ファーバーカステル伯爵コレクション

ファーバーカステル伯爵コレクション
ファーバーカステル伯爵コレクション

ほとんどの人がそうかもしれませんが、冬が嫌いで外が寒いと外出したくなくなったり、出勤する時間もダラダラと遅くなったりします。
そんな憂鬱な冬を少しでも楽しくしようと、外出したいと思えるようにしようと思い切って買ったグローバオールのダッフルコートは今では冬の間中手離せないものになっています。

かなり厚手のウールなので重さもかなりありますが、それを差し引いてもメイドインイングランドというロマン、オーソドックスで流行に左右されないデザインはダウンジャケットに戻れない満足感を着るたびにくれます。
イギリスで70年もの間変わらずに作り続けてきたというロマン、そしてファッションのトレンドに流されないダッフルコートのスタンダード、これだけでも着る人を幸せにしてくれて、出不精を緩和してくれます。

こういった古くから変らずに作り続けてきて、スタンダードとなったものに私はとても惹かれます。

その好みは多くの場合、他の物にも当てはまり万年筆も同様です。
今までになかったものを作ろうと奇をてらった斬新なものよりも、クラシックで保守的な作りのしっかりしたものがとても好きです。

作り続けるためにはただ何も変えずに惰性で生産するのではなく、少しずつでも改良してより良いものにしていく努力が必要で、長い年月をかけて作り込まれたものに勝るものはないと思っています。

ファーバーカステルは、世界で最初に鉛筆を製造したメーカーとして有名で、その歴史は250年にも及ぶということですので、筆記具メーカーとしては最古参になります。
9000番鉛筆という濃い緑色の鉛筆が最も有名で、ファーバーカステルを製図・デザインの分野で最も尊敬されるメーカーとしている立役者ですが、その鉛筆のノウハウが存分に生きていると思われる伯爵コレクションの万年筆をご紹介いたします。

伯爵コレクションの万年筆は、他の万年筆のようにキャップを尻軸につけてベストなバランスを保ったり、適度な軸の太さがあって万年筆を寝かせてゆったり書くという書き方ではなく、キャップを尻軸につけずに、万年筆を立て気味にして書くというのが合った使い方だと思っています。

それはもしかしたら鉛筆につながる書き方なのかもしれないと思うと、ファーバーカステルが独自に守り抜いてきた鉛筆作りに対してのこだわりが、万年筆に生きているのだと理解できます。

万年筆を使い慣れた人が、他の万年筆からファーバーカステルに持ち替えて書いた時にとても違和感を感じるかもしれませんが、これがカステルが提案する万年筆だと思うと、そして鉛筆作りで250年間の実績があるということは誰をも黙らせてしまいます。

伯爵コレクションのシンプルだけどとてもファーバーカステルらしい、優雅さを感じさせるデザインは、他の万年筆メーカーが良しとするバランスでは作り得ないもので、そういった点において伯爵コレクションの万年筆はスタンダードでないのかもしれませんが、これこそがファーバーカステルがスタンダードとする筆記具だと思えてしまいます。

私にとって外出したくない気持ちを奮い立たせるものがグロバオールのダッフルコートだとすれば、なかなか気が乗らない仕事に向かわせてくれるのがファーバーカステルの万年筆で、そこに伝統とロマンを感じています。

⇒ファーバーカステルcbid=2557105⇒ファーバーカステルcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルcbid=2557105⇒ファーバーカステルcbid=2557105⇒ファーバーカステルcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステル
*画像は伯爵コレクション・グラナディラです。

カスタム743

カスタム743
カスタム743

質実剛健という言葉が最も似合う万年筆がカスタム743だと思っています。
万年筆は書くため、あるいは気持ちよく文字を書くためのみにあるのではなく、書くことを楽しむことと同じくらい、その万年筆のデザイを楽しむことも万年筆を使うことの醍醐味です。

しかし、カスタム743はデザイン的な面白みや見て楽しめる要素を持たせようとする努力はされておらず、万年筆の本質の部分だけを追究した結果生まれたように思います。
しかし、この万年筆にはこれで十分という及第点を遙かに超えた性能やフィーリングの良さが備わっています。
まさに書くということに全てが向かっている万年筆だと言えます。

