机上の充実 思考の時間

机上の充実 思考の時間
机上の充実 思考の時間

ゴールデンウィークでのご家族との時間も楽しくて良いものですが、万年筆を愛用していて書くことの楽しさを知っておられる方は、一日が終わった時の一人で思考する机上の時間を取り戻すことができたことに、ほっとされている方も多いかもしれません。

一日の終わりの机上の時間が充実していれば、日常生活に潤いが出来て、疲れが蓄積することもありません。
あまり良いと思えない一日を過ごして、気持ちがクサクサしていても、その時間を有意義に過ごすことができれば、気持ちが晴れて、毎日をリセットするのに役立つと私は思っています。

机上での思考の時間を充実したものにするために、ご自分のデスク周りの装備に凝ってみるのも楽しい工夫で、それを考えること自体楽しい作業です。

今から10年前、私は引っ越しを機会に久し振りに自分の机を持つことができました。
独身の時の机は散らかり放題で、机の上に物が積み重なっていて平らなところが全くないという有様で、机周りを充実させたいという気持ちはありませんでした。
しかしその時は、万年筆を使うようになっていましたので、机上空間への憧れは強く、夢のマイホームならぬ、夢のマイデスクを手に入れたことで、文房具を色々揃えて、使わないものまでも装備するようになりました。
また、それらを買い集めることもとても楽しい、休日の過ごし方でした。

当店では思考するための道具をなるべく揃えたいと思っていますが、それはその時に机上周りを充実させて、思考の時間を楽しく充実したものにしたいという気持ちを覚えているからです。

コンプロットミニ(名称変更の予定あり)は、名刺などのカードを入れておくための机上用名刺入れとして作られたものです。

来客をご自分のデスクで迎えるような方には、一味違った名刺入れとして活用していただけるものですが、プライベートな使い方としては、机上でよく使うクリップなどの小物や、小さくて収納に困るけれど、たくさんあればとても便利なポストイットなどをまとめていれておくのにとても便利です。
万年筆のカートリッジインクなどもかっこよく収納でき、これを使いたいために、両用式の万年筆をカートリッジで使いたくなるかもしれません。

B8サイズの情報カードを使われる方は情報カードを入れるボックスとしても使うことができて、プラスチックのボックスを使うよりも、机にそのまま置いておいてもサマになる佇まいが私は気に入っています。

同じ工房楔の銘木定規、カッターナイフもご自分の机上の装備を充実させるのに、とてもお役に立てるものです。
どちらも文具店や100円均一で売られているもので用は足りますが、よく使うものほど、面白みのある、凝ったものを使いたいと思い始めるのは、皆様も同じだと思います。

カッターナイフなどは非常のよく使う道具ですが、事務的なものしかなく、木のハンドルが付いた銘木カッターナイフのようなものを長年探していました。
まさに探していたものと出会ったと思いました。
木の定規も同様で、骨董に近いもので木製の面白いものがたくさんありますが、最近では竹尺しかありませんでした。

ちょっとものを計ったり、線を引いたりするたびに顔がほころぶものだと思います。
思考の時間をより楽しく、心豊かなものにしてくれる、机上の装備を充実させることは当店の想いでもありますので、これからも追求していきたいと思っています。


アルボレス 美しいペーパーステーショナリー

アルボレス 美しいペーパーステーショナリー
アルボレス 美しいペーパーステーショナリー

コンケラーやクレイン以外にも、コットン100%の上質な紙は多くのメーカーで作られており、たくさんの種類があります。
それぞれのメーカーで製法などが違うため、紙質にはかなりの個性が表れています。
しかしそれらの紙の多くは、プリンターの打ち出しなど印字での美しさは追求されていますが、万年筆で書いたときの書き味が良いものはあまり知りません。
それは書いた後のインク映え、紙の風合いの良さと引き換えに我慢しないといけないものだと思っていました。

しかし、それはイタリア フェデリゴーニ社のコットンペーパーを使ったアルボレスペーパーステーショナリーの紙質には当てはまりませんでした。
アルボレスの紙は、書き味の上質な滑らかさもあって、万年筆での書き味といった手で感じるフィーリングも上質です。

紙の質感と書き味を両立させるのは意外と難しく、紙の表面が平滑である方が書き味は良いですが、せっかくの紙の風合いが死んでしまいます。
他社のコットンペーパーのように質感を出すためにプレスを浅くすると、にじみが多く、ペン先が引っかかりやすくなり、書き味が悪くなるというジレンマがあります。
アルボレスの紙は、見事にそれを両立していて、コットン100%ということを忘れてしまいます。

