工房楔の新作 マンハッタンボールペン

工房楔の新作 マンハッタンボールペン
工房楔の新作 マンハッタンボールペン

ボールペンは他の筆記具よりもお仕事で使う機会が多いと思いますので、気に入ったものにすると書くことが楽しくなり、仕事時間を楽しくしてくれると思います。
私も万年筆だけではなく、ボールペンにもこだわってたくさんのボールペンを使ってきました。
ボールペンにこだわると海外のものが多くなり、それらの多くは尻軸を回転させて芯を出すツイストノック式で、それがもはやボールペンのメカニズムとして当たり前になっていました。
しかし、ボールペンでもシャープペンシルでもノックボタンを押して芯を出す、ノック式の方が直感的でスピーディーに芯を出すことができるので、ノック式ボールペンの方が使いやすいと内心思っているのは私だけではないと思います。

直感的な動作のノック式のボールペンですが、所有欲を満たすものは意外と少なく、私の知る限りではラミー2000、カランダッシュエクリドール、アウロライプシロンなどあまり選択肢はありません。
工房楔の永田さんは、おそらくそういったことも踏まえて今回の新作ボールペンではノック式にこだわっていました。

こうして完成した現物を手にとって使ってみると、工房楔の素材をそのまま削り出したプリミティブな仕上げには豪快ささえ感じられるノック式の方が似合うのかもしれないと思っています。

ノック式の使いやすさと、使い込んで変化して手に馴染んでいく銘木の軸の組み合わせ。
マンハッタンボールペンは、まず自他共に最も楔らしいとする素材「花梨」でスタートしましたが、今後他の素材でも作っていく予定になっており、楔のボールペンでは回転式のパトリオットボールペン、ジェントルメンボールペン、ノック式のマンハッタンボールペンという3種類の中から選ぶことができるようになりました。

マンハッタンボールペンの芯も、最も標準的で多くの種類が発売されているパーカーサイズになっていますので、芯をいろいろ入れ替えて、好みの書き味に近づけるなどカスタマイズしやすくなっています。

最近では、インク粘度が低いデュポンディフィの芯が人気があります。

今までのボールペンよりも筆圧が軽くてすむため、万年筆をいつも使われている方には力を入れないと書けないボールペンに対するストレスがかなり軽減されるものですので、まだ試されておられない方はぜひお試しください。

太軸で握りやすいマンハッタンボールペンと滑らかで軽く書くことのできるディフィ芯の組み合わせは万年筆ユーザーにこそ愛用していただきたいものだとお勧めします。

*現在、発売と同時に品切れが多くなっています。入荷予定もございますので、順次ご案内させていただきます。

ペリカンM320パールホワイト

ペリカンM320パールホワイト
ペリカンM320パールホワイト

昨年末ペリカンからとてもきれいな限定万年筆が入荷しました。
M320パールホワイト。トリュフボックスのようなケースに小さなM320とチョコレート色のインクが入った専用インクボトルと小さなブロックメモが収められ、粋な演出がされています。

このM320パールホワイトはペリカンの最も小さな万年筆M300をベースとしています。
M300はペリカンらしく吸入式の緑縞のボディの男性がポケットに差したり、手帳のペンホルダーに差して使うような印象の万年筆で、M800などのそのまま縮小したような面白いミニチュア的な万年筆です。
しかし、男性の手には小さめのこの万年筆も女性の手にはミニチュアではなく、手帳などに日々使っていただける実用的なものだと思っています。

男性である私も昨年からM300を使っていますが、その味わい深い書き味、ベストなどの浅いポケットにも差せる小さなボディの便利さなどから、おそらく現行品の中で最も小さなこの万年筆の信奉者になりました。

書くためにはある程度大きなボディの方が手が疲れないし、ペン芯のインク容量も多く早書きにも向いているので、レギュラーサイズの万年筆ばかりに目を向けていた私にとって、意外な実力を発揮したわけです。

