信じられるブランド~AURORA

信じられるブランド~AURORA
信じられるブランド~AURORA

先日参加したカランダッシュのセミナーで、首都圏での筆記具ブランド売れ行きランキングというのを聞きました。
上位を占めるのはモンブラン、パーカー、ウォーターマン、ペリカン、カランダッシュなどで、それは10年、あるいはそれ以上前から変わっていないと思いました。
私は店に来られる業界の関係者の方に売れ筋を聞かれた時には、いつもペリカンとアウロラと言っています。
関西と首都圏のお店とはかなり様相が違っているし、当店がボールペンではなく万年筆を中心に品揃えしていることも大きく影響していますし、私自身の好みもあると思います。
その中で、ペリカンが売れるということには多くの方が納得されるけれど、アウロラが売れていると言うと不思議そうな顔をする人が結構おられて、それも10年ほど前と変わっていません。
お客様方にペリカンM400、M800などの超定番の万年筆を勧める時に「この万年筆はよく売れています」という言葉はあまり使いません。
なぜかというと、私は「売れている」と言われると引いてしまうのです。それは私が天邪鬼だからなのかもしれないけれど。

世界では売れ筋ランキングに入っていないけれど、自分だけの正解のようなものに出会えると、とても得したような嬉しい気分になります。
それが私にとってはアウロラだったというと、アウロラの関係者の方々に売れていないみたいだと怒られるだろうか。

万年筆をある程度持っている、特に男性からアウロラのペン先は硬いと敬遠されることがありますが、良いペン先は、使い始めるとその筆記によって劇的に書きやすく変化するものだと思っています。
スタートは同じでも、2年後の劇的な変化はアウロラの特徴とも言える。
アウロラの魅力はペン先に偏っているわけではなく、ボディのデザインにも言えます。
アウロラの美学を最も体現している代表作オプティマはもちろん、私が今も最も好きな万年筆だと思っている88クラシックにもその美学が宿っています。

美学というのは派手で大袈裟に喧伝するものではなく、静かに表現するものだと思うので、それに気付くとその魅力により一層魅せられる。
全く変わっていないように見えて、この15年ほどで万年筆は大きく変わったと思っています。
どのメーカーも時代の流れに乗ったり、惑わされたりして、それぞれの会社の有り方だけでなく、仕様やデザインも大きく変わりましたが、アウロラだけは大して変わることなく今に至っています。
私がアウロラを好むのはそういう時代に流されないということもあるのかもしれません。
たくさんの本があるのに、書店でいつも買ってしまい、一言一言に影響を受ける作家の本に似ていて、私はアウロラを信じているのだと思います。
信じているから売上ランキングに入っていなくてもお客様に勧めることができるし、自分でもいつも使っていたいと思っている。
でもこの信じられるということが、たくさんの情報が飛び交い、たくさんのモノが溢れている世界の中で自分が肩入れするものを見極める基準のひとつにしてもいいのではないかと思います。

長原宣義先生の訃報

長原宣義先生の訃報
長原宣義先生の訃報

セーラー万年筆の黄金時代の主役だった万年筆の神様長原宣義先生が亡くなったというニュースを旅先の香川県で聞きました。

長原先生は私がこの仕事をするきっかけになった人で、衝撃を受けるとともに、それだけの歳月が流れていて、自分たちの世代が万年筆の業界を背負っていかなければならなくなっていたのだと改めて思いました。
長原先生の万年筆クリニックでの姿を見て、人生の宝物を見つけたのは20年前でした。
お客様が持参された万年筆を受け取り、「これは書きにくかったでしょう」と優しく声を掛け、調整を始める。
少しグラインダーでペン先を研磨して、万年筆を「書いてみんしゃい」と返すと、どのお客様も別物のように書きやすくなったご自分の万年筆に驚かれ、とても感謝されて帰って行かれました。
ペン先調整の腕が良いのはもちろん、お客様とのやり取りは思いやりに溢れていて、その時の長原先生を見ることができたから、私は今こうして万年筆の仕事をしている。
竹軸の万年筆を作ってもらうために、呉の工場内にある先生の工房によくお邪魔していました。
まだ紐で束ねてある長いままの煤竹の中から、万年筆にしてもらうものを選ばせてもらい、この素材はこのペン先で作って下さいとひとつひとつ指定させてもらっていました。
「あんたが黒い竹、黒い竹と言うから、皆が黒い竹と言うようになってしまった」と笑いながら言われたことを覚えています。

