新作発売・M5手帳リフィル「そら文葉」

M5サイズのシステム手帳は今の手帳のひとつのあり方だと思っていて、今年も引き続きM5手帳もお勧めしていきたいと思っています。いつもポケットに入れておける手帳らしいサイズと、たくさんの量を書かなくても楽しめて、気負わずに使っていただけるものだと思っています。

グラフィックデザイナーかなじともこさんが制作しているシステム手帳リフィルは、バイブルサイズの「筆文葉(ふでもよう)」と、M5サイズの「そら文葉(そらもよう)」です。それぞれのサイズの特長に合わせた紙を使用して、今までになかった独特の世界観を表現しています。

そら文葉の用紙は、M5サイズという厚みにも制約のある本体を考慮して、少し薄めでありながら万年筆のインクでも裏抜けしない用紙を採用しています。

薄いというと平滑でつるつるとした紙をイメージしますが、そら文葉リフィルの用紙は、書き応えのあるニュアンスのある紙が使われていて、書き味を楽しむことができます。このあたりの選択も、かなじさんの洗練されたセンスが感じられます。

そしてそら文葉の新作「月」「風(ゆらぎ罫)」「窓(吟詠罫)」「飛行機(集計罫)」と、今年7月から来年6月までの4つ折りカレンダーが発売になりました。

筆文葉もそら文葉も機能を限定するものではなくて、自分が書きたい情報の形がどのリフィルならレイアウトできるか選んで、自由に使うように仕向けられています。

手帳本来の機能というよりも、そのページの中に自分を表現するためのキャンバスの役割をするリフィルだと言うこともできて、ページを作ることを楽しむリフィルがかなじさんがデザインするシステム手帳リフィルです。

私は一目見て使いたいと思った「飛行機」を早々に入手して、欲しいと思っているものを書き出してみました。本、音楽、靴、ステーショナリー、楽器など、興味を持ったもの、いつか手に入れたいと思うもの。ウェブサイトを見たり、YouTubeで観たりして気になったものもここに書いていきます。

情報はどんどん流れていき、次々と新しいものを知ることになりますので、本当に気になったものはこうやって書き留めておかないと分からなくなってしまいます。

仕事のことばかり書いてある手帳の中に、自分の好きなものばかりを書いたページがあることが嬉しい。内容が充実して枚数が増えたら、別の1冊に独立させればいい。

何冊も同時に平行して使う。それがサイズの小さなM5手帳の使い分けなのだと思っています。

かなじさんのリフィルは、スタンプや色鉛筆などで手を加える余地も残されていて、自分らしくカスタマイズすることができます。それぞれのリフィルを見ていると自分ならどうやって使おうかと、いろいろイメージが膨らみます。仕事でも使うことができますが、趣味のページにぜひそら文葉リフィルを使っていただきたいと思っています。

磨くと艶が出るダグラス革を使用した、当店オリジナルのM5サイズシステム手帳コンチネンタルが長く品切れしていますが、リニューアルして現在製作していただいてます。

革を厚く使ったコロンとした手帳ですが、リングサイズを太くしてさらにコロンとさせて、たくさんの用紙を挟むことができる仕様になる予定です。

出来上がりましたら、当店ホームページに掲載しますので楽しみにお待ち下さい。

⇒智文堂「そら文葉」(M5サイズシステム手帳リフィル)

⇒智文堂「筆文葉」(バイブルサイズシステム手帳リフィル)

ペン習字のお稽古

毎月当店でペン習字教室の講師をして下さっている堀谷龍玄先生から、ペン習字のお手本が届きました。ホームページ(https://www.p-n-m.net/?mode=f9)に掲載しておりますので、よろしければ練習してみて下さい。先生はB5サイズの縦罫ノート(ツバメN3021)を使われています。

私はできるのなら万年筆できれいな文字を書きたいと思うし、文字の形を気にしながらゆっくり文字を書く時間は楽しく、贅沢な時間だと思っています。

お手本なしで字を書くとどうしてもクセが出てしまって、いくらゆっくり気をつけて書いてもきれいな字を書く練習にはなりにくい。こういう先生のお手本があって、それに似せて書こうとすることでクセがなくなってきます。

それでは自分らしい文字ではないと言う人もいるけれど、文字にはまず基本の正しい形があって、それを書けるようになったら、自分らしさは自然に加わってくるものなのかもしれないと思います。