黒いボディに金色の金具というあまりにも万年筆然としたデザインは長く飽きずに使うためのありきたりさを狙ったもの、絞られたキャップトップとボディエンドはバランスを中央に集めるため、さらにキャップの尻軸への入りの深さも有利になり、バランスをより良くするためのものだと解釈しています。
他の万年筆よりも長く感じられるキャップはペン先の保護だけでなく、首軸とボディの接合部(万年筆の中で一番弱い部分)をも守るための仕様になっています。

大きなペン先は、柔軟性よりもしっかりとした耐久性が感じられますし、字幅ごとに溝の太さが最適に調整されている容量十分な大きなペン芯も備わっています。

ここまで書くということにこだわったカスタム743を、2011年は実用的な万年筆求めておられる当店のお客様方におすすめしたいと思い、字幅を揃えてみました。

私は国産の万年筆においては2万円クラスのものが実用的には完璧だと皆様にお勧めしてきました。
2万円クラスの万年筆は、持つ喜び、見る楽しみなどの要素は少ないかもしれませんが実用的に不満を持たれることは少ないものだと思っています。

しかし、そこまでの性能の限界を求めた使い方をしなくても、オーバークオリティであるということは、万年筆を使い慣れた人だけでなく、初めて万年筆を使う人にも、大きな喜びを常にもたらせてくれるものだと思っていますので、平均点を大きく超えた実用万年筆としてカスタム743を選びました。

実用的な万年筆としてお勧めするために、なるべく用途に合ったものを選択していただこうと、多くの字幅を用意しています。

極細、細字は手帳への細かな文字での書き込み専用、中字は手紙用、太字はメモ帳や原稿用紙用として私は使い分けるようにしています。

普通のペン先ではない、特殊な形のものについては、下記の解説をご覧ください。

〇ポスティング(PO)
本来帳簿に細かな数字を明瞭に書くために、そしてなるべく滑らかに書くために考案されたペン先です。
ペンポイントをお辞儀させることでペン先が開きにくくなり、安定して太さが均一な文字を書くことができます。
手帳に小さな文字を書くような用途に向いています。

〇ウェーバリー(WA)
ポスティングとは逆にペンポイントが少しのけぞった格好をしていて、ペン先の腹が開きやすくなり、柔らかな書き味で紙当たりが柔らかくなります。
書き味を楽しめる中字相当のペン先です。

〇スタブ(SU)
明朝体のような、横線が細く、縦線が太い文字を書くことができるペン先です。
ドイツ製の万年筆の中字以上が以前はこれに近い仕上げになっていましたが、最近では丸研ぎになっていますので、スタブは貴重な存在だと言えます。
ペン先をひねらずに紙に正対させるという書き方のコツが少し必要です。

〇ファルカン(FA)
指先の力の入れ加減で、細くも太くも書くことができる大変柔らかいペン先です。
書ける文字は筆のようで、これに代わる使い勝手を持ったペン先はありませんが、使いこなすには少しテクニックが必要です。
ペン先が柔らかくすぐ開くため、筆圧を調整できないとすぐにインクが途切れてしまいます。
筆圧の調整は、シンプルに力を抜くか、ペン先をひねって開きにくくする方法があり、書きながらこれらのテクニックを駆使しなければならないのがフォルカンですが、使いこなせた時の感激は大きいと思います。

特殊ペン先は通常の万年筆のペン先とは仕様が違っていて、文字通り特殊なもので、使う人をかなり限定してしまいますが、実用上大いに意義のある使う理由のあるものだと私は思っています。

国産万年筆最高のタフな性能とフィーリングの良さを持ったカスタム743に用途に応じたペン先をチョイスすることで、最高の実用万年筆になります。

⇒パイロット カスタム743

唸らせるペリカンらしさ M320 ルビーレッド

唸らせるペリカンらしさ M320 ルビーレッド
唸らせるペリカンらしさ M320 ルビーレッド

発売予定から1年遅れて、やっとペリカン特別生産品M320ルビーレッドが発売されました。
ペリカンはミニサイズのスーベレーン300シリーズをベースに、定期的にM320という特別生産品を色を違えて鮮やかな色で発売していて、前回はグリーン、その前はオレンジで、どちらも定番品とは違うボディとキャップが同色のタイプでした。
今回のルビーレッドは、明るめの鮮やかな色合いの以前のものと比べると、少し落ち着いたイギリス風な(?)印象を受けます。

M300、M320ともにミニペンというサイズながら、他のスーベレーンのシリーズと同じように回転吸入機構を備えた吸入式の万年筆で、万年筆の面白みを理解しているペリカンらしいところだと思います。
しかも非常に小さなペン先であるにも関わらず、柔らかくて味わい深い書き味を持たせているところもまたペリカンらしいと唸りました。

