文集雑記から2 「一番愛用している万年筆」

文集雑記から2 「一番愛用している万年筆」
文集雑記から2 「一番愛用している万年筆」

来年初めに完成を予定しています文集雑記から2の原稿の募集を締め切りました。
37人の方が寄稿して下さりました。
多ければ多いほどいいと思っていましたが、予想以上の数が集まり有難いことだと心から感謝しています。
皆様の原稿を拝見しながら、皆様が一番愛用している万年筆を数ある中から1本に絞らないといけないという苦しみを垣間見ました。

私も数多くはないけれど、20本ほどの万年筆はどれも愛用していると言っていいし、どれにもそれなりのストーリーがあると思っているので、どれについて書こうか迷っていました。
一番文字数を書いている万年筆はペリカンM450(現在は廃番になっています)で、ブログやホームページの下書きなど、原稿と言えるもののほとんどをM450 で書いています。
自然と書いた文字数も多く、書き馴らしたペン先独特のインクがフワッと出てくる感じがたまらなく気持ちいいので、余計に使ってしまいます。

たまにノートの罫線の色が変わったら原稿を書くことができないという人がおられるけれど、もしかしたら私はペンが変わったら原稿が書けなくなるのかもしれないと思うほどです。
それくらい使っているM450 ですが、このペンを文集に書くのに少し問題がありました。

スタッフKとまさかのカブリだったのです。
「何について書くか決めた?」と言い合っている時に二人ともM450 について書くつもりであることが発覚しました。
「お互い本数持ってるのに何故よりによってM450?」としばらく揉めましたが言っても仕方ない事でした。

それでは私以外の皆が私の愛用の万年筆だと強く推すパイロットシルバーンについて書こうかということに落ち着きました。
たしかにシルバーンは仕事中当店のオリジナルペンレスト兼用万年筆ケースに入れていつも傍らに置いて、帳簿やポップ、手帳やメモなど何でも書き用に使っています。
よく使うからか書き味も細字と思えないほどしっとりと柔らかい、でも安心感のある書き味に育ってくれています。
キャップが勘合式なのもいいし、カートリッジで使っているので、仕事中にインクが切れてもすぐに差し込んで、続きを書き始めることができる。
この万年筆以上愛用しているものはないのかもしれないけれど、シルバーンは私にとってあまりにも日常の道具すぎる。
横にあるのが当たり前すぎて、言わばペン先調整の道具に近い存在になってしまっているのです。
改めてこの万年筆について何か書こうと思っても、ロマンのあることが思いつきません。

いつも傍らにあって、調整する前に自然に手が伸びて、自分の目の代わりになる25倍のルーペと同じように「あって当然」の空気のような存在がシルバーンで、この万年筆で書くとストレスはないし、ペン先の傾き加減でインクの出方までコントロールして書くことも自然にできるほど、自分の指先の一部にようになっています。
それが愛用しているということなのかもしれません。

もしかしたらシルバーンだから私にとってこのような存在になったのかもしれないと思うと、あって当然の、ありふれた、ドキドキのないこの万年筆も愛おしく思えてきました。

これから編集作業に掛かりますが、またいい文集が出来るのではないかと思っています。

⇒パイロット シルバーン万年筆

オリジナルダイアリー 進化の予定

オリジナルダイアリー 進化の予定
オリジナルダイアリー 進化の予定

今年も毎年発売しています正方形のオリジナルダイアリーを発売しますが、少し遅れています。
遅れているのには理由があって、かなり大がかりなリニューアルを印刷の締切りが迫ってから大和出版印刷さんに依頼したからでした。

