お客様と話している時に、メモしたいと思ってもノートや手帳を開くことが憚られます。小さなメモ帳であっても「取り出して開いて書く」という行為が相手の話を遮ってしまうような気がするし、厚いシステム手帳や大きなノートなら尚更です。
昨年11月当店に泥棒が入った次の日、予定していた旅行に半ばヤケクソで出掛けましたが、その旅先でメモジョッターの代わりになりそうなものを見つけました。それをアレンジしてペンホルダーをつけて使っていましたが、これだとお客様と話している時でも自分の精神的抵抗が少なく、とても快適に使うことができました。ジョッターという存在をもっと早く思い出すべきでした。
メモジョッターは、情報カードが使われていた時代にはよく使われていたもので、昔から微妙に違う様々な形のものが作られていましたし、私もいくつか使ってきました。
シンプルなだけに使い勝手は良く、取り出してすぐに書くことができて、薄いのでジャケットのポケットやシャツの胸ポケットに入れておくこともできる。
自分なりにアレンジしたものを半年ほど使ってみましたが、皆さんにお勧めできるものだと思いました。そこでM6手帳を作ってくれた若い職人さんに、M6リフィルと5×3カードが入り、ペンホルダーが付いたジョッターを作っていただきました。その革には、丈夫で美しい銀面を持つサドルプルアップ(チョコ)と、エージングで滑らかな手触りと美しい艶が出るブッテーロ革(ワイン)の組み合わせを選びました。
筆記面と背面がサドルプルアップレザーのものは、紙押えとペンホルダーがブッテーロ。
筆記面、背面がブッテーロのものは、紙押えとペンホルダーがサドルプルアップレザーになっています。
M6用紙と5×3情報カードでは、M6の方が少しだけ幅広ですが、共用で使えるようになっています。
ジョッターの使いやすさのポイントは、紙のセットのしやすさと挟んだ紙の外れにくさだと思っていて、それを満たしたものを職人さんが形にしてくれました。今までこんなに紙がセットしやすいジョッターに出会ったことがありません。
ペンホルダーの一部が紙押えも兼ねていて、これがこのジョッターオリジナルのアイデアになっています。シンプルでとても使いやすいものになりました。
写真で目立つように撮りましたが、革を3段重ねたコバの部分も気に入っています。
私はジョッターに挟んだ紙にその日のメモをいくつも書き込んでおいて、それを家に帰ってから整理してM6システム手帳に転記しています。
厚めのM6用紙だと12枚程度が予備の紙を収納できるスペースに入るので、出先でメモを使い切ってしまう心配もないと思います。
人それぞれメモの使い方があると思いますが、ジョッターは薄くて邪魔にならないという点、表紙のないシンプルな構造であるという点において、様々な使い方に対応する究極のメモ帳としてステーショナリーの定番的な存在だと思っています。
ジョッターはステーショナリーの定番ではあってもマイナーな存在で、今まで仕様にこだわって、良い素材を使ったものは少なかったと思います。当店も5年ほど前にノートカバーの付属品としてしか作っておらず、復活させたかったステーショナリーのひとつでした。
このジョッターのペンホルダーに収まるペンは細めのものをイメージしました。あまり太いペンだとかさ張ってしまって、ジョッターの使いやすさを阻害してしまいます。
イメージしたのは、ファーバーカステルクラシックのボールペン、ペンシルや時計作家ラマシオンの吉村さんがハンドメイドで作っているgate811のボールペン、あるいは鉛筆など9.5mmほどのペンがピッタリ合います。
昔から使われていたけれど、最近あまり使われなくなったものの中にも良いものはたくさんあります。ジョッターもその一つで、こだわった良い素材で、しっかりした良い作りのものができたと思っています。