A4サイズということで、手書きの手紙のような用途よりも、プリンターでの打ち出しをして、最後にサインをするという使い方が多いかもしれませんが、そのサインも気持ちよくすることができます。

また、イタリアの美的感覚はこういったペーパーステーショナリーにも表れるのかと感心するのが、少し厚手のパール加工の封筒です。
私はお客様への手紙などは、店の事務的な封筒を使うことが多いですが、(それはそれで店のロゴや名前が入っている思い入れのあるものなので、なるべく使いたいと思って使っています)こういったものも使ってみたいと思いました。

表面に光沢があり、インクをはじく性質の紙のために、宛名書きなどはラベルを使わなくてはいけませんが、このような、受け取った人が自分は大切に扱われていると感じられる封筒は本当に特別な用途に使うのではないでしょうか。
自分が関わっている何かの催しの招待状やチケット、あるいは映画や美術館の入場券、手帳やハンカチなどを贈るのに良いパッケージにもなります。

上質な書き味のA4ペーパーと美しい封筒は、決して安価ではありませんが、アウロラやデルタの万年筆と同じように、贅沢に日常使いすることで、日々の生活に潤いを与えてくれるイタリアの逸品だと思います。

800番 それまでの生活との決別

800番 それまでの生活との決別
800番 それまでの生活との決別

大学4年間は、本とブルースのレコードであっという間に過ぎてしまいました。
読書は自分がどのジャンルの本が好きなのか、どういうものが読みたいのか分からないままいつも何かを読んでいて、理解できないような難しいものをただ文字を追いかけて、アカデミックな気分に浸っていただけのように思います。
ブルースは本と違って自分の好みがはっきりしていて、自分なりの好き嫌いをすぐに判断できました。
クラシックやジャズと違い、敏感で冴えた耳がなくても、雰囲気を聴き取れる感性があれば楽しめるのがブルースという、とてもプリミティブな音楽でした。
サンハウスという、戦前に録音を残しているブルースマンが80年代になって再発見されて「プリーチンブルース」というアルバムで、全く変らない迫力を聞かせる。
ブルースというのはそんな不思議な音楽で、私はそんなブルースの音楽としての魅力はレコードから、ブルースマンたちのとても劇的な、時には悲劇的な人生の物語を学術的な研究書で知り、夢中になっていました。

ブルースのレコードは、結婚した頃から買わなくなりましたが、今まで買い集めたものはいつか余裕ができたら、レコードプレーヤーを買い直してのんびりと聞こうと思っていて、ささやかな新居である団地の押入れの一番奥に入れたままになっていました。

ブルースを聴かなくなって、私に趣味というものがなくなってしまい、会社の帰りに毎日コンビニに寄ってカー雑誌を立ち読みしたり、ごくたまに買って帰ったりして、無理やり新しい趣味を見つけようとしていました。
今でもその時の気分を思い出してしまうので、カー雑誌は見たくないし、売り場にも近付きません。

すぐに子供が生まれ、幸せな新婚生活の一方、家族と過ごすこと以外に楽しみのない生活は数年続きましたが、伯母が入学祝いにくれた万年筆で手帳を書くようになって、書くことがとても楽しくなりました。

伯母の万年筆をしばらく満足して使っていましたが、職場からペンカタログをもらって帰って、毎日見ているうちに新しい万年筆が欲しくなりました。
誰もが素晴らしいという、ペリカン800番(当時Mという頭文字はついていませんでした)をぜひ使ってみたいと思いました。

家計に余裕がなく、小遣いもたばこ代で消えてしまいましたので、お金がありませんでしたが、押入れの奥にある500枚以上のブルースのレコードをお金に換えて、その一部で黒い800番を買いました。
800番は、普通のボールペンなどから持ち替えた時、とても大きく感じました。
あまりに大きく感じたので、最初キャップを尻軸に差さずにしか使うことができませんでした。
当然、今ではその大きさに慣れて、キャップを尻軸に差した方がバランスがとれると思っています。
とてもバランスの良い、全ての万年筆のお手本とも言われている800番ですが、言い換えると最も万年筆らしいバランスを持った万年筆だということになります。
万年筆を始めて持つ人には、M400くらいの細くて軽い万年筆の方が、違和感なく使うことができるかもしれません。