これは早い段階で決まっていましたが、まずダイアリー用の紙が今まで使っていたリスシオワンから新しく大和出版印さんが開発した万年筆用紙グラフィーロに変わります。
書き味の良いリスシオワンにもあった課題を、ひとつずつ解決して出来上がったグラフィーロは、ペン先の滑り、インクのにじみにくさ、裏抜けしにくさなど、万年筆用紙に求められる性能を全て最上のものにしたもので、これでダイアリーを作ることができるのがとても嬉しく、出来上がるのを楽しみにしています。
基本的なレイアウト、マンスリーのブロック型、見開き1週間(左5日右2日プラスメモ)の基本的なレイアウトは変わりませんが、大幅に改良を加えています。
まず、ウィークリーダイアリーに1か月1ページのブロック式のマンスリーダイアリーを加えました。
マンスリーダイアリーにスケジュールだけ記入している人はこれで充分で、ウィークリーダイアリー1冊で、ウィークリーとマンスリーの両方を使うことができるようになりました。

ウィークリーダイアリーには、経過日数と残り日数を365日全てに表示し、週番号も表示しました。
マンスリーダイアリーにも週番号は表示するようにしています。
その他にも小変更はありますが、大和出版印刷さんがリスシオワンの課題を全てつぶしてグラフィーロを作ったように、オリジナルダイアリーでも課題をつぶしてより完璧なものにしたいと思いました。

正方形サイズダイアリーは、ル・ボナーさんの革カバーに入れて完璧なものになります。
昨年までベルトもペンホルダーもないシンプルなカバーだけを作っていましたが、今年から当店の女性に向けたブランド“ドレープ”で、ベルトとペンホルダーを付けたカバーを企画しています。
ル・ボナーさん秘蔵の革で作っていただくことになっていて、12月までには出来上がる予定です。

私にとって正方形ダイアリーは、スケジュールとToDoを管理する、仕事の原動力になっています。
このダイアリーに書くことで仕事がより楽しくなっていますが、それを一人でも多くの人と分かち合いたいと思っています。

当店、分度器ドッコム、大和出版印刷の3社共同企画のオリジナルダイアリーも今年で6回目の発売を迎えます。使い続けて下さっている方にも私たちはこのダイアリーを守り続けていきたいと思っています。まだ完成していないけれど、その出来栄えを皆様に早くお見せしたいと思っています。

*2015年ダイアリーは10月中旬頃の発売を予定しています。入荷次第ホームページでご案内させていただきます。
*画像はウイークリーのマンスリー部分です(サンプル商品)

ドレープとコンチネンタル 2つのペンレスト兼用万年筆ケース

ドレープとコンチネンタル 2つのペンレスト兼用万年筆ケース
ドレープとコンチネンタル 2つのペンレスト兼用万年筆ケース

これが当店のオリジナルのペンケースだと胸を張って言えるものが、ペンレスト兼用万年筆ケースです。
良質な革を使って、丁寧で上手なカンダミサコさんが縫製しているので、フタを閉じたり、開いたりの動作を続けて3年以上使っている私たちのこのペンケースはどこもほつれてこないし、コバはがれてくることもありません。

フタを閉じれば安心してペンを持ち運ぶことができるし、フタをペンの枕のようにして開いて机の上に置いておくと、ペンをすぐに取り出すことができる。
使用中のペンの仮置き場にもなって、万年筆を使う人の実際の使い方に合っていて、デザインもさりげない。
このペンケースはとても当店らしいもので、万年筆を使う人全てにこのペンケースを使いやすさをお伝えしたい。
素材であるシュランケンカーフは色数が豊富で、作り始めて3年が経つけれど、いろんな色でこのペンケースを作りたいと思っています。

そして当店の女性に向けた商品を提案するブランド“ドレープ”として使いたかったのが、エッグシェルです。
エッグシェルは、女性の持ち物らしい煌びやかさと柔らかさを感じさせるシュランケンカーフの色のひとつで、きっと素晴らしいものができるだろうと思っていました。
しかし、限定品的な革でカンダさんでもなかなか手に入れることができず、ずっと待っていました。
1年がかりでやっとカンダさんのところにエッグシェルが入荷し出来上がりました。
さりげないペンケースと先述したけれど、エッグシェルのペンレスト兼用万年筆ケースは、ゴージャスという言葉が合うような、光り輝く存在のものになりました。
昨年辺りから当店に女性のお客様が来られることが多くなって、女性の方にも使っていただけるものを提案するという取り組みが“ドレープ”です。

