WRITING LAB.オリジナルノートとB6ダイアリー・ノートカバー

WRITING LAB.オリジナルノートとB6ダイアリー・ノートカバー
WRITING LAB.オリジナルノートとB6ダイアリー・ノートカバー

WRITING LAB.のノート&ダイアリーのサイズをB6に定めました。

手帳サイズでは小さすぎるし、A5サイズでは大きすぎる。
手に持った時のバランスで、B6サイズほどかっこいいサイズはないとファッション的な理由からB6サイズをブランドのサイズとしましたが、その決定の仕方はWRITING LAB.的だと思い満足しています。

持っているところがかっこよく見えるサイズだと思うと、何よりも魅力的に感じられる、自分の中の二重人格に気付きました。
でも万年筆で書く時、手帳では小さすぎると思った人にはぜひ目を向けて欲しいサイズがB6サイズです。

以前はそれほど定番ではなく特殊なサイズでしたが、最近はB6サイズのノート・ダイアリーは多くの種類が発売されていて、どのお店のダイアリー売場でも大きなスペースをとって、B6サイズを揃えています。
当店ではB6サイズのダイアリーとして、ユナイテッドビーズというメーカーのものを多くの中から厳選してご提案させていただいています。
シンプルさと書きたいと思わせる雰囲気が適度なバランスで融合しているとても工夫されている罫線レイアウトだと思っています。

9月20日のこのコーナーでもご案内していますが、WRITING LAB.で企画して、神戸の革職人ベラゴの牛尾龍氏が製作したB6サイズの本革カバー新たに発売していますが、そのカバーでは市販されているノート・ダイアリーをメインでお使いいただき、そのサブノートとしてWRITING LAB.オリジナルノートを使っていただきたいと思いました。

サブノートとして、メインのノートと一緒に差し込むことができるように、表紙を1cm幅狭くしています。
かなり薄手のノートですが、このノートの使い方についてもWRITING LAB.としてのこだわりがあります。
ノートの使い方について小学校で教えられたことが私は最高の教えだといまだに思っています。
それは教科ごとにノートを使い分けるというもので、そうすることによって最適な罫線のノートをそれぞれの科目で使うことができるし、その科目がない時は学校に持っていく必要はないので、荷物を軽くすることができます。
それに書いた内容がどこに書いたのか分からなくなる、書いたもの散逸を防ぐ役割もあります。
このノートは、この小学校の時のノートの使い方を仕事においても生かしたいと思いました。

本文は私たちが入念に試書きして決定したOKプリンス、表紙は独特風合いを持ったファーストビンテージを使用していて、これらの紙にたどり着くことができたのは、豊富な紙の知識を持つ大和出版印刷の川崎さんの協力に依るものでした。

このノートからライティングラボのマークを新しくしていて、後ろ表紙中央にライティングラボのブログに登場するキャラクターであるトロンコとボンクがいます。
表表紙のフレームは地図上で鉄道の路線を表す線をイメージした時計の文字盤にもよく使われる線をフレームとして、アナログでのんびりとした雰囲気を出すようにしています。
WRITING LAB.のノートとして、ほんの1歩踏み出したばかりですが、ブランドのサイズをB6と定めたこと、オリジナルノートを発売したことは今後の展開において大きな意味があったと思っています。

工房楔・イベント後の新作紹介

工房楔・イベント後の新作紹介
工房楔・イベント後の新作紹介

毎年当店の開店記念の日に合わせて、工房楔の永田さんが開催してくれるイベントが終わりました。
毎回感じることですが、イベントが終わるとお祭りの後のような寂しい気分になってしまいます。それだけこの店に永田さんがいること、たくさんのお客様が来てくださることを楽しんでいました。

永田さんがひた向きな情熱を傾ける木の杢というのは、その材を材木屋さんで購入すれば洩れなく入っているものではなく、入っているであろう材にたまたま様々な形で入っているものです。はずれを引くと中には全く入っていなかったり、割れがあったりしますので、それを博打に近いものだと私などは思いますが、だからこそ永田さんは木に惹かれるのかもしれません。
そんなリスクを恐れずに勇気を持って、これはと思った材に持ち金の全てをつぎ込むことができるところも永田さんが一流の木工家として存在し続けている秘訣のひとつだと思っています。

