WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー

WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー
WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー

山科のインディアンジュエリーとステーショナリーのお店「River Mail」との共同企画のブランド WRITING LAB.(ライティングラボ)を立ち上げました。

万年筆を使う人たちが面白いと思うモノ、コトをステーショナリーに限らず形にすることを目的にしたブランドで、私たちが企画するものの中にはどこかに楽しめるような面白い要素を持たせたいと思っています。

そのモノに興味のない人から見ると馬鹿馬鹿しいとさえ思えるところにこだわり、それを優れた技術、良質な素材で真剣に作る。そんなモノ作りを柱にした活動をしていくつもりです。
私たちは既に機能を満たしたものは持っているし、たくさんのモノを見てきました。
そういったモノに溢れた現代の中で、ずっと大切にできて、日常の生活を潤いのあるものにしてくれるモノとは機能一辺倒なものではなく、無駄だけど面白いと思えるモノ、愛でる楽しみも持ち合わせたモノだと思っています。

WRITING LAB.ではそういったモノ、コトを理解して下さる遊び心を持った人のための活動をしていきます。

WRITING LAB.のご提供する商品は、キャンバス製ダイアリーカバーに始まり、岐阜の木工家永田篤史氏製作によるデスクと机上用品、神戸旧居留地にアトリエを構える革職人ベラゴ牛尾龍氏による革製ステーショナリーなどを発売していきますので、楽しみにしていてください。

地図が好きです。

それが世界地図でも、どこかの街の地図でも時間を忘れて見ていられる。
同じ地図でも毎回そんな調子でいつも何か新しい発見があります。
私のように無条件で地図が好きな人って、結構おられるのではないでしょうか?
地図にはロマンがあって、世界の知らない街に思いを馳せてイマジネーションが広がります。
それが毎日使うダイアリーのカバーになったら楽しいと思い、キャンバス地のダイアリーカバーをWRITING LAB.で企画しました。
地図は世界地図と神戸の中心元町、三宮の2種類を用意しています。
7つの海を表示し、旅へ誘うコンパスをあしらっている世界地図。
(ちなみに7つの海とは、北太平洋、南太平洋、インド洋、北大西洋、南大西洋、北極海、南極海の7つだということを私は知りませんでした)

世界の切り取り方に気を配って位置を決めています。
神戸の地図は、元町、三宮の観光スポットを表示しています。
この地図を見ながら神戸の街をブラブラと散策しても楽しいかもしれません。
非常にシンプルな作りのカバーですが、何度も試作を重ねて現在の形になっています。
表表紙と裏表紙の回りこみの部分をかなり深くとっているのは、紙面に段差を無くすための工夫で、これで紙面が平らになります。
外周を回るステッチは中身のダイアリーやノートを一定の位置に保ち、端まで出てこなくなっているので、ノートの小口を痛めません。

キャンバス地のダイアリーカバーは、自分たちで使っているオリジナルダイアリーの良さをもっとたくさんの人に伝えたい、一人でも多くの人にこのダイアリーを使ってもらいたいという想いを持って作りました。

丈夫なキャンバス地なので、気軽にどんどん使っていただける。最初硬い感じがするかもしれませんが、使い込むと柔らかく馴染んできてくれて使いやすくなってきます。
安価なのでダイアリーだけでなく、方眼や横罫のリスシオノートを用途別に複数冊このカバーをつけて使い分けることもできます。

現在、ル・ボナーの松本さんが自ら製作してくれていて11月上旬に完成する革のカバーの上質さも魅力ですが、何も気にせず使い倒せるキャンバス地のカバーもぜひ使ってみてください。


⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧cbid=2557112⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧csid=1″ target=”_blank”>⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧

パイロット キャップレスマットブラック 名作の復刻

パイロット キャップレスマットブラック  名作の復刻
パイロット キャップレスマットブラック 名作の復刻

10年近く前にもマットブラックのキャップレスが存在していました。

当時キャップレスにもカラーバリエーションは存在していましたがあまり斬新な色はなく、マットブラックは異色の存在でした。
カラーバリエーションのあるキャップレスは18金のペン先で真鍮のボディ、マットブラックのキャップレスは14金のペン先にプラスチックのボディでしたので、カラーバリエーションのあるキャップレスとは違う、下位モデル的な存在でした。