当時、黒くて艶やかな煤竹が一番良いと思っていて、そればかりを使うように先生にお願いしていましたが、我ながら生意気だったと恥ずかしく思います。
私のような青二才の言うことに付き合ってくれて、間違っていることは正してくれて、多くのことを教わりました。

万年筆クリニックやお客様との交流から、常に新しい万年筆を生み出す姿勢を目の当たりにして、仕事のヒントはいつもお客様から与えられるとをいつも言っておられ、お客様の言われること、言われなくても思っておられることにアンテナを張っておくことが大切だと知りました。
それは先生から教わったことの中でも一番大切な、今も持ち続けている教えのひとつです。

ペン先調整は長原先生から直接レクチャーされたわけではありませんでしたが、かなりの時間を横にいて先生のしなやかに動く手元を見つめることが出来たことが今になって生きているし、当時言われていたことが、最近になって理解できたりしています。
グラインダーにペン先を当てながら、長原先生ならどうやるだろうといつも思っているし、書くために必要のない部分も美しく仕上げることが美学だと言われていたことを私も実践していきたいと思っています。

あまりに偉大な先輩、長原宣義先生のご冥福をお祈りいたします。

どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~

どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~
どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~

ペン先調整をする時、持ち主の人が書きやすいようにすることが一番の目標ですが、それと同時にその方がどこに持って行っても恥ずかしくないものにしたいということをいつも考えています。
例えばその万年筆を誰かほかの人に書いてもらった時、こんなに書きやすい万年筆は初めてだと思ってもらえたら、持ち主の方は気分が良いと思います。
またその万年筆をペン先調整ができる人がルーペで見た時に、これは美しい形のペンポイントだと思ってもらえることもいつも意識していて、それが私が調整した万年筆をその人がどこに持って行っても恥ずかしくないということで、そういうことも重要だと思っています。

それと同じようなことが、銘木の製品にも言えると思っています。
銘木のもの、例えば黒柿だとしたら、同じ黒柿と言って様々なグレードのものがあります。
きれいに孔雀杢が出たような文句のつけようがないものもあれば、これを黒柿と言っていいのかと思えるものもあって、それは銘木の造詣の深い人なら一目で分かります。
工房楔の銘木作品はまさにどこに持って行っても恥ずかしくないものだと思っています。
実は私も工房楔の永田さんの作品を扱い出したばかりの頃は、その辺りの目が全く肥えていませんでした。
黒柿は黒柿、花梨は花梨で、その名がついていれば同じだと思っていました。
でもお客様方に工房楔の素材や加工のクオリティの高さを教えられ、自分でもその違いを感じられるようになりました。

木について言葉で伝えるのは本当に難しいけれど、良いもの、グレード高いものは、艶やかで、生命力が感じられる。
工房楔で扱う材はどれも永田氏が厳選した、どこに持って行っても恥ずかしくものが使われています。
永田さんはいつも素材で妥協したら工房楔ではないと言っていて、それがお客様方に周知されている。
年2回を恒例としています工房楔のイベントを3月28日(土)29日(日)に開催いたします。

今回は伊勢神宮杉、島桑などの目玉もありますし、しばらく作ることができなかったペンシルエクステンダーで長い鉛筆のまま使うことができるトゥラフォーロも真鍮金具で製作されています。
パイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912などの首軸を装着できる万年筆用ボディ「こしらえ」もまとめて出来上がります。