6月からスタートした、当店スタッフの久保が女性の目線で万年筆などについて書いている⇒ドレープのブログを中心として、今後も万年筆が好きな女性のために、万年筆が好きな女性を増やすために、活動していきたいと思っています。

もうひとつ、オリジナルシステム手帳と同じ革、ダグラスを使ったコンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケースです。

以前からこういうものを作ってみたかったと思っていました。
今までシュランケンカーフだけで作っていたので、違う革で作るとかなり印象が変わり、かなり男っぽいものに仕上がっています。
私は3か月程前から使っていますが、艶が出始めて、思った通りのエージングを見せてくれています。

ベラゴの牛尾さんにシステム手帳を作ってもらった時、揃いの革でペンケースも作りたいと思っていました。
それは牛尾さんがシステム手帳用に仕入れた革の一部をカンダさんに渡してもらうことで実現しました。牛尾さんとカンダさんは何か全くタイプが違うけれど、交流があって、お互い認め合っている。
そんな職人さん同士の繋がりがあって完成したと思っています。

エッグシェルのものも、コンチネンタルのものも、比較的太軸の万年筆も収めることができて、モンブラン149も収納することができますので、大半の万年筆を収納することができます。

このペンケースを日本中、世界中の万年筆を使う人が使ってくれて、そこにさりげなく当店のロゴが入っている。そうなると面白いと半ば本気で思ったりしています。

⇒コンチネンタル ペンレスト兼用万年筆ケース
⇒エッグシェル追加!ペンレスト兼用万年筆ケース

オリジナル銘木軸 こしらえ

オリジナル銘木軸 こしらえ
オリジナル銘木軸 こしらえ

工房楔のイベントを9月20日(土)~23日(火祝)開催いたします。
たくさんの木製品を囲んで、永田篤史氏と語り合う楽しい時間になると思います。ぜひ遊びに来てください。

工房楔の商品は、他店で取り扱いのあるものもありますが、当店にしかないものもあり、そのひとつが万年筆用ボディの「こしらえ」です。
パイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912の首軸/ペン先ユニットをそのまま使うことができる銘木製のボディですが、万年筆を使う人の気持ちを汲んだ商品だと思っています。

国産の万年筆は世界の中でも最も品質が良いと常々思っています。
細字はきちんと細かい文字を書くことができるし、中細字以上になると書き味もとても良くなります。ペン先のバリエーションも多く、使う人は自分の用途にピッタリと合ったペン先を選ぶことができます。

この国産の万年筆が、私には白鞘の名刀に見えます。
名刀にはそれに見合ったこしらえ(外装)が必要で、それが万年筆用銘木ボディ こしらえ です。
こしらえは、ぺン先を付け替えることができますので、使っているうちに用途が変わってしまっても違うペン先に付け替えればいいし、使い馴らして良い艶が出た銘木のボディをそのまま使うことができます。
使い込んで良い書き味になったペン先をボディだけ交換して、グレードアップさせることもできる。

育てながら使うことができるボディをより長く、様々な用途で使うことができたり、書き馴染ませた手放すことができないペン先をボディを代えて使うことができる。
日本のメーカーは、自社の素晴らしいペン先の技術に見合ったボディを大量生産という壁の前に付けられずにいると、私は勝手に思っています。

それもメーカーの良心なのかもしれないけれど、ならば少量生産でしか実現し得ないボディを用意しようというのが、こしらえの企画なのです。
イベントではこしらえも多数用意しています。

もちろんその後、ホームページにも掲載いたします。

⇒Pen and message.オリジナル商品一覧gid=2127777″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナル商品一覧gid=2127777″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナル商品一覧gid=2127777″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナル商品一覧

