生活を書く文化

お店のサンプルと店主の使用品

5月発売予定のペリカンM600アートコレクション ゲオルク・ティッペルのご予約を5月10日まで受付中です。今回はまるで蒔絵作品のような渋い色合いで、東洋的な模様だと思っています。
M600アートコレクションはボディ部が金属製で適度な重量感があり、バランスも良いので実用性も高い万年筆です。また「オーロラ加工」という、真鍮の素材に細かな彫刻を施し、10層にもおよぶ透明ラッカーを丁寧に塗り重ねた加工は、このアートコレクションの大きな特徴と言えます。
⇒ペリカンM600アートコレクションゲオルク・ティッペル予約ページ

先日フィンランドの方から、自国では万年筆を買うことができる店がほとんどなく、インクを買いたいと思ってもイタリアやドイツのお店から通販で買わないと手に入らない、という話をお聞きしました。
日本はそこまでではないけれど、一般的に使っている人の少ない、ノスタルジックな筆記具だと思われています。だから万年筆のことだけなら、そういう国もあると思われるかもしれません。
それよりも私がもっと驚いたのは、今年になってから中東の方とオンライン会議をした際、相手の方が私がノートにメモする姿を見て、自分たちは普段の生活で紙に字を書くことがないので珍しいと言われたことでした。

世界では紙に文字を書くことがなくなっているのか?
私自身が、万年筆や紙製品などのステーショナリーを販売している、万年筆で書くことが好きなお客様が来られる店にいますので、もしかしたら世間と認識がズレているのかもしれません。
私たちは紙に書くことを楽しいと思っていて、多くの人にもしていただきたいと思っています。

本当は万年筆を使うことが書くことを最も楽しくできることだと思うけれど、それにこだわるのはもう一つ先の段階であって、まず「紙に書くこと」を無くさないように考えなければいけなかった。
紙に書くということが生活の中にあることで毎日が楽しくなって、潤いあるものになると思っています。

何の目的もなく万年筆で手書きするということは、余程好きな人でないとできないと思います。しかし、手書きしたものが生活の役に立つとしたら、多くの方が取り掛かりやすいのではないでしょうか?

私たちはそれがダイアリーを書くことだと思っています。

ダイアリーに明日の予定を書いたり今日あったことを書いたりすることは、これからの行動について考えることであり、来年を今年よりも良く楽しく暮らす役に立つと思っています。

では、より良く楽しく暮らすということはどういうことか。

それは人によって違うことですが、時間に流されるのではなく時間を把握して意識を持つことだと思っています。

そうするためのダイアリーを当店では扱っています。

1月始まりのダイアリーについて5月に語るのも何ですが、正方形のオリジナルダイアリーを大和出版印刷さん、分度器ドットコムさん(590&Co.さん)と共同で、16年継続して毎年販売しています。

私は主に、自分の行動記録帳として使っています。

日中はその時々のことをメモ帳に書き留めておいて、夜に細字のプラチナセンチュリーでダイアリーに書き写すのが日課になっています。

その日の仕入れ額、売り上げなども書き込んでいて、そういうことを書いていると明日の予習にもなり、もっと若い頃からやっていれば良かったと思っています。

他に使い方はたくさんあって、見本のように仕事の納期管理、ハビットトラッカーなどに使うことができるページもあります。

こうやって私たちが自分の足元を見て、身の回りのことについて書き記すことは、自分の生活をより良いものにする役に立つと思っています。

それは何か新しいものを生み出すよりも大切なことだと、やっと思えるようになりました。

ダイアリーを書くことは自分の日常を文化することだと思っていて、そこからの可能性を大いに感じています。

⇒オリジナル正方形ダイアリーTOP

*次回の更新は5月22日(金)です

満月ペン先と仙台

先週末、文具事変in仙台というイベントに参加しました。
590&Co.さんが取引のあるお店に声をかけて開催しているイベントで、昨年の第1回目から参加しています。
神戸空港から仙台行きが出ていますので、乗り物に乗っている時間は2時間くらいで着くという便利さです。

仙台の街は、いくつかの大学が中心部近くにあるせいか若い人が多く、観光で来られている方も多いので、とても活気があるように思いました。
仕事で来ている者としては街の活気はとても気になり、駅に降り立った時からそればかり気にして見ています。
ただ波長の合うお客様との出会いを探して出てくる当店としては、お一人お一人との濃いつながりの方が大切なので、街の活気はあまり関係ないのかもしれません。それなら谷本さんが言うように色々な街に行ってみた方がいいのかもしれませんが、単純に人口が少なくなるとやれる自信がありません。

仙台はしっかりとした文具店がいくつもあるし、今回イベント翌日にお尋ねした樂さんという万年筆店もありますので、万年筆に興味のあるお客様が多いのかもしれません。

また今は廃業してしまいましたが独立系の万年筆メーカーの大橋堂さんは仙台にあって、全国の百貨店の職人店などに出店していました。
エボナイトを中心としたハンドメイドの温かみのある軸が魅力の万年筆を作られていて、ペン先の書き味の良さにも定評がありました。当店の委託販売で時々目にすることがありますが、人気ですぐに売れてしまいます。

大橋堂さんの、未研磨の球のままのイリジウムから研ぎ出すという字幅の作り方に興味がありました。
完全な球形のままだと紙に点で触れますので字幅は細めになり、書き続けると面が作られて太さが変っていきます。

個人的に字幅に関係なく大きなペンポイントを見ながら書くのは何とも楽しい。必然的にペン先の寿命も長く、そう簡単に擦り切れることはありません。まさに一生ものという感覚になる万年筆です。
当店のオリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985の14金ペン先では、未研磨のペン先が手に入ることになりましたので、なるべく球のままに近い状態のペン先を始めました。
未研磨のペン先は当店では満月と呼んでいて、文具事変in仙台でも多くの方の眼に留まったようでした。

ちなみに、未研磨と言っても調整していないわけではありません。本当に未研磨のままのペン先をそのまま書くと引っ掛かりますので、切り割りに沿って少し当たりをつけて滑らかに書けるようにします。あとはお好みやその方の筆記角度に合わせて筆記面を作っていきます。

この未研磨のペン先は、大橋堂さんがあった仙台だからこそ多くの方の眼に留まったのかもしれません。大橋堂さんの足元にも及びませんが、私たちもなるべくいろいろなところに出向いて、お客様方に直接万年筆を手渡したいと思っています。

⇒オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985 14金ペン先