ハンドメイドにはハンドメイドの、大量生産品には大量生産品のそれぞれの方法論があって、言うまでもなく両者は全く正反対の方向を向いている。
あるモデルをカタログに載せて、それを世界中で同じイメージ戦略に乗せて販売しようと思った場合、バラつきがあってはいけない。
たくさんの職人さんが作業に当たるので、ある人ができて、ある人にはできなくては困る。
どうしても難易度の低い作り方、素材の扱い、安定供給できる素材の選択になってしまいます。
永田さんは自分で材木屋さんに足を運び、これで何か作りたいという素材だけを仕入れて、木目などを見ながら、それが一番美しく出る削り方をしていく。
ひとつひとつのバラつきは当然出て、ひとつの塊から取れる数も少なくなる。
ひとつひとつを最も良くしたいと職人が思った末に出来上がったもの。
永田作品にはそんな魅力が溢れています。
様々なモノを見て、手にしてきた私たちがモノを突き詰めると、永田さんの作る木製品のようなものにたどり着くのは、そんな理由があるのかもしれません。

前置きが長くなってしまいましたが、工房楔の万年筆ケース コンプロットに新作が出て、先日のイベントでお披露目されました。

コンプロット4ロングは携帯することを念頭に作られた、コンプロット4ミニを長くしたものです。
コンプロット4ミニはペリカンM800が入る一番長いものの代表で、モンブラン146は年代によって入るものと入らないものがあります。
その制約から解放したケース コンプロット4ロングは、中屋万年筆ロング、セーラー島桑、楔クローズドエンドなど、レギュラーサイズよりも大きなオーバーサイズの万年筆を4本収めることができます。

永田さんが作られたものの中から、大きな材が手に入りにくく、今後もう作ることができないと言われているチューリップウッドと見事な孔雀杢を見せる黒柿を仕入れました。
木目が美しくつややかなチューリップウッドは使い込むとさらに艶が出てきます。
黒柿はさらに模様が際立ってくるのが特長です。

万年筆を入れて持ち運ぶためのモノだと考えるととても贅沢なものですが、永田さんが提案する万年筆を収納する、木の塊から削り出した銘木のケースが、大量生産品の方法論と真逆の存在であって、魅力があることを日常使いするとその良さ、満足感がよく分かります。

⇒コンプロット4ロングcid=⇒コンプロット4ロングkeyword=%A5%B3%A5%F3%A5%D7%A5%ED%A5%C3%A5%C84%A5%ED%A5%F3%A5%B0″ target=”_blank”>⇒コンプロット4ロング

サマになる

サマになる
サマになる

9月23日で当店は開業から丸6年が経ち7年目に入ります。
39歳で始めた仕事で、その時の自分を今から思うと考えの足りない若造だったと思いますが、例えば今から5年後に今の45歳の自分を振り返って、あの頃は本当に未熟だったと言えるようになっていたい。
少しずつでも成長していきたいとは、いつも思っています。

でも今から6年前の自分やこの店の状態などを振り返るとよく今まで続いてくることができたと思います。
それほど今から思うと、当時の自分も店も貧弱でした。
貧弱だというのは、品数が少ないということと少し違っていて、夢を追い求めて万年筆店を始めましたという気持ちだけで、お客様にこの商品を買ってもらいたいというメッセージがなかったということで、お客様に助けられたという以外の何ものでもありません。

さすがに6年経って何となく形のようなものができて、サマになったこともできてきたように思います。
全てがオリジナルとは言えないけれど、他所ではなかなか買うことができない腕の良い職人さんたちが作る革製品や、銘木にこだわった工房楔の木製品を一番多く揃えられるようになったのも、初めから意図していたわけではなく、たまたまの出会いがそのように導いてくれたと思うと、本当に恵まれていたと思うのです。

ノートやダイアリーのサイズもいろいろ試行錯誤してきました。
分度器ドットコムさん、大和出版印刷さんとともに企画したオリジナル正方形サイズのノート/ダイアリーは、独特の罫線レイアウトや万年筆で書きやすいリスシオ1紙の存在により、多くの人に愛用していただいてもらっています。

WRITING LAB.のノート/ダイアリーのサイズをB6と定めたのは、B6サイズが一番モノとして魅力のあるサイズだと思ったのと、開いて持っているところがとても美しく見えるサイズだと思ったからで、WRITING LAB.らしいサイズの決め方だと思っています。
B6サイズ用ノート/ダイアリーカバーテクチャーシリーズには、3種類の革があり、それらの革の違い質感で選んでいただくように黒のみで作ってみました。