私の雑記ノート ~大和出版印刷 iiro~

私の雑記ノート ~大和出版印刷 iiro~
私の雑記ノート ~大和出版印刷 iiro~

出掛けた時に他所の文具店を見て回ることがあります。否、私の場合は文具店を見て回るために出掛けます。

文具店を見て回るのが私の外出の主な理由で、そこで過ごす時間が他のどの店で過ごす時間よりも長いというのは、当店のお客様ならお分かりいただけるかもしれません。
出掛けた先で大和出版印刷の商品をよく見かけるようになりました。
先日までの夏季休暇中に行った東京のお店でも、それらは一番良い場所に陳列されていました。
やはり紙製品はなるべくたくさんのお店で扱っていただいた方がいいし、たくさんのお客様の目に触れて、多く売れた方がいいに決まっている。

どこに持って行っても恥ずかしくない質の良いものを作り、それを扱ってもらえるように営業努力した大和出版印刷の本気が、武部社長の気合いの入った物言いと共に思い出され、自分の仕事についても何か焦りのような、襟を正し直したい気持ちになりました。

大和出版印刷の商品の中で一番身近な紙製品は「iiro(イーロ)」で、個人的にはもう何冊使ったか分からなくなっています。
冊数を使う理由は、いつも身近に置いておいて、鞄に入れている何でも帳に使っているからです。
ブログや原稿の下書き、暗算、論理的に物を考えたい時や、頭の中で決まっていない情報など、とりあえず何でも書いておく雑記帳の役割をiiroには与えているのです。
iiroを様々なシーンで使うことがある雑記用に使っているのには、大和出版印刷の商品をを特別扱いしているという訳ではなく、様々な正当な理由があります。
iiroのサイズは新書サイズで、私が片手で開いて持って立ったまま書くのに最も適したサイズです。
私の筆記のほとんどは立ったままの姿勢、バスを待つ時間、通勤電車の中などでしているので、片手で持ちやすいというのはとても大切なことなのです。

もうひとつはその紙質です。
iiroの紙の書き味やインクの収まりをとても気に入っています。
書き味が自然で、インクも裏に抜けずに、でも適度に伸びてくれて気持ち良く書くことができる。
実は、iiroの最大の特長であるきれいな表紙を私は黒い紙カバーをして使っていて、もったいないことをしていることは分かっているけれど、それは私の普段の服装や持ち物と合わない感じがするからで、罫線だけで色を楽しむようにしています。

それにしてもこれだけ色数豊富な罫線のカラーバリエーションを持っているノートが他にあるだろうかと思います。
罫線の色は書いている時にいつも目に入るものなので、表紙以上に真剣に考えなくてはならない、筆記環境に影響を及ぼすものだと思います。
だからぜひ、たくさんの色数から自分の筆が一番進むと思える色を選んで欲しいと思います。逆に、使っているインクの色から合うと感じる罫線の色を選ぶのもいいと思います。

ちなみに私はインクの色にほぼこだわりがなく、万年筆との相性が良く、気持ち良く書くことができれば何色でもいいのですが、それと同じようにiiroの色もほぼ気分で選んでいます。
すでにオータムコレクションが発売されています。ぜひお試しください。

コンチネンタルシステム手帳とギロシェ・シスレー

コンチネンタルシステム手帳とギロシェ・シスレー
コンチネンタルシステム手帳とギロシェ・シスレー

美術館などに樂焼の茶碗を観に行くことがよくあります。
どれも観ていて楽しいけれど、黒樂の茶碗を観るのが一番好きです。

作り込み過ぎていないような、もしかしたら作り込んで、作り込んで、これ以上できないくらい手をかけているのかもしれないけれど、手をかけていないように見せるために最大限の努力がはらわれているところに、美学を感じます。
土の状態や、その前の石の状態が連想できるような素材感がのこされた素材感を持っているけれど、粗野であるとか、原始的だと思わせない。
静謐さという言葉は、この黒樂茶碗のためにあると思うほど、佇む姿に存在感があります。
まさか茶碗は作らないけれど、こういうものを作りたいと思いました。