ある程度楔作品をお持ちの方はこれだと思うものを逃さず手に入れてもらいたいと思いますが、初めて何か手に入れたいと思っている方は、まず模様がそれぞれ個性的で見所が多い花梨が、永田さんの代表的な材だと思いますので花梨で、ご自分の用途に合うものを選ばれたらいいと思います。
銘木を嗜むという、当店と工房楔の遊びにぜひ参加していただきたいと思っています。

カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内
カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

とてもシンプルな形なのに今までこういうものがありませんでしたし、20色以上ものカラー展開も見たことがありませんでした。
それまでの万年筆用の革のペンケースは、あっても3色くらいのカラーバリエーションで、お決まりの形と大して違わないものばかりでした。

カンダミサコさんのペンシースは革ステーショナリーに革命を起こしたもののひとつだと思っていますし、そのデザインはシンプルだけれど、思いついたことがすごいことで、コロンブスの卵のようなものだと思います。
日頃大切にしているペンを1本だけポケットに忍ばせるためのケース。

いかにもカンダさんらしいコンセプトだと思います。
ペンシースの素材は色数も豊富で、発色も良く、傷にも強い完璧な革シュランケンカーフですが、今回また違う風合いの黒桟革を使って限定製作することになりました。
黒桟革は食肉に使われる和牛の革に漆塗りを施すことで耐久性を上げた純国産の革で独特の風合いがあり、最もカンダミサコさんのイメージからは遠いように思いますが、万年筆を使われるお客様の希望に応えた企画なのだと思います。

今回製作するものは標準、大、特大サイズになります。
標準サイズは、通常のペンシースと同じサイズで、ペリカンM800がピッタリ入り、モンブラン146もスムーズに入ります。
レギュラーサイズの万年筆の多くはこのサイズに入れることができますが、もっと太くて大きなペンを入れたいという声も多かったようです。
大サイズは、デルタドルチェビータミディアム、ペリカンM1000、モンブラン149などが収まります。
特大サイズはかなり限られますが、中屋万年筆シガーロング、セーラー島桑などが入ります。
フラップがついているペンケースも中身を守ってくれるような安心感があっていいですが、どうしてもかさ張ってしまうし、いかにもという感じになってしまう。
ポケットにそのまま万年筆を入れたり、ファスナー式の大きなペンケースに他のものと一緒に入れたいとなど、もっと軽やかに万年筆を使いたいと思った時に、カンダミサコさんのペンシースが一番使いやすいものだと思っています。

*受付期間は2015年3月31日(火)までで、仕上がりは5月を予定しています。


B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

B5サイズへのこだわり~WRITING  LAB.革封筒~
B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

整理していて見つけたと、スタッフKが共に勤めていた文具店での朝礼の様子が写った写真を持ってきました。20数年前のもので、20代の自分たちが写っていました。
髪型や服装にも時の流れを感じさせるものがありましたし、何よりも二人とも若い。他にもあの頃から色々なことが変わりました。
目に見えて変わったことのひとつに、パソコンやインターネットの普及があります。
それは言うまでもなく、私たちの仕事の仕方だけでなく、情報の取り方、生活の仕方を変貌させましたし、もしかしたら私たち人間のインテリジェンスの有り方も変えたのかもしれません。

入社したばかりの頃、私はファイルを担当していました。
毎日びっくりするくらい売れていくファイルをただひたすら補充していました。
ファイルコーナーはB5サイズとA4サイズと同じだけのスペースがありましたが、A4サイズの売れ行きの方が良かったので、パソコンの普及によってプリントアウト文書が増え、仕事で使われる紙のサイズが、A4サイズに変わっていく過渡期にあったのかもしれません。
でもその現象は手書きにはA4サイズではなくB5サイズの方が向いているということを表しているのではないかと思っています。
当店での万年筆を試していただく、当店のロゴが小さく入った試筆紙もB5サイズになっています。
そこそこ書きやすいけれど、それぞれの万年筆の書き味の違いが分かる、過剰な加工を施していないナチュラルな書き味の、コピー用紙よりも少し良いくらいの紙を使っています。