ブライドルレザーは白いロウが表面に塗られていて、2か月も使い込むとロウが革に染み込んで艶が出る。もともと馬具に使われるような丈夫な素材です。
ベルーガはソファなどの家具によく使われる革です。手触りが良く、柔らかいのに強靭な性質で、いつまでもきれいな状態で使うことができるでしょう。
ナッパCBはイタリアの名タンナーバタラッシィがなめした革で、使い込んでいくと艶が出てくるエージングする革です。
規格のB6サイズに合わせていますので、B6サイズのノートやダイアリーなどのその選択はかなりあるだろうと思います。

更にA7サイズのメモ用ジョッターも付属しています。
WRITING LAB.のサマーオイルメモノートの紙を半分に2つ折りして使うこともできますし、A4サイズを8つ折りにしてA7になりますので、ミスコピーの裏をより活用することができます。

このカバーにはB6サイズの表紙幅を少し短くしたWRITING LAB.オリジナルノートも3冊付属しています。
横罫に2本のマージンを入れた独特の罫線をノートは、メインのノート、ダイアリーとともにカバーに差し込んで、サブノートとしてお使いいただけるようにしています。
カバーの製作は当店の近くにアトリエを構える革職人ベラゴの牛尾龍氏が製作していて、以前よりWRITING LAB.として牛尾氏と共同作業をしたいと思っていましたので、やっと実現することができました。

6周年を前にまた出会いを形にすることができました。

協力し合い、回数を重ねる~オリジナルダイアリー2014完成と工房楔イベントのご案内~

協力し合い、回数を重ねる~オリジナルダイアリー2014完成と工房楔イベントのご案内~
協力し合い、回数を重ねる~オリジナルダイアリー2014完成と工房楔イベントのご案内~

分度器ドットコムさんと大和出版印刷さんとの共同企画、「オリジナルリスシオ・ワンダイアリー」の2014年版が出来上がりました。
分度器ドットコムの谷本さんと大和出版印刷の多田さんと、当時分度器ドットコムの店があった夙川の焼肉屋さんでダイアリーについて打ち合わせしたことをとても懐かしく思い出します。
それはとても楽しいものだったけれど、それぞれが絶対に譲れないポイントがあって、それを擦り合わせて、少しずつ形にしていきました。

今までにたくさんのダイアリーを見てきて、個人的にそれを分類したり体系的に把握したりしていたので、それが大いに役に立ちました。
谷本さんもたくさんのダイアリーを見てそれについて考えてきて、温めていたアイデアがいくつもありました。
このダイアリーを作った当初の自分の言葉「仕事のことも、プライベートも何でも書ける、書くことを楽しむことができるダイアリーにしたい」というものでしたが、このオリジナルリスシオ1ダイアリーはその言葉通りのものになっていると思っています。

このダイアリーも少しずつ進化していて、今回から新たに見開き一年のブロック型の年間計画表を追加しました。
一年をトータルで考えてそれぞれの月にテーマを持たせ、1年を1つのストーリーになるように考えることで、メリハリのある充実した1年にできるのではないか、それは私たちのような店だけでなく、どんな仕事にも言えることなのではないかと思いました。
それぞれの月にテーマを持たせて素材を書き込んでいくフォーマットとして、便利に使うことができると思います。

3社でのこの作業で、小さな店同士が協力して商品を開発する楽しさを知って、それが今も私たちの仕事のやり方の中心になっています。

工房楔の永田さんともずっと協力して仕事してきて、一緒に成長してくることができたと思っています。5年前に出会って、万年筆しか売るものを持っていなかった当店に木の杢を嗜むという大人の楽しみを与えてくれた。
工房楔の永田さんとの出会いは、私自身に新たな世界を見せてくれたし、当店に万年筆以外の柱を与えてくれました。

当店の開店記念の日に毎年開催して下さっている工房楔のイベント「楔が奏でる木の文具」展を今年も開催できることは、ダイアリーを作ることができたのと同じようにとても嬉しく思っています。

「楔が奏でる木の文具」展は9月21日(土)~23日(月祝)開催いたします。
おそらく一つの店だけではどれも継続してくることができなかったことばかりで、協力し合える仲間たちがいたからどれも少しずつ形を変えて、成長させて作り上げてくることができました。

当店創業6周年を前に感慨深く思っています。

⇒Liscio-1(リスシオ・ワン)オリジナルダイアリー:Pen and message.オリジナル商品トップへcid=⇒Liscio-1(リスシオ・ワン)オリジナルダイアリー:Pen and message.オリジナル商品トップへkeyword=%A5%AA%A5%EA%A5%B8%A5%CA%A5%EB%A5%C0%A5%A4%A5%A2%A5%EA%A1%BC” target=”_blank”>⇒Liscio-1(リスシオ・ワン)オリジナルダイアリー:Pen and message.オリジナル商品トップへ