唯一無二の個性を持っていながら、奇をてらわない意匠と色彩ではない、素材をイメージできる色を持っているものを。
そんなふうに思って、ベラゴの牛尾さんの感性と腕を借りて出来上がったのが、コンチネンタルのシステム手帳でした。
それからずっとコンチネンタルにどんなものを組み合わせたらいいかということを考えていました。
ただ、見た感じが良いとか、色が同じというだけでなく、機能も伴っているもの。
いろいろ模索しているうちにコンチネンタルに合った万年筆が見つかりました。
ファーバーカステルギロシェシスレーです。
私はファーバーカステルのペンを盲目的に信じているところがあって、それはデザインが好きだということになりますが、ギロシェシスレーは手帳用の万年筆としての資質を多く備えていて、きっとそのように企画されたものなのだと思っています。
ボディは細めで、コンチネンタルのペンホルダーに充分収めることができますし、ファーバーカステルのクリップにはスプリングが仕込まれているので、スムーズにペンを収めることができる上に、クリップをペンホルダーに挟んでも、ペンホルダーを傷つけにくい。
パッチンと閉める勘合式のキャップは、書いてはキャップを閉じるというアクションを繰り返す手帳の用途にとって有利に作用してくれます。
機能的にギロシェシスレーが手帳用の万年筆としていかに合っているかを挙げましたが、でも本当は、ボディカラー、素材感がピッタリで、ギロシェシスレー取り上げたことを言い添えておかないといけません。


オマスアルテイタリアーナ~良さを伝えたい~

オマスアルテイタリアーナ~良さを伝えたい~
オマスアルテイタリアーナ~良さを伝えたい~

「文集雑記から」の作文を募集していて、もちろん私も参加するつもりで、どの万年筆について書くか考えています。
既に高い評価を得ているようなものよりも、あまり人が使っていないようなものの良さを伝えたいと思っているので、本当によく使っているオマスについて書こうかと思い始めています。

そんなことを言うと夢もロマンもないと思われるかもしれませんが、万年筆はちゃんと調整されていて、正しい書き方をしていれば、どの万年筆も書きやすいに決まっています。
書き味が良くない万年筆があったとしたら、そのモデル全てが書きにくいのではなく、その個体が書きにくいだけで、書き味だけで万年筆を選んで欲しくない。
その万年筆の存在に共感するかということを選択の条件にしてもらいたいと思っています。
本社を訪ねたということもあるのかもしれないけれど、モンブランをライバルだと思っているオマスの万年筆に大いに共感しています。
横綱に戦いを挑んでいるように映るかもしれないけれど、そういう心を持っているところがとても好きだと思える。
反骨心というのは、私を支えてきた気概のようなもので、いつも自分よりも大きなもの、力の強い者、有名なものに対してどう戦うかを思ってきたような気がします。
ひがみではなく、それはある意味で恵まれていたと思うけれど、ずっと挑戦者としてどう立ち回るべきか考える癖がついていて、メジャーでないメーカーの万年筆を支持したくなるのです。

私の理想ですが、万年筆には思想のようなものを反映しているもの、精神性を表しているものを選んで欲しいと思っています。
万年筆の書き味や一般的な評価や宣伝ではなく、それぞれのメーカーが目指している方向性を万年筆を選ぶポイントにしてもいいと思います。

オマスは誰もが使いやすいと言うペリカンとは少し違っていて、ほんの少し使い手に一工夫というか、歩み寄る努力を求めます。
例えばインクに関して、夏はあまり気にしなくてもいいですが、冬はインク出が多くなったり、ボタ落ちしやすくなる。オマスの万年筆もインク出が多くなりますので、出が少なくなるインクを使う方がいいというコツのようなものがあります。
オマスの純正インクを試して、それでも出が多かったら、ペリカンブルーブラック、当店オリジナルインクCigarなどを私は冬に使っていますので、参考にして下さい。