しかしその下位モデルが最もデザイン的に優れていたと思っていたのは私だけではなかったと思いますし、当時のパイロットの無難な製品展開の中ではかなり過激に見えていました。

余談ですが、当時のキャップレスには5000円でスチールのペン先とステンレスのシンプルなモデルもありました。

話を戻すと、前のマットブラックが存在していた当時、万年筆とはキャップを開けて使うものだという特別なイメージが強かったためか、キャップレス自体それほど注目されるものではありませんでした。

しかし、時代は変わって万年筆を日常の仕事の中で使いたいという人が増えて、キャップレスが再評価され始めています。
キャップを開ける手間がないため、片手で立ったままでも手帳に書き込むことができる。
ノックしてペン先が出てくるため、万年筆を使っていることを気付かれずに会議や打ち合わせでも万年筆を使うことができるなど、キャップレスならでは用途は数多く存在します。

そういった時代の移り変わりの中で、最も過激でカッコ良かったキャップレス、マットブラックの復刻を望む声は多く聞かれていました。
そんな中で登場したのが、新しいマットブラックです。

ボディはスタンダードのキャップレスと同じになり大型になっていますが、真鍮製でより頑丈になり、ペン先も18金にグレードアップされています。
これらは主に書き味を追求しての結果だと思っています。
キャップレスはボディが細くて軽いアルミ製を採用したデシモの方が、キャップレス本来の目的に合った仕様であると思いますが、書き味においては重量のあるキャップレスの方が18金のペン先の柔らかさを感じることができて上質に感じられます。
携帯性、利便性を兼ね備えて、書き味も良いもの。万年筆を1本だけ所有する人にも万年筆の良さを感じていただける万年筆になっています。
キャップレスはその性格を考えるとカートリッジが合っていると思っていますし、インク量の多いパイロットのカートリッジを使えることはメリットだと思いますが、コンバーターも使うことができます。

普通のキャップ式の万年筆と違い、とてもコンパクトなボディになっているため、コンバーターが使えないと思っている方がおられますが、スクリュー式のコンバーター50とゴムチューブ式のコンバーター20なら使うことができます。
おすすめとしては、棚吊りの少ないコンバーター20がキャップレスには合っていると思っています。
その形状からキャップレスは異端に思われますが、万年筆を使う人を増やすことのできる万年筆のひとつだと思っています。

⇒パイロット キャップレスマットブラック

万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙

万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙
万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙

日本の文字は黒でありたいと思うことがよくあります。

それは例えば月1回のペン習字教室の時や、達筆で豪快なお葉書などを狂言師の安東先生のような方からいただいたような時など、日本の文字はやはりかっこいいと思うし、どうせ日本の文字を書くのなら最も美しく見える黒インクを使いたいと思います。

黒インクは実は結構好みが分かれていて、大きく分けると「真っ黒系」と「濃淡系」に分けることができるのではないかと思っています。

真っ黒系はあまり濃淡の出ない、本当に黒い線を書くことができます。
それを好む人は、セーラー、デュポン、シェーファー、プラチナカーボンインク(使用には注意が必要ですが)などが選ばれることが多いようです。

濃淡系は少し薄めの色合いの黒で、インクが溜まっているところと薄いところの差があって、自然な濃淡が出ます。これを選ばれる人は、当店オリジナルの冬枯れ、パーカー、パイロットの黒などを選ばれることが多いようです。

私は濃淡のでる黒インクが好きでよく使いますが、このインクが似合うような美しい文字を書きたいと思います。
書道の墨の色見本を見ると本当にたくさんの「黒」があって、昔から日本人がその文字を最も美しく見せる色としての黒にこだわってきたことがよく分かります。
皆様がインクの色にこだわるのも、この辺りに理由があるのかもしれませんね。