仕事のイメージ

仕事のイメージ
仕事のイメージ

2、30代の頃、ペン先をひたすらルーペを覗いて、思った通りの書き味にしようと肩がコチコチになるまで悪戦苦闘して調整していました。
でも今は、まずペン先を見ると「こういう風にする」というイメージがすぐに出来て、それに合わせるように調整するようになりました。
言い換えると、イメージしてから取り組む心の余裕が出てきました。

若い頃のひた向きさというのはとても素晴らしいけれど、ペン先の調整をするということに関しては、今の自分の方がはるかに多くのことを考えている。
例えば調整するイリジュウムの形を3次元の立体的な形で考えたり、その万年筆を使う人の今の一瞬だけでない、これからの数年間・数十年間のその人とその万年筆との時間まで考慮して調整するようになりました。

それは自分自身が歳をとって、それだけの時間万年筆を使ってきて気付いたこともありますし、たくさんの事例を見てきたということもあります。
そして何より、一時期とらわれてこだわった方法などを自分自身で打ち消して、捨て去ってきたことも良かったのではないかと思っています。

そのように考えると私のような仕事はある程度、それなりの齢にならないとモノにならないと思います。
45歳まで仕事をしてきて思ったのは、20代、30代はひたすら修行して積み重ねたものを40代で何とか形にしていく。そしてそれは50代でやっと完成する、ということ。50代以上のことはあくまでも想像ですが・・・。

40代ではお客様も年上の方がまだ多く、こう書けばもっと書きやすくなるという意見を飲み込んで、いかにその人の書き方に合わせた調整をするかに腐心しているけれど、50代、60代になって、お客様も年下の人が多くなってきたら、調整に関する表現の仕方も変わると思っているし、それが自分の年齢に応じた、自分のできることで世の中の役に立つということだと思っています。

万年筆の調整は言葉に似ていると思うことがあります。
言葉は多ければ良いというものではなく、相手の話をちゃんと聞こうと思ったら必要最低限の、しかも要点を突いたものでないといけない。
言葉を多く発すれば発するほど中身のない余計なことを話してしまい、それを訂正、補足するためにさらに多くの言葉が必要になってきます。

調整も手数(てかず)は少なければ少ないほどいい。
調整を途中で止めるということではなく、最も手数少なく効果的にできる調整を最初にイメージして、その形を実現するようにする。
それが一番難しいことだけど、それが最も良い調整だと今は思っています。

美学に合ったサマーオイルメモノート

美学に合ったサマーオイルメモノート
美学に合ったサマーオイルメモノート

自分が日々書くものは、パソコン打ちしてデータにしてしまうと捨ててしまいます。
書いたものに対してもちろん愛着はあるけれど、それは今の気分、今日の考えであって、明日はそれにこだわらず違う考えに進みたいと思いますので、それらを読み返すことがありません。
何かネタがあって、それをノートに書き留めておく。そしてそれを何かの機会がある時に引っ張り出してくるようなことを何度かしようと思いましたが、書いていて楽しくなかったので、結局しなくなりました。

ノートに書き貯めておくというやり方は自分には向いていない。それよりも頭の中に置いておいて、必要な時にそのネタを拾い上げて、今の気分で紙に書く方が合っている。
原稿を書き記す紙はあくまでも下書きをするためのもので、書き残すためのものでは自分の場合はないようです。

そういう自分の仕事のやり方と、なるべく何も残さないという美学のようなものを合わせて考えると、WRITING LAB.で企画したサマーオイルメモノートほど適したメモ帳、ノートはなく(自分のためのものを発売して使っている後ろめたさは少しはありますが)ぜひ多くの人に使っていただきたいと思っています。

サーマーオイルメモノートには、切り取り線やきれいに折り返せる表紙などの便利な機能はないけれど、趣きを持っているという点では抜群だと自信を持っています。
趣きとは形で言い表すことのできない曖昧なもので、上手く言えませんがステーショナリーのほとんどが機能は完璧でも、趣きを持ち合わせているものがほとんどなのを感じていました。
分かる人には分かるし、分らない人には筆舌を尽くしても共感してもらえないものが、趣きなのかと思っています。

サマーオイルメモノートは、私がル・ボナーさんからいただいた革を加工して、その辺にある紙に穴を空けて綴じていて使っていたのを駒村氏が見つけて、商品化することになったものです。