印刷用紙の中には意外と、万年筆の使用に適した紙があるもので、この試筆紙の紙もそんなふうに選んだものです。
試筆紙は当店のオリジナル商品の中でも売れ筋で、お客様方はこれを大きめのメモ帳として使って下さっているようです。
私もちょっと何か考えたいと思った時には試筆紙を引っ張り出してきて、とりとめなく書き出したりしています。

この試筆紙を入れて携帯するためのものとして作っていたWRITING LAB.の革封筒を再び作りました。
一枚の革を接着止めしただけのとてもシンプルなもので、フタもついていませんが、こういうものが一番使いやすいし、意匠として優れていると思っています。
縫い目を無くすことでジャストのサイズを実現しています。
接着という方法なので、実は素材にはとてもこだわっていて、この加工に適していて雰囲気のある革を、革問屋のハシモト産業さんに相談して決まりました。

革封筒には試筆紙だけでなく、原稿用紙入れにもちょうどいいと思います。
たいていバラの状態(満寿屋の場合)の原稿用紙だからこそ、こういうファイルの原型のような封筒が使いやすいと思います。
なるべくシンプルで、手をかけていないような、その素材感が感じられるものを作りたいという想いは、この革封筒にも込めています。


⇒Pen and message.試筆紙

iiro(イーロ)の革カバー

iiro(イーロ)の革カバー
iiro(イーロ)の革カバー

罫線のカラーバリエーション100色を目指す、大和出版印刷の新書サイズノートiiro(イーロ)を愛用しています。

愛用と言うと聞こえはいいけれど、ひたすらメモや原稿の下書きを書き散らし、使い終わると捨てていく雑記帳のような使い方で、かれこれ10冊ほどになります。
罫線の色で紙面の雰囲気は大きく変わりますので、もっと良く書けるようになるのではないかと、様々な色を使ってみています。

iiroはほとんど立った状態で書く時に使っています。
あまり手の大きくない私でも持ったまま書くことができる限界の大きさです。
いつも鞄に入れて、喜んで使っているiiroですが、実は紙のカバーを掛けて使ってきました。
iiroのノートとしての機能はとても気に入っていますが、表紙の白色が私にはきれいすぎて、自分の服装と合わないような気がしていました。
Iiroの薄さは気に入っていましたので、革の新書カバーは使いたくなかった。だから真っ黒の包装紙でカバーをしてずっと使っていました。

それでもこのカバーを革にしたいとはずっと思っていて、いろいろ探していましたが、良いものは見つかりませんでした。
カンダミサコさんが店に納品に来て下さって話していた時に、iiroのカバーの話を切り出してみました。
私は「革カバーがあれば、iiroはもっとたくさんの人が使ってくれると思う」と言って、数冊のiiroをサンプルとしてお渡ししました。
すると数日後、我が意を得た試作品が届けられました。

iiroの革カバーは、厚みを抑え、サイズもiiroからなるべくはみ出さないように、最小限の張り出しに抑えた様々な工夫がされていました。
私はスーツは着ないけれど、スーツの上着の内ポケットにもストレスなく入りました。
構造はiiroに巻きつけるだけのシンプルなものですが、薄く剝いたブッテーロの革はすぐに中身のiiroに沿って馴染んでくれて、ピッタリと合ってきます。
ブッテーロの手入れの仕方は、いくつかの方法がありますが、私の好みは革用ブラシを掛けて、つぶが立ったようなキラキラした銀面に仕上げることです。
これは傷が目立ってきてからしても有効で、傷が目立たなくなります。
商品の完成をこれほど楽しみに待ったものは久しぶりでした。

自分でもぜひ使いたい(もう使っていますが)、そしてこの革カバーを巻いて電車の中などで、万年筆で書くことを流行させるためにiiroをもっと多くの人に使ってもらいたいと思っています。


⇒iiro(万年筆に適した紙製品:ノート・メモTOPへ)

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~
野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

革の好みのタイプを乱暴に2つに分けると、素材感そのままの光を吸収するような抑えた光沢の革を好む人と、クロムなめしで作り込んだ個体差の少ない、整ったエレガントな感じの革を好む人がいると思っています。

