別注のレンマバルコペンケース

神戸元町にある当店から、南に下ってすぐのところに乙仲通りという東西の通りがあります。

港の近くで、乙仲業者(海運貨物取扱業者)のオフィスが連なる通りですが、雑貨店や作家さん、職人さんの店も多く軒を連ねていて、平日でもお客様がショッピングを楽しんでいる姿をよく目にします。

比較的静かな住宅街にある当店とは違う華やかな雰囲気があって、近所なのに遠くに来たような気分になります。

15年前、店を始める時に不動産屋さんに行って万年筆店をやりたいと言ったら、最初に紹介してくれたのは乙仲通りの物件でした。

当時すでに多くのこだわったお店が並ぶ人気のブランド地区だったので、家賃が高くて借りることはできなかった。

結局自分の足で探した今の物件で良かったと思っているけれど、あの時乙仲通りの物件を選んでいたら、また違う15年があっただろうなと思います。

その乙仲通りの東端にフリースピリッツさんという革製品のお店があって、そのお店のレンマというブランドのペンケースを少し前から扱っています。

プエブロという今とても人気のある革を使っていて、ファスナーが左右に大きく開いて出し入れしやすく、15センチ定規がぴったり入る位の持ち運びしやすい大きさです。

そんなレンマバルコペンケースで、当店オリジナル仕様の別注モデルを作っていただきました。

当店のお客様、特に大人の女性の方にバルコペンケースを使ってもらいたいと思って、より高級感のあるドーフィンレザーを使いました。この革は最初の綺麗な状態を長く保つ、とても丈夫な革です。

細かくシボの入ったドーフィンレザーはクロム鞣しで、タンニン鞣しのプエブロと違って経年変化はほとんどしませんが、洗練された印象を受ける革です。

今の流行ではないけれど、長く使っていただける定番品として、大人のためのいいペンケースができたと思っています。

さりげなく店名を入れたくて、15年ぶりに新しいロゴを作りました。ファスナーを開けた内部にブッテーロ革を縫い込んでもらったのですが、その感じも気に入っています。

当店も開店して15年が経ってしまいました。気付けば、店を始めた時と世の中の状況は全く変わっています。変わりたいとも変わりたくないとも思わないけれど、時代から変化を要求されていることは分かります。

私は自分達の暮らしが成り立って、続いていければ幸せだと思っているけれど、そのためにしなくてはならない変化なら、あってもいいと思っています。

⇒バルコ ペンケース Pen and message.特別仕様革・ドーフィンレザー

⇒ペンケース(3本以上収納)TOP

パーフェクトペンシルの居場所

「趣味の文具箱」の清水編集長が、大人の部活「パーフェクトペンシルファンクラブ」を立ち上げられました。パーフェクトペンシルという存在にはずっと興味があったので、いいきっかけだと思い私も新たに購入して入会することにしました。

具体的な活動内容はまだ分かりませんが、何か面白くなりそうという思いと、入会したら送られてくる金属製の会員カードとPPのロゴが入ったパーフェクトペンシル用のエンドキャップも魅力でした。

会員カードはもう少し先になるようですが、エンドキャップはすぐに送られてきました。でももったいなくて使えず、持ち歩いているもののまだ一度も使っていません。

パーフェクトペンシルは調べてみると品薄な状態でしたが、何とか入手できたので、とにかく使ってみています。

今まで出かけるたびに買っていた安いシャープペンシルをジョッターにつけてメモ用に使っていましたが、その役割をパーフェクトペンシルに代えて使っています。

世界で最も贅沢な鉛筆は使っていて気分もいいし、今まで使っていた2Bや4Bとは違う、海外の硬めで滑りのいいHBの書き味も好きになりました。

パーフェクトペンシルを使っていて思うことは、早く短くして使い慣れた風にしたいけど、もったいなくて削れないというジレンマでした。

私は鋭く尖らせた鉛筆の書き味が好きなのですが、使って削るうち、イメージより早く短くなってきました。いい長さになったら鉛筆削りではなく、ナイフで芯だけを削って尖らせるようにしようかと思っています。

もったいないという言葉がこの鉛筆に一番相応しくない言葉で、庶民がパーフェクトペンシルを使うとこうなるのだというお手本を私がやっているのかもしれません。付属のシャープナーもまだ一度も使ったことがなく、昔から使っている小さな鉛筆削りを持ち歩いて削っています。

