当店で万年筆を購入される際に、趣味の文具箱13号でも紹介された、インクの「和歌色見本帳」を見て万年筆と一緒にインクも買われることがよくあります。
その万年筆で使う予定のインクを入れて、インクの出方も含めたペン先調整をする方がいいと思いますし、せっかくなのでその万年筆に合ったインクを選びたいと言われることがよくあります。
インクの色と万年筆の軸の色を合わせるという方は多く、パイロット色彩雫の「夕焼け」を使いたいから、ラミーサファリオレンジを選ぶという方もおられるくらいです。
店に来て下さった方が色見本帳でインクの色を選ばれるのと同じように、ホームページでも色が分かるようにインクの色見本を掲載しました。
私は子供の頃から絵を描くのがとても苦手でした。
そのことに気付くのにしばらく時間がかかりました。
人を絵の具の肌色でそのまま塗ってしまったり、道路を灰色で塗りつぶしてしまったり、木を一面こげ茶で塗ってしまったりということがいつもでした。
描き始める時は上手く描きたいと思いますが、すぐに現実を思い知らされて、途中でどうでもよくなって、何でもいいから色が全面に塗ってあればいいというだけの意識しか働かなくなります。
絵は見たまま描けばいいと、上手い人からよく言われますが、私はそれぞれの色を自分の持っている先入観で塗りつぶしていました。
絵の具とか色鉛筆とか、画材と聞くととても憂鬱な気分になるくらいで、色を選ぶという感覚は私にはなく、万年筆のインクもより滑らかに書くためのオイルのような感覚で今までずっと選んできました。
インクの色にこだわる人は、万年筆のインクを画材のような感覚で選んでいるのであり、子供の頃に絵で賞状をもらったことのあるような絵の得意な人だけだというひがみ根性が私の中にはあり、そんな風に思っていました。
店にある色見本帳も、ホームページの色見本帳も私でなく、スタッフが時間をかけて作りました。インクの色見本を作るというのは本当に根気の要る仕事で、好きで興味がないとなかなかすることができないと思います。
私はそう思っていますが、楽しみながら作っているスタッフを見ていると、もしかして楽しい仕事なのかと思ってしまいます。
私が理想とする万年筆は、細くても太くてもインクがたくさん出て、裏に抜けてしまうくらいのものが好みなので、色よりもひたすら流れの良いものを追いかけてきました。
そんなインクの色に興味のない私でも、インクの色が変われば、まるで万年筆が新しくなったような嬉しい気持ちになります。
パソコンの環境で、多少見え方は実際とは異なると思いますが、選ばれる時の参考になればと思っています。ホームページの「インク・消耗品」からご覧下さい。