最もオマスらしい万年筆は、12角形のアルテイタリアーナのシリーズで、標準サイズのミロードとオーバーサイズのパラゴンがあります。
私が持っている万年筆の中でミロードを書きやすいと言う人が多いのは、この万年筆の良さを物語っていると思います。
ミロードはボディの色によって書き味が違い、それは何かオマスの仕掛けたいたずらなのではないかと思えます。
ゴールドフィニッシュ(黒ボディ)のミロードを私は自然体の万年筆だと思っています。
強い個性を主張するわけではなく、どこにも気負ったところがない。でも使っていてなぜか心地良い。
それに対して、ローズゴールドフィニッシュ(マルーンボディ)はネットリとした味わいの濃い万年筆です。
現代の万年筆としてはとても柔らかいペン先となぜかローズゴールドのみエボナイトのペン芯。
この濃厚な味わいは、忘れられない強い個性を持っているのです。

パラゴンは手に余るくらいのボディサイズと重量で、手応えを大いに感じます。
ミロードのちょうど良さとは全く違う、この万年筆を扱って書くことでアドレナリンが分泌されるような気持の高まりを覚えます。
書き味は弾力があって、安心感がありながら、味わいもある絶妙なバランスの上に成り立っています。
使えることが嬉しくなる、単純に書くことが嬉しくなるのがパラゴンだと思って、いつも使っています。

オマスの万年筆が見せたい世界観を感じたら、きっと他の万年筆では代用できないのだと思うほどの主張があって、もっとたくさんの人に使ってもらいたい万年筆のひとつがオマスなのです。


本気の方眼ノート ~大和出版印刷 recto~

本気の方眼ノート ~大和出版印刷 recto~
本気の方眼ノート ~大和出版印刷 recto~

先にお断りしておきますが、今回のrectoの話題は火曜日(8/12)に更新しました“ドレープ”のブログと重なってしまいました。内容についてはそれぞれが選んでいるためですが、ドレープとは少し内容の切り口が違いますので、お付き合いください。

今夏の大和出版印刷の新製品でご紹介が遅くなりましたが(ホームページには既に掲載しています)、ぜひ私の言葉でお伝えしたいと思っていました。
実は今回の大和出版印刷の新製品の中で、私が個人的に一番気に入っているものが方眼罫ノート recto(レクト)だと言うと、書き味の良さとインク乗り性能の高さが話題になっているグラフィーロ人気に水を差すだろうか。

もちろんグラフィーロのシリーズは消耗品として扱われる紙製品としては存在感があり、フィーリングをとことん追究した、最も今日の筆記用紙に求められている理想を具現化したものです。

対して「あったらおもろいから作った」と武部社長が言う、1㎜から8㎜までの方眼罫が揃う(A5サイズ)ノートメーカーは日本でも大和出版印刷だけだと思いますし、もしかしたら世界唯一なのではないかと思っています。

表紙にはこだわりが感じられるしっかりした紙質のiiro(イーロ)と同じ紙が使われていて、その丈夫さは折紙つきです。デザインはシンプルですが、特徴的なものになっています。
ここ数年の大和出版印刷の紙製品は、「神戸派計画」というブランドのもとに統一感を持たせて作られています。
神戸派計画のデザインを担当しているのが、デザイナーの菅原仁氏で、菅原氏によってキレのある、でもひとつ花を添えたようなデザインが特徴になっています。

そのRectoのラインナップに正方形ノートがあることがとても嬉しく思います。
これは当店と分度器ドットコム・大和出版印刷の3社が共同で企画したオリジナルダイアリーと同サイズであり、ル・ボナーがジャストサイズの革カバーを作っていることで、すべてを組み合わせて使うことができるからです。

正方形サイズでは、既に方眼罫と横罫をリスシオ・ワンで発売していますが、厚手の糸がかり製本のしっかりしたものでした。
Rectoの正方形ノートは薄手のため、何でも書き込むサブノートとして使うことができますし、項目別に使い分けて必要な時だけ持ち出すノートとしても使うことができます。
どのサイズも、中紙はインク伸びがいい、万年筆で書きやすい紙が既成の印刷用紙の中から選ばれていて、グラフィーロほどではないにしても、充分な書き味の良さも備えています。
A5サイズは1㎜~8㎜方眼。B5サイズと正方形サイズは3㎜~6㎜という16種類のバリエーションを前にすると、どれを使おうか、と迷ってしまいます。
私は普段文章を書く時は横罫にこだわっているけれど、商品の図面を引いたり、考えをまとめたりするのは、方眼罫を使います。
その方が少しでも頭がクリエイティブに働くような気がして、内容によって直感的に方眼罫を選んでいるのかもしれない。