それがその人の外見では判断つかない内面を物語っているかどうかはわからないけれど、ワイルドな印象だから素材感溢れる革を好むかというと、そうではないことも多いので面白い。
これは私が勝手に思っている根拠のないことなので、あまり真に受けて欲しくありませんが。

自分の話で恐縮ですが、私はずっと一貫して素材感のある方を好んできました。
野趣という表現が合うほどの、手をかけていない、あるいは手をかけていないように見せているものが好みで、それが表れている商品が2つできあがりましたのでご紹介します。

「コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース」は、当店オリジナルの3本差しペンケースで、もう4年近くも色を変えたりして販売しています。
最もこの形に合っていると思われるシュランケンカーフでずっと作り続けてきましたが、オリジナルコンチネンタルシステム手帳と合わせて使えるようにしたいと思って、システム手帳と同じ革ダグラスで仕立ててもらいました。

カーフでも何でもない成牛の革ですが、革の素材感が出るように工夫が凝らされていた革で、こしらえなど太すぎるペンを無理やり入れて酷使した私のこのペンケースはとても良い味が出ています。
扱いにとても気を使ったり、常に手入れしておかないといけない革はあまり好みではない。たまに気が向いた時にブラシをかけたりした時に艶が出てくれるところが気に入っています。
私が最も理想的だと思っている革は、ライティングラボのメモノートで使っているサマーオイル革で、これは艶やかで生命力に溢れ、手触りも良く、色も完璧な私の理想を見事に表した革だと思っています。

サマーオイルメモノートはしばらく品切れしていたけれど、先月この革の問屋さんである四天王寺のハシモト産業さんを訪ねて仕入れてきましたので、また作ることができました。
底に原厚のままコバ処理した厚みのある革を、表には薄く漉いた革でメモ紙を挟み、靴ヒモで綴じただけのシンプルな仕様ですが、このシンプルさもまた、ライティングラボという山科のインディアンジュエリーショップリバーメールさんとの共同ブランドではあるけれど、私のモノの理想を具現化したものです。
一時期、他に代わる革を探してみたことがあるけれど、やはりこのメモ帳にはサマーオイル革しかないと確信しました。
このシンプルな仕様のメモ帳にたくさんの紙が挟んである安心感と存在感は、なかなか理解されないけれど、道具として機能も気持ちも満たしてくれるものだと思っています。
今回底革と同じサマーオイルを薄く漉いて表紙も作りました。
使っていくうちに自然に艶が出てきますし、傷が気になったらブラシを掛けていただくと目立たなくなるのはブッテーロ革などと同じです。

茶道のお稽古で、季節の良い時に先生がたまに野点風の設えで丹波などの土モノのお道具を合わせたりして、それに共感します。
焼物は京焼などの繊細で薄作りの都会的なものよりも、信楽や備前のような厚みがあって、野趣味のある田舎っぽいものが好みだと気付きました。
ものの好みは結構はっきりと分かれるものだと、今まで仕事してきて痛感しています。
両方の好みの人に好まれる店でありたいとは思っていますが、モノを作る時は思い切って偏った方がいいのではないかと思っています。

アウロラ大陸シリーズ第5弾〝オセアニア“

アウロラ大陸シリーズ第5弾〝オセアニア“
アウロラ大陸シリーズ第5弾〝オセアニア“

待望のアウロアの大陸シリーズ第5弾オセアニアが入荷しました。
ホワイトベージュとワインカラーが複雑に絡まった上品な色合いで、金属パーツはピンクゴールド仕上げになっています。
お客様方の反応を見ていると、感性の鋭い女性方から称賛の声を聞くことが多く、手応えを感じています。
この万年筆から出るインクの色はボルドー系の、例えばエルバンのブルゴーニュレッドなどとてもイメージに合っていて、女性のお客様から共感してもらえるかもしれません。

当店がこれから売っていきたい、お客様方と共感し合いたいシステム手帳の名前を「コンチネンタル(大陸的)」としたのも、アウロラの限定万年筆の大陸シリーズが頭のどこかにあって、憧れがあったのかもしれません。