万年筆は1本だけ単体で持つよりも、何か自分なりに取り合わせを考えて、何本かまとめて持つ方が道具として楽しいと私は思っています。

例えば3本の取り合わせなら、細字、中字、太字の字幅で万年筆を同色のもので揃えてみたり、同じ素材の(例えば木など)ボディにしたり、取り合わせる共通点は非常にたくさんあって、他人から理解されなくても、自分の好みというか、美学で決定すればそれが一番楽しい。

どのペンとどのペンを組み合わせないといけないという規則もありませんので、お好みで自由に楽しんでいただきたいと思います。

でも、個人的にペンの取り合わせで一番美しく、贅沢なのは同じペンで取り合わせることだと私は思っています。
同じ形で色だけ違ったペンを字幅違いやインクの色違いで3本ペンケースに入れて持っていると、統一された道具感が強くなって、面白みも強くなると思いませんか?

子供の頃、あまり高いものではありませんでしたが、金属のケースに入ったツールボックスをねだって買ってもらった思い出があります。

何かのために使うからという用途はなく、ただ統一感のあるその道具のセットというものに強く惹かれたからだったと思いますが、ドライバーやレンチなど、たくさんの工具が整然とツールボックスに収まっている姿を見るのはワクワクするもので、使わないのに何度も出しては仕舞ってを繰り返していました。
ペンケースにそれぞれ役割を与えたペンを統一感を持たせて持ち歩くのが楽しいのは、このツールボックスに惹かれた気持ちと同じなのかもしれません。

ペリカンは、定番品のM300やこのM320をピッタリと入れることができるミニサイズの3本差しのペンケースを発売していて、ここにこれらのペンを取り合わせて入れるというのは、非常に満足感のある取り合わせですが、ペリカンはそんな楽しみも理解しているとすれば、このペンケースに300番台の万年筆やボールペンを3本揃えて入れるのはペリカンの思うツボなのでしょうか。


⇒ペリカン ミニペンケース

パイロットシルバーン、手帳用の万年筆

パイロットシルバーン、手帳用の万年筆
パイロットシルバーン、手帳用の万年筆

手帳用の万年筆が私の原点なので、手帳に使う万年筆にはかなりこだわりを持っているというか、大切に考えています。

手帳用の万年筆というと、メーカーなどが提案しているものは、軸がものすごく細かったり、ミニペンのように小さなものだったりするものがほとんどですが、手帳のペンホルダーに収まりやすいという理由からだけでそういったものを手帳用の万年筆として使うのはもったいないと思っています。

メモ、手紙、ノートなど万年筆を使う用途は様々ですが、私の場合は手帳に向かっている時間が長く書く文字数も一番多いので、手帳用としている万年筆のイリジュウムが一番よく減って書きやすく(私には)なっています。

手帳に書くには細字のペン先である必要がありますが、同時に書きやすくなくてはならないという言わば究極の性能が求められます。
その要求に応えてくれる万年筆こそが、快適に手帳に使うことができる万年筆だと思っていて、そんな万年筆について考えてみたいと思います。

万年筆選びにおいて国産か外国製かを分けて考えるのは特に意味のあることではないと思っていますが、手帳用と考えた時にはそれは結構重要な意味があり、どうしても国産のものが中心になってしまいます。

国産の万年筆の方が、外国製の万年筆よりもインクの出が少なめですし、ペン先も細いので、手帳によりくっきりときれいな文字を書きやすくなっています。
国産の万年筆のそのような切れの良さは、なかなか捨て難いものがあります。
いくつかの万年筆の候補があって、それは手帳用としなくても超一流の万年筆ばかりですが、その筆頭に挙げたいのが「パイロットシルバーン」です。

私も手帳用として長く使っている万年筆ですが、その全てが私が求める手帳用の万年筆の用件を満たしています。
キャップは勘合式で、開け閉めする頻度が多い手帳の用途に向いていますし、キャップの尻軸への入りが深くバランスがとても良いのも、書く性能の一部です。

