クロコアクセントジョッター完成

パーフェクトペンシルを使い始めて、2本目の鉛筆になりました。

はじめ面白がって原稿や手帳などいろんなものに使ってみたけれど、やはりメモを書くのに使うのが自分には一番合っていると思いました。鉛筆自体が高価なので、少しずつ少しずつ削って使っていましたが、今は2本目を育てています。

硬めの芯のメリットは、減りにくいので一回削ると何日もそのまま使うことができるところだと、パーフェクトペンシルを使うようになって知りました。

HBの濃さは適度に薄いので、例えば電車の中などで書いても、周りの人から読まれないと思います。

子供の頃使っていた鉛筆は非常にガサガサした書き味でしたが、それを当たり前のものとして使っていました。でもいつの間にかパーフェクトペンシルの滑らかな書き味に慣れて、普通の鉛筆の書き味に満足できなくなっていました。

私はジョッターを毎日使っていますが、パーフェクトペンシルとの相性がとても良く使いやすいので、革職人の藤原さんにまた作っていただきました。

今回は、先日発売して売り切れてしまったバイブルサイズのシステム手帳と同じデザインにして、サドルプルアップレザーにクロコのアクセントをあしらいました。

当店のジョッターは、一般的に売られている5×3サイズではなくM6サイズシステム手帳のリフィルサイズになっています。

ある程度書くスペースがあるけれど大き過ぎず、ポケットに入れたり、手帳に挟んだりすることがしやすいサイズです。M6サイズは一般的なサイズで、リフィルが入手しやすいと思います。

ジョッターにセットする時は、リフィルの穴の開いた部分を挟むので筆記スペースを邪魔することもなく、書いたものをそのままM6手帳に綴じることができます。

私の場合ジョッターは仕事に使っています。それは使いやすさだけでなく、手帳に挟んだり、ポケットに入れたりできるくらい薄いのに、見栄えもするという、他のメモにはないモノの力があるからです。

クロコのアクセントを入れてもらって、それはより強力になりました。

ジョッターは最近あまり使われなくなりましたが、仕事中などにスマートにメモをとるものとして、見直してみてもいいものだと思います。

*品切れのシステム手帳も1月に出来上がる予定です。

⇒ジョッター サドルプルアップ・クロコアクセント

⇒ファーバーカステルTOP(パーフェクトペンシル)

カスタム743、742のペン先の違い

1月1日から値上げが予定されている、パイロットの万年筆の話が連続します。カスタム742、743についてのお話です。

当店ではカスタム742を、「適度な大きさの10号サイズの書き味の良いペン先とバランスの良い軸が揃った完璧な万年筆」と位置付けています。

日本製なら2万円で書くことにおいて高いクオリティの万年筆を買うことができます。それを当たり前のように思っていましたが、メーカーの志と努力の成果だったのだと、色々なものが高くなった今になって気付きました。

完璧なカスタム742に対して、カスタム743はさらに耐久性の高い15号サイズのペン先を持ち、プロ仕様の万年筆としています。

私が書道を習いに行っていた時、先生に頼まれて万年筆を用意したことがあります。

先生は書道教室で毛筆の他に硬筆も教えていました。その時は硬筆に付けペンを使っていましたが、その代わりに以前使おうとして諦めた万年筆をもう一度使いたいと思われたようです。

付けペンを使っていた理由は、力を入れてペン先を開かせて書くことができるからで、先生はそれを「ペン先を割って書く」とおっしゃっていました。

カスタム742でペン先を割って書くと、ペン先が必要以上に割れてインクが途切れてしまいますが、743だとギリギリのところで粘って、インクが途切れることがありませんでした。

私たちの普段の筆記でそこまでペン先を開かせて書くことはなく、742と743の違いを感じることは少ないのかもしれませんが、742と743のペン先の違いについて分かる象徴的な出来事でした。

カスタム743の方がペン先が大きいですが、それは柔らかさに寄与するのではなく、粘り強さ、耐久性を持たせるために必要な大きさだったのです。

たしかにカスタム742のペン先の方が柔らかく、カスタム743の方が硬く感じることがありますが、ハードに書いた時にさらに違いが出てくるのです。

万年筆を長くハードに使った時、ペン先がヘタってくるということがありますが、カスタム743の粘り強いペン先は、ヘタリにくさも持ち合わせていると予想します。

一生ものの道具即ち生涯の相棒にできる万年筆がカスタム743なのだと思います。

このカスタム742と743の関係は、モンブラン149と146の関係に似ています。

149と146は軸のサイズがかなり違いますが、カスタム742と743の軸のサイズはほぼ同じになっていて、このサイズは万年筆において最良のものだと確信していることも伺えます。