黒インクが日本の文字を最も美しく見せてくれる色なら、日本の文字を最も美しく見せてくれる紙は和紙だと思います。

和紙の柔らかな質感やインク映えなどはパルプで作られている洋紙のすっきりとしたそれとは違う温かみがあって、深みがあるものです。

和紙は楮などの繊維の長い原料を漉いて紙にしているため、繊維同士が絡み合って大変丈夫で、水に浸かっても乾かすと元通りになると言われています。でもその代わり万年筆のインクではにじんでしまう、そして引っかかりが出るという欠点がありますので、和紙と万年筆の相性は良いとは言えませんでした。

エイ出版のノートアンドダイアリースタイルブックvol.4でも紹介されたことのある、きよこハウスの浦部喜代子さんは美濃和紙の伝統的な技法を守りながら紙漉きを行っている作家さんで、今は神戸にお住まいになられているという縁もあって、その和紙作品を拝見し、試筆させていただける機会に恵まれました。

その書き味とにじみのなさから、数ある浦部さんが漉かれた和紙の中でも最も万年筆との相性の良い和紙として、「みつまた紙」の製品を当店で扱い始めました。
一枚一枚漉いて作られる手漉き和紙は、工場で大量に作られる紙と比べるとどうしても高価になってしまいます。

でも日々の使用ではなく、大切な人への手紙を書く時など、黒インクを入れた万年筆で書くような特別な時間もあっても良いと思います。

カランダッシュ RNX316

カランダッシュ RNX316
カランダッシュ RNX316

万年筆の楽しさは書くことだけではなく、その姿形を愛でたり、感触を確かめたり、素材を感じたりすることにもあるのに、私は書くことについてばかり言及してきたような気がします。

もちろん書くことは万年筆の使用目的ですが、それならば書き味の良いペン先とインクを絶やさずにペン先に送り込み続けてくれる優れたペン芯があれば、その他の部分は何もいらない。
それは万年筆の楽しみの半分でしかないし、万年筆を非常に偏った側面だけでしか評価していないことになるのではないかと、カランダッシュの最新作RNX316を見て思いました。

ペン先を金ペンではなく、ステンレスにして、非常に凝った黒のPVDコーティングのペン先からもカランダッシュのその主張は伝わってきます。

この万年筆の直線と曲線が作り出す複雑な造形や、表面処理、装飾的な刻印などを見ていると時間を忘れるほどおもしろい。
ラインをたどったり、小さな刻印を見つけてその精密さに感心したり。

でも、この万年筆を距離を置いて全体を見てみると、安定感のある普遍的でクラシカルなフォルムなのではないかと、ふと思いました。

ペンはこういう形であって欲しいという、中央辺りにやや太さのある、見ていて安心できる形に、万年筆や他の筆記具のデザインセオリーをちゃんと守って作られた落ち着きを感じます。
そして、斬新だと思える首軸の外し方も実はこのクラシカルなデザインを演出するのに一役かっています。

この万年筆は尻軸を回転させることで、首軸のネジが緩んで外れる構造になっています。
首軸を直接回転させる方式だと首軸とボディの角が合わないということも起きやすく、それを防ぐための工夫だと思われますが、回転させるための尻軸ができたことで、金属の塊に見えそうなこの万年筆をクラシカルな雰囲気にさせているのかもしれないと思いました。

もしかしたら、このRNX316の企画者はボディに尻軸のラインをどうしても入れたかったのではないかと思ったりします。
まあこの万年筆が吸入式で、この尻軸が吸入ノブだったら一番面白いのかもしれませんが、それはあまりにもカランダッシュらしくない。

尻軸を回すことでボディ内側にシリンダーが回り、首軸のネジが緩む。これも何度も回して遊びたくなるような機構で、書く以外の楽しみはここにもあります。
新しいものは好きだけどただ斬新なだけでは好きになれない。
どこか古典的な要素も感じられながら、新鮮な要素があるもの。
そんなものに特に男性は惹かれるのではないでしょうか。

メカ好きの男心(女性でもこういった面白さを理解する人もおられますが)をくすぐる万年筆。それがステンレスの名を冠したRNX316です。

素材を愛でる

素材を愛でる
素材を愛でる

木の道具は使えば使うほど、その機能を損なわずに馴染んだ風合いに変化してくれる唯一のものかもしれません。
そしてそれが、木の宝石とも言える杢の美しい銘木を素材として作られたものなら、そのエージングはさらに美しいものになっていき、持つ喜びをさらに強いものにしてくれるのではないかと思っています。

