アートと木工の融合

毎年恒例になっていた春の工房楔イベントを、 3月20日・21日に予定していましたが、新型コロナウイルスのことを考えて、延期することにしました。状況が毎日のように変化するので、ぎりぎりまで告知ができず申し訳ありません。

新たな日程は5月2日(土)・3日(日)となります。ゴールデンウイーク中のイベントは初めての試みですが、ぜひご来店下さい。

本日発売の雑誌「趣味の文具箱vol.53」に掲載されている、工房楔永田篤史氏と漆芸作家池田晃将氏のコラボ作品「エクステンダー楔・螺鈿」が入荷しています。

これは数量限定での製作で、店舗を限定しての販売ということで、扱うことが出来てありがたく思っています。

工房楔をご存知のお客様にはもうお馴染みですが、池田昇将氏は先日の銀座の百貨店美術画廊での個展で、初日に全作品完売した新進気鋭の螺鈿作家さんです。工芸である螺鈿を全く新しい解釈で、極小のデジタルな世界を表現して、アート作品に昇華されています。

 いくら腕が良くても、そこに独創性がなければひとついくらで仕事をする職人になってしまいます。それが悪いことだとは思わないけれど、伝統工芸が既存の枠に収まったままでは今の感覚からどんどん外れて行って、いずれ廃れてしまう。 池田氏の活躍は、螺鈿工芸のみならず日本の伝統工芸全ての指針にもなるのではないかと思っています。

 万年筆店である当店が池田氏の作品をいつまで扱うことができるのか分からないけれど、池田氏をこうやってステーショナリーの世界にも連れ出してくれた工房楔の永田篤史さんのおかげで、当店でも取り扱うことが出来ています。

 3柄各2本という大変少ない入荷数ですが、作家さんの作品を間近でご覧いただける機会だと思います。

 ファーバーカステルパーフェクトペンシルが最も贅沢な鉛筆として脚光を浴びたことがありましたが、パーフェクトペンシルはあくまでも製品でした。

 今回の螺鈿付きペンシルエクテンダーは実用的な銘木鉛筆補助軸にアート作品を埋め込んだ、製品を超越したものだと思っています。

 所有した人は、これに鉛筆を入れて実際に使うかどうか分からないけれど、鉛筆を入れて色や姿を合わせて、眺めるだけでも楽しいと思います。

 当店の近くに鉛筆類専門店590&Co.さんができて、鉛筆が身近な筆記具になりました。

 万年筆は私にとって日常の筆記具ですが、何かの下書きを書くときやアイデアをひねり出す時には鉛筆を使いたいと思うようになって、愛用の鉛筆削りで先を尖らせて書くことが多くなりました。

 子供の頃に書いていた気持ちを思い出させてくれる素朴な筆記具が鉛筆で、そんな削って短くなった鉛筆を使う素朴な道具と螺鈿作品のアンバランスさが大変面白い。

短くなった鉛筆が先に付いて初めて、ひとつの世界観を表す作品になると思っています。

*限定商品・工房楔×池田晃将 エクステンダー楔・螺鈿