カスタム742と743にはたくさんの種類のペン先がラインアップされています。

それぞれの字幅は例えば手帳に書くのならEFかFとなるように、用途によって選ぶものが違ってきます。

字幅によって書き味や使用感が違っていて、個々の好みはあるけれど一般的にはペン先は太くなるほど書き味が良いと言われています。

しかし太字以上の字幅では、ペン先の中心を意識して書かなくては書き出しが出なかったりして、うまくインクが出てくれません。それはいわゆる「ペン先を合わせて書く」ということになります。

早く書くにはある程度太い方が滑りが良くていいですが、太すぎると今度は合わせて書かかなければならず、かえってスピードが遅くなります。

合わせて書くことを意識せずに滑りが良く書ける限界はMくらいではないかと思っています。FMやMくらいが楽に使うことができて、最も早く書くことができる太さということになります。

カスタム742、743には特殊ペン先もあって、かなりユニークな存在です。

SU(スタブ)は横細、縦太の味のある線が書けるペン先で、書く文字にハマれば面白い効果が得られます。

PO(ポスティング)はペン先が硬く開きにくいので、一定の太さ、濃さで細かい数字や文字が書けるペン先です。手帳にも合うかもしれません。

WA(ウェーバリー)は、ペン先が反っている特殊な形状をしています。もともと寝かせて書く人にはあまり恩恵が感じられないかもしれませんが、ペンを立てて書く書き方でも柔らかい書き味を得られるというものです。

FA(フォルカン)はペン先が極端に柔らかいので、軽い筆圧の加減で文字の強弱がつけやすくなっています。筆圧の強い人には扱いにくく向かないペン先です。

S(シグネチャー)はサイン用ということで開発されたペン先です。90年代のペリカンの角研ぎに似た形状ですが、角を落としてあり、書き出しが出にくいということがありません。Mをそのままの形で幅だけ広くしたようなペン先になります。

特殊ペン先はかなりユニークなものですが、パイロットが創業間もない昭和初期には既に実用化されていました。万年筆の可能性を広げるペン先の開発を社運を賭けて行っていて、その仕事は今も輝いている。むしろ万年筆が趣味のものになった現代においての方がその意味合いは大きいのかもしれません。

⇒パイロット カスタム742

⇒パイロット カスタム743

パイロットカスタム845と2024年1月1日の価格改定

万年筆の中でどの部分を好むかというのは人それぞれで、書き味を重視する人もいれば、軸のデザインを大切にする人もいます。

私の好みを言うと、やはりペン先の良さということになります。あとは筆記時のバランスで、その2つが良ければデザインにはあまりこだわりがありません。

むしろ黒金(黒軸にゴールド金具)の万年筆のように、オーソドックスでシンプルな方が良いとさえ思います。

カスタム845の、しなやかさと安心して書ける粘り強さを併せ持つ書き味は、間違いなく国産最高の万年筆のひとつだと思います。

そしてシンプルな黒金、あるいは朱と黒の軸は、漆が何層にも塗り重ねられて「蝋色漆」という状態に仕上げられます。カスタム845の漆塗りの軸はシンプルでありながら、本物の上質さを追究したものです。

パイロットの価格改定が2024年1月1日に予定されていて、このカスタム845は現在の55000円から88000円に変更されます。

値上げということになりますが、国産最高の万年筆が88000円というのはそれほど高く感じないように思います。そう思うと今が安いのかもしれません。

パイロットの万年筆は、日本の万年筆の価格とスペックの基準を示すような存在だと思っていました。

10,000円、20,000円、30,000円、カスタム845の50,000円クラスと、各クラスに定番万年筆を隙なくラインナップしていたことで、パイロットの万年筆を基準に考えてしまう癖が私たち業界の人間にはあると思います。

