イタリアや日本のメーカーの万年筆作りは、イギリスやアメリカで作られていた万年筆を模倣するところから始まりました。イタリアの古い万年筆メーカーも日本の古くからある3社もほぼ同時期に100周年を迎えるのは、当時イタリアと日本で同時発生的にそういう動きがあったからだと思っています。
そのイタリアと日本のメーカー、特にアウロラとパイロットは、今では万年筆の業界をリードする重要な存在になっています。
コロナ禍にあっても、アウロラの限定品攻勢は続いています。
アウロラの限定品の品番は、オプティマ365などの「オプティマ型」は定番のオプティマと同じ品番996と表記されます。(オプティマネロは997)。
ヴィアッジオセグレート(神秘の旅)シリーズなどの「88型」は品番888、スターリングシルバーを使ったアンビエンテシリーズに代表されるシリーズは品番946で表記され、それぞれの番号のうしろに名称を略したアルファベットがついています。
これらの限定品を代わるがわるに発売することで、私たちを飽きさせることなく今まできましたが、新しいパターンができました。
アウロラタレンタムは日本市場では廃番になってしまいましたが、本国では作り続けられている定番品で、このタレンタムをベースにした限定品デダーロが発売されました。
タレンタムはオプティマや88よりも一回り大きなレギュラーサイズの万年筆で、筆記性に優れた、書くことにおいて最もバランスが良いとされているサイズです。
タレンタムと同サイズの万年筆というと、ペリカンM800、モンブラン146、パーカーデュオフォールドなど錚々たる万年筆が揃う激戦カテゴリーですが、その中でもタレンタムはイタリア万年筆らしいデザインの良さで個性を放っていると思います。
アウロラがタレンタムを発売して、アウロラの吸入式でない本格万年筆を世に問うたのも20年以上前のことになります。その時はまだ、パイロットにカスタム845はありませんでした。
名品万年筆パイロットカスタム845とタレンタムは近いサイズで、カートリッジ/コンバーター両用式という機構も同じです。個性は違うけれど、満を持して激戦カテゴリーに参入したという点で、メーカーの想いは近かったのかもしれません。
アウロラの代表的な万年筆オプティマや88は、リザーブタンク付きピストン吸入機構というユニークな機構を備えていて、それがアウロラの特長にもなっています。
しかしタレンタムは、カートリッジ/コンバーター両用式というシンプルな機構でアウロラの深みのある書き味を楽しめるというところが価値だと思います。
書き味の良い万年筆は世の中にたくさんあるけれど、繊細な深みのあるアウロラの書き味と柔らかい中に粘りのあるカスタム845の書き味は抜群だと思っています。
今の時代、その国民性について言うのは時代遅れかもしれないけれど、日本人とイタリア人というのはともに繊細な感性を持ち合わせているから、この書き味を創り出すことができたのだと思います。
タレンタムの限定品デダーロは、彼の作った迷宮ラビリントスがテーマになっていて、テーマに沿った迷路のエングレイビングがキャップに施されています。
金属キャップの万年筆を尻軸につけて書くとかなりリアヘビーになると思われているかもしれませんが、88ゴールドキャップでも定評のあるアウロラの金属キャップはさほど重くもなく、通常のバランスで書くことができます。
初めてのアウロラとしても、安心してハードに使えるタレンタムデダーロという新しい選択肢ができました。