万年筆を日々販売していて、女性のお客様に万年筆をお勧めすることが多々あります。
今までいくら軽くて小さなボディだからといって、定番品の緑縞M300をお勧めすることはありませんでした。
それはやはりM300には男性のためのミニチュアペンという雰囲気が色濃くあったからです。

女性にお勧めする万年筆は、サイズが小さい・重さが軽い・色が華やか、だけでは何か足らず、雰囲気を持っているということが最も大切な、そして気に入っていただける条件だと思ってます。そしてM320パールホワイトにはその雰囲気が備わっていると思います。

ペリカンの限定品は、ボディの素材、色を変えることで万年筆はこんなにも印象が変わるのかといつも驚きます。
先に発売されている同じく限定品のM600グリーン・オ・グリーンとともに、象牙色の専用ボディを持つM320パールホワイトは、ペリカンが長い年月をかけて練ってきた実用的に完成された部分と華やかさ、雰囲気が合わさったとても魅力的な万年筆だと思っています。

忘れていた書く楽しみ ペリカンM1000

忘れていた書く楽しみ ペリカンM1000
忘れていた書く楽しみ ペリカンM1000

今までM1000という万年筆と何となく距離を置いていたようなところがあって、それは書くための実用性から少し離れたところにこの万年筆がいると思っていたからでした。

M1000に対する私のその印象は今でも間違ったものではないと思っていますが、なぜ万年筆を使うのかということをよくよく考えると、それは実用性だけを求めてのことではありませんでした。するとM1000を避ける意味はなく、使い手とM1000にはそれぞれの付き合い方があるということを多くのお客様方に教えていただきました。

私がM1000をかわいそうにも黙殺している間も、何人ものお客様が店にないM1000をオーダーして下さり、その都度取り寄せで対応していました。
今は同僚とも言える駒村氏もM1000の3Bをオーダーしてくれて、使ってくれていますが、M1000の3Bで原稿用紙に書くのが良いと言います。

文筆業ではない彼が原稿用紙に物を書くという発想に驚きましたが、確かに原稿用紙のマス目に細字寄りの万年筆で書くとバランスが取りにくく、書かれた文字もあまりサマになりません。太めの万年筆の方が合っていると思います。
それに原稿用紙の紙は非常に質が良いので、3Bのようなインクがたくさん出る万年筆のインクもよく吸収してくれます。

万年筆の字幅の中でも最も太い3B、そしてその3Bの中でもペン先が柔らかく、たくさんインクが出るM1000の筆跡が最も太く、そして書き味が良い。
私も以前から原稿用紙を上手に使いこなしたいと思っていましたので、M1000の3Bが急激に気になり始め、ついに手に入れて今年を象徴する1本にしました。

ブログでも書きましたが、万年筆に名前などの文字を彫刻することをしてみたいと思っていましたので、何か書く時にいつも心掛けたいと思っている「切り口を変えて考える(Think,shift the angle)」という言葉を彫刻してもらいました。
書いていて本当に楽しい万年筆、使うよりも先に書きたいという欲求が来る万年筆で、万年筆を使い始めたばかりの頃の気持ちを思い出させてくれます。
この万年筆に書くために原稿用紙に何か書きたいと思い、ブログやホームページの下書きを電車の中で立ったまま書く時以外は、M1000で原稿用紙に書くようになりました。

この万年筆と原稿用紙の組み合わせのもうひとつの私にとっての魅力は文豪気分を味わえるというところ。
実際にM1000を愛用した文豪を知らないけれど、この豪快な万年筆と文豪という言葉がすごく合っているような気がしています。

ペリカンの代表的なボディカラー緑縞ではなく黒軸を選んだところも私らしいと思ったりして、とても気に入っています。
その存在は当然知っていて、お客様との話に出たり商品として扱ったりしていたM1000が自分にとってとても近い存在になって、毎日手にしたい万年筆になりました。