他メーカーが価格を上げていく中、パイロットが動かなかったことを当然のように思っていました。

しかし、カスタム74シリーズが発売された31年前から基本的には万年筆の価格を変えずに耐えてきたパイロットも、とうとう価格を変更せざる得なくなりました。

パイロットの代表的なモデルの来年1月1日以降の新価格を下記しておきます。

・カスタム漆96,800円→121,000円

・カスタム845 55,000円→88,000円

・カスタム743 33,000円→39,600円

・カスタム742 22,000円→26,400円

・シルバーン55,000円→66,000円

・カスタムカエデ 22,000円→26,400円

・キャップレスLS 38,500円→46,200円

・キャップレスマットブラック 19,800円→24,200円

・キャップレスデシモ 16,500円→19,800円

・エリート95S 11,000円→17,600円

⇒パイロット TOP

オリジナルダイアリーを使い始めると使いたくなる革カバー

テレビ朝日で日曜夜10時放送中の「たとえあなたを忘れても」は、神戸が舞台の切ないドラマです。

主人公がキッチンカーをいつも止めて営業しているのが六甲アイランドで、カメラがキッチンカーに向く時、右後方にいつもル・ボナーさんの入り口が映ります。

松本さんの姿が見えないかいつも気にして見てしまうけれど、まだ見えたことはありません。

神戸は山と海が街のすぐ近くにある公園のような街なので、ドラマや映画のロケ地に向いているのかもしれません。こういう取り組みは神戸の町おこしにつながると、関係している人は思ってくれたのだと思います。

年末なので、手帳関連、ダイアリー関連のものが、少しずつ入荷しています。

入荷時期がバラバラなのは発注のタイミングによるもので、来年はもっと早く、全てのカバーがダイアリーの完成とともに入荷するように調整したいと思います。

オリジナルダイアリーを作り出したばかりの頃はル・ボナーさんがダイアリーの革カバーを作ってくれていました。

10年近く前になりますが今も使い続けて下さっている方もおられて、使い込まれたカバーを見ると、当時のことが思いだされて懐かしい気持ちになります。

新作のバゲラさんのオリジナルダイアリーカバーには驚かれた方も多かったと思います。すぐに売れてしまって今はありませんが、近日中には入荷する予定になっています。

バゲラの高田さんは当店のオリジナルダイアリーをしばらく使って下さって、高田さんの思う正方形ダイアリー用のカバーを作ってくれました。

エキゾチックレザーなど様々な革を組み合わせて、バゲラの世界観が表現されているものだと思いました。

毎年作っていただいているカンダミサコさんのダイアリーカバーも入荷しました。

1枚の革でできているシンプルで、柔らかい印象のカンダさんらしいカバーです。これもカンダさんらしい仕様だけどくるみボタンがワンポイントになっています。

当初私はダイアリーにビニールカバーだけを掛けて使っていました。その方が荷物が軽く、コンパクトになると思ったからです。

たしかにビニールカバーで使うとスッキリとダイアリーを使うことができますが、使ううちに革カバーを使いたいと思い始めてしまいました。

そして最近、ミネルヴァリスシオのオリジナルカバーを使い始めました。

見た目の感じ、手で感じる感触など、やはり革の表紙で持つと愛着がより一層強くなっていいものだと思えます。

私はなるべく傷を付けたくないので、正方形ノート用「square note bag」に革カバーのダイアリーを入れてから、鞄に入れています。

出張販売にもオリジナルダイアリーをいつも持って行って、なるべく多くの方にこのダイアリーを知ってもらえるようにしています。

出張販売は、オリジナルダイアリーを遠くの人に知ってもらうための旅だと言うと言い過ぎかもしれないけれど、オリジナルダイアリーを代表とする当店のオリジナル商品を知ってもらうことが出張販売の目的ですし、オリジナルダイアリーをより魅力的にしてくれる革カバーは、当店になくてはならない大切なものとなっています。

⇒正方形ダイアリーカバー・正方形ノート TOP

茶碗と万年筆

お茶の茶碗は数人分の濃茶を点てて回さないといけないので大きさも自然と決まってくるし、茶碗としての用途も当然満たさないといけないので形もほぼ決まってきます。

茶碗に興味のない人にとっては柄などが違っていないと同じようなものに見えるのかもしれません。

でもある程度見慣れてくると、ひとつひとつが全然違うと思えるようになります。

見慣れないうちは全て同じに見えるということでは、万年筆と茶碗は似ているのかもしれないと思いました。

万年筆も筆記具である以上ある程度大きさも形も決まってきます。

本来の目的である書くという機能を完璧以上に備えた上で、この小さな1本の棒の中に意匠を凝らしたり、シルエットに凝ったりしていると思うと、茶碗と同じように見ることができるのかもしれません。

