万年筆の中でどの部分を好むかというのは人それぞれで、書き味を重視する人もいれば、軸のデザインを大切にする人もいます。
私の好みを言うと、やはりペン先の良さということになります。あとは筆記時のバランスで、その2つが良ければデザインにはあまりこだわりがありません。
むしろ黒金(黒軸にゴールド金具)の万年筆のように、オーソドックスでシンプルな方が良いとさえ思います。
カスタム845の、しなやかさと安心して書ける粘り強さを併せ持つ書き味は、間違いなく国産最高の万年筆のひとつだと思います。
そしてシンプルな黒金、あるいは朱と黒の軸は、漆が何層にも塗り重ねられて「蝋色漆」という状態に仕上げられます。カスタム845の漆塗りの軸はシンプルでありながら、本物の上質さを追究したものです。
パイロットの価格改定が2024年1月1日に予定されていて、このカスタム845は現在の55000円から88000円に変更されます。
値上げということになりますが、国産最高の万年筆が88000円というのはそれほど高く感じないように思います。そう思うと今が安いのかもしれません。
パイロットの万年筆は、日本の万年筆の価格とスペックの基準を示すような存在だと思っていました。
10,000円、20,000円、30,000円、カスタム845の50,000円クラスと、各クラスに定番万年筆を隙なくラインナップしていたことで、パイロットの万年筆を基準に考えてしまう癖が私たち業界の人間にはあると思います。
他メーカーが価格を上げていく中、パイロットが動かなかったことを当然のように思っていました。
しかし、カスタム74シリーズが発売された31年前から基本的には万年筆の価格を変えずに耐えてきたパイロットも、とうとう価格を変更せざる得なくなりました。
パイロットの代表的なモデルの来年1月1日以降の新価格を下記しておきます。
・カスタム漆96,800円→121,000円
・カスタム845 55,000円→88,000円
・カスタム743 33,000円→39,600円
・カスタム742 22,000円→26,400円
・シルバーン55,000円→66,000円
・カスタムカエデ 22,000円→26,400円
・キャップレスLS 38,500円→46,200円
・キャップレスマットブラック 19,800円→24,200円
・キャップレスデシモ 16,500円→19,800円
・エリート95S 11,000円→17,600円