別持ちの鉛筆削りと消しゴムを使っていたらパーフェクトペンシルの意味がないと思われるかもしれませんが、これもパーフェクトペンシルの楽しみなのかもしれません。

パーフェクトペンシルに惹かれるのは、この「何かできそうな佇まい」ですが、何かと組み合わせてパーフェクトペンシルの居場所を作ってあげると、私たちの生活に溶け込んで自然に使える筆記具になると思います。

私は愛用のメモジョッターにパーフェクトペンシルがピッタリと収まりましたので、そこがパーフェクトペンシルの居場所になっています。

万年筆の筆跡に比べて鉛筆は薄いけれど、例えばアイデアなど確定的でないことを書き出すときには薄いくらいがちょうどいい気がします。濃く書きたければ力を込めればいいのです。

自分がこの鉛筆を手にした時、どんなインスピレーションを受けて、何が書けるかということに今はとても興味があります。いいおじさんが新しいおもちゃを手にした子供のように、書くこと、パーフェクトペンシルを持つこと、が今は楽しくて仕方ありません。

*現在パーフェクトペンシル自体が品薄な状態ですが、入荷したものをWEBサイトに掲載しています。

パーフェクトペンシル ブラック

パーフェクトペンシル プラチナコーティング ブラック

新たな選択肢「アウロラタレンタム・デダーロ」

イタリアや日本のメーカーの万年筆作りは、イギリスやアメリカで作られていた万年筆を模倣するところから始まりました。イタリアの古い万年筆メーカーも日本の古くからある3社もほぼ同時期に100周年を迎えるのは、当時イタリアと日本で同時発生的にそういう動きがあったからだと思っています。

そのイタリアと日本のメーカー、特にアウロラとパイロットは、今では万年筆の業界をリードする重要な存在になっています。

コロナ禍にあっても、アウロラの限定品攻勢は続いています。

アウロラの限定品の品番は、オプティマ365などの「オプティマ型」は定番のオプティマと同じ品番996と表記されます。(オプティマネロは997)。

ヴィアッジオセグレート(神秘の旅)シリーズなどの「88型」は品番888、スターリングシルバーを使ったアンビエンテシリーズに代表されるシリーズは品番946で表記され、それぞれの番号のうしろに名称を略したアルファベットがついています。

これらの限定品を代わるがわるに発売することで、私たちを飽きさせることなく今まできましたが、新しいパターンができました。

アウロラタレンタムは日本市場では廃番になってしまいましたが、本国では作り続けられている定番品で、このタレンタムをベースにした限定品デダーロが発売されました。

タレンタムはオプティマや88よりも一回り大きなレギュラーサイズの万年筆で、筆記性に優れた、書くことにおいて最もバランスが良いとされているサイズです。

タレンタムと同サイズの万年筆というと、ペリカンM800、モンブラン146、パーカーデュオフォールドなど錚々たる万年筆が揃う激戦カテゴリーですが、その中でもタレンタムはイタリア万年筆らしいデザインの良さで個性を放っていると思います。

アウロラがタレンタムを発売して、アウロラの吸入式でない本格万年筆を世に問うたのも20年以上前のことになります。その時はまだ、パイロットにカスタム845はありませんでした。

名品万年筆パイロットカスタム845とタレンタムは近いサイズで、カートリッジ/コンバーター両用式という機構も同じです。個性は違うけれど、満を持して激戦カテゴリーに参入したという点で、メーカーの想いは近かったのかもしれません。

アウロラの代表的な万年筆オプティマや88は、リザーブタンク付きピストン吸入機構というユニークな機構を備えていて、それがアウロラの特長にもなっています。

しかしタレンタムは、カートリッジ/コンバーター両用式というシンプルな機構でアウロラの深みのある書き味を楽しめるというところが価値だと思います。

書き味の良い万年筆は世の中にたくさんあるけれど、繊細な深みのあるアウロラの書き味と柔らかい中に粘りのあるカスタム845の書き味は抜群だと思っています。

今の時代、その国民性について言うのは時代遅れかもしれないけれど、日本人とイタリア人というのはともに繊細な感性を持ち合わせているから、この書き味を創り出すことができたのだと思います。