中之島香雪美術館に茶の湯の茶碗展を観に行ってきました。

以前千利休について本を読み漁っていたこともありましたし、茶道を習っていたこともありましたので、茶道のお道具を観るのは好きでした。

お道具の中でも茶碗は、華々しい場面で使われる花形的な存在だと思います。

私も分かって見ているわけではありませんが、美術館に展示されているものなので、変なものがあるはずがないと思います。

こういう名物を見て、自分はどういうものが好きなのか確認しているのかもしれません。

組織力で作る繊細で研ぎ澄まされた天目茶碗や豪快で力強い井戸茶碗に対して、その時日本で主流だった侘び茶の設で使われることを前提に、日本で1人の作家によって作られた楽茶碗の言葉で言い表せない凄み。

海外の豪華な限定品や日本の蒔絵を施したものが最近の観る要素のある万年筆でしたが、綴り屋の万年筆はそういったものと同じように、観ることができる万年筆だと私は思っています。

蒔絵以外で日本でこういうものが出てきたのは久し振りだと思います。

綴り屋の静謐は鋭いラインが出るまで攻めて削り込んで、木なのに硬さ、冷たさのようなものを感じる万年筆で、その名の通り静謐さを感じます。

私はこの静謐に惚れて綴り屋さんの万年筆を当店で扱うようになりました。

攻めて削り込んだものというと、月夜の万年筆もそういうものになります。

キャップも軸も薄く仕上げて、とても軽い、細い万年筆に仕上げている。

見た目も筆のような趣があり特長的ですが、書くことにおいてもコントロールのしやすさを月夜は持っていますので、ペン習字などでも役に立つペンだと思っています。

月夜に漆の溜塗を施したものを当店では扱っていますが、攻めたラインと漆の光沢による冷たさが合ったいいものに仕上がっています。

静謐を発展させて、荒々しい自然な味を付加させたのがアーチザンコレクションで、こういう手法のものはお茶道具の花入れなどでも見られます。

自然のままの姿を生かすためにとことん手を入れてこの形をとどめているアーチザンコレクションはとても人気があって、入荷するとすぐに売れてしまいます。

漆黒の森は一見当たり前に見えて、そう見えるように最大限の努力がされている。キャップを薄く作り、ボディは厚く残して重量のバランスをよくして、首軸とボディの段差を最小限にしているなど、いくらでも言えるところがある万年筆。

私たちの念願だった綴り屋さんの作品販売会を元町で開催いたします。

上記の綴り屋さんの人気の万年筆やボールペンの他にも新作もご用意して下さっているとのことで、私も楽しみにしています。

当店と590&Co.さんの共同開催で、590&Co.さん店舗内で開催します。

12月9日(土)10時~19時

12月10日(日)10時~17時

15時まで予約制とし、こちらで→ https://airrsv.net/590andCo/calendar

ご来店のご予約をすることができます。

尚15時以降はフリーで入場可能です。

当日綴り屋万年筆をお買い上げの方は、当店でペン先の装着、調整をさせていただきます。

ご来場お待ちしております。

⇒綴り屋 TOP

自然な使用感に惹かれる

590&Co.さんとの共同出張販売「&in福岡」のために、福岡に行ってきました。

数年前から毎年福岡に来ていましたが、今までは大名にある表通りに面したギャラリーで出張販売をしていました。
でもコロナ禍などの影響もあってそのギャラリーが閉鎖になり、今年から警固(けご)にあるギャラリートレザイールさんを会場にさせていただきました。

天神に近く人通りも多い大名とは違い、警固周辺は静かなところで、個人経営のカフェやお店などもある比較的落ち着いたところでした。

マンションの間に商店が混じった、暮らしと遊び場が同居した感じは、当店のある元町に近いと思いました。ホテルも警固だったので、福岡滞在中警固周辺から出ることなく、その中で快適に自然体でいられました。