堀谷先生は当店オリジナルで発売しています革表紙のメモの替紙(https://www.p-n-m.net/?pid=146902010)にも、文学の名作を題材にしたお手本を書いて下さっていますので、そちらもぜひご覧下さい。

堀谷先生は比較的硬めのペン先の万年筆を使われていて、運筆のスピードを変えて文字に強弱つけています。

ゆっくり書くと強い線、早く書くとシャープな線が出ているように思うけれど、そんな単純なものではないのかもしれません。

でも初心者では硬いペン先でこれだけ文字に表情を出すのは難しいのかもしれません。柔らかすぎるとインクが常にたくさん出てコントロールが難しくなりますので、適度な硬さと少しの柔らかさのあるペンが良いように思います。

筆圧に応じて、多少ペン先は開く方がいいので適度な柔らかさは必要ですが、戻りは早い方がいいので適度な硬さもまた必要です。

パイロットなら、SF、SFMなどの軟ペンよりも、F、FM。プラチナならSFあたりです。セーラーのF、FMも適していると思います。ペリカンM800のEF、アウロラFも使いやすいかもしれません。

ペン習字を楽しく書くにはインクも重要です。色はなぜか黒の方が、こういうお稽古には合っていて、文字がきれいに見えます。

インクの濃度も重要です。あまりにも濃くて、黒いインクでは濃淡が出ません。パイロットの黒でもいいし、さらに薄めの当店オリジナルインク冬枯れもペン習字では冴えを見せてくれます。

堀谷先生のお勧めは冬枯れで、先生は長年冬枯れインクを使い続けて下さっています。

万年筆は欧米から入ってきた筆記具ですが、美しいとされる文字を追究して練習する心は東洋の書道のもので、こういう万年筆のあり方にも私は惹かれます。

クリスペルカーフのM5システム手帳

緊急事態宣言が発令されたことを踏まえて、当店も店舗の営業を自粛しています。

自分で臨時休業を決めて、覚悟していたけれど売上が大きく落ち込みました。

以前から、売上によって気分が上がったり下がったりしていましたので、店舗を休業にしてからは、お金の支払いが発生する商品の仕入れはとてもできないと弱気になっていました。

でもそうやって弱気になっていたら、売上はもっと悪くなってしまうし、何より楽しくない。

今当店はネットショップでしか営業していないけれど、ネットショップがもっと盛り上がるように、他所のお店では手に入りにくいものを積極的に仕入れようと思い始めました。

当店に作品を納めてくれている職人さんたちと電話で近況を話したり、情報を交換することができてから、気分が変わったような気がします。

私たち独立系の店や職人には助け合うような仕組みはないけれど、関連する職人さんたちとは協力し合って、盛り立て合って乗り切りたいと思っています。

この状況の中でも、前向きな攻めの気持ちになれるかどうかが今後の分かれ道になると思いました。

たしかに新たに仕入れたガラス工房Aun(アウン)の江田さんのガラスペンや工房楔の永田さんの木製品、Antou(アントウ)のボールペンなど、ホームページにアップするとちゃんと売れていきます。

そこにカンダミサコさんの革製品も加えていきたいと思いました。

カンダミサコさんのシステム手帳は、バイブル・M5サイズともにシュランケンカーフとダグラス革を定番として作っていましたが、今回のクリスペルカーフも定番的な存在にしていきたいと思っています。

クリスペルカーフは、落ち着いた光沢のある、ドイツペリンガー社が作る最高級のボックスカーフです。上品な細かなシボがあり、張りのある滑らかな手触りの良さが特長です。

そのクリスペルカーフに、ゴールドの金具を合わせたM5手帳をカンダミサコさんに作っていただきました。

カンダさんの作品は柔らかくカジュアルな印象のものが多いので、こういうタイプのものは珍しいと思います。もちろんとても美しく仕上がっています。

リング径は11ミリで、70枚程度のリフィルを余裕を持って収納することができます。ウィークリーダイアリーも一年分充分収めることができます。

この手帳に合わせるために、カンダミサコさんに黒のペンホルダーも作っていただきました。このM5ペンホルダーは、直径13ミリ程度(ペリカンM400くらい)の太さのペンまで収めることができます。