定番モデルオプティマをベースとしながら、そのペンのために専用のレジンを作り、削り出してボディとし、リングにはそれぞれの大陸を代表するモチーフをあしらう。
突飛なデザインではないし、毎回目新しさを感じさせるものになっているわけではないけれど、アウロラらしい抑えた華やかさを持った、地に足の着いた印象の万年筆をマイペースで作ってきました。

第1弾のアフリカでは砂漠と土の色を、第2弾のエイシアでは大河と大地の色を、第3弾のエウロパは機械をイメージさせるメタリックグレー、第4弾アメリカは星条旗をイメージさせる色をボディカラーに採用して、アウロラの解釈によるそれぞれの大陸を1本のペンで表現してきました。
そこにはアウロラの限定万年筆というのはこういうふうに作るのだとクールに示すような冷静な表現が感じられ、大いに共感していました。
第5弾オセアニアは陽と大地をイメージした色合いのように、私は受け取っています。
その印象はどこかノーブルで、そういったところがアウロラらしいと思っています。
私はオセアニアには行ったことがないけれど、スタッフKはニュージーランドに留学していたし、工房楔の永田さんはオーストラリアに木工留学をしていた。お客様で友人のS等さんはオーストラリアで仕事していたことがあったなど、身近な人たちがオセアニアに縁があって、その思い出話をよく聞いていたので、良い印象を持っている、いつか訪れたい場所になっています。

この万年筆は、大陸シリーズはどんな人が買うのだろうといつも思います。
もちろんそれぞれの大陸に思い入れのある人が、それを使いたい、いつも身につけていたいと思って、使い始めるのかもしれないけれど、気がつけばいつも完売しているという、静かな人気があるのがアウロラの大陸シリーズです。
アウロラは大陸というモチーフで美しい万年筆を作ることができたら、大陸というテーマで万年筆を作ることを楽しんでいるかのように、オセアニは美しい万年筆に仕上がっていると思っています。

たしかに値段は高くなって、この万年筆を使う人はとても限られるけれど、それでもアウロアは万年筆のメーカーの誇りをかけて大陸シリーズを完結させようとしています。

ポーチピッコロの持ち方

ポーチピッコロの持ち方
ポーチピッコロの持ち方

最近その機会が減って寂しいのですが、WRITING LAB.の打ち合わせを活発にしていた時、よく皆で夕食に繰り出していました。

そんな時、財布と携帯電話、メモ帳と万年筆を持って出ていましたが、鞄を持って出るのはあまりにも荷物になるし、ポケットに入れると財布を手で持って行かなくてはならなくなって無防備だし、カッコ悪い。
活動をなるべくフェイスブックに上げたいのでスマホはいるし、食事しながらでも打ち合わせになることがあるのでノートと万年筆は持っていたい。

Iiro(イーロ)のノートは何でも書き殴るメモ帳として使っていますが、新書サイズという大きさや薄さはちょうどいいし、罫線の色も様々なバリエーションがあって、インクの色と合わせたり、季節によって変えたりすることができます。
そんな会食の道具を収めるのに、ル・ボナーポーチピッコロはとても便利でした。
私のラウンド型の大きな長財布とスマホ、SOLOのペンケースに入れた万年筆とiiroのノートがピッタリと入ります。
冬はコートを着ているので、ル・ボナーのパパスショルダーを斜め掛けにしていますが、ジャケットで出掛ける時に斜め掛けはしたくない。休みの日などポーチピッコロだけ持って出掛けることもあります。休日なので、会食の時と同じ持ち物で用が足ります。

このポーチピッコロをどうやって持つかが、これだけを持って出掛ける時の最大のポイントだと思っています。
昔流行った、誰もが持っていたセカンドバッグは小脇に抱えるようにして持っていたけれど、そうやって持つのは時代遅れだし、そうするにはポーチピッコロは小さい。
ハンドルを持って提げて歩くのも女性だと気にならないけれど、自分には何か違うと思っていて、私が行き着いたのはハンドル部分を上にして、そこに人差し指から小指を通して、上からつかむようにする持ち方でした。
少し無造作な感じがするけれど、この持ち方が一番小さな鞄(?)らしいと思いました。
ル・ボナーの松本さんはヨーロッパ旅行の時、さすが製作者だけあってとてもおしゃれにさりげなく、パパスショルダーと組み合わせて持っていました。