きっと谷本さんもそうだと思いますが、私たちにとって警固の落ち着いた雰囲気が心地よく、合っていたのかもしれません。

福岡でも綴り屋さんのペンは注目されていました。

12月9日(土)10日(日)、590&Co.さんの店舗を会場に綴り屋さんの作品販売会を開催します。

イベント期間中に綴り屋さんの万年筆をお買い上げのお客様は、当店にてペン先調整をさせていただきます。

このイベントは当店と590&Co.さんとの共同企画で、初の試みになります。

出張販売での反省では、今自分がどういうものを好み、こういうものを良いと思っているということをもっと表現するべきだと思いました。

モノに関する好みですが、デザインが良いモノももちろん良いのですが、使用感が自然なものの方が、私の場合長く使っているような気がします。

綴り屋さんの万年筆漆黒の森は重量が軽い割に太軸で、力を抜いてペンの重みに任せて書く必要がなく、自然な感じで書ける万年筆です。

万年筆を使い慣れた人も、長く使って来た人もきっとこの漆黒の森は手に馴染みやすいと思える、自然な使用感を持った万年筆です。

インクもその色に惹かれて使い始めますが、いくら色が良くても紙の上に乗るような、紙に馴染まないインクはあまり好きではありません。

書いた後スッと紙に沈んでくれる自然な感じがするということが絶対条件で、色以上にそんな性質のインクに惹かれます。

当店のオリジナルインクの話で恐縮ですが、冬枯れやメディコ・ペンナ、虚空がそんな性質で、それらのインクを好んで使っています。

紙馴染みの良い自然な使用感のインクはたいてい発色も大人しく、少し沈んだ落ち着いたトーンになります。しかし、そんなところも私には自然に見えて良いと思えますので、オリジナルインクでそういうトーンのインクが多いのも、そんな理由があるからです。

革表紙のメモはデザイン的には凝ったところはありませんが、自然に快適に使えることを追究したものになります。

土台となる底の革は厚く丈夫なサマーオイル革で、安定感があり、書きやすさに貢献しています。表紙の革は柔らかいミネルヴァボックス革で、めくりやすく、開いたままにしておけるので、書いている時に邪魔になりません。

中紙は当店の試筆紙と同じユトリロ上質で、にじみが少なく、裏抜けもないけれど、特殊な表面加工がされていませんので自然なインクの吸収と書き味を持っています。

切り取りやすいマイクロカットミシン目が入っていますので、サッと切り離すことができます。

各素材をそれぞれの用途に適した特性のあるものにして、自然な使用感のメモ帳を目指したのが革表紙のメモです。

いろんなものを使ううちに、こういった自然な使用感を持つものが良いものだと思うようになりました。

 新しいものでなくても、長く扱っているもの、作り続けているものには無理のない自然体の使いやすさがあって、当店の定番と言える存在になっています。

⇒Pen and message. 革表紙のメモ

新しい時代の象徴~ツイスビーECOインディゴブルーブロンズ、Kai~

コロナ禍前年の秋、台湾を訪れることができたことは幸運でした。

台南ペンショーを視察するという目的で、2泊3日で台北の文具店を見て回れるだけ見て回り、高鐵で台南に行ってペンショーを見て台北に帰って来ました。

一人旅だったけれど、台湾のお店も風景も思う存分見ることができて、充実した旅でした。

あれから4年も経ったとは信じられません。コロナ禍は時間をあっという間に進めてしまったような気がします。

コロナ禍の数年はほとんど家と店の往復で、体は楽だったけれど、このままではいけないという危機感ばかり募らせていました。それは、台湾に行って時代が変わってしまっていることを実感したからでした。

コロナ禍が明けたと思えた今年、私たちの仕事は外に出て行ってこそ活気づくものだったと、動き回りながら思いました。日本が様子を見ている間に、世界はとっくに動き始めていたのだと思います。私たちは遅れた3年を取り返さなくてはいけないのかもしれません。

新しい時代の中心のひとつはツイスビーだと思っています。時代遅れにならないためにも押えておきたいブランドで、万年筆の新作が出ると仕入れています。

ECOの新色は1年に何回も発売されますが、今回発売されたインディゴブルーローズゴールドは今までのものとは少し趣が違う、大人の万年筆の雰囲気があるような気がします。