800番のバランスに慣れた私は、ブルースのレコードに凝っていたことも忘れて、万年筆に関する仕事に夢中になっていました。
それまでの生活の中で情熱をかけて集めたレコードを売ってまで、手に入れたことで、今までの自分の生活と決別し、新しい自分との出会いのきっかけになった万年筆・・。

私にとって800番は初めて自分で買った、とても思い入れのある万年筆です。

⇒ペリカンM800

旅ノート

旅ノート
旅ノート

ル・ボナーの松本さんと分度器ドットコムの谷本さんが実現までこぎつけたヨーロッパの旅に便乗させていただくことになりました。

海外に行くのは20年振りくらいで、何から用意していいのか分かりません。
途中列車の旅になるということで、荷物はなるべく小さくしておく方がいいと谷本さんからは言われています。
旅行へ行くからといって、装備を一式揃えるようなことはしたくないと思いました。
それらの装備が旅行の10日間しか使わないのであればとてももったいないと思いますし、何か気負いすぎているような感じがして自分のスタイルでないと思いました。
なるべくすでに持っているものの中から、旅に持って出るものを選んで出掛けるような感覚でいたいと思っています。(でも旅行を理由に新しい鞄、靴、服は欲しいと思っています)

でも、今回の旅行のためにノートを新しく作りたいと思いました。
旅行の準備から下調べ、期間中の日記を記すためのもの。
そんな旅のノートに適しているのは、立ったまま書けて、持ち運びのしやすいサイズとある程度の厚さ、丈夫な製本と表紙などを兼ね備えたものだということで、その条件にあったものをイメージしていました。

モールスキンやトラベラーズノートなど、旅に相応しいイメージを持ったものはありますが、多くの人がすぐにイメージできるものではなく、独特で自分らしいものを選びたいと思いました。

このノートを決めるために、何件かの文房具屋さんを見て回っていましたが、理想の旅ノートは自分の店にありました。
ライフの本麻ノートが私の旅ノートのイメージにピッタリだと思いました。

B6という大きくも小さくもないサイズ、300ページという厚さ、めくりやすく柔らかい、書き味の良い紙、そして夏の旅をイメージさせてくれる麻の表紙など、私の旅ノートにとってこれ以上ない選択に思えました。

少し書いてみると、インクの染み込みが強く、パイロットのインクでは裏抜けが頻発しそうでしたので、ペリカンブルーブラックを使うことにしました。
ペリカンのブルーブラックは私の好きな伸びるインクとは少し違いますが、にじみが少なく、裏抜けがしないので、このノートの紙によく合いますし、乾きが早いところは書いてすぐに閉じないといけないこともある旅ノートにピッタリでした。

ブルーブラックを入れて使うペンは、最近手に入れたペリカン1931ホワイトゴールド以外考えられなく、それをいつも持ち歩きたいと思いました。
私はそれぞれの万年筆に決まった役割を与えたいようで、今使っている万年筆は全て役割が決まっているものばかりです。
新しく手に入れたホワイトゴールドには、決まった役割がなかったので、旅ノート用ということにしたいと思いました。
これから、この旅ノートに旅に関すること全てを書き込んでいきたいと思っています。

実際の旅行に関することだけでなく、旅に関してイメージした文章など、旅をキーワードとした私の記述を1冊にまとめたもの。それが旅ノートのアイデアです。

憧れて、諦めていた 万年筆

憧れて、諦めていた 万年筆
憧れて、諦めていた 万年筆

仕事柄今まで本当にたくさんの素晴らしいペンを見てきました。
店に新しく入ってきたもの、お客様が修理などで持って来られたものなどの中には、強く心が動かされて、強烈に印象に残っているペンがいくつかあります。

モンテグラッパシガーは、茶色のセルロイドを葉巻のように1本の筒に見せたペンで、タバコの葉を模したクリップが付いているとてもかっこ良く、でも当時30歳になったばかりの私にはまだ早すぎると思っていました。

シェーファーコノソアールをベースにした、錫製のボディに竹の模様のアジアシリーズにも強く心を奪われました。
重すぎて書きにくくてもいい、これを自分のペンケースに入れておきたいと思いました。
今しか買うことのできない限定品で、チャンスは今しかないと分かっていましたが、経済的な理由で手に入れることを諦めていました。