普段目にしないピッチの方眼罫から、自分が探しているものが見つかるかもしれない。

*画面中央は店主私物です(4mm方眼を使用)

⇒recto square(レクト・スクエア)
⇒スタッフKブログ「DRAPE・正方形ノート!」8月12日コラム

3種のペン先調整

3種のペン先調整
3種のペン先調整

当店が万年筆の店としてやってくることができたのはペン先調整の技術があるからで、その私のキャリアも15年ほどになります。
ペン先調整に資格とか、検定のようなものがないので、経験年数とペン先調整を有料で7年間やってきたという実績しか、その信頼性を表現するものがありません。
ペン先調整は技術的にはそれほど難しいことをしているわけではなく、自分が覚えているペン先の正しい形をルーペの中のペンポイントに再現する目の技術だということを、ことあるごとに申し上げてきましたが、目の技術であるとともに、お客様のご要望を聞いて、その人が理想だと思うペン先を実現しようとするカウンセリングだとも思います。
いくらきれいでかっこいいペンポイントを作ることができても、それが書く人に合っていなくて、書きやすいと思ってもらえなければ何の意味もない。
そんなふうに思って、いつも万年筆のペン先調整をしています。

当店のホームページの調整の説明では分りにくいかもしれないと思っていましたので、説明させていただきます。

当店のホームページには3種類のペン先調整の種類があります。
標準調整、おまかせ調整、オーダー調整で、標準調整はペンポイントをなるべく削らずに、ペン先を紙に置くだけでインクが出るようにしています。
紙に置くだけでインクが出るというのが万年筆の醍醐味だと思っていますので、当店の万年筆にはこの状態が標準装備です。
標準調整ではペンポイントに全く当たり(わずかな面)をつけていませんので、使い込むことで、ご自分の書き方に合った面がペンポイントにつきます。ペンポイントに面がつくと劇的に書き味が良くなります。
だいたい毎日普通に使っていくと(ノート半ページくらい)、2年ほどで突然書き味が良くなりますので、楽しみにしながらお使い下さい。

おまかせ調整は私がその万年筆で最も書きやすいと思う筆記角度に合わせて、ペン先をより完全な、標準調整よりもさらに作り込んだ状態にします。
私の指定する筆記角度で、ペン先のひねりがなるべく内容に気を付けて書いていただいたら、始めからヌルヌルと気持ち良く書くことができるようにするものがおまかせ調整です。

オーダー調整は、その方の書き癖に合わせてその万年筆をより書きやすくするというもので、その書き癖に合わせて、ペンポイントに当たりをつけます。

この3つの調整の種類は、店でのお客様とのやり取りをインターネットで再現するためにはどうしたらいいだろう、と考えたものでした。
店での対面の調整では、お客様の様子などを感じながら、この方ならどういうふうにしたら一番嬉しいと思うかを考えながらペン先の調整をしていますので、なるべく同じ条件にしたいと思いました。

ある人は標準調整の状態でとどめて欲しいと思っているし、ある人は完璧に仕上げてもらいたいと思っている。
インターネットのご注文でも、遠く離れた状態でも、より理想に近い万年筆をお届けしたいと思っています。
店で販売したものでも、インターネットで販売したものでも、1万円以上の万年筆には、1年以内は再調整無料を保証するカードをお付けしています。
これは使われる方の理想の万年筆を実現したいという想いを形にしたもので、遠くの方もお送りいただければ、往復の送料はお客様持ちになりますが、再調整を承っています。

当店で販売した万年筆が、お客様がお持ちの万年筆の中で最も手に合っていて、書きやすいものであって欲しいと思います。

大和出版印刷の新製品

大和出版印刷の新製品
大和出版印刷の新製品

当店が創業したのとほぼ同時期に、ル・ボナーさんはブッテーロの万年筆用ペンケースを、大和出版印刷さんは万年筆で快感の書き味を持った紙 バガス紙を使った上製本ノートを発売しました。