持ち方がポイント・・・と言っている私はまだまだポーチピッコロを使いこなせていないけれど、今の気分に合った、でも実際の使用において必要を満たしながら最小限のサイズにしてある、とても考えられた鞄(?)であると思っています。

⇒ル・ボナー ポーチ・ピッコロ

信頼の定番万年筆 ペリカンM805 そして新製品の発売予定

信頼の定番万年筆 ペリカンM805 そして新製品の発売予定
信頼の定番万年筆 ペリカンM805 そして新製品の発売予定

何か新しくモノについて知ろうと思ったり、使い始めようと思った時、その世界の定番中の定番から入ってみることが一番良い取り組み方なのではないかと思っています。
それは自分の直感や感性に自信がないから思うのかもしれませんが、長く使われてきたもの、多くの人が使ってきたものには、やはりどこか良いところがある。そういうものが定番と呼ばれ、面白味は少ないかもしれないけれど、そのモノに求められる機能は十二分に果たすし、飽きが来ない。使いこむことで得られる喜びも併せ持っているもの。
それが定番品だと思っています。

万年筆において定番品と言うと、ペリカンスーベレーンM800です。
万年筆を日常的に使い始めたばかりの頃にそう教えられて、そう信じてきましたが、この仕事をしてきて、それは正しかったと思っています。

自分で初めて買った万年筆がM800でした。万年筆のお手本と言われるものを最初に手に入れたことで、その後の私の人生が変わったのかもしれないと、今では思っています。
万年筆を使い慣れていない手にはM800は長く、重く感じられました。
なるべくキャップを尻軸に差して使いたいと思ってけれど、最初の数年間はキャップをつけずにしか書けなかった。
その後に購入したアウロラオプティマの方がM800より遥かに使いやすいと思いました。
実はM800のキャップをつけた重さに手を任せて書くようにすれば、無駄な力を入れずに書くことができる。それに気付けば万年筆使いとして一人前だと思いますが、私はそう使えるようになるまで5、6年かかりました。
でもそのペンの重さに任せて字を書く感覚を覚えたら、M800ほど書きやすい万年筆はないかも知れません。

そうなると、あれほど大きいと思っていたボディが実は大きくも何ともなかった、むしろ普通だったと思うようになれるものです。
書くことにおいて、こんなに自然な使い心地の万年筆はないと思えるようになるのがM800で、オマスパラゴンやM1000のような、書いていて楽しいと思える手応えのようなものはないけれど、手応えを求めるのはまた違う次元の話のような気がします。

ペリカンの万年筆は私たちのイメージでは緑縞が代表的なイメージですが、この縞模様自体他のメーカーにない特徴的な意匠だと思います。
ペリカンのホームページによると、ストライプの入ったスーツを好んで着た英雄、1923年には首相も務め、その後外相として活躍し、1926年にはノーベル平和賞も共同受賞したグスタフ・シュトレーゼマンから由来して、ペリカンのストライプ模様の万年筆を本国ではシュトレーゼマンと呼ぶ人もいるとのこと。

このたび(2月予定)、スーベレーンM800のシルバーの金具仕様のM805に黒の縞模様、ブラックストライプが発売されることになり、その万年筆はM805シュトレーゼマンという名前を冠しています。
定番品M800の新たなバリエーションと言うことで、かなりの人気が予想されます。シャープで抑えた印象の黒縞にシルバーの金具のM805、この万年筆らしい色づかいのものなのかもしれません。

※ご注文いただいた方には2月以降の入荷次第順次お渡しするつもりでおりますが、遅れも予想されます。ご了承下さい。

⇒M805 ブラックストライプ(予約受付中)