*現在経済が止まっているイタリアからブッテーロ革が入っておらず、カンダさんのストックも底をつきそうになっています。この革は色々な作品に使われていますので製作量にも限りがあり、今は様子をみながら少量ずつ作ってもらっています。在庫がなくなるとしばらくお待たせすることになりますが、どうぞご容赦下さい。

⇒カンダミサコ M5手帳クリスペルカーフ

⇒カンダミサコ M5ペンホルダー

研ぎと調整

インクが出なかったり、引っ掛かって書きにくいペン先を書きやすくする。その万年筆の性能を100%引き出して、ご依頼主の好みに合わせてペン先を整えるのが、ペン先調整です。

万年筆は、ちゃんと整えたらどんなペンでもある程度気持ち良く書けるようになりますが、インクが普通に出て、引っ掛からずに書けて、途切れずに書ける調整だけでは少し足りないと思っています。

書き味はペン先のタッチだけで成り立っているわけではなく、ペン先の寄り加減、ペン先とペン芯の合わせ加減など様々な要件から成り立っています。

それらの書き味を構成する複雑な要件を組み合わせて、その万年筆を使う人の要望に合わせる。おまかせと言われたら、一番良いと思えるようにして、調整士のセンスを表現する。

自分が唯一できるクリエイティブなことが、この書き味を作るということだと思っています。

でもたとえペン先調整をして自分が一番書き味が良いと思ったり、ペンポイントが美しく仕上げることができたと思ったとしても、それが使う人の好みに合っていなかったら、調整の本来の目的から外れてしまいます。自分の思い込みや視野の狭さを省みることも必要です。

「研ぎ」は、細く書けるようにしたり、縦横差を出したり、書ける線を変化させるために、ペンポイントを削ることです。

ペン先調整において、研いでペンポイントの形を整えることもありますが、私は前述した「研ぎ」と、調整のための研ぎとは区別しています。

当店の調整カウンターには、木製の万年筆ケースコンプロット4ミニに、様々な研ぎを施した4本のペリカンM800ストーンガーデンがあります。

それらはペン先を研ぐことで本来書ける線とは違う線が書けるようにしたもので、ペン先調整をお待ちいただいている間に試していただいたり、出張販売に持って行ったりしています。

ある程度万年筆を持っている人は、人と違ったものを持ちたいと思うようで、これらの特別な研ぎをオーダーして下さる方もおられます。

三角研ぎはペンポイントを正面から見て二等辺三角形、横から見たら直角三角形に近い形に研いだもので、立てて書くと細い線が書けて、寝かせて書くと太い線がヌルヌルとした書き味とともに書くことができるというものです。

その研ぎを作るのに時間はかかるけれど、オーダーされる方が多く、よくしています。

そのメーカー本来の書き味を味わうことはもちろん万年筆の楽しみですが、時には変わったペン先を所有することもまた楽しい。

それぞれの万年筆はメーカーが作ったもので、販売したら保証書以外当店の名前はどこにも入っていません。でもそこには書き味という目には見えない、手で感じるか、感性で味わうものが付加されています。それが当店で販売する万年筆だと思っていて、より深い味わいを書き味で表現できるようにしていきたいと思っています。

無心になれること

普段はあまり家に居る時間がないけれど、たまたままとまった時間家に居る時に没頭できたのが、自分だけのシステム手帳のダイアリーを作るというものでした。

既製のダイアリーは非常によく考えて作られているけれど、水曜日が休みという自分の生活のサイクルにはどれも合いませんでした。これだけ仕事の仕方が多様化してしまうと、既成のダイアリーがジャストフィットする人の方が少ないのではないかと思っています。

休みの水曜日の欄をできるだけ小さくして、他の曜日に当てるようにした方が限られた紙面を有効活用できる。特に小さなミニ5穴システム手帳において、無駄なスペースを作らないというのは私にとって厳守したいルールです。

ダイアリー作りのベースとなる用紙は、そら文葉のフレックスダイアリーや当店のオリジナルミニ5穴リフィルなどがいいと思います。

当店オリジナルリフィルは万年筆の極細くらいで枠内に書ける4mm方眼で極上の書き味を持つ、Liscio-1紙を使用しています。極細の万年筆なのにヌルヌル書ける快感は手帳を書くことを楽しくしてくれます。

そら文葉のデザイナーかなじともこさんはもともと自分で線を引いたり、パソコンで作ったりしてオリジナルリフィルを自作されていましたので、そら文葉にもそういう自由度が入り込める余地が残されています。