工房楔の当店のイベントで、その作品の数々を手にしたり、見入っておられるお客様方の姿を見ていて、楔の永田さんの手によって作り出される素材感を生かした木製品の価値を改めて認識しました。

木の宝石は、本当の宝石がそうであるようにいくつあっても違うものを手に入れたいと思います。
むしろたくさん集めれば集めるほど欲しくなる傾向は強くなるようです。
使えば使うほど、磨けば磨くほど美しい光沢を持ち、木目が際立ってくる。
この楽しさについては女性には理解されにくい傾向があります。(もちろん中にはそれを理解し木に惹かれている女性もおられますが)

黒柿の製品は数万本に1本と言われている幹の中心が黒い柿の木の中でも孔雀の羽のような美しい杢、孔雀杢が使われています。
茶道具などに古くから使われていることからも分かるように、希少性、美しさ、素材としての確かさなど、木製品を作るのに申し分のない素材です。
磨くほどに木目が際立ってきて、どんどん美しく変化していきます。

花梨は永田さんが最も多くの製品に使う素材です。
花梨は玉杢と言われる目玉のような模様が細かくたくさん出ているものが杢の良いものとされています。
一面にびっしりと玉杢が出ているものを永田さんは超極上として他のものと差別化していますし、稀に出る白い部分をバランスよく木取りして紅白とすることもあります。
花梨は産地や木の個体によって色が違うことがあります。
今回のイベントでも、少し黒めのビルマ産の花梨に人気が集まっていました。
玉杢でなく、立体にも見える帯状の杢の入ったリボン杢は大変希少ですが、コンプロット10とコンプロット4ミニで少量出来上がりました。
花梨は、磨くとゆっくりと木目に奥行きができて、柔らかな印象の模様に変わっていきます。

ウォールナットは私が最も好きな素材です。
あまり派手な杢は現れず、平凡で地味な印象ですが、家具などに使われることが多いことでも分かるように、安定した木目を持ち、狂いもすくない素材です。
それでも永田さんは、波紋状の杢が出たものやバーズアイという小さな玉杢の出たものを使うこともあります。
使い込んだ木目の変化は少ないですが、艶が出て、ピカピカに変わっていくのは他の素材と同じです。

イベントの目玉として、永田さんが選んだ素材がローズウッドとハカランダです。
ローズウッドは、ウォールナット同様木目が比較的均一で色目も暗いため、個体さを見つけにくいですが、1年ほどきれいに磨きながら使いこんだローズウッドの色艶は本当に美しいと思いました。
今回のローズウッドは美しい濃い紫色をしていて、艶も申し分のないものでした。
ハカランダはブラジリアンローズウッドのことで、現在では絶滅危惧種になり輸入が禁止されています。
今回の素材は30年ほど前のものですが、その色が独特で、手触りが良くツルツルとしたものでした。
ハカランダは最高級のギターの素材として多用され、伝説の素材となっています。
他にもまだまだたくさんの木の種類はありますが、だからこそ本当に木は面白い。
ご自分が最も好きな素材を探して、それをステーショナリーとして持ってみませんか?

*今回のイベントで入荷した商品は順次ご紹介させていただきます

ライフ紙製品 見習うべき姿勢

ライフ紙製品 見習うべき姿勢
ライフ紙製品 見習うべき姿勢

ライフの大阪本町で開催された展示会にお邪魔してきました。

朝9時からの展示会というのは珍しく、展示会を見せていただいてから、職場のスケジュールを乱さずに戻れるのはとても有難いことだと思いました。

ライフの展示会はものすごく久しぶりで、7,8年前に来て以来でした。
駒村氏と会場に入ると、私たちが一番乗りで皆様全員で説明してくれるという贅沢な状況。
早く新製品を見たいと思いながらもライフという非常に渋い商品を作り続けて、日本の文具業界の安売り競争の歯止めになっているメーカーの歴史的な資料を見せていただくことができました。

