フェリスホイールプレスの世界観のある万年筆

2007年に創業して今年で18年が経ちます。始まったばかりの頃はお客様のほとんどが40代以上の男性で、若い男性や女性が店におられると珍しいという雰囲気がありました。

16年前に当店のスタッフMがまだ高校生の時、当店に万年筆を買いに来てくれたのですが、居合わせたお客様方に興味を持たれていたのを思い出します。でもそれは彼が若かったからだけでなく、和服を着ていたということもあったからだけれど。

それほど若い人と女性は少なかった。

そしてその時は、万年筆のインクはそれほど注目されていなかった。

当店が当時オリジナルインクを始めたのは、当店の世界観をインクの色で表現するという目的があったからで、インクがたくさん売れるとは思っていませんでした。

そのオリジナルインクの「冬枯れ」が、雑誌「暮らしの手帖」で紹介されたことがあって、日本中から女性のお客様が来て下さるということが数年続きました。

でもそのブームが落ち着いたら、やはりオリジナルインクは静かに売れていくというものに戻りました。

今から6、7年前頃から日本中のオリジナルインクが売れ始めて、少しずつ女性のお客様が増え始めて、ガラスペンの人気も高くなって行きました。最近では女性のお客様の比率が半分を超えていると実感します。海外からもお客様が来られるようになって、気が付いたら世界は変わっていました。

コロナ禍になってしばらくしてから、フェリスホイールプレス(FWP)を当店でも扱い始めました。

独特の世界観を持った美しくデザインされたパッケージやボトルにこれからのインクの姿を見ました。

FWPのインクの品揃えは、ラメ入りのシマーリングインクが多数で、それらはガラスペンでしか使うことができませんが非常に人気があり、当店でもなるべく揃えるようにしています。

FWPはインクのメーカーと知られていますが、私は万年筆にも注目しています。

FWPの万年筆はそのインク同様に様々なデザイン的な工夫が凝らされていて、書くだけでなく、見る楽しみも大いにあり、従来の万年筆とは切り口が違う万年筆だと思っていて、ガラスペンのように美しいものが好きな方にもぴったりだと思いました。

当店としては、今ガラスペンを使われているお客様に万年筆にも興味を持って欲しいと思っていて、そういうお客様との接点になるものだと思っています。

まず扱いを始めたのはマルキーズとビジューという2つのシリーズです。

マルキーズは宝石のカットの名称で、その名前が表す通りの六角形の凝った形状の軸となっています。キャップを外すと首軸にも細かい彫刻が施されています。

ペン先は大きく、ステンレスペン先でありながら、柔らかい書き味が特長です。

ビジューは宝石という意味で、軸に細かい彫刻が施された優しいペールトーンの色合いの万年筆です。

ペン先は小さく硬めのしっかりした書き味で、軸が細めでガラスペンから持ち替えをした時にビジューの方が持ちやすいと思う人もおられるかもしれません。

私が今までの万年筆と同様の見方で考察するのも何か違うと思わせるFWPが紡ぎ出す物語に則ったデザインの万年筆。当店では他の万年筆同様に書き味良くペン先調整してお渡ししています。

当店WEBサイトでは万年筆とインクを一つの項目として新たに作りましたので、ぜひご覧下さい。

⇒フェリスホイールプレスTOP

オリジナル万年筆のスチールペン先仕様追加

様々なモノの美しさがありますが、私はオリエンタルなものに惹かれます。

その中でもシルクロードや西域という所が特に気になるのは、好きで読んでいる小説の影響が大きいのかもしれません。そもそもそういうものに惹かれるようになったのは、子供の頃、両親と観たNHK特集シルクロードの影響なのかもしれません。

5月初旬に、期間限定で公開されている薬師寺玄奘三蔵院の大唐西域壁画を観てきました。
何年も観たいと思っていて、やっと念願が叶いました。

中国からインドまでのシルクロードの旅を描いた壁画を見るには、東京スカイツリーの展望台の入場料くらいの金額を払わないといけないので、余程好きな人でないと見に来ないし、余程好きな人は公開が始まってすぐに観に来るのか、期間末に私が行った時には他に誰もいなくて、ゆっくり観ることができました。

平山郁夫氏による玄奘三蔵のインドへの旅を描いた壁画は、その地の風景の中にいるような、自然と一体になる強烈な色彩を持つ東洋の風景が描かれていました。

当店オリジナル万年筆「コンチネンタルクラシックインスピレーション1985」(以後コンチネンタルクラシック)も、そんな東洋への憧れが形になった万年筆です。

キャップは一見黒に見えますがエボナイト製で、微妙に違う味わい深い色合いになっています。琥珀柄の軸は、素材メーカーで廃番になっていたのですが、どうしてもこだわりたくてこの万年筆のために再生産してもらいました。