タレンタムの限定品デダーロは、彼の作った迷宮ラビリントスがテーマになっていて、テーマに沿った迷路のエングレイビングがキャップに施されています。

金属キャップの万年筆を尻軸につけて書くとかなりリアヘビーになると思われているかもしれませんが、88ゴールドキャップでも定評のあるアウロラの金属キャップはさほど重くもなく、通常のバランスで書くことができます。

初めてのアウロラとしても、安心してハードに使えるタレンタムデダーロという新しい選択肢ができました。

⇒アウロラ タレンタムデダーロ ブルー

⇒アウロラ タレンタムデダーロ ビアンコ

アウロラ Viaggio Segreto(ヴィアッジオセグレート) MATERA(マテーラ)

東京に出張販売に行った帰り、新神戸駅で新幹線を降りた途端に全身が包まれるような熱気と湿度を感じました。東京もかなり暑かったけれどどこかカラッとしていて、例えるなら東京は砂漠の暑さ、こっちは熱帯雨林の暑さということになるのだろうか。おそらくイタリア南部は、カラッとした暑さになるんだろう。

アウロラの新しい限定品シリーズが始まりました。シリーズ名はViaggio Segreto in Italy (イタリアの秘められたる旅)です。

イタリアの8つの神秘的な街をテーマにしていて、天冠と尻軸が丸い88がベースモデルです。

天冠・尻軸が丸い、いわゆるバランス型と言われる形の万年筆はたくさんありますが、アウロラ88の形は特に自然で美しいと思います。

アウロラはカレイドスコーピオシリーズでボディと同柄の素材の首軸を持った万年筆を発売し、この神秘の旅シリーズでもそれを継承し、発展させました。

イタリア最南端にあるマテーラは、岩山にできた自然の横穴を利用した洞窟住居サッシが有名で、8世紀から13世紀にかけてイスラム勢力から逃れてきた修道僧が住みついたと言われています。

マテーラの周囲では旧石器時代の出土品も発掘されていて、古くから人が住んでいたようです。

イタリアには1度しか行ったことがありませんし、マテーラもグーグルアースでしか見たことがありませんでしたが、ここに人が住んでいるということが驚きでした。陸から発見されにくいこの場所に移り住んできた人たちには、それぞれ事情があったのでしょう。

マテーラのサッシも南部イタリアの貧しさの象徴だったそうです。

20世紀になって、半ばスラム化したサッシの住民を移住させて、今の美しい場所に整備し直しました。自然の石灰岩から成るサッシ群の地下には広大な貯水槽があり、それをイメージした色を軸の色としています。

パッケージの細長いボックスの中にはターコイズブルーのインクと取り扱い説明書、そしてQRコードが描かれた栞が同梱されています。QRコードを表示させると、マテーラの街の映像が美しい音楽とともに流れてきます。

アウロラの強みは魅力的なテーマを美しい軸の色で表現できることで、首軸、天冠、尻軸全てのパーツを同じ素材にすることが可能です。それでさらに魅力を増したのではないかと思います。

アウロラの万年筆はペン先が馴染むまでに少しクセがありますが、そこはお任せいただければ、最初から気持ちよく書けるようにしてお渡ししています。軸の美しさに見劣りしないウットリする書き味を楽しんで下さい。

インクにも相性があるけれど、ローラーアンドクライナーのインクはアウロラに入れても快適にお使いいただけると思います。

先日、ローラーアンドクライナーの2022年限定インクディープパインフォレストが発売されました。

ラメ入りやフラッシュするインクを作らないローラーアンドクライナーは、今の時代において保守的な昔ながらのインク作りをするメーカーで、安心して使うことができます。

ローラーアンドクライナー本社のあるチューリンゲンの深い森をイメージしたディープパインフォレストも、ローラーアンドクライナーらしい渋い色合いのダークグリーンは定番品にはない色です。

あまり色の濃いインクは粘度が高くなるのか乾きが遅くなる傾向にありますが、ローラーアンドクライナーのインクは色の濃さと乾きの早さのバランスが取れているのでお勧めです。

⇒Viaggio Segreto(ヴィアッジオセグレート) MATERA(マテーラ)

⇒ローラー&クライナー 2022年限定インク Deep Pine forest(ディープパインフォレスト)