それまで万年筆とは無縁だった両社が発売したオーバークオリティとも思える良品を、他店で販売していないこともあり、オリジナル商品のように販売することができました。
できたばかりの店にとって、上質なオリジナル商品の存在は願ってもなかなか得られるものではなく、両社の存在に感謝していました。

あの時、ル・ボナーさんと大和出版印刷さんの存在がなければ、当店は特長のない万年筆店で、続いていくことができたかどうかも怪しい。
当時、ル・ボナーの松本さんと大和出版印刷の武部社長が万年筆が好きになって、それがエスカレートして万年筆に関連する自社製品の開発に乗り出したのだと思っていました。

でも最近は、新しく万年筆店を始めた友人を応援するために、その店の助けとなる商品を開発してくれたのかもしれないと思っています。
製品を作って、それぞれのやり方で、松本さんは自身のブログや店での告知、武部社長はマスコミを使っての大々的な告知をして、販売を当店に任せてくれた。
そんな押し付けでない、相手を尊重した手助けの仕方に気付いたのが、付き合いが始まって7年も経った時でした。

文具業界の祭典、東京ビッグサイトで開催されたISOTに出品して、大きな反響があった大和出版印刷のノートなどの新製品が発売になりました。
たくさんの新製品の中でも、大和出版印刷が開発した万年筆用紙“グラフィーロ”に注目してみました。
グラフィーロは大和出版印刷のステーショナリーの世界での地位をさらに強固にするために充分な存在だと思っています。
ちょうど5年前に大和出版印刷は万年筆で書いてもにじまず、最上の書き味を得られる紙を目指した紙リスシオ・ワンを使用した紙製品を発売しました。

大量なロットを抱えることになる紙を作るということは大変なことで、相当な勇気と覚悟が必要なことだと当時思いました。
それでもそんな心配は必要なく、リスシオ・ワンの書き味はどの紙よりも味わい深いものでした。
ファンもが少しずつ増えて、リスシオ・ワンと大和出版印刷の名前は文具の世界でも浸透していきました。
使い切るのに長い年月がかかると思われていたリスシオ・ワンも気がつけば残りわずかになり、予想よりも早く新たな万年筆用紙を開発しなければならなくなりました。

第2弾の万年筆用紙は、当然リスシオ・ワンを超えるものでなければならないという強いプレッシャーと、追われる時間の中で、新しい紙「グラフィーロ」は完成しました。
途中でその複雑な要求に応えられないと製紙会社がギブアップし、違う会社を探さなければならなくなるというハプニングもありながら、プロジェクトの中心人物だった大和出版印刷の武部社長と川崎さんは製紙会社に粘り強くその要求を伝え、多くの試作品を作りました。

リスシオ・ワンは最高の書き味を持った紙だけど、にじみ、裏抜けの性能がやや甘いということで、リスシオ・ワン並みあるいはそれ以上の書き味を持ちながら、筆記線がシャープで、万年筆のインクでも裏抜けしない紙を目指していました。
厳しい武部社長がやっと満足のいく仕上がりになって、グラフィーロが完成したのは、プロジェクトを立ち上げて2年が経過していました。
しっかりとした紙質の、快感とも言える書き味を持ったグラフィーロは、A5サイズのノート(8㎜横罫、4㎜方眼罫、無地)、便箋、ブロックメモに使われています。

もちろん今までも本気だったけれど、大和出版印刷はさらに本気で文具の世界に生きる決意を表明したのが、グラフィーロであり、今回の多くの新製品だと私は思っています。

⇒グラフィーロ商品一覧(万年筆に適した紙製品・ノートメモ)cbid=2557537⇒グラフィーロ商品一覧(万年筆に適した紙製品・ノートメモ)csid=4″ target=”_blank”>⇒グラフィーロ商品一覧(万年筆に適した紙製品・ノートメモ)