万年筆は金ペン先であって欲しい、という想いを私たちおじさん世代は持っています。9金は嫌だけど、14金でも18金でも21金でもいいから、金ペン先の万年筆を使い込んで、そのペン先が育って柔らかくなっていくのを感じたい。
そこまで思わなくても、どんなにカッコいいデザインの万年筆でも、ペン先が鉄ペンだと候補から外れてしまうのが我々の世代でした。
それは時計が機械式であってほしいという、実用から離れたロマンのようなものに似ているのかもしれません。でも金ペンは非金ペン先にはない柔らかな書き味を持っているものもあるので、実用から離れたとは言えないけれど。
当店も金ペン先のものにこだわって扱ってきましたが、時代は変わってきていると思います。お客様にも、金ペン先でなくてはいけないというこだわりを持たない人が増えてきました。
非金ペン先の万年筆でも、良い書き味のものが出てきたということもありますし、非金ペン先であることで、良いデザインのものが安く買えるようになってきたということも理由なのだと思います。
金ペン先へのこだわりを捨てるつもりはないけれど、それ以上に今の時流に合っていない店にはなりたくないという想いの方が強いので、そういうものも取り入れてご紹介していきたいと思っています。
非金ペン先の万年筆が万年筆を趣味とする人に認められ出したのは、台湾のメーカーが質の良い魅力的な非金ペン先の万年筆を発売し出したからではないかと思います。
デザインに個性があって、しっかりした品質の万年筆を安い値段で発売したからこそ、世界中のお客様に受け入れられたのだと思います。きっと今まであった万年筆の価値観とは違う考え方で台湾の万年筆は作られているのではないだろうか。
台南ペンショーで、当時まだ日本で流通していなかったペンラックスを見かけてぜひ扱いたいと思い、ペンラックスのブースでgoogle翻訳と日本語で必死に話そうとしてドン引きされたことは苦い思い出だけど、今では縁あって日本の輸入代理店を通してペンラックスを扱っています。
最初に扱ったグレートナチュラルシリーズは、私のこだわりでわざわざ金ペン先に交換してもらいましたが、今は現地仕様のままで、スチールペン先の安い価格で販売することがこのペンらしいと思っています。
ペンラックスの新しいシリーズ、デルガドコレクションが発売されました。
モンブラン149とほぼ同じサイズのオーバーサイズ万年筆が中心だったペンラックスでしたが、スペイン語で「細い」を意味する「デルガド」コレクションは、モンブラン146ほどのレギュラーサイズの万年筆です。
華やかなデザインで存在感があるので、小さくなったことに気付かないくらいですが、手の大きくない人にはこれくらいのサイズの方が握りやすい。
今回採用したレジンの柄の効果もあると思いますが、ペンラックスの万年筆はさらに洗練されています。
アルミ削り出しで作られている丈夫な吸入機構はオーバーサイズのグレートナチュラルシリーズと同じで、ペンラックスのこだわりがデザインだけでないことが分かります。
ペンラックスデルガドコレクション、美しく魅力的な万年筆を多くの人に使ってもらえる価格で販売するには、非金ペン先でなければ実現できない。それがペンラックスの万年筆作りの思想なのだと思います。