど渋い存在のもの。
アウロラオプティマや88、セーラープロフィット21、パイロットカスタムヘリテイジ912など国産2万円クラスはそのどちらにも分類していませんが、どちらでも使う人の采配で役目を与えることができるものだと思います。
私はアウロラ88クラシックはインク出の多さから、机上用に役目を与えています。

皆様それぞれが、それぞれの万年筆に与える役割はこれにとらわれる必要はもちろんありませんが、万年筆選びのご参考にしていただければと思います。

WRITING LAB.オリジナルノートとB6ダイアリー・ノートカバー

WRITING LAB.オリジナルノートとB6ダイアリー・ノートカバー
WRITING LAB.オリジナルノートとB6ダイアリー・ノートカバー

WRITING LAB.のノート&ダイアリーのサイズをB6に定めました。

手帳サイズでは小さすぎるし、A5サイズでは大きすぎる。
手に持った時のバランスで、B6サイズほどかっこいいサイズはないとファッション的な理由からB6サイズをブランドのサイズとしましたが、その決定の仕方はWRITING LAB.的だと思い満足しています。

持っているところがかっこよく見えるサイズだと思うと、何よりも魅力的に感じられる、自分の中の二重人格に気付きました。
でも万年筆で書く時、手帳では小さすぎると思った人にはぜひ目を向けて欲しいサイズがB6サイズです。

以前はそれほど定番ではなく特殊なサイズでしたが、最近はB6サイズのノート・ダイアリーは多くの種類が発売されていて、どのお店のダイアリー売場でも大きなスペースをとって、B6サイズを揃えています。
当店ではB6サイズのダイアリーとして、ユナイテッドビーズというメーカーのものを多くの中から厳選してご提案させていただいています。
シンプルさと書きたいと思わせる雰囲気が適度なバランスで融合しているとても工夫されている罫線レイアウトだと思っています。

9月20日のこのコーナーでもご案内していますが、WRITING LAB.で企画して、神戸の革職人ベラゴの牛尾龍氏が製作したB6サイズの本革カバー新たに発売していますが、そのカバーでは市販されているノート・ダイアリーをメインでお使いいただき、そのサブノートとしてWRITING LAB.オリジナルノートを使っていただきたいと思いました。

サブノートとして、メインのノートと一緒に差し込むことができるように、表紙を1cm幅狭くしています。
かなり薄手のノートですが、このノートの使い方についてもWRITING LAB.としてのこだわりがあります。
ノートの使い方について小学校で教えられたことが私は最高の教えだといまだに思っています。
それは教科ごとにノートを使い分けるというもので、そうすることによって最適な罫線のノートをそれぞれの科目で使うことができるし、その科目がない時は学校に持っていく必要はないので、荷物を軽くすることができます。
それに書いた内容がどこに書いたのか分からなくなる、書いたもの散逸を防ぐ役割もあります。
このノートは、この小学校の時のノートの使い方を仕事においても生かしたいと思いました。

本文は私たちが入念に試書きして決定したOKプリンス、表紙は独特風合いを持ったファーストビンテージを使用していて、これらの紙にたどり着くことができたのは、豊富な紙の知識を持つ大和出版印刷の川崎さんの協力に依るものでした。

このノートからライティングラボのマークを新しくしていて、後ろ表紙中央にライティングラボのブログに登場するキャラクターであるトロンコとボンクがいます。
表表紙のフレームは地図上で鉄道の路線を表す線をイメージした時計の文字盤にもよく使われる線をフレームとして、アナログでのんびりとした雰囲気を出すようにしています。
WRITING LAB.のノートとして、ほんの1歩踏み出したばかりですが、ブランドのサイズをB6と定めたこと、オリジナルノートを発売したことは今後の展開において大きな意味があったと思っています。

工房楔・イベント後の新作紹介

工房楔・イベント後の新作紹介
工房楔・イベント後の新作紹介

毎年当店の開店記念の日に合わせて、工房楔の永田さんが開催してくれるイベントが終わりました。
毎回感じることですが、イベントが終わるとお祭りの後のような寂しい気分になってしまいます。それだけこの店に永田さんがいること、たくさんのお客様が来てくださることを楽しんでいました。

永田さんがひた向きな情熱を傾ける木の杢というのは、その材を材木屋さんで購入すれば洩れなく入っているものではなく、入っているであろう材にたまたま様々な形で入っているものです。はずれを引くと中には全く入っていなかったり、割れがあったりしますので、それを博打に近いものだと私などは思いますが、だからこそ永田さんは木に惹かれるのかもしれません。
そんなリスクを恐れずに勇気を持って、これはと思った材に持ち金の全てをつぎ込むことができるところも永田さんが一流の木工家として存在し続けている秘訣のひとつだと思っています。

ハンドメイドにはハンドメイドの、大量生産品には大量生産品のそれぞれの方法論があって、言うまでもなく両者は全く正反対の方向を向いている。
あるモデルをカタログに載せて、それを世界中で同じイメージ戦略に乗せて販売しようと思った場合、バラつきがあってはいけない。
たくさんの職人さんが作業に当たるので、ある人ができて、ある人にはできなくては困る。
どうしても難易度の低い作り方、素材の扱い、安定供給できる素材の選択になってしまいます。
永田さんは自分で材木屋さんに足を運び、これで何か作りたいという素材だけを仕入れて、木目などを見ながら、それが一番美しく出る削り方をしていく。
ひとつひとつのバラつきは当然出て、ひとつの塊から取れる数も少なくなる。
ひとつひとつを最も良くしたいと職人が思った末に出来上がったもの。
永田作品にはそんな魅力が溢れています。
様々なモノを見て、手にしてきた私たちがモノを突き詰めると、永田さんの作る木製品のようなものにたどり着くのは、そんな理由があるのかもしれません。