同様に強く憧れて、本当に素晴らしいと思いながら手に入れることを諦めていたものに、ペリカン1931ホワイトゴールドがありました。
往年のペリカンの名品No.100の希少なモデルを復刻したシリーズのうちのひとつです。
ホワイトゴールドという名前ですが、本当にホワイトゴールドではなく、ジャーマンシルバーという素材で、スーベレーンの金属パーツに使われています。黒ずむことのない、とても扱い易い実用的な素材です。

吸入ノブはエボナイトで、そのあたりにもとてもこだわりを感じます。
良い万年筆と言えば、大きいものがほとんどですが、このシリーズは数少ない小さくて良いもののひとつで、紳士の万年筆といった風情も私の心を捉えました。
いつかこのペンを使うようになりたいととても強く憧れました。

でもすぐにホワイトゴールドも私の前から姿を消していきました。

それから何年も経って、ホワイトゴールドを見ることもなく、その存在すら忘れかけていました。

しかし先日、どこから出てきたのか、売っていただけますか、という筆記具問屋様の言葉とともに、1931ホワイトゴールドが店に入ってきました。
日頃から、自分の一番欲しいものからお客様に買ってもらうのがプロだと自分に言い聞かせていて、お客様にもそう宣言していました。
万年筆店の店主として、それが正しくお客様から信頼される店主像で、そうありたいと思っていました。

しかし、今回はそんな事は言っていられない状況でした。

憧れて、諦めてしまった万年筆が目の前にやってきたことで、プロとしての意識は薄れてしまい、調整テーブルのペン置きに置いておいた連休の3日間、お客様にお勧めしながらも気が気ではありませんでした。

そして私は結局ホワイトゴールドを手に入れてしまいました。
使い出したホワイトゴールドのキャップは収納時はコンパクトで、キャップを尻軸に差すととても使いやすいサイズになり、少し細めのボディとともに、とても実用的なサイズであることが分かりました。ペン先も硬くとても滑りの良いもので、今はこのペンばかりを使っています。

オリジナルである1931年に作られたNo100の特別バージョンも手に入れて、もう1本同じサイズのペリカンも手に入れて、字幅違いでピッタリのサイズのペンケースに収めて使いたいと私には珍しく夢が膨らんでいます。

新しい万年筆を手に入れると、仕事の時間が今まで以上にとても楽しくなりますが、とても楽しい仕事時間を過ごしています。
万年筆を使って書くことも自分の仕事だと、皆様から横取りしたこの万年筆に誓い、皆様への情報発信にも努力していきたいと思っています。

Liscio-Port(リスシオ・ポルト)メモホルダー

Liscio-Port(リスシオ・ポルト)メモホルダー
Liscio-Port(リスシオ・ポルト)メモホルダー

机の上はいつも片付けていたい方で、なるべく収納できるものは収納して、机の上に物がない状態にしたいと思っています。

作業する机の上が散らかっていると頭の中もゴチャゴチャしてしまい、パニックになりそうになりますので、シンプルに物事を考えるためには机の上の状態は私にとってとても大切なことなのです。

必然的に仕事の仕方も要領が悪いかもしれませんが単一完結型で、ひとつの仕事をやり終えて片付けてから、次の仕事に取り掛かるというやり方で、同時進行的にいくつもの仕事を平行して完結させていくということは私にはなかなかできません。
机の上をきれいに保つにはきちんと置く、あるいはきちんと収納する場所が決まっていて、しかもその出し入れが面倒でないことが必要な条件なのではないかと思っています。
席を立って、キャビネットを開けてボックスを取り出し、さらにファイルを開いて綴じるというアクションが頻繁に必要であるなら、収納することが億劫になってしまいます。
ついでが出た時に一緒に片付けるということになり、机の上が散らかってしまいます。
収納は簡単でいい加減にできるのが望ましいと常々思っています。

大和出版印刷が工房楔の永田さんに製作を依頼して実現した企画、リスシオ1ポルトは、ウォールナットの質感、メモ用紙には少し贅沢なほどのリスシオ1紙の書き味という特長もありますが、その機能性に一番注目しています。

机の上にブロックメモが1つあればとても便利だということを、デスクワークをされる方は経験されていると思います。
かかってきた電話の用件、他の人への伝言メモ、簡単な下書き、糊付け作業の下敷きなど、その役目は多岐に渡ります。