ライフの面白いところは自社の過去の製品や印刷物のデザインを現在の製品に使ったりするところで、それらはレトロなとても良い味を出しています。
社内に専門のデザイナーを置かず、営業マンが集めた情報を吸い上げて商品化する。
他社がどういったものを作っているか、世のトレンドがどういうものかに惑わされず、自社に何が求められているか、自社はどういうものを作るべきか。
価格競争を避けて商品力を追求してきたライフの営業方針に、日本の企業の在り方のお手本を見ます。

商品において低価格というのは強い破壊力を持ちます。
しかし、それは麻薬のようなところがあって、その競争に入ってしまい、安さを追求し出すと安くし続けないと動きが止まってしまうことがあります。

また価格追求しかできなくなる、思考停止状態を社内にもたらしてしまいます。
それよりも社内の知恵を集めて、他社にないものを少量でも作り、その工夫と価格の高さを理解してくださる人に買ってもらうというのが、ライフの営業方針です。

文具業界の人ならライフの商品に渋さを感じると思います。
派手さはないけれど、しっかりとした表紙と製本の本麻ノート。
万年筆での書き味の良さが秀逸で、活版印刷の罫線が良い味を出している詩穂箋の便箋。
少し大きめで書くのにちょうど良いサイズのノーブルメモ・・等など。
派手さや目新しさはないけれど、本質のしっかりとした、使ってみてその良さが分かるものばかりです。

それらの地味だけどしっかりと作られた紙製品はそのままに、今回の展示会ではユニークなアイデアを具現化したノートなどもあり、ライフの今後が大いに楽しみになりました。

展示会で私たちに商品について説明して下さったライフの社員の方々は、ご自分たちの仕事を楽しみながら、思いっきりやりたいことをしている。
そんな理想的な、物作りの会社のあり方を見たような気がしました。

他にはない目の付け所が良い商品を世に送り出しているライフの商品を、次回からご紹介していきます。

黒インク

黒インク
黒インク

書道の文字は黒だから日本の文字は黒であるべきで、万年筆のインクも黒を使いたいという黒インクのマイブームは時折訪れます。

日本の文化や日本人とは、と考えた時に、自分は西洋の習慣である青い色で文字を書いていていいのだろうかと思ったりすることがあって、そういう時に黒インクを使いたくなってきます。

最近はペン習字教室で黒インクを使っていて、最も美しい文字を書きたいと思っている状況で使うインクなので、どうしても厳しい目で見てしまいます。
今は行書を習っているのでカチッとした楷書と違って、勢いのある所、ゆっくり書くところなど、線の強弱をつけたい。だから色は黒過ぎず濃淡が出るもの。むしろ薄くていい。

長時間キャップを開けて書いているし、書き味を考えるとインク出は渋くなくて、サラサラ出るものが良い。でも紙にはにじんで欲しくない。

以上の条件を兼ね備えたインクは非常に難しく、特にサラサラ出るインクはたいてい紙ににじみやすい。
いろいろ調べた結果、これはあくまでも私の好みですが、パーカーのブラックが私にとってベストのインクだと今のところは思っています。

当店オリジナルインク冬枯れもとても良く、堀谷先生は冬枯れを愛用して下さっていますが、私がよく使うアウロラやプラチナとの相性を考えるとパーカーの方がサラサラと出てくるような気がします。

同じように日本字にこだわり、万年筆でもとても勢いのある行書でお手紙を下さることがある狂言師の安東伸元先生はいつも墨をイメージされているのか、真っ黒に書けるインクを好まれます。

デュポン、シェーファーなども黒いですが、万年筆用インクで真っ黒性能が高いのはセーラーなのではないかと思っていますので、今度安東先生にお勧めしてみるつもりです。
アウロラもネットリとした性質の黒が際立つインクで、この辺りを好まれる方も多いようです。

黒インクでも本当に様々あり、単純に薄い・濃いだけでなく、赤みがかったもの、青みがかったもの、というふうに分けられます。
前者の代表はモンブラン、モンテグラッパ、後者はパーカー、ヤードレット、デルタなどです。

