
40歳を前にして独立することについて考えていた時にル・ボナーの松本さんに出会いました。
松本さんに出会ってル・ボナーというお店を知って、何となく弾みがついたというか、背中を押された気持ちになって今の状況にありますので、すごく感謝しています。
松本さんとの出会いは奥深い革との出会いでもあり、革についても全て教えていただきました。それまでも革製品は仕事で扱っていたので、ある程度は知っているつもりでしたが、何も知らなかったと反省しました。
それほど「ル・ボナー」は様々な革が溢れている革のワンダーランドだったし、革への愛情がこもった蘊蓄をたくさん聞いてきました。
そんな松本さんを介した革との付き合いの中で、見て、触れて、嗅いで、お話を聞いて、デンマークソフトカーフもとてもいい革だと思っていました。
デンマークソフトカーフという革は実はル・ボナーさんでしか使っていない、ル・ボナーさんのオリジナル革です。
革の原皮は北部ヨーロッパのものが最も良いと言われていて、特にオランダのものは最高級と言われます。しかし、知名度が上がり価格が高騰し過ぎてしまいました。
そのオランダ産の原皮と変わらないクオリティがありながら、品質が安定していて、価格的には安いデンマーク産に松本さんは注目していました。そしてデンマーク原皮を使用したルボナーオリジナルの革デンマークカーフに続き、デンマークソフトカーフも作りました。
デンマーク産の原皮をウェットブルー(初期なめしだけした)の状態で輸入し、日本のタンナーで鞣したものがデンマークソフトカーフです。
高級ブランドが使用する知名度の高い革と変わらない、あるいはそれ以上の柔らかく滑らかな手触りとしなやかな強さも併せ持った、上質な質感のエレガントな革がデンマークソフトカーフです。
自分の腕と感性で有名ブランドの鞄と比較されるほどの鞄を作るル・ボナーの松本さんの反骨心が作り上げた革。
有名タンナーが作ったとか、有名ブランドが採用したという革ではないけれど、50年近い職歴のある鞄職人が理想の革を実現するためにオリジナルで作った革は、私には遥かに魅力的に思えます。
ル・ボナーさんでもデンマークソフトカーフで鞄以外のものは作ったことがないと言われて、注文する時少しドキドキしましたが、とても良いものが出来上がってとても嬉しく思いました。
適度なしなやかさ、キメの細かさがありながら、強靭さも併せ持っている上品な雰囲気のある革、デンマークソフトカーフのデブペンケース。
今までのデブペンケースとはまた違った、ル・ボナーさんのロマンも感じられるものができました。