オリエンタルなものを万年筆で表現しようと思った時に、鳳凰のペン先とともに琥珀色の軸はどうしても譲れないところでした。

今年から発売開始しているコンチネンタルクラシックに、この度ゴールドプレートペン先(スチールペン先)モデルも加わりました。
このボディの企画を決めた時にはすでに、ゴールドプレートペン先仕様の製作も決まっていましたが、完成が遅れていました。

14金ペン先モデルは55000円(税込)なのに対して、ゴールドプレート先モデルは22000円(税込)で、違いはペン先の素材だけになり、ペン先のデザインも同じになりますのでいかにゴールドプレートペン先モデルのコストパフォーマンスが高いかお分かりいただけると思います。

色々なものの値段が上がって、国産の万年筆が倍近い値段になってしまっている今、一軒の店がこだわって作った万年筆をなるべく安い値段で販売したいと思いました。

いつまでこの値段でできるか分からないですが、こんなご時世だからこそ意味がある価格設定だと思っています。

ゴールドプレートペン先の書き味は、けっしてガチガチに硬いものではなく、滑らかで心地良さのある使いやすいペン先で、自信を持ってお勧めできます。

字幅がEFとFの2種類で、手帳やノートに使いやすい字幅です。

当店のペン習字教室を開催して下さっている堀谷龍玄先生は、柔らかく強弱がつけられるペン先だと言って下さいました。

14金のペン先は、かなり大きいペンポイントがついた状態で入荷しましたので、当店で研ぎ直して調整しています。そのため字幅の種類が豊富で、研ぎの種類もお選びいただけるようになっています。

研ぎの種類についてそれぞれご説明いたします。

〇国産細字・国産中細・・・筆記角度により字幅が変わらない丸研ぎにして、ノート、手帳などに使いやすく仕上げました。

〇三角研ぎ・・・寝かせて書いた時と立てて書いた時の字幅の差が大きく、筆ペンで書いたようなキレのある文字、トメハネハライが表現しやすい研ぎです。

〇上弦の三角研ぎ・・・なだらかに弧を描く筆記面を持ち、筆記角度による字幅の変化は三角研ぎより少なくなっています。

〇標準・・・なるべく大きめのペンポイントをそのまま活かして、滑らかな書き味を追究しています。

〇丸研ぎ・・・筆記角度、ペン先の向きを気にせずに滑らかに書けます。字幅はBに設定しています。

コンチネンタルクラシックの14金ペン先モデルでは、ペン先調整をする店として様々なペン先の仕上げ方を示して、当店が目指す万年筆の楽しみ方を表現したいと思いました。

そのためにはオリジナルペン先を持つオリジナル万年筆でないとどうしてもいけなかった。

同モデルのゴールドプレートペン先では、こだわって作った万年筆をより多くのお客様に使っていただけるようにしたいと思いました。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシック1985は、5月31日(土)に開催されるNANIWA PEN SHOW 2025にもお持ちいたしますし、各出張販売にもお持ちいたします。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985 14金ペン先仕様⇒

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985 ゴールドプレートペン先仕様⇒

ペンホルダーに差すボールペン

4月下旬に仙台でのイベント「文具事変in仙台」に参加しました。590&Co.の谷本さんが知人の文具店や作り手さんに声を掛けて集めた10店舗による小規模なイベントでしたが、たくさんのお客様が来場されて驚きました。

天気にも恵まれたし、近くでクラフトフェアも行われていましたので、日程もよかった。そして何より参加者の皆さんが文具事変の告知の努力をしてくれていたからなのだと思いました。

イベントが終わって後片付けを終えたら、最終の飛行機には間に合いませんので、翌日の夕方に仙台を発つ便を取りました。半日ほどの時間、当店の森脇、590&Co.の谷本さん、590&Co.の手伝いをしていた作家のHさんとの4人で、参加者さんたちの荷物を送りだした後、仙台の文具店を見て回りました。

仙台の文具店は、数は多くはないけれどそれぞれの店が充実していて、見応えがありました。

Googlemapで表示された文具店を巡っていると、ドイツで文具店を巡った時のような懐かしい気持ちになりました。

仙台駅から少し離れた町にも文具店がありました。ドイツではわざわざまわり道して行ったのに空振りということがよくありましたが、空振り覚悟で思い切って行ってみました。

店内に入って筆記具のウインドーを見ると、思いがけないものを見つけてしまいました。

S.T.デュポンのディフィというペンが好きで、ボールペンをいつも使っています。

ディフィにはボールペンとシャープペンシルを装備したマルチファンクションペンというものが短期間だけ存在していましたが、気付いた時には廃番になっていました。

もともと複合筆記具(業界ではそう呼びます)が好きで、好きなデザインのディフィで複合筆記具なんて惹かれないはずがありません。

廃番なので難しいとは思いながらもデュポンジャパンさんから在庫リストが届くたびに確認していましたが、在庫が戻ることはありませんでしたし、昨年ル・ボナーの松本さんと谷本さんとドイツに行った時もお店に入るたびに見ていましたが、どこにもありませんでした。