国産の万年筆の中でも特にインクの出は少なく調整できる部類に入りますので、そういったところも手帳に向いていると考える所以です。

私が手帳用と考える万年筆を今後もご紹介していきたいと思っています。

⇒パイロット・シルバーン

ペリカンM450 伝わりにくかった上質

ペリカンM450 伝わりにくかった上質
ペリカンM450 伝わりにくかった上質

毎年日本輸入筆記具協会という団体が発行しているPENカタログというものがあります。
そのカタログはメーカーの枠を超えて、日本に正規輸入されている高級筆記具が多数掲載されている販売店備え用のカタログです。

私たち筆記具の販売員は、日に何度もこのカタログを開いて、調べたり、確認したりする、この仕事においてなくてはならないものです。
万年筆を知ったばかりの時は毎日飽きずにこのカタログを眺めて、色々な事を勉強してペンを販売する基礎知識を身につけました。

毎年、12月に来年のPENカタログが店に届き、すぐに目を通します。
良い新製品が出ていないか、そしてカタログから消えたペンがないかどうかを知るためです。
今年もそうやってチェックしていて、一番ショックを受けたのは、ペリカンM450がカタログから消えていたことでした。

M450は過去のモデルの復刻ということもあり、現代的になり始めているペリカン社のラインナップの中で、トレドなどと並ぶ異色の存在の万年筆です。
スターリングシルバーに金張りのバーメイルのキャップにタートル柄のボディが外観上の特徴です。

バーメイルは、90年代までは上級グレードの万年筆の素材としてよく使われていて、長年使うことで少しずつ変化して金の色が落ち着いて良い風合いになっていきます。そういうところに先人の知恵、ヨーロッパの工芸の奥行きを感じていましたが、最近のペンにはあまり使われなくなってしまいました。

私は、復刻版などのクラシックなデザインで現代の品質を持ったものがとても好きなので、M450も使っています。
使い始めた時、派手な金キャップへの抵抗が少しありましたが、徐々に良さが分かってきました。
この万年筆と出会えて良かったと思い、ぜひこの万年筆を多くの方々に使っていただきたいと思っていましたので、PENカタログから消えてしまったことはとても残念に思いました。

M450はカタログを見ているだけでは、M400と同じサイズで、キャップがゴールドでペン先が18金になっているだけで、値段が最も柔らかく大きなペン先を持つM1000と同じ値段ということしか分かりません。

世間であまり売れなかったのは、その良さが知られていなかったからなのだと思われますが、キャップが金属になって、ペン先が18金になるだけで、こんなに違うのかと思わせる特別なペン先のタッチを持っています。

万年筆の書き味の良さを表す時によく硬い、柔らかいで表現されることがありますが、そういった方向性とは違うベクトルの良さを感じるのが、M450の書き味です。
カタログでは絶対に分からない良さを持ったM450を知っていただいて、最高の状態で送り出したいと思っています。

使って分かる良さのある、とても渋い存在の万年筆がまたひとつ消えそうになっています。

3本差しペンケースの取り合わせ

3本差しペンケースの取り合わせ
3本差しペンケースの取り合わせ

万年筆のどこに面白みを感じるかというのは人それぞれで、イタリアの万年筆のような意匠を凝らしたところに惹かれる人もいれば、ペン先のフィーリングをひたすら追求している人もいます。

万年筆という物ひとつとっても人それぞれ感じる部分が違うのが面白いところだと思っていて、それは人の好みという感覚であって、誰にも押し付けることのできないものだと思います。

私自身は、お客様方が感じておられる万年筆の面白みをそれぞれ理解しているつもりですが、自分自身で万年筆に惹かれる部分はその取り合わせです。

今自分が持っている工房楔の10本収納ペンケース、コンプロット10に入っている中のどれとどれを組み合わせて3本差しのペンケースに入れるか、というのが、もしかしたら万年筆を選ぶ基準の大部分を占めるのかもしれません。

毎日ル・ボナーの3本差しのペンケースにその日使うつもりの万年筆を3本選んで持ち歩いています。
デザイン的なバランスが取れていて、細字、中字、太字が揃って自分が使う用途をカバーしているということが3本の取り合わせの条件になります。
3本差しのペンケースには、ペンをただ3本収納する以上の意味があると思っています。

1本差しにはまた違った潔さや意味があって、そこにはこの1本だけで仕事をするというような気迫みたいなものを私は感じて取っていて、1本差しを使う人に畏敬の念を感じます。