さすがに3Bは太すぎて実用性があるとは言い難いですが、他の字幅も(たとえEFでさえも)豪快に使えて、その書き味を楽しむことができるのではないかと思っています。

*M1000で書いているブログ
一期一会
旅の扉
もぜひご覧下さい(ブログ名クリックでご覧いただけます)。

WRITING LAB. サマーオイルメモノート

WRITING LAB. サマーオイルメモノート
WRITING LAB. サマーオイルメモノート

「1億3千万人のための小説教室」(高橋源一郎著)という本を読んで、書くことを学ぶことは、考えることを学ぶことだと改めて認識しました。

書くことは考えることであり、考えなしでは書くことはできない。
この本では具体的な方法はないけれど、なるべく易しく丁寧にアイデアの捉え方から、文体の確立の仕方、参考にするべき小説の紹介までされています。
小説を書こうと思っていない人でも大変参考になる本だと思っています。
書く前に自分の視点(切り口)についてじっくり考えてから書くようにというアドバイスはとてもよく分かります。
自分が題材にしたいと思うものを前に置いて(イメージ)、どうやって切り取ろうかを考える。
ご飯を食べながら、お風呂に入りながら、時には考えながら寝て。

考え続けると、自分が書いてみたいと思える切り口が見つかることもありますし、見つからないまま真ん中から切らなければいけないこともあります。
でも面白い切り口が見つかった時は書くことが楽しくて仕方ない。

それはどこで見つかるのか分かりませんが、私の場合電車に乗る前やバスを待っている時のことが多く、そんな時にはポケットから万年筆を出して、コートのポケットや鞄に入れた愛用のメモノートを出します。

あまり高級ではない紙と土台の4mm厚の革、表紙の薄い革を革紐で綴じただけのとても簡単メモノートですが、今まで使ったメモ帳の中で最も使いやすい。
私のメモを探し求める旅もやっと終わったと思っています。

このメモノートの名前サマーオイルとは、土台に使っている厚い革の名前です。
とても手触りと色合いの良い革で、駒村氏に連れて行っていただいた大阪のハシモト産業さんでこの革を見せていただいた時、一目惚れしたほど質感の良い革です。
この革に出会ってぜひ今回のメモノートの土台に使いたいと思い、薄くしなやかでめくり易い表革を選んで、ハシモト産業の元JリーガーKさんの迅速な協力もあって完成しました。

中紙はあまり質にこだわらず惜しげもなく使えるものが良く、極端な話チラシの裏が理想という私たちの意向を大和出版印刷の多田さんが汲んで下さり、印刷で出た余りの紙(ヤレ紙)というものを用意してくれました。
もちろん筆記には何の支障もありません。

私の使い方は中紙を重たいくらいに厚く綴じて書きたいことをどんどん書いていく。
中身が減ったら革紐を締めなおす。
書いて、パソコンやダイアリーに清書したら破って捨てていくようにしています。

ノートなら書いたことで満足してしまう私ですが、このメモノートなら書いただけで満足することがなく、何とか完成させたいと思える。

とてもシンプルでひねりのないものですが、何か書きたい気持ちにさせてくれて、書きたいと思った時に書くことに集中できるメモノートになりました。
万年筆を道具として愛用されている皆様にぜひ使っていただきたいと思っています。

*近日中にホームページでご紹介させていただきます

年賀状と万年筆

年賀状と万年筆
年賀状と万年筆

1年で最も万年筆を使う絶好の機会が年賀状を書く今の季節で、毎年今だけは万年筆を使うという人はかなり多いようです。

11月下旬から12月中旬にかけて、万年筆の修理の依頼件数は増えるし、通常よりもカートリッジインクの売れ行きも良いと思っています。
このシーズンは多くの人が万年筆のことを、あるいは手書きのことを思い出す季節なのかも知れません。

そう考えると手書きするために万年筆を使いたいと思うのは我々だけでなく、一般的に思うことなのだと気付いたりします。
でも一年に一度だけしか、文字を書くことを意識する機会がないというのは少し寂しい気がします。