ドイツの店にもなかったフランスのペンが、仙台にあるとは思ってもいなくて、他のものを見るのも忘れてすぐにディフィマルチファンクションペンを購入しました。

愛用している正方形のダイアリーの革カバーにはペンホルダーがあって、いつもS.T.デュポンディフィのボールペンを差しています。

ダイアリーに細々と書き込むのは万年筆で書き込みますが、ToDoを忘れないうちに書いたり、仕事中に急いで書く時はペンホルダーに差したディフィで書きます。

ダイアリーのペンホルダーに差して持ち運ぶというのは、私にとって最も華やかな役割です。当然、最も好きなデザインのペンがそこにあって欲しいので、最近はずっとディフィのボールペンがセットされています。

正方形のダイアリーはしっかりした紙質なので、ボールペンで書いても筆圧が軽ければ大丈夫ですが、強く書くと跡が残ってしまいます。

Teriw The Matt(テリューザマット)さんとコラボして作った正方形のテリューザマットをいつも正方形のダイアリーに挟んでいて、ボールペンで書く時は硬い面を上にして書くようにしています。

ひっくり返すと柔らかい面があって、そちらは万年筆筆記の時に使っています。

ディフィも正方形のテリューザマットも、私にとって気に入って使っている一番華やかな存在です。

デフィのマルチファンクションペンを手に入れて思いましたが、探し求めていたペンは100本のペンでもその存在にはかなわないものだと思いました。

次回の「ペン語り」は5/23(金)の更新になります。

S.T.デュポン

TERW THE MATT 正方形

正方形ダイアリー

刑事(デカ)手帳とLiscio-1・M5リフィル

久しぶりにM5サイズのオリジナルシステム手帳を作りました。

今まではどちらかと言うと遊び心のあるものを作っていましたが、今回は徹底的に道具として使うM5手帳にしたいと思いました。

リフィルよりも少し大きいだけのコンパクトさで、ベストやシャツの小さなポケットに入るものにしました。

革は万年筆レザーケースLで既に使っているゴート茶利革です。しっかりとした質感の革で、水分や傷に強く、道具として使うのにとても良い革です。

表紙は硬く180度平らに開くようになっていますので、立ったままのメモ書きもやりやすいと思います。

人の話を聞きながらメモをとる時、大きなノートを広げて書くのはなかなか憚られるものですが、手の平に収まるこのサイズの手帳ならサッと出してさりげなく書くということがとてもやりやすいと思っています。

それら全てを表現する言葉として刑事(デカ)手帳という名前がピッタリだと思いました。

当店は兵庫県警察本部のすぐ近くにあるので当然警察関係のお客様もおられ、中にはM5手帳を長年愛用している方もおられました。そんなイメージから出来上がった手帳でした。

M5手帳というと趣味性が高く、便利な機能が付いているものが発売されるようになりましたが、そのサイズを生かして道具に特化したものを作りたかった。

オリジナルのM5用リフィルは以前から販売しています。シンプルな方眼罫のリフィルですが、4mmという方眼のサイズ、罫線の濃さなどとても使いやすいレイアウトのものだと自信を持っています。

このリフィルにはディバイダ―を2枚付属していますので、それを手帳の最初と最後に綴じていただくとより書きやすくなります。

用紙は万年筆での極上の書き味を持った、Liscio-1(リスシオワン)紙を使っています。この紙は数年前に廃番となっていますが、オリジナルリフィルは大量に作りましたので、当分は安心してお使いいただけると思います。

オリジナルではディバイダ―も販売していますが、見出しはなく少しだけ厚手の紙を使って、めくる時に指に掛かるように企画しています。刑事手帳は本体がリフィルに近いサイズなので、仕切りたい場合などにちょうど良いと思います。

先日の10店舗が集まった仙台でのイベント「文具事変in仙台」で一緒に出店していた、革工房ブランドのLemma(レンマ)さんが縫製してくれています。

Lemmaさんは、美しくしっかりとした仕事をして下さるので、自信を持ってお勧めできます。シンプルで上質な革を使った実用的な手帳、実は意外と少ないのかもしれません。

⇒オリジナル 刑事(デカ)手帳 ゴート茶利革/M5システム手帳

オリジナルM5リフィル4mm方眼罫リフィル(Liscio-1仕様)

⇒オリジナルM5リフィルデバイダー