ECOの魅力は透明軸の中の大きなインクタンクで、インクの存在を感じながら書くことができます。そこに喜びを感じる人が多いということを、お客様方の話から知りました。

ECOは昨年からmade in Chinaになっていますが、インディゴブルーはキャップリングにTAIWANと印刷されていて、台湾製であることが表記されています。

もうひとつの新製品Kaiは従来のモデルと少し違っていて、ヨーロッパ万年筆のような雰囲気があります。

アクリル削り出しの、少し太軸で上質な質感を持つツイスビーの高級バージョンと言えるものです。

ECOインディゴブルーローズゴールド、Kai、どちらも限定商品となっています。

ツイスビーの万年筆は、金ペンのしなやかさはないけれど、サインペンのような、何も気にせずに書けるダイナミックさがあります。

現在、多くの万年筆は金の高騰と為替の影響で、高額化に苦しんでいます。金を使わずに、低価格で魅力的な万年筆を作り続けているツイスビーのペン作りの在り方が、そしてそういう万年筆を支持するお客様方が、新しい時代を築いているのだと思います。

⇒ツイスビー Kai 万年筆

⇒ツイスビー ECOインディゴブルー

出張販売と綴り屋の万年筆

11月3日(金)~5(日)の3日間、福岡のトレザイール(福岡市中央区警固2-12-12警固丸ビル)で590&Co.さんとの共同出張販売「&in福岡」を開催いたします。

今年はペンショーなどのイベントの他に、出張販売を多めに企画しましたので、あちこちに出掛けたという印象があります。

それは共同出張販売の相方である590&Co.の谷本さんがいて促し合っていたこともあるし、当店スタッフ森脇が同行するようになったことも大きいと思います。

それに店として、多くのお客様がおられるところに出向いて行くというのは生存本能に近いものがあるのかもしれません。

神戸の街は自分たちのホームグラウンドと言える場所ですが、同じ場所でお客様を待っているだけではいけないと思うようになりました。

今年の出張販売で人気があるものとして、綴り屋さんの万年筆が挙げられます。

特に590&Co.さんとの共同出張販売「&(アンド)」の時は、綴り屋の鈴木さんが当店と590&Co.さんのフレンドショップ企画として、同じ素材でボールペンと万年筆を作ってくれたりしてバックアップしてくれています。

綴り屋の鈴木さんは2本と同じ万年筆を作ることはしなくて、いつもどこか仕様を変えてきます。それは軸の磨き方のこともあるし、リングの色やリズムだったりします。

でもどこか改良できるところを見つけて常に新しいことを試み、同じところにじっとしていないのは、ペン作りを楽しみながらしていることの表れで、その姿勢に共感しています。

今綴り屋の鈴木さんがいろんなパターンで作っているのは、同じ塩尻市の漆職人小坂氏との仕事です。綴り屋さんの端正な万年筆「月夜」に溜塗を施したものは、この細身の万年筆の良さを引き立てていると思います。

綴り屋さんの代表的な太軸万年筆「静謐」には小坂氏による漆塗りを施したものが当店に入荷しました。

軸に施した拭き漆は、木軸の補強、防水の効果がある他に木目を際立たせる役割もあります。

キャップトップには布着(ぬのぎせ)の技法を凝らして、これが日本古来からある丈夫で美しい姿の道具のような、民藝的な仕上がりにしていて、この万年筆に道具としての強さを与えています。

円安の影響もあって、最近海外のメーカーのペンの値段が上がり売れにくくなっています。

その流れで国産の万年筆が見直され始めていて、中でも綴り屋さんの万年筆は他にない個性のあるものを求めるお客様から求められています。

私も販売する立場ではありますが、次に綴り屋さんがどんな万年筆を納品してくれるのか楽しみにしています。

⇒綴り屋TOP

使ってみてよかったもの~A7メモカバー~

開店前に、店から買い物や散歩に出たり、旅先でちょっと出掛けたりする時にいつも使うスエード革のサブバックがあります。これは大手のT鞄のものなので、当店と全く関係がないけれど、使ってみてよかったという類のものでした。