一年中万年筆で文字を書いておられる皆様には無縁な話ですが、一年に一度年賀状の時だけ取り出して使うのに適した万年筆は、キャップの機密性が高く、ペン先が乾きにくいということが最も大切な条件になります。

それぞれインクを入れっぱなしにしてテストした訳ではありませんが、私の経験やお客様方のご意見を総合すると、その条件をクリアするのはパイロットカスタムシリーズ、ペリカンスーベレーンなどになります。

特にカスタムシリーズの乾きにくさはダントツで、そのペン芯の構造が特長的で、インクが通る溝と空気が通る溝が別になっていること、カートリッジなどの純正のインクの乾きにくさなどの要件がそれを可能にしていると思われます。
ペリカンもキャップの機密性、ペン芯の性能の高さがあっての評判だと推測します。

今年プラチナから3776センチュリーという新しいシリーズが発売になっていますが、この万年筆もキャップの機密性の高さに気を配っていて、ペン先の乾きを長期間防止することを謳っています。

万年筆には長期間放っておいてもペン先が乾きにくいものと、乾いてしまうものがあります。でもただ単に乾かないものが良いという事ではなく、構造の違いで起こる現象というだけで、通常の使用には何ら問題はなく、ただ気を付けるというだけなのです。

お年玉付き年賀はがきの用紙についても注意が必要です。

再生紙とインクジェット紙があり、宛名面はそれほどの違いは今までなかったので今年も大丈夫だと思われますが、本文面の紙質がかなり違います。

再生紙は普通のはがき用紙ですが、インクジェット紙は写真などの高精度画像の出力をきれいに印字できる表面加工が施されていて、万年筆のインクが異常ににじんでしまいます。
インクジェット紙の本文面に万年筆で書かれる時はカーボンインクなどの顔料系インクを使わなくてはいけません。

万年筆用の普通のインク、染料系の万年筆用インクを比べるとかなり少なめのにじみになるはずです。
しかし、顔料系のインクを入れて、1年間置いたままにしておくと、インクが完全に固まってしまいますのでご注意ください。

一年に一度かもしれませんが、書く事をより楽しいものにする万年筆をぜひ使っていただきたいと思います。

⇒パイロットカスタム743

満寿屋の原稿用紙

満寿屋の原稿用紙
満寿屋の原稿用紙

原稿用紙を上手く書くのは意外と難しい。
縦書きに慣れていないといけませんし、あの枠の中にバランス良く文字の大きさを合わせないといけない。
適当に枠からはみ出して文字を書いたりするのは、何でもないようで実はセンスが要求されたりします。
文豪たちの真似をしてたまに原稿用紙にチャレンジしますが、私は上手く書けた試しがありません。

そんな私が言っても説得力がありませんが、原稿用紙に使ってサマになる万年筆の字幅はB以上なのではないかと、原稿用紙を使った少ない経験から思っています。
あまり細くて小さい字だと文字が連続しないというか、原稿を書いているという勢いがなく小学生の作文のような体裁になるので、無理をして大きく書こうとしていました。

当店では原稿用紙もご用意しています(店頭販売のみ)。
原稿用紙の中でも最も紙質に優れ、バリエーションも豊富だと思っているのが満寿屋の原稿用紙で、定番ラインを揃えています。

黄色っぽい紙のオリジナル紙と白いデラックス紙があります。
オリジナル紙は、黒やブルーブラックなどの暗めの色が合うようで、なかなか文豪風。
インクにじみが少なく、書いた文字のまま出る紙質です。
白いデラックス紙は、インクの伸びが良く、書き味が特別良い紙です。
少しにじむ傾向にありますが私はとても好きな紙です。

罫線の形も選ぶことができます。
一般的な原稿用紙の罫線の形、大きな字が書きやすいルビなしの罫線。
書かれる文字のスタイルや好みに合わせて罫線を選ぶことができます。
インクの色も非常に重要で、原稿用紙の罫線と同じくらい気分を盛り上げてくれるものです。例えば罫線の色とインクの色を合わしてみるのもいいかもしれません。