話を3本差しに戻すと、3本差しのペンケースに無作為に選んだ3本をただ収納するのではなく、自分の万年筆での用途を満たしながら、デザイン的に揃えたり、テーマを設けたりして、自分一人悦に入っていて、これが私が一番心惹かれる、「取り合わせ」です。
ペンケースに3本差しのものが多く発売されているのには、用途を満たすようにという考えがあってのことだと思っています。

当店のオープン直後からの売れ筋商品である3本差しのペンケースは、非常に頑丈に作られていて、中に入れるペンを保護するという考えが大きく働いています。
その日使うつもりの3本の万年筆をこのペンケースに安心して託すことができる。
そんな気持ちを教えてくれたものが、ル・ボナーの3本差しのペンケースです。

ちなみに私にとっての最高の取り合わせは、3本とも字幅違いで同じ万年筆です。
当然デザインが揃っていますし、用途も満たしている。
例えばプラチナブライヤーを細字、中字、太字と揃えてペンケースに入れて持ち歩きたいと思っていて、これは最高の贅沢のように思っていますが、いまだに実現できずにいます。

最近ラインナップに細字と中字しかないものが増えてきて、確かに万年筆の字幅の売れ筋はそのふたつですが、3本取り合わせのロマンを理解しない無粋なことであると非難せざるを得ないと思っています。

取り合わせのバリエーションは、人それぞれ様々だと思います。
ブライヤーを3本揃えるように、木というテーマで手帳用の細字、手紙用の中字、メモ用の太字としたり、インクの色を黒、青、赤としたり、ペン先の硬さを3段階に選んでみたりなど、こういうことを考えるのは本当に楽しいと思います。

今回が今年最後のペン語りになります。
今年1年本当にありがとうございました。来年も何卒よろしくお願いいたします。
皆様良いお年をお迎えください。

*画像は店主の実際のペンケースです。3本差しペンケースはチョコですが飴色に表面が変化しています。

⇒工房楔(せつ)コンプロット10:木製品トップへgid=2125800″ target=”_blank”>⇒工房楔(せつ)コンプロット10:木製品トップへ
⇒ル・ボナー3本差しペンケース

きれいな文字が書ける万年筆

きれいな文字が書ける万年筆
きれいな文字が書ける万年筆

毎月第1金曜日の19時から21時に、青玄書道会の堀谷龍玄先生をお招きして“万年筆できれいな文字を書こう”というペン習字のワークショップを開催しています。

せっかく万年筆で文字を書くのだから、きれいな文字を書きたいという想いは誰もが持っていることで、私ほど字が下手でなくてもご自分の書く文字にコンプレックスを持っておられる方が多いことが分かり、堀谷先生の快諾もあって開講することになりました。

毎回、堀谷先生が書いてきて下さるお手本を見ながら2時間の間ひたすら書き続ける。
最初の15分程は物音ひとつ聞こえず、皆さんとても集中して書いておられることが分かります。
しばらくすると堀谷先生がお一人ずつの書かれたものを見て、そこに赤ペンで指導していきます。
ここで書き方のコツを教えていただいた文字は見違えるほどきれいになりますが、他の文字とのギャップがあります。
でもこうやってきれいに書くことができる文字がひとつずつ増えていって、自分でも練習することによって全体が変わっていくのだと思います。

すごく集中して、もっときれいな文字を書きたいと思って気合いを入れて文字を書いていると、その万年筆の持つ性能が見えてくることがあります。

自分が持っている万年筆の中で、一番高価なものを使いたいと思いますが、どの万年筆がペン習字に向いているのかはすぐに分かってしまいます。

ペン習字に参加されている方それぞれ使われている万年筆は違っていて、使い手によって向いたものがあるのだと思いますが、一番評価が高いのはペリカンM800のEFペン先です。
長くハードに書くことにおいて、最高のバランスを持った万年筆というのはペン習字においても良い使い勝手を見せるのだと、さすがペリカンM800だと唸りました。

一方私は、線の美しさや繊細さが必要なペン習字には日本のメーカーのものが合っていると思っていて、プラチナブライヤーやパイロットシルバーンばかりを使っています。
講師の堀谷先生も国産派で、セーラープロフィットスタンダード21と出会ってご自分の文字が変わったと言われます。

数ある万年筆の中でも比較的地味で、取り上げられるべき特長の少ない万年筆だと思っていましたが、堀谷先生のお話を聞いて納得しました。

プロフィットスタンダード21は、セーラーの代表的なモデルプロフィット21の小型版で、ボディの直径が10mm、全長で150mmプロフィット21よりコンパクトにできています。
ボディはコンパクトですがペン先には21金が使われていて、14金のものよりも上質な書き味を持っています。

