カンダミサコさんの商品を当店が扱い始めて11年になります。
ル・ボナーの松本さんに連れられてカンダミサコさんがお店に来られた時、ご紹介いただいたペンシースの取り扱いを即決しました。
松本さんの太鼓判もあったけれど、それまで万年筆を収めるケースというのは重厚なものばかりで、肩の力が抜けていてカジュアルなカンダミサコさんのペンシースがとても新しく思えました。
当時神戸市灘区にある一軒家を借りて工房としていたカンダさんは、修行していた鞄工房から独立したばかりで、まだあまり知られていませんでした。
でもそれから仕事が軌道に乗って、元町に引っ越しをされて工房兼自宅を構えられています。
当店も始めたばかりでしたが、お互いに10年以上仕事を続けてくることができました。
当店で扱っているシステム手帳や他の革製品の多くをカンダミサコさんが作ってくれていて、他のお店にないオリジナリティを手に入れることができています。
当店の雰囲気、目指すものとカンダミサコさんのモノ作りの相性が良かったから今のような関係ができたと思っているし、人間的にも共感できるので、話していて楽しく、何でも言い合えるから長く関係を保ってくることができたのかもしれません。
3年前から、その年限定の革を選んで、期間限定品として様々なものを作るということをしています。今年も企画していますが、昨年の神戸ペンショーではそれとは別に、様々な革を使って1本差しペンシースを作るという実験をしてみました。
お客様の反応も良く、自分たちも面白いと思いましたので、人気があったクードゥーとゴートヌバック、それに追加してダイアリーカバーで使ったミラージュ革で作っていただきました。
クードゥーは、きれいと汚いの間と言えるくらい傷やシミの多い野性味溢れる革で、個体差が激しい革ですが、今はこういう革が求められているのだと実感しています。
ただきれいなものではなく、こういう革を求める人が多いというのは、ステーショナリーがより高い次元のものになってきていることを表していると思っています。
ゴートヌバックは、アパレル系のメーカーが使ってもおかしくないような洗練された美しい革です。当店も一昨年、このゴートヌバックを限定革として使いましたが、何を作ってもサマになる革だと思いました。
ミラージュは、曲げると色が変わるプルアップレザーで、これは完全に私の好みで選んでいます。
トラやムラもありますが、濃い茶色の色合い、ねっとりとした手触り、濃く深いような光沢が何とも言えず好きなので選びました。この革でもいろんなものを作りたいと個人的には思っています。
定番のシュランケンカーフも、色数がたくさんあってタフで使いやすく、好みの色を見つける楽しみがあります。個性的な革の限定仕様ペンシースも、どんなペンと合わせるか、考えるのを楽しんで欲しいと思います。
ペンシースも10年以上販売してきて、万年筆の世界でも定番的な存在になってきたと感じます。それほどたくさんの方に使っていただいていると思う。
ペンはなるべく何かで保護しておきたい。ペンシースは、常にこの中にペンを入れておいて、使う時だけ取り出す、ペンの洋服のような存在になったと思っています。