原稿用紙で原稿を書く人は今や非常に少ないと思いますし、原稿用紙で原稿を書くことができるのは本当に有名な作家の先生しかいないのではないかと思います。
今ではあまり使われなくなった原稿用紙ですが、狂言師の安東先生はこれで手紙を書かれるそうです。

これからペリカンM1000の3Bを使って何でも原稿用紙に書くという事に挑戦してみようと思っています。

*ちなみに満寿屋というのは、原稿用紙の商品名で、会社名は桝屋と言います。
*満寿屋の原稿用紙は店頭でのみ販売いたしております。ご要望の方はお問い合わせ下さい。

⇒ペリカンM1000万年筆

大和出版印刷 CIRO 白にこだわったノート

大和出版印刷 CIRO 白にこだわったノート
大和出版印刷 CIRO 白にこだわったノート

小学生の時でも、新しいノートをおろして名前を書く時に多少の緊張感はあって、今度はきれいなノート使いをしたいと思ったことがよくありました。

表紙の名前を書く時油性ペンで書きましたが、きれいに書こうと気負いすぎて、強張った変な字になったり、マジックの色のチョイスを間違ったりして、がっかりしてしまうことが本当に多かった。

その時の反省もあって、ノートやダイアリーの表紙どころか、1ページ目には絶対何も書きません。失敗してもカッターで切ってしまえばいい。
さらの(新品の)ノートにペンを立てるというのは小学生の私にとっても、緊張するくらい厳かな行事で、きれいに書きたいと白いページに願ったのだと思います。
この手帳を見て、30年以上前に思っていたそんなことを思い出しました。

大和出版印刷の手帳CIROは、白にこだわった手帳です。
表紙は厳選したリネン素材、中紙は万年筆用紙として極上の書き味を持つ白いLiscio-1(リスシオ・ワン)紙。

でもこの手帳の一番の特長は、罫線も白であるということ。
白い紙に白い罫線を印刷すると見えないのではないかと思われるかもしれませんし、実際遠めに見てこの手帳に罫線が入っていることに気付く人は少ないかもしれません。
でも万年筆のキャップを開けて紙面に向かって文字を書こうとした時罫線が浮かび上がってくるような感覚を覚えます。
光を吸収する紙の質感とわずかに光沢を持つ罫線の白いインクの光の反射の違いが、書こうと思って紙面を意識したに罫線を認識させてくれるということなのかもしれません。
これなら罫線というガイドがありながら、無地の手帳のように使うことができるかもしれません。

製本は大和出版印刷が万年筆用紙製品事業に参入するきっかけになった上製本ノートを製本した今永製本。
加工の上手さには定評があって、開きやすく丈夫な製本を実現しています。
しかし、白い罫線の紙を製本する作業は困難を極め、たくさんの手帳を作ることができませんでした。100の限定生産ということになっています。

すでに多くの注文が寄せられている活版印刷の名刺、あじ名刺を始めた大和出版印刷がまた実験的で面白い企画を始めました。

当店の他、ル・ボナーさん、山科のRiver Mailさんでも販売しています。

⇒CIRO 万年筆専用ノート

大人が初めて使う万年筆

大人が初めて使う万年筆
大人が初めて使う万年筆

新たに靴が欲しいと思い始めて数ヶ月が経ちました。
今までビルケンシュトックで満足していましたが、高価でももっと違うものを手に入れたいと思っていました。
オールデンを買うならコードバンのものがいい、そしてブルックスブラザーズとのコラボものがいいとか言っているうちに生産終了してしまい、オールデンが目の前を通り過ぎていったこともありました。

こんな風に靴を買おうと思うと雑誌をいつまでも見たり、インターネットで調べたりしましたが、こういう時間というのは本当に楽しいと思いました。
その時、万年筆を初めて買おうとしている方も私と同じような思いをしているかもしれないと思い当たりました。