前置きが長くなってしまいましたが、工房楔の万年筆ケース コンプロットに新作が出て、先日のイベントでお披露目されました。

コンプロット4ロングは携帯することを念頭に作られた、コンプロット4ミニを長くしたものです。
コンプロット4ミニはペリカンM800が入る一番長いものの代表で、モンブラン146は年代によって入るものと入らないものがあります。
その制約から解放したケース コンプロット4ロングは、中屋万年筆ロング、セーラー島桑、楔クローズドエンドなど、レギュラーサイズよりも大きなオーバーサイズの万年筆を4本収めることができます。

永田さんが作られたものの中から、大きな材が手に入りにくく、今後もう作ることができないと言われているチューリップウッドと見事な孔雀杢を見せる黒柿を仕入れました。
木目が美しくつややかなチューリップウッドは使い込むとさらに艶が出てきます。
黒柿はさらに模様が際立ってくるのが特長です。

万年筆を入れて持ち運ぶためのモノだと考えるととても贅沢なものですが、永田さんが提案する万年筆を収納する、木の塊から削り出した銘木のケースが、大量生産品の方法論と真逆の存在であって、魅力があることを日常使いするとその良さ、満足感がよく分かります。

⇒コンプロット4ロングcid=⇒コンプロット4ロングkeyword=%A5%B3%A5%F3%A5%D7%A5%ED%A5%C3%A5%C84%A5%ED%A5%F3%A5%B0″ target=”_blank”>⇒コンプロット4ロング

サマになる

サマになる
サマになる

9月23日で当店は開業から丸6年が経ち7年目に入ります。
39歳で始めた仕事で、その時の自分を今から思うと考えの足りない若造だったと思いますが、例えば今から5年後に今の45歳の自分を振り返って、あの頃は本当に未熟だったと言えるようになっていたい。
少しずつでも成長していきたいとは、いつも思っています。

でも今から6年前の自分やこの店の状態などを振り返るとよく今まで続いてくることができたと思います。
それほど今から思うと、当時の自分も店も貧弱でした。
貧弱だというのは、品数が少ないということと少し違っていて、夢を追い求めて万年筆店を始めましたという気持ちだけで、お客様にこの商品を買ってもらいたいというメッセージがなかったということで、お客様に助けられたという以外の何ものでもありません。

さすがに6年経って何となく形のようなものができて、サマになったこともできてきたように思います。
全てがオリジナルとは言えないけれど、他所ではなかなか買うことができない腕の良い職人さんたちが作る革製品や、銘木にこだわった工房楔の木製品を一番多く揃えられるようになったのも、初めから意図していたわけではなく、たまたまの出会いがそのように導いてくれたと思うと、本当に恵まれていたと思うのです。

ノートやダイアリーのサイズもいろいろ試行錯誤してきました。
分度器ドットコムさん、大和出版印刷さんとともに企画したオリジナル正方形サイズのノート/ダイアリーは、独特の罫線レイアウトや万年筆で書きやすいリスシオ1紙の存在により、多くの人に愛用していただいてもらっています。

WRITING LAB.のノート/ダイアリーのサイズをB6と定めたのは、B6サイズが一番モノとして魅力のあるサイズだと思ったのと、開いて持っているところがとても美しく見えるサイズだと思ったからで、WRITING LAB.らしいサイズの決め方だと思っています。
B6サイズ用ノート/ダイアリーカバーテクチャーシリーズには、3種類の革があり、それらの革の違い質感で選んでいただくように黒のみで作ってみました。

ブライドルレザーは白いロウが表面に塗られていて、2か月も使い込むとロウが革に染み込んで艶が出る。もともと馬具に使われるような丈夫な素材です。
ベルーガはソファなどの家具によく使われる革です。手触りが良く、柔らかいのに強靭な性質で、いつまでもきれいな状態で使うことができるでしょう。
ナッパCBはイタリアの名タンナーバタラッシィがなめした革で、使い込んでいくと艶が出てくるエージングする革です。
規格のB6サイズに合わせていますので、B6サイズのノートやダイアリーなどのその選択はかなりあるだろうと思います。

更にA7サイズのメモ用ジョッターも付属しています。
WRITING LAB.のサマーオイルメモノートの紙を半分に2つ折りして使うこともできますし、A4サイズを8つ折りにしてA7になりますので、ミスコピーの裏をより活用することができます。

このカバーにはB6サイズの表紙幅を少し短くしたWRITING LAB.オリジナルノートも3冊付属しています。
横罫に2本のマージンを入れた独特の罫線をノートは、メインのノート、ダイアリーとともにカバーに差し込んで、サブノートとしてお使いいただけるようにしています。
カバーの製作は当店の近くにアトリエを構える革職人ベラゴの牛尾龍氏が製作していて、以前よりWRITING LAB.として牛尾氏と共同作業をしたいと思っていましたので、やっと実現することができました。

6周年を前にまた出会いを形にすることができました。