書道の墨も本当にいろんな色があって、奥の深さに驚嘆しますが、万年筆のインクも各メーカーによって様々で選択に迷うところだと思います。

素材の厚さ ~工房楔 クローズドエンド万年筆~

素材の厚さ ~工房楔 クローズドエンド万年筆~
素材の厚さ ~工房楔 クローズドエンド万年筆~

使われている素材が厚いことは良いもののひとつの要件だと思っています。

素材を厚くすることによって何かしらの良いことが作用して、大きな魅力になっているというモノを今までいくつも見てきました。
それはもしかしたら都会的なスマートさという洗練と対極にあるものかもしれません。
しかしその計算のない愚直とも言える無骨さがとても魅力的に感じられるのです。

ぶ厚いペン先の万年筆はペン先は硬いけれど、薄いペン先のものと比べるとそのフィーリングには雲泥の差がありますし、ブッテーロの革を厚いまま使ったル・ボナーの天ファスナーブリーフケースは重いけれど、型崩れしない丈夫さと革本来の手触りを楽しめます。

そんな、素材を厚いまま使って、それが魅力になっているもののひとつに工房楔のクローズドエンド万年筆があります。

筆記具をたくさん手掛けている工房楔のペンの中でも、価格的にもその存在感でも頂点に君臨する万年筆です。
これだけ良材のさらに良い部位だけを使ったものは大量生産では絶対に作ることができませんので、万年筆の中においても特別なものだと思っています。

工房楔の永田篤史氏が自分が木に魅せられるきっかけとなった「杢」を見せるための理想的な素材として万年筆を選び、その杢を美しい姿のまま万年筆にすることができる形として永田氏が追求して完成させたのが、クローズドエンド万年筆です。

銘木を塊からくり抜いて10本の万年筆を収納できるケースにしたコンプロット10はその実用性も広く認められていますが、コンプロット10の一番の魅力は杢を最も美しく見せる刳り抜き加工にあります。

素材を厚いまま残すことによって、杢はただの模様ではなく、その重みや感触を伴ったものになっています。

クローズドエンド万年筆もコンプロット10と同様に刳り抜いて素材を厚く残すことによって、杢をその感触を伴った万年筆としています。

数多くある量産メーカーでは量産であるがゆえに、このクローズドエンドのような素材感をむき出しにした万年筆は絶対に作れないでしょうし、木を見抜く審美眼と杢をきれいに正確に出す腕を持たないとこれだけの万年筆は作り得ず、工房楔の永田氏という目と腕を持った存在だからこそ作り出せたものだと思っています。

クローズドエンド万年筆の最大の特長であるボディについてのみ述べてしまいましたが、金具はオリジナルのものを金属加工の専門家とともに開発していますし、ペン先、ペン芯などの書くメカニズムは筆記具の部品作りにおいて名門とも言えるシュミット社製の柔らかい書き味の18金ペン先を採用しています。
付け加えるならばより書き易くなるよう当店で調整していますので、書くことも楽しんでいただけるものになっています。

⇒工房楔万年筆・机上用品トップへcbid=2557546⇒工房楔万年筆・机上用品トップへcsid=5″ target=”_blank”>⇒工房楔万年筆・机上用品トップへ

渋い万年筆 パイロット変わり塗り石目

渋い万年筆 パイロット変わり塗り石目
渋い万年筆 パイロット変わり塗り石目

古くはセリカのエンジンを小さなカローラに積んだレビン。見た目は普通のゴルフなのに3200ccの怪力エンジンを積んだR32、ベンツでも以前あったかな・・・。例えが車ばかりで恐縮です。

こういったものを羊の皮を被った狼と言ったりしますが、私たちが羊の皮を被った狼に惹かれる理由は、いかにも!といった外観ではない玄人好みの渋さを感じるからなのではないかと思っています。
見た感じはあえて個性を抑えた何の変哲もない大人しいものにして、その性能に関わる部分を強化して見た目と性能にギャップを持たせる。
パイロットの5万円クラスには、なかなか渋いと思える万年筆があります。

オールドスタイルの銀のボディに大きなペン先を貼り付けた、書き味の良いシルバーンはキャップの尻軸への入りも深くバランスも良い。
カスタム845はエボナイトの軸に漆塗りが施されていて、一見プラスチックのようにだけど握り心地がとても良く、大型のペン先は豊穣な書き味を持っている。
新しく発売されたパイロット変わり塗り石目もそんな渋いと言える万年筆です。