堀谷先生がプロフィットスタンダード21に惹かれたのは、上質な書き味もそうですが、先生の独特の筆記スタイルがコンパクトなサイズを求めてのことでした。
堀谷先生は万年筆を持つ時、ペン先の根本近く首軸の先端を持ちます。
なるべく紙の近くを持って万年筆をコントロールしたいということだそうですが、ペン先の大きな万年筆でしたら指が紙からその分遠くなってしまいますので、ペン先の小さな万年筆が使いやすいそうです。
そして、先端を持って書かれるのでボディはなるべく短く軽いものがよく、プロフィットスタンダード21はそれらの条件にピッタリ合うそうです。

上質なペン先を持ち、軽く小さなペン先の万年筆と考えてみると他にあまりなく、プロフィットスタンダード21に代わるものがないことが分かります。
ボディやペン先は小さなサイズがいい、でも上質なものでないとフィーリングが悪いし、愛用のものになった時に長く使うことができないという願望に叶ったセーラープロフィットスタンダード21は、きれいな文字を書くことができる万年筆の筆頭だと言えます。

堀谷先生の万年筆での作品のほとんどはこのプロフィットスタンダード21で書かれていて、その作品は高い評価を得ています。

⇒プロフィットスタンダード21
⇒ペリカンM800

オリジナルダイアリーとダイアリーカバー

オリジナルダイアリーとダイアリーカバー
オリジナルダイアリーとダイアリーカバー

来年のダイアリーは何を使おうか考えながら、様々なものを見て迷宮をさまよっている方はおられないでしょうか?

様々なダイアリーを知れば知るほど、どのダイアリーがご自分の使い方に合っているのか分からなくなりますのでその気持ちはとてもよく分かります。

ダイアリー選びを迷われている方に、当店と西宮のステーショナリーショップ分度器ドットコムさん、神戸の印刷会社大和出版印刷さんが共同で企画したオリジナルダイアリーをお勧めしたいと思います。

オリジナルダイアリーは万年筆を使う方のために企画したダイアリーで、万年筆で書く楽しさも感じていただけるものだと確信しています。

万年筆は、インクによってその書き心地や性質が大きく変わってきます。

流れの良いインクを使うと、多くの場合インク出の良い、書き味の良い万年筆になりますが、筆跡がにじむこともあります。
あまり流れの良くないインクの場合は、書き味はまた違ったものになりますが、にじみにくいという点もあります。

仮に万年筆の書き味というフィーリングを無視すると、紙とインクの関係はもっとはっきりしてきて、にじみやすい紙にはあまりにじまないドイツ製かプラチナのブルーブラックが有効です。

万年筆を使うからには書き味を良く書きたい、でも書いた後の文字も美しく見せたいというのは万年筆を使う方々皆の心情だと思いますし、手帳を書く色が制約されるのも何か窮屈な感じがします。

インク選びに迷わず、好きな色のインクが使えて、書き味も良い紙がダイアリーの紙として理想だと私は思いますが、神戸六甲アイランドの大和出版印刷さんが開発したリスシオ・ワン紙はそんな紙で、その紙で作ったダイアリーは万年筆を使う人にとって一度は試しても良いものだと思います。

万年筆の書き味が良ければ紙の書き味はそれほど問題ではないと思いがちですが、ダイアリーにはなるべく小さな文字が書けて、後から見やすい細字の万年筆で書くことが多くなりますので重要な問題です。
細字の万年筆は、太目の字幅の万年筆に比べるとどうしても書き味が劣りますので、書き味の良い紙というのは、ダイアリーに使われて一番その良さを発揮すると思います。

オリジナルダイアリーは、紙の良さだけでなく、1年間十分に使い続けることのできる強度と快適に使うことができる平らに開く製本にも特徴があります。
罫線は、カレンダー式のマンスリー、売れ筋で評判の良いウィークリー、日記風のデイリーと3種類ありますが、組み合わせのお勧めとしてはマンスリープラス、1日の書く量に応じてウィークリーかデイリーを選択するという使い方になります。