しかし、一番目のブロックメモに書いたことが処理できていないと、メモを捨てることができず、2番目以降のメモに書きにくいということが発生し、ブロックメモの便利さが大変損なわれます。
書いた後そのメモを処理するまでおいておきたいことは結構多く、そんな未処理メモを立てておく場所があるポルトはとても便利だと思います。

他にも、そのやるべきことを書いて、ポルトに立てておく。手帳を開いて確認するようにポルトのその場所に立ててある紙を確認するという使い方もでき、ポルトはデスクワークをされる方にとって、とても便利に使うことができるものだと思っています。

プラチナブライヤーその後

プラチナブライヤーその後
プラチナブライヤーその後

一昨年から使い出して、その魅力に惚れ込んだプラチナブライヤーは、今も大切な愛用の万年筆として活躍しています。
私は葉書を書くことが多いのですが、中にはコート紙のようなインクがなかなか染み込まないもののもありますので、ブライヤーにカーボンインクのカートリッジを入れて葉書書き専用として使っています。

カーボンインクはインク出もスムーズで、万年筆をヌルヌルととても気持ち良い書き味にしてくれますが、ボトルからインクを吸入すると、ペン先の刻印にインクが絡みつき真っ黒になりますので、どうしても気になっていました。

カーボンインクを吸入せずに使うことができるカートリッジの存在はとても有難いものだったのです。
握りも意外と太めで、持ちやすいので、本当はもっと出番の多い役割を与えたいと思っていますが、葉書用に代替のものが思いあたらず、自宅での使用に甘んじています。
しかし、家でのリラックスしたゆったりした気分の時にいつも使っているので、この味わい深い万年筆の実用性を充分に感じながら使うことができているのかもしれません。

ブライヤーのボディは漆を軽く馴染ませただけの簡素な拭きうるしの技法で仕上げられていて、手の油を吸う余地が残されています。
使う込むほどに艶を増す、自分仕様のエージングを楽しむことができるのは、銀軸でもコーティングされているものが多くなってしまった昨今、珍しい存在です。
このブライヤーの万年筆のような、天然の木を最小限の仕上げで製品化するということは、何気ないことに思えますがかえって手間がかかり、勇気のいることだと思っています。
プラスチックと違い、品質のコントロールが難しく、湿度、気温の変化による割れ、狂いなども生じる恐れもあります。

お客様が使い始めてから、問題が起こらないようにするためにも、細心の注意が払われていることを思うと頭の下がる思いですし、いつまでも続けていただきたいと思います。

プラチナのペン先は、よく硬いと言われます。私も使い始める前はそう思っていました。
しかし、あまりにも大雑把な表現だったと今は思っています。初めは硬く感じるけれど、使い込むうちに柔らかく感じるものに変化するという表現の方が近いと思いますし、他社の万年筆のペン先が硬くなってきている現在、あまり硬いほうではないと思っています。

調整の仕方や、2年間の使用により、私のブライヤーのペン先は柔らかいとさえ思える快感を伴った書き味のものに変わってきています。

このブライヤーの万年筆を細字、中字、太字と3本セットで持ちたいという気持ちは、使い出したばかりの頃の思ったことですが、それは今も変っていません。

⇒プラチナブライヤー

オンリーワンの存在感 ラミー サファリ

オンリーワンの存在感 ラミー サファリ
オンリーワンの存在感 ラミー サファリ

子供の頃、家にレゴブロックがたくさんあり、イメージを膨らませてからレゴを組み立てるのはとても楽しく、絵を描かなかった子供だった私にとっては精一杯創造的な遊びだったように思います。
夢中になって組み立てて、せっかく作ったものを崩してしまうのが嫌で、片付けずに母親に怒られたことを思い出します。

国産のブロックも世間にはありましたが、使われている色が少し違い、強くはっきりしたレゴブロックの色調やパッケージから、子供心に外国(デンマーク製)を感じていました。

ラミーサファリを見ていると、子供の頃遊びながら、その色調やパッケージから外国(特にヨーロッパ)を強く感じていた気持ちを思い出します。
子供の頃、せめて中学生か、高校生の時にサファリを知っていればよかったと思います。

書くということを当時から何となく好きだと思っていて、母親の使っていた大きな万年筆、モンブラン149に羨望を感じていました。でもそれは子供の使うものではないと思っていましたので、そんな時にサファリを知っていれば、気後れせずに万年筆を使うことができたかもしれません。