変わり塗りという名前から、この万年筆の特長はボディの塗りのように思ってしまいますが、この万年筆の注目すべき点はベースとなっている本体そのものだと思っています。

パイロットのここ10年以内の創立記念モデル85周年飛天、88周年仁王、90周年朱鷺は真鍮のボディに蒔絵技法を施したものになっています。
あまり大きくはないカスタムヘリテイジ91相当のサイズの金属のボディ、10号の18金ペン先を装着した創立記念の限定万年筆は、そのボディの美しさもさることながら、書き心地などの実用性に対しての評価も高く、一部のマニアックなお客様からは蒔絵技法が施されていない実用本位の創立記念万年筆を望む声もありました。

しかし、それは創立記念モデル専用のボディでそれを定番化することはもったいないのではないかと思っていました。
それが本当に実現したことに私は驚きましたが、歓迎すべきことでまた魅力的な定番万年筆が増えたことを喜んでいます。

パイロットの18金ペン先はバネのように弾力が強く、筆圧が強い人にも相性が良いと思いますし、寄りを弱く調整することで柔らかい書き味にすることもできます。
パイロットの今までの定番品とは違い、37gという持ち応えのある重量、弾力に富む18金のペン先など。
変哲のないデザインで、少しずつ仕様を変えて、玄人受けする万年筆に仕立てる。
パイロット変わり塗り石目をとても渋い万年筆で、国産の万年筆メーカーのひとつの提案だと思っています。

パイロットは変わり塗り石目の発売と同じくして、ボトルインク色彩雫シリーズに新色を4色追加しています。(紫式部・秋桜・稲穂・竹林)


⇒パイロットボトルインク色彩雫新色追加

ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売

ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売
ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売

黒い革のペンケースに金のペンのコントラストがとてもきれいだと気付いたのは、当店のオリジナルのペンレスト兼用万年筆ケースに万年筆を収納した時に上部2cmくらいが見えるからでした。

ここに金の万年筆を3本入れるとなかなか見栄えがしていいのではないかと気付いたのです。

しかし、私が持っている金の万年筆は中字2本と太字が1本。
この3本の万年筆ケースには、細中太字の万年筆を入れて様々な用途のものに対応できるようにしたいと思っていたので、金の万年筆ばかりで細中太字という組み合わせにはできませんので、手帳に書けるような細字の金の万年筆が欲しいと思ったりします。

外国メーカーのシリーズでも日本に入っている金の万年筆が意外と少なく、シェーファーレガシー、クロス、パーカー辺りになります。
ちなみにレガシーブラッシュトゴールドが私の中では有力候補です。

同じイメージのものを字幅違いでそろえたくなるのは、3本差しなどのペンケースの中身をコーディネートしたいという気持ちからで、同じ色合いとか質感で揃えたいと思うのは、この万年筆ケースのようにペン本体の一部分が見えるようなものの存在があるからだと思います。

ふた部分の構造はその素材であるシュランケンカーフのしなやかで強靭な特長を生かしたもので、この万年筆ケースの最大の特長にもなっています。
持ち運ぶ時はふたを閉じた状態にするとペンは露出しませんし、ふたをペンの枕のようにするとペンの上部が露出して、すぐに取り出せるようになっている。
それがペンレスト兼用の名前の由来ですが、なかなか便利に使えるものだと思います。

シュランケンカーフは太い万年筆を入れるとそれに合ってくるし、細い万年筆にも同様にそれに沿うように合ってくる。
傷などに強く、エージングしないと言われているシュランケンカーフですが、使っていると中身に合ってくる良質な革らしさが感じられ、この素材の良さを実感しています。

しばらく品切れしておりました、ペンレスト兼用万年筆ケースが再入荷したのと同時に、ライトグレーにスカイ色の内張りのとても清清しい印象の新色も完成しました。

⇒ペンレスト兼用万年筆ケース(3本差し)gid=2136278″ target=”_blank”>⇒ペンレスト兼用万年筆ケース(3本差し)