フレックスダイアリーは基本的に方眼罫ですが、時間表記に使える数字が入っていたりして、ダイアリーとして使うための演出がちゃんと盛り込まれています。

そら文葉の用紙は、バイブルサイズリフィル筆文葉とは違っていて、薄めの紙を使用しています。リング径の細めのミニ5穴リフィルになるべくたくさんの枚数を収めることができるようにという配慮からですが、薄めだけどギリギリ裏に透けないくらいの厚みは保っています。

罫線を引く時、私の場合、かなじともこさんと同じように色鉛筆で線を引いています。

水性ボールペンやサインペンだと定規で引いた後に線が流れてしまったり、かすれてしまうことがよくありました。シャープペンシルのカラー芯の消せるタイプのものを使うと間違えた時に消すことができるのでお勧めです。

色鉛筆で引いた線は、柔らかく良い風合いに感じられるのも私は気に入っています。

日付などの数字は、連結して使うことができるゴム印「エンドレススタンプ」の6号という一番小さなものが良いと思います。スタンプ台は黒でもいいですが、どうせなら好きな色を使って、祝日などを赤で押すとより使いやすい、完成度の高いものになります。

ネットなどでカレンダーを調べて、間違えないように慎重にリフィル1枚ずつ線を引いて、スタンプを押して、ダイアリーリフィルを作る時間は、面倒に思えるかもしれないけれど、集中できる楽しい時間になっています。

*Pen and message.オリジナルM5リフィル 4mm方眼罫(Liscio-1紙仕様)

*智文堂M5リフィルそら文葉(そらもよう)

ANTOU(アントウ)~完成させる楽しみ~

台湾のデザインステーショナリーブランドのANTOU(アントウ)が入荷しました。

このブランドは台中市の隣の彰化を拠点として、ステーショナリーのみならずテーブルウェアなども扱っています。

デザインステーショナリーというと、他を寄せ付けない完成された世界観を有するものをイメージしますが、このANTOUは、使う人が組み合わせたり、工夫することで完成するところを狙っているように思えて、ユーザーの創造力を刺激します。

書き味や使い勝手は素晴らしいけれど、デザインや装飾で使う気になれない国産のペンはたくさんあると思います。

ANTOUの「マルチアダプタブルペン」は、芯のサイズ・形の制約を受けず、油性ボールペン、ゲルインクボールペンなどほとんどのボールペン芯を使用することがでる、まさに夢のペンだと言うと、言いすぎでしょうか。

たまたまたその替芯を使うことができたという部分はありますが、様々なメーカーの替芯を使えるようにしたいという発想。当たり前ですが、文具メーカー、筆記具メーカーでは絶対に実現しない商品です。

私たちのような文具が好きな人間ならいつもそんな風に思うけれど、台湾でも同じように思う人がいて、それを形にしてしまうとは。

ANTOUのペンはアルミ素材を厚めに削りだして、サテンフィニッシュを施して、少しザラザラした粗い触感を残して仕上げられています。キャップはマグネット式で、開け閉めも素早くできて、ストレスがありません。

リフィルを交換する時は、キャップを閉めて、キャップごと回転させて口金を外します。芯を口金で掴んで固定しますので、長さ、形に制限されず、多くのものに対応できる仕組みです。

販売時、ゼブラのゲルインクボールペンの芯がセットされていますが、自分が最も愛用したいリフィルを装着することで、このペンは完成します。

そして、そうやって完成したこのペンは他のモノでは代わりが利かないものになります。

光沢を持たせて仕上げられている波型のトレイや小物入れは組み合わせて使うことができますし、この上に木や革の素材のものがあってもおかしくない。むしろそういう異素材のものがある方がしっくりくるような気がします。

私が目盛り好きで、目盛りはデザインモチーフとして最高だと思っているからかもしれませんが、ペントレイを兼ねた定規も面白い存在で、デスク周りの雰囲気を変えてくれるものだと思います。

ANTOUは、アートディレクターイェン・チェン氏と金属製品の加工で高い評価を得ているダイキャスメタル社との共同プロジェクトです。そしてANTOUとは彰化郊外の小さな工場が点在する地域の名前でもあります。

ダイキャスメタル社はいち早く欧米との仕事を始めて、評価されてきた30年以上の経験を持ちますが、本拠地であるアントウを活性化するために他の工場とノウハウを共有して、地域の技術向上に取り組んでいます。