調べていくうちに少しずつ訳が分かってきたり好みができてきたりして、欲しいものが固まります。自分が使っているところをイメージしていると楽しくてすぐにでも買いたいと思うけれど、自分が買おうとしているものが果たして正しい選択なのかどうか不安になると思います。

そのメーカーは万年筆メーカーとしてどのような評価を受けているのか。
そのメーカーの代表的なものを選ぶことができているのか。
他者の真似ではなく、オリジナリティのあるものを選ぶことができているかなど。
私もどうせ買うなら、長く作られている靴の世界を代表する超定番のものが欲しいと思ってイギリストリッカーズ社のカントリーブーツというものを選びましたが、オリジナリティもあると思いました。

それは万年筆において最初に買うべきスタンダードモデルを自分が理解しているから、余計に靴において心配になったのかもしれません。

当店は初めて万年筆を使うという方が多く来店され、とても嬉しく思っています。
そのため初めて万年筆を使うという方にお勧めしたい万年筆は揃えるようにしています。
長く作られていて、機能的にも使いやすい、万年筆の定番でオリジナリティのあるもの。
初めて使っていただくお勧めの万年筆の中には、ペリカンM400とM800がいつも入っています。
ペリカンの万年筆は、ペリカンらしい個性的なデザインを持っていますし、バランスも良い。優れたペン芯はインクによる性能の差が少なく、初めて万年筆を使う人にも扱いやすいところがお勧めの理由です。

M400は細めで軽いボディで、ボールペンやシャープペンシルに慣れている方にも違和感なくすぐに使い出すことができます。1950年代から作られている(60年代に中断していますが)ペリカンを代表するモデルです。
シャツのポケットに差すことができるくらいのコンパクトなボディなので、携帯用の万年筆としても選んでいただけます。

M800は全ての万年筆の中で最も万年筆らしいバランスを持った万年筆です。
大きなボディとハードでタフなペン先により、筆圧の強さを気にせずにガンガン使うことができる、まさに書くための万年筆です。

初めての万年筆選びでM400とM800の2つも候補に加えてご検討ください。

⇒ペリカントップへcbid=2557105⇒ペリカントップへcsid=6″ target=”_blank”>⇒ペリカントップへ

オリジナルダイアリーカバー完成

オリジナルダイアリーカバー完成
オリジナルダイアリーカバー完成

大和出版印刷の武部社長がル・ボナーの松本さんに万年筆の良さを教えてもらって万年筆に目覚めなかったら、極上の万年筆での書き味を持った紙リスシオワンは生まれなかったし、私が武部社長と知り合うこともなかったと思います。

私がある問屋さんの紹介で分度器ドットコムの谷本さんと知り合わなかったら、ダイアリーをオリジナルで作るという発想も生まれなかったと思います。
それらの縁があって、このダイアリーとダイアリーカバーは一昨年に生まれました。

縦横差のない正方形の形は日頃書類などで使う規格のサイズとは違いますので、目を引いて何か気になる。
この正方形の形が平面で見た時に最も美しい形なのかなと思います。
ダイアリーを作ろうという話になった時、正方形という形に最もこだわったのは、分度器ドットコムの谷本さんでした。
谷本さんは筆記スペースと携帯性を両立し、形としても面白い正方形ならユニークで使いやすいダイアリーを作ることができると思っていたのです。
そして私たちはアイデアを持ち寄って正方形が生きる罫線フォーマットを作りました。

様々なダイアリーを試して、万年筆でダイアリーを書くならこうあって欲しいという希望を持っていましたので、フォーマットはすぐに出来上がりました。
万年筆で書くことを楽しむためのダイアリーはこうして生まれましたが、このダイアリーになくてはならないものが、ル・ボナーさんが製作してくれるカバーです。

このダイアリーカバーも万年筆で書くことを強く意識している仕様になっていて、ペンホルダーやベルトなどのシステム手帳などには当たり前の装備を省いて、開きやすさ、書きやすさに特化しています。