万年筆を使っていればもっと書くことが楽しくなっていて、成績も良かったのではないかと思ったりします。(きっとそんなことはないと思いますが)成績は別にしても、書くことが楽しいと必ず思っていたはずです。

新入学シーズン目前で、プレゼントなどの必要がある方も多いと思いますが、若い人に贈るプレゼントとして、ぜひサファリを選んで欲しいと思います。
もっと高級な万年筆を選ぶこともできるかもしれませんが、サファリには外国を強く感じさせるデザインがあり、日常の筆記具として使いやすい手軽さ、さりげなさがあって、必ず使ってもらえるものだと思うからです。

サファリは軽く、サラサラした書き心地を持っていて、私たちのように様々な万年筆を使ったことがある手が肥えた者でも、これはこれでいいと思える独特の個性を持っています。
それを証拠に、たくさんのコレクションを持つ人でも必ず1本はサファリを持っていますし、毎年発売される限定色を気にされる方は本当に多く、その安定した人気にいつも感心させられます。

安価な万年筆は今では選択肢も多く、サファリより安い価格のものもありますが、その代表格はやはりサファリですし、実用的にも、デザインの上でもサファリを超えるものはまだ存在していないと思っています。

⇒ラミーサファリ

ジャケットのポケットにライフクロス手帳

ジャケットのポケットにライフクロス手帳
ジャケットのポケットにライフクロス手帳

40歳を前にした頃に急に記憶力が悪くなったのを自覚しました。
何かしている時に思いついたこと、気付いたことを後で書き留めようと、作業をそのまま継続して、いざ書こうとしたときに書くべきことを忘れてしまった、ということが何度かありました。
それからメモ帳は、本当に片時も離せなくなり、書くべきことがあるのにメモ帳に書き留めるチャンスがない時などとても焦ります。

もともとメモ帳にロマンを感じていました。
雑誌のインタビューなどで、有名なデザイナーやクリエイティブディレクターがいつもメモ帳に何か書いているといった内容のことを読むことが多く、愛用のエルメスやカルティエ、ロディアやモールスキン、そして万年筆などが紹介されていると嬉しくて何度も読み返します。

彼らは、時には立ったままで、時にはレストランでの食事中に、移動中の飛行機の中で愛用のメモ帳を開いて、万年筆で何かにとり付かれたように浮かんだアイデアを書き留める。
私はせいぜい、通勤中の電車の中や開店前に昼食を食べている時間ですが、万年筆でメモ帳に書き込んでいる時の高ぶった気持ちは有名デザイナーたちと変わりません。
メモ帳、あるいはそれに書き込むことにロマンを感じていますので、どこかに出かけた時、メモ帳で何か良いものが見つかると、その週の仕事はとても楽しくなります。またそこから影響を受けて、良い効果を得られることがありますので、必要な出費だと思っているところがあります。

メモ帳は本当にたくさん使ってきて自分の好みや仕事の仕方に合ったものが分かってきました。
厚いメモ帳はとてもかっこ良く、そこにビッシリと文字が書き込んであったり、スケッチがいくつも描かれていたりしたらと思うと使ってみたくなりますが、いつもポケットに入っていて、すぐに書き込める態勢でいなければいけませんので、厚い手帳は私のメモ帳にはあまり向きません。

革の表紙のちゃんとしたものも、すごく魅力的で惹かれますが、冷静になるようにしています。
いつも汚い文字の走り書きばかりで、何でも書くことのできる遠慮のなさが必要なことが分かっているからです。
それらの条件を踏まえて今のところ愛用しているのは、ライフのクロス表紙の手帳です。
よく似たもので、コクヨの測量野帳がありますが、価格が高価な分、ライフの方が細部で様々な工夫が施されています。
表紙には補強用のクロステープが貼られ、製本の技術が良いので、表紙を中紙に折り目がつかないように、折り返して使うことができますので、立ったままの姿勢でも書きやすい
仕様であることが分かります。
中紙のクリームライティング紙は、にじみ、裏抜けがなく、ペンの滑りも良いので手帳に相応しい紙だと思います。

ライフの営業担当A氏は、荒っぽく使い倒すための手帳と言っておられましたが、まさにそんな扱いでも耐えてくれる、丈夫で使いやすいライフクロス手帳です。
お店ではジャケットに、通勤時はコートのポケットに、ライフクロス手帳を入れて、楽しみながら万年筆で書き込んでいます。