ANTOUが世界的な仕事を請け負う地域になればという願いがこのプロジェクトには込められていて、このペンに込められているのは文房具好きの夢だけではないのだとお伝えしたいと思いました。

⇒ANTOU(アントウ)

リフィル遊び

私たちが手帳に求める機能は、スケジュールだけでなくメモを書いたり、覚書を書いておいて必要な時にそれを見たりなど様々だと思います。手帳の中でもシステム手帳なら、それぞれの用途に合わせてリフィルを選んで、カスタマイズすることができる。

私は昔からその使いこなしについて考えることが好きで、いくらでも考えていられます。そういう楽しみがシステム手帳にはあります。

同様にボールペンの替芯の選択肢が多いということも、自分がそのボールペンをどう使うかを考えて、それに合わせて芯を選べる楽しさがあります。

工房楔とのコラボ企画こしらえは、パイロットカスタム742・743の首軸を装着することができる万年筆銘木軸ですが、これに使うことができるボールペンユニットがあります。

三菱シグノ、ゼブラサラサ、ペンテルエナージェルなどの芯を使うことができて、こしらえをキャップ式のボールペンとして使うことができます。ただ、こしらえは時期によって若干ですがサイズが異なりますので、今のところパーツだけの販売をしていません。(店頭か出張販売などにお手持ちのこしらえをお持ちいただけましたら、実際合わせてみて販売させていただきます)

それらの替芯は同形のものが多く、色数も線幅もかなりの種類があって、多くのバリエーションの中からお気に入りのモノを見つけて使うことができます。万年筆と違って、これらのゲルインクのボールペンの替芯は値段も安いので、手軽に交換できるところもいいところです。

こしらえ用ボールペンユニットよりもさらに多くの芯に対応するのが、工房楔のMペンです。

Mペンはマグネット式のキャップを持つ水性ボールペンですが、尻軸にネジが切ってあり後ろのパーツが緩みますので、多少の長さであれば調整することができます。

こしらえ用ボールペンユニットで使うことができる芯は全て使うことができますが、それらに加えて、芯やチャックの形状が特殊で互換性がないとしていました、パイロットのフリクション(消せるボールペン)やパイロットのジュースアップ(通常のゲルインクボールペン)の芯も使うことがきます。

特にフリクションは様々な用途を思い浮かべることができるけれど、万年筆や銘木で目が肥えてしまうと、デザインや素材もこだわりたくなります。フリクションも、それぞれが銘木を使った1点もののMペンで使うことができます。

まだホームページには掲載できていないですが、台湾のメーカー「ANTOU(アントウ)」にも様々な芯を使うことができるマルチなボールペンがあります。

芯を口金で掴むことによって、替芯本体の形に左右されず多くの替芯を使うことができる。これは私の知る限り一番多くの種類の芯を使うことができるボールペンです。

ANTOUはたくさんの芯に対応した構造以外にもこだわって作っている感じがする仕上げの良さ質感の良さががあって、好感の持てる物作りをしています。

たくさんの安価で質の良いボールペンが発売されていて、それら全てをリフィルとして活用できるこれらのボールペンに今の流れを感じています。

⇒Pen and message.オリジナル銘木万年筆軸 こしらえ(工房楔・春の新作ページ)

⇒工房楔・Mペン

工房楔 厳選の定番材WEBイベント3/30(月)11時スタート

 毎年3月に行っていた工房楔の春イベントは、5月2日(土)・3(日)に延期しました。 姿の見えないウイルスには色々な見解があり対応が難しいところで、ギリギリまで世の中の雰囲気を見ていたのですが、やむを得ない判断だったと思っています。

イベントは5月ですが、工房楔の木製品のうち、定番材を厳選して仕入れることができました。これらは現在撮影を進めており、3/30(月)11時からホームページでも販売いたします。

希少な杢ももちろん良いのですが、定番材の良いところは気に入った素材をいろいろな商品で揃える楽しみがあるということです。ハワイアンコアでボールペンとシャープペンシルを揃えて、2本差しペンシースに入れて鞄に入れているだけで嬉しくなります。

木は様々な種類があって、必ず気に入ったものが見つかると思っています。木の違いを楽しむことはお酒やタバコの味を味わうようなもので、最初はどれも同じに見えるけれど、身近に置いて見ているうちにその味わいが分かってくる。