小さく折りたためて丈夫で、見栄えも良い。

よく雑貨店などでサブバッグは売られているけれど、あまり良いと思えるものと出会ったことがありません。中には最初に使った時に破れたものもありました。

たまにですが、あまり期待していなかったけど使ってみたらすごく良かったというものに出会えると嬉しくなるし、そのメーカーの印象もとても良くなります。

私たちもこういうものを作らなければいけないと思います。

当店でもそういう隠れた名品はあって、例えばカンダミサコさんが作ってくれているシステム手帳用革下敷きやペンホルダーは評価が高く、ずっと売れ続けています。

とてもシンプルなものですが、使ってみると想像以上の使いやすさで、モノというのは本当に使ってみるまで分かりません。

カンダミサコさんの商品では、他にもA7サイズのメモカバーがあります。

コロナ前くらいからM5システム手帳が流行していたこともあって、サイズ感が似ていることからA7メモカバーは作っていませんでした。

考えてみると薄くてポケットに入れておけるA7メモカバーは、M5システム手帳とは用途が全く違っていたのかもしれません。

覚書や雑記、アイデアなどを忘れないうちに書き留めたりするのに、いつもポケットに上質な革のメモ帳が入っているととても便利だし、何となく嬉しいと思います。

カンダミサコA7メモカバーはライフノーブルノートミニ、コクヨ切り取りメモなどを入れることができますが、他にも使えるものはいくつかあるかもしれません。

このメモカバーの特長は、折り返し部の幅を広くして段差をなくすことで下敷きのような効果を持たせ、立ったままでも書きやすくしているところです。

これは、こういうカバーにはあって欲しい機能だと思います。

システム手帳もいいけれど、時系列にメモを取りたい私のような人には、A7メモカバーのシンプルなものが使いやすいのかもしれません。

久しぶりの製作でしたが、今回は当店でも人気のある革で作ってもらいました。

エレファントは独特の模様やシボがあって、使い込むとこのシボが潰れて良い風合いになります。

使っていくうちに艶が出てくるダグラスⅡ、柔らかくて手触りが良く、ビジネスシーンでも使いやすいトリヨンオルダラ。

どれも趣向の違う革をご用意して、ぜひお好みの風合いの革を見つけてお使いいただきたいと思っています。

⇒カンダミサコ A7メモカバー

プラチナセンチュリー~小さな文字を書くペン~

ふと頭に浮かんだテーマについて考えて書くことを趣味にしています。

テーマの浮かび方はいろいろあって、街を歩いていて思いつくこともあれば、本屋さんで見た本のタイトルから連想することもあります。

何かの役に立てるとか、誰かが読んでくれるアテがあるわけではないけれど、それを書くことが好きだから書いています。

そうやって書いたものが結局ホームページのブログになったり、何かの原稿になることもあるので、趣味と実益を兼ねたものになっているかもしれないけれど。

テーマが浮かんだら、ギリギリまで頭の中で考えて、書けそうになったら一気に書き始めます。

一気に書く時は万年筆を使いますが、あまり大きな紙ではなく、小さなノートやシステム手帳などに小さな字で細々と書いています。

最近、大きな文字よりも小さな文字を書く方が、自分は集中できると気付きました。

そういう場合のペン先は細字で、それも国産のものが合っているようです。

今まではもう少し大きな字を書いていたので、持っていた万年筆は国産でも外国のものでも中字のものばかりでした。

最近になって、小さな手帳に原稿を書くためにプラチナセンチュリーを使い始めました。

ペン先が硬くインクの出も少なめで、イメージしていたより細かったけれど、書きたかった小さな文字も潰れずちゃんと書けるのでとても気に入っています。

年4回発行のフリーペーパー「ふみぶみ」という冊子に、創刊から寄稿させてもらっています。

書くことは好きだからと、ご依頼いただいた時は二つ返事ですぐに引き受けました。テーマは自由、お任せで好きなことを書かせていただいていて、小さな手帳に書いた原稿がふみぶみの原稿になっています。

ふみぶみは手紙を書く人を増やしたいという志を持って始まった本で、当店にピッタリの本だと思いました。

様々な分野の人が寄稿していて、中にはものすごく文章の達者な人もいたり、旅がテーマのコーナーもあったりする、読み応えのある冊子です。

ふみぶみは2021年にフリーペーパーオブザイヤーの「伝える気持ち賞」というものを受賞するなど、少しずつ広まって、多くの人に認められるようになりました。

店頭でお客様にお渡ししながら、その存在感が増してきたことを実感しています。

書くことが好きだから、自分の書いたものが役立つのなら、と乗った小さな船が、気付いたら大きな船になっていたような感覚です。

ふみぶみに書くことで、普段当店のことを知りようのない人が当店のことを知って下さるという効果もあったりして、本当に書くことは趣味と実益を兼ねていると思います。

⇒プラチナ センチュリー#3776