書く機能を優先して、一切の装備を省いたこのダイアリーカバーですが、そのシンプルさが結果的に美しい造形に一役買っていると思います。

美しい張りと光沢のあるクリスペルカーフのカバーは、静謐な雰囲気を湛え、スーツなどのフォーマルな服装により似合うものだと思いますし、シュランケンカーフのカバーは内側のブッテーロ革との色合わせが見所になっていてより明るい雰囲気でカジュアルな服装に合うと思います。

革の表情の違いで全く違うものに見えるので、クリスペルカーフとシュランケンカーフというふたつの素材の違いは対照的で、使われる方の層を広げることに繋がっています。

両方のお客様の共通点は万年筆を使う、ということだと思っています。
手帳カバーに当たり前についているものを削ぎ落として、その形の美しさを見せるダイアリーカバーは、ル・ボナーの松本さんのキレの良い仕事ぶりが伝わるモノです。
私もクリスペルカーフのダブルを使っていますが、収めることのできる情報量の多さ、姿形の美しさが特に気に入っています。

今回シングルのみの完成になりますが、最大4冊まで収納できるダブルタイプもクリスペルカーフで11月15日頃に完成する予定になっています。

⇒Liscio-1オリジナルダイアリーカバーcbid=2557544⇒Liscio-1オリジナルダイアリーカバーcsid=2″ target=”_blank”>⇒Liscio-1オリジナルダイアリーカバー

ファーバーカステル250周年エレメント オリーブ

ファーバーカステル250周年エレメント オリーブ
ファーバーカステル250周年エレメント オリーブ

どんな企業でもターニングポイントとなるような変革の年というものが訪れて、時代の求めに応じて変化していくのだと思います。

創業して250年もたつファーバーカステルにはそんなターニングポイントとなる年が何度も訪れたのではないでしょうか。
今から考えると10年前、240周年の年。

翌年から始まる限定万年筆のシリーズペンオブザイヤーの試金石となるモデルオリーブが発売されましたが、それがカステルが限定万年筆を手掛けることになったターニングポイントで、それによってファーバーカステルの万年筆の世界での存在感が大きくなったと思っています。

ペンオブザイヤーは万年筆ファン全てから注目を集めていて、話題に上りますので、240周年のオリーブを世に問うたカステルの戦略は相当の効果があったことになります。
今回発売された250周年エレメント・オリーブもファーバーカステルが自社の新しい展開を予告する、ターニングポイントを自ら作り出したペンになっていると見ています。

250周年エレメント・オリーブ、そして今後に続くストーリーは数年前から始まっていました。
エレメント・オリーブのベースとなっているイントゥイションは2009年に発売されました。
万年筆としては独特のバランスを持っていて、異端的な存在だったクラシックコレクションと違って、他の万年筆から持ち替えても使いやすい標準的なボディバランスを持ちながら、カステルらしさを持った、カステルの世界戦略的な万年筆です。
イントゥイションのバランスの良さ、使いやすさはそれなりに評価されましたし、実際良いペンでペリカンM400と比較しても見劣りしないものですが、クラシックコレクションにあった、どうにも仕方なく惹かれるような強烈な説得力が薄いように思っていました。

イントゥイションは実用万年筆として、好意的に万年筆ユーザーに受け入れられ、カステルらしい金属キャップのイントゥイション・プラチノという発展モデルを生み出します。

エレメント・オリーブはこのイントゥイション・プラチノを木製ボディにして、ペン先、ペン芯を大型にして、最上の書き味を持たせたものです。

エレメントオリーブは今後、クラシックコレクションのようなペルナンブコ、グラナディラボディのものが発売され、新しいカステルの伯爵コレクションの中心的な存在になっていくと思われます。
数年前に始まった250周年の展開のための点が今やっと線になって、これからもっと太いものになっていくのだと思うと、このエレメントは非常に上質は書き味やボディの色合いや質感という、その物自体の価値以上の重みのあるペンだと思います。