予定が細かくたくさん入る方は、ウィークリー、記録として使いたい方はデイリーがいいと思います。

それらのダイアリーは万年筆で書くということを一番に考えていて、別売りの神戸の鞄店ル・ボナーさんの協力によって、作られているダイアリーカバーにペンホルダーやベルトが付いていないのも、書くときに邪魔になるからという理由からです。
とてもシンプルなダイアリーカバーですが、上質な革の感触を楽しみながら使うことができるものになっています。
ダイアリーカバーは、シングルとダブルの2種類があり、中に入れる冊数によって選択していただけます。
シングルはマンスリーとウィークリーかデイリー、あるいは横罫や方眼ノート。もしくは方眼罫に切取線がある分度器ドットコムオリジナルツバメノートの組み合わせ。

ダブルは上記のシングルの組み合わせにさらに1冊、もしくは2冊まで収納することができる、全てを1冊にまとめることができます。

シングルに用意している革はカジュアルな服装に合い、柔らかな質感でありながら、傷がつきにくいシュランケンカーフ、スーツなどのフォーマルな服装にも合う黒のブッテーロ革に赤のステッチの2種類です。
ダブルは、高級感のある光沢のクリスペルカーフ、使い込んでエージングさせる楽しみのあるブッテーロと、革のお好みによって選んでいただけるようにしています。

正方形のダイアリーサイズは、筆記スペースの確保と携帯性を両立したもので、縦方向が規格サイズよりも短いことにより、ダイアリーをパソコンのキーボードの手前に置いてもキーボードがあまり遠くなりません。

私の使い方は、クリスペルカーフのダブルのカバーに、カレンダー代わりのマンスリー、その日のメモを全て記すデイリーダイアリー、アイデアや雑記などに使い、用事が済むと切り離せる分度器ドットコムのオリジナルツバメノートの組み合わせです。
すぐにメモできるようにいつも傍らに置いていて、何でもこの1冊に書き込むことができます。

万年筆を使う人のために企画私共のオリジナルダイアリーを一人でも多くの方に使っていただきたいと思っています。

⇒オリジナルダイアリー(紙製品トップへ)cbid=2557112⇒オリジナルダイアリー(紙製品トップへ)csid=1″ target=”_blank”>⇒オリジナルダイアリー(紙製品トップへ)
⇒オリジナルダイアリーカバー(革製品トップへ)cbid=2557544⇒オリジナルダイアリーカバー(革製品トップへ)csid=0″ target=”_blank”>⇒オリジナルダイアリーカバー(革製品トップへ)

ミネルバボックスの革

ミネルバボックスの革
ミネルバボックスの革

六甲アイランドの鞄店、ル・ボナーの松本さんのブログにも出ていましたが、6月のヨーロッパ旅行は私たちにとって本当に良い思い出となっています。
かなりハードな日程で、体力の限界まで歩き続け、男だけで狭い部屋で寝起きするという毎日を2週間近く続けていました。
ホテルに帰ったらシャワーを浴びるのが精一杯で、すぐにベッドに入ってしまうという極限状態でも本当に楽しかったと思います。
体力の限界に挑んだ男だけの生活をしていると、気まずくなったり、言い争いなど気持ちがすれ違うことも起こりそうなものですが、そういうこともなく和やかに旅を続けることができたのは奇跡に近いことなのかもしれません。

毎日歩き続けた旅行でしたが、足が痛くならなかったのは、多少履きなれていたビルケンシュトックのメンフィスという靴を履いていたおかげだというのは間違いありませんが、もうひとつ歩き続ける役に立ったのは、ル・ボナーのパパスショルダーでした。
パパスショルダーの中に、長財布、デジカメ、パスポート、万年筆ケース、旅ノートやドイツ、チェコでは夜が冷えましたので薄い上着まで入れていました。
このようにそれなりにたくさんの荷物が入る鞄ですが、荷物が少ない時でも、体にピッタリとフィットしてくれて、たすき掛けしてもその姿が幼くならず、それなりにサマになります。

松本さんが長年の経験から作り出したこの鞄の形や構造がそれを実現していますが、もうひとつの要因として、パパスショルダーに使われている革の丈夫さとしなやかさにあると思っています。

私が使っているパパスショルダーは、ミネルバボックスという素材感のある非常に上質な革を使っています。

この革の特長は、タンニンなめしによる自然な風合いと良い香り、そして固く絞った布で水拭き(やり過ぎに注意)することにより革の表情を自分で作り出せるところだと思っています。