そのうち同じ名前の材でも、その中に好みが出てきます。名前は同じ花梨でも杢目は様々で、玉杢がビッシリと入ったものから線状の杢の入ったもの、紅白に分かれているものなど、数多くあります。今回、工房楔の永田さんが春のイベント用に作ったものの中から、定番材を中心に厳選して仕入れました。

今回の新作は限定製作のミニボールペン、「ルーチェコルタ」です。

ミニ5穴システム手帳の高さとほぼ同じ12センチ弱の長さのルーチェコルタは、片手ですぐ書けるノック式のボールペンです。

替芯はいわゆる4Cタイプという、細く短い金属製の芯を使用しています。

4Cタイプは世界標準の芯ですが、ごくわずかにメーカーによって口径の誤差があります。一般的には、ゼブラ4Cが太くて、三菱・パイロット・海外メーカーが細い仕様になっています。

例えば、ラミー2000の4色ボールペンに一度でもゼブラを入れると、芯を受ける筒が広がってしまい、ラミーの芯が緩くなって脱落しやすくなります。

ルーチェコルタは、太い口径の4Cも細い口径の他のメーカーのものの快適に使えるようになんと2種類のアタッチメントが用意されています。

白いアタッチメントがゼブラ(太い口径)用、黒いアタッチメントが他のメーカーのもの(細い口径)用です。どちらかの芯に絞って作ったらいいのにと思うけれど、こういう細かい違いに対応するのが永田さんらしさなのかもしれません。

工房楔はペンシル系の種類も多くて、それも他の木工家さんとの差別化になっています。

ペンシル系だけでも、2ミリ芯ホルダードロップ式・ノック式・0.7ミリペンシル・0.5ミリペンシル・ペンシルエクステンダーと多彩なラインナップです。

今回から取り扱うことになった、磁石式のキャップのMペンも面白い。

替え芯は最初シュミットの水性ボールペンインクが入っていますが、三菱のジェットストリーム油性ボールペン芯やゲルインクボールペン、あらゆる替え芯に適合しているので、お好みの書き味に変えることができます。

形が全く違う替え芯に適合しているのは非常に画期的で面白い商品だと思います。

最後になりましたが、パイロットカスタム742・743の首軸が入る万年筆銘木軸「こしらえ」長軸も少量ですが入荷しています。

お好みの素材を探しに、3/30(月)11時からスタートするWEB上での工房楔の定番材のイベントをぜひご覧下さい。

規模を守る、ポリシーを守る生き方

AURORA シガロ 

万年筆の仕事が長いので、万年筆を通して知った色々なことを教科書にしてきたような気がします。そしてそれは今でも変わりません。特にイタリアの万年筆メーカーには劇的なことが色々起こり、店の在り方や立場の取り方の教訓としても学ぶところが多くありました。

イタリアのモノ作りの会社の中には、知名度はあるのに家族経営など小規模経営にこだわるところも多くあります。それらの企業はシェアとか売上など規模を大きくすることに興味がなく、グローバルに展開する会社とは一線を画しています。

規模を拡大したり経営を安定させるために大資本の援助を受けたら、 確かに経営的には楽になるかもしれないし、売上も上がるかもしれない。 でも仕事のやり方に口出しされて、利益の目標まで設定されるようになるだろうし、自分たちの考えには添わない仕事でも受けなければならなくなる。

結果として自分たちの原点である理想のモノ作りがしにくくなってしまいます。

小規模なモノ作りの会社が守りたいものは、より大きな売上ではなく、自分たちの流儀に合ったやり方で仕事をして顧客にも満足してもらうこと、自分たちの考え方を貫くことだと思っています。

だから今の生活に特に不満がなく楽しく暮らせているのであれば、それ以上は望まない。その気持ちは私にもよく分かります。マイペースで細く長く続けた方が、ブランド価値の維持にもつながるし、商売の仕方としても堅実だと思います。

個人経営の会社が大切にしていることに夢があります。

会社の論理で言うと、売上が上がるのならどんなこともやるべきだと思うけれど、夢が持てないからやらないという選択も理解できます。

イタリア人の、小さな会社を維持する心構えの影響を私は強く受けています。それが自分の仕事を長く続けることに繋がる心構えだと理解できたからその考えを取り入れたいと思った。それは今では自分の血のようになって、私の思想を形成するひとつになっています。