何もせずに使っていても艶が出て良い感じのエージングをしてくれますが、水拭きすることにより革に含まれたオイル分が表面に皮膜にようなものを作り色が濃くなり、艶を出すということもできます。
そのように表情を作ることができる革を松本さんと出会うまで知りませんでした。
ブッテーロも水拭きが効果的な革ですが、やはりミネルバボックスの変化は強烈です。
同じ革で作られているペンケースがデブペンケースのミネルバボックス仕様です。
ファスナー式の大きなペンケースで、ル・ボナーさんの長年に渡る定番商品です。
鞄は使わない日もありますが、ペンケースは四六時中近くにあり、より手に触れることが多いと思いますので、ミネルバボックスのような素材感を感じることができる上質な革で作られたものには、より愛着が湧くように思います。
デブペンケースには、ミネルバボックスの革を含めて3種類の革のバリエーションがあります。
しっかりとした革質でエージングの美しいブッテーロの革のタイプはル・ボナーさんで長年作られてきたものです。
シュランケンカーフは発色が明るいとてもきれいで、しなやかな革です。
傷に強いところもポイントだと思っています。
パパスショルダーは、ル・ボナーさんで扱っている名作鞄で、デブペンケースは当店でも扱っています。

⇒ル・ボナーデブ・ペンケース(革製品一覧へ)gid=2125743″ target=”_blank”>⇒ル・ボナーデブ・ペンケース(革製品一覧へ)

残心-ZANSHIN-シリーズ

残心-ZANSHIN-シリーズ
残心-ZANSHIN-シリーズ

ル・ボナーの松本さんから新しい考え方の革小物のシリーズ、残心(ざんしん)を作るということは今年の始めから聞いていました。
一緒に行ったヨーロッパ旅行でも残心のサンプルをご自身で試されたりしていましたので、私や分度器ドットコムの谷本さんも、今年は残心シリーズを販売するということを意識していました。

松本さんはいつも新しい商品を作ると私たちに見せて反応を確かめて、その思いのたけを話してくれますが、残心のシリーズへの意気込みは今までで一番強いものに感じましたので、一緒に盛り上げたいと思っていました。

一番最初に出た折財布を始め他の商品も、なるべく薄く、軽くした革を最小限の加工でいかに最良の実用性を発揮させられるかを考え抜いたものだと思いました。
職人技というよりも、革の加工を知り尽くした人がたどり着いた境地、無手勝流のようなもの作りを感じました。
独立系の職人さんには、全て自身が手をかけなくてはならないという固定観念みたいなものを持ってしまうものだと思います。
その中でも松本さんは、そんな固定観念を捨てることができた人で、その松本さんの立場が残心を生み出したと言えます。

多くの革職人さんは手をかけることを良しとして、物の美しさや実用性よりもいかに手がかかっているかが語られる物作りを目指しているような気がします。
しかし、残心はそれと真逆の物作りをしていて、松本さんだからこそ成し得たシリーズだと言えるのです。

残心シリーズも協力先の職人集団フラソリティーが製作を担当しています。
企画、設計が命だと言える残心シリーズを陰で支えて、都会的で洗練された革製品という松本さんのイメージ通りのものを量産してくれています。
残心シリーズでは、企画した松本さんの、ご自身のブログでは見せないストイックさが感じられて、そういったことを合わせて考えても非常に面白いと思っています。

私たちとの会話では、仕事に対する厳しさは見え隠れしますが、松本さんはそれをあまり表に出さないタイプの人でした。
新シリーズ残心のようなものを松本さんはずっと作りたかったのではないかと思っています。
しかし、残心シリーズの中にもブログで見る松本さんらしさは表れていて、例えばキーケースやコインケースに使われている金具を海外のその分野では一流と言われているメーカーのものを採用して、物としての面白みを追加していたりしていたりしています。

残心シリーズの核となるのは、やはり折財布です。
とてもシンプルで、小さく薄い財布で、ここにカードも3枚収納することができます。
休日など、いつも持ち歩く財布が大きいために鞄を持たざるを得ないと言う人もおられると思いますが、残心の折財布ならポケットに入れてもかさばりませんので、休みの日の財布としても使うことができると思います。

また、コインケースと折財布を組み合わせることで、一つの財布として使うこともできます。
折財布、キーケース、コインケースを現在発売しておりますが、今後は名刺入れ、ブックカバー、A7手帳カバー、長財布、ロディアメモカバー、ロールペンケースと続きます。

究極のシンプルさと物好きの美学、そして組み合わせて使える子供の頃のおもちゃのような楽しみまで、残心のシリーズは持ち合わせています。