イタリアがコロナウイルスの拡大がひどい国として報道されています。イタリアに住む友人たちと同じように、当店が勝手に身近に感じているアウロラのことも心配しています。

アウロラは前述したようなイタリアの小規模企業の考え方を体現している会社の一つだと思っています。これまでも様々な世相の変化、困難をくぐり抜け独自経営を貫き、自分たちのモノ作りを貫いてきました。

ブランドの手法などのノウハウが入ったらもっとスマートな仕事の仕方ができるのかもしれないけれど、アウロラは自分たちのやり方にこだわっています。

デザインが良く、万年筆は使い込むと非常に良い書き味に育ってくれます。アウロラのペンが好きだからというのもありますが、会社としての在り方に共感が持てるのは、自分たちの仕事に対して同じように思っているからです。

売上を上げることは会社を継続させるために必要なことで、なぜ会社を継続させるかというと万年筆が好きな人に関わり続けるためであり、それが自分たちの夢であり、理想の生活だからです。

イタリアの老舗万年筆メーカーと日本の小さな万年筆店の共通点は万年筆を扱っているということくらいですが、仕事に臨む心持ちのようなものは似ているのではないかと思っています。

⇒AURORA 限定品 シガロ

アートと木工の融合

毎年恒例になっていた春の工房楔イベントを、 3月20日・21日に予定していましたが、新型コロナウイルスのことを考えて、延期することにしました。状況が毎日のように変化するので、ぎりぎりまで告知ができず申し訳ありません。

新たな日程は5月2日(土)・3日(日)となります。ゴールデンウイーク中のイベントは初めての試みですが、ぜひご来店下さい。

本日発売の雑誌「趣味の文具箱vol.53」に掲載されている、工房楔永田篤史氏と漆芸作家池田晃将氏のコラボ作品「エクステンダー楔・螺鈿」が入荷しています。

これは数量限定での製作で、店舗を限定しての販売ということで、扱うことが出来てありがたく思っています。

工房楔をご存知のお客様にはもうお馴染みですが、池田昇将氏は先日の銀座の百貨店美術画廊での個展で、初日に全作品完売した新進気鋭の螺鈿作家さんです。工芸である螺鈿を全く新しい解釈で、極小のデジタルな世界を表現して、アート作品に昇華されています。

 いくら腕が良くても、そこに独創性がなければひとついくらで仕事をする職人になってしまいます。それが悪いことだとは思わないけれど、伝統工芸が既存の枠に収まったままでは今の感覚からどんどん外れて行って、いずれ廃れてしまう。 池田氏の活躍は、螺鈿工芸のみならず日本の伝統工芸全ての指針にもなるのではないかと思っています。

 万年筆店である当店が池田氏の作品をいつまで扱うことができるのか分からないけれど、池田氏をこうやってステーショナリーの世界にも連れ出してくれた工房楔の永田篤史さんのおかげで、当店でも取り扱うことが出来ています。

 3柄各2本という大変少ない入荷数ですが、作家さんの作品を間近でご覧いただける機会だと思います。

 ファーバーカステルパーフェクトペンシルが最も贅沢な鉛筆として脚光を浴びたことがありましたが、パーフェクトペンシルはあくまでも製品でした。

 今回の螺鈿付きペンシルエクテンダーは実用的な銘木鉛筆補助軸にアート作品を埋め込んだ、製品を超越したものだと思っています。

 所有した人は、これに鉛筆を入れて実際に使うかどうか分からないけれど、鉛筆を入れて色や姿を合わせて、眺めるだけでも楽しいと思います。

 当店の近くに鉛筆類専門店590&Co.さんができて、鉛筆が身近な筆記具になりました。

 万年筆は私にとって日常の筆記具ですが、何かの下書きを書くときやアイデアをひねり出す時には鉛筆を使いたいと思うようになって、愛用の鉛筆削りで先を尖らせて書くことが多くなりました。

 子供の頃に書いていた気持ちを思い出させてくれる素朴な筆記具が鉛筆で、そんな削って短くなった鉛筆を使う素朴な道具と螺鈿作品のアンバランスさが大変面白い。

短くなった鉛筆が先に付いて初めて、ひとつの世界観を表す作品になると思っています。

*限定商品・工房楔×池田晃将 エクステンダー楔・螺鈿