自分としては完璧なメモ帳で、これを使い出してから他のメモ帳を使いたいと思うことがなくなりましたが、他の人が良いと思ってくれるとは思っていませんでした。
今まで、自分が良いと思うものを企画してきましたが、これだけは難しいのではないかと思っていました。そのためWRITING LAB.で商品化することになったときは、嬉しかったけれど前述しました通り後ろめたかったのです。

でも販売を始めて2年近くが経ち、賛同してくれる人が多くおられることが分かりました。皆さんご自分が使うメモ帳に趣きのようなものを求めていたのだと思い、とても嬉しく思っています。

機能を追求することも素晴らしいことだけど、形のない趣きのようなものを私たちは追究していきたいと思っています。

無常の香り

無常の香り
無常の香り

森脇直樹さんが聞香会において炷てる沈香や伽羅の香りを聞いて、一抹の無常感のようなものを感じていました。

その香りから導かれる感情は人それぞれですし、その香りにまつわる想い、記憶は人それぞれあるのだけれど、私はそこに無常の世界観を感じていたのです。
人の気持ちを誘導するのに、香りというものほど優れたものはない。
その香りを嗅ぐと、よりその世界観を感覚で理解できる。

森脇直樹さんも当店の「雑記から」に書かれているけれど、はかなく、でも奥行きのある沈香の香りは武士の一期一会の生き様と合致していて、武士の世界観に取り入れられてきました。
明日をも知れぬ生を宿命として背負っている武士の心に、無常感を思い出させる沈香の香りは沁みこんだのだと思います。

複雑な香りだけれど、飾り気のない自然なままの香りが香炉から薫り立ち、いつまでもその中に身を置きたいと思う。
この世ははかないという無常感は、この時間はいつまでも続かないという諦めのような、でも今を大切にしたいと願う一期一会の心に近い感覚です。
工房楔の永田篤史さんが世に問うている銘木のもの全てに、一期一会の言葉が当てはまると、多くの人が私と同じように感じられていると思います。

杢とか、木目というのは自然が作り出すもので、それを木工家という人間がどう切り取るかでその模様の出方が変わる。
同じ木目を作り出そうとしても絶対にできない。
銘木もたくさんの種類があって、複雑な杢を持つこぶの部分を多く扱うことで、それが工房楔の代表作のように思われがちですが、そうではない静かな印象を持つ東洋の木も工房楔は厳選して扱っています。

そのひとつ黒柿などにも香に近い世界観を特に感じます。
その孔雀の羽根のような模様になることもある墨絵のようなトーン、希少性などから銘木の中の銘木と言われる黒柿。
古から男たちを惹きつけ、追い求めさせたダンディズムのような魅力は、今の我々の感覚でも充分理解できるものです。

簡素の美、素材感など日本古来の感覚を大切にしたいと思って、その価値観に照らし合わせて商品を選び、設え、サービスを選択した当店の当初において、気持ちを導いてくれる香りと嗜みにも似た楽しみを提供してくれる銘木は存在しませんでした。

それらの物は、森脇さんと永田さんのお二方との出会いによって当店にもたらされた、大切にしていきたい当店のひとつの切り口でもあるのです。

*当店では毎月最終土曜日の午後3時~5時に森脇直樹氏による「聞香会(もんこうかい)」を行っています。参加費などは無料ですので、ぜひご参加下さい。カジュアルなスタイルで行っていますので、緊張せずに香に触れていただけると思います。毎月の開催日はホームページインフォメーションにてご確認下さい。

オリジナルフリーデイリーノート

オリジナルフリーデイリーノート
オリジナルフリーデイリーノート

来年の予定が既にたくさん入っている方もおられ、そういった人たちのためにもダイアリーを早く用意したいと思っています。
毎年と同じになってしまいましたが、今年のオリジナルダイアリーの発売は9月上旬の予定になっていますので、よろしくお願いいたします。

オリジナルダイアリーは、当店と分度器ドットコム、大和出版印刷との共同企画で、今回でついに5回目(5年目)の製作になります。
ダイアリーはステーショナリーの中でも、最も継続性が求められる商品だと思っています。もちろん永遠に継続させるつもりで始めたけれど、ひとまず5年継続できてとても有難く思っています。
このダイアリーを買って下さっているお客様方の存在なしでは、続けることができませんし、これを作り続けて一緒に販売努力も負って下さっている大和出版印刷さんにも感謝しています。

上記のダイアリーは、日付入りのマンスリー、ウィークリーダイアリーのことで、1日1ページのデイリーノートは日付を自分で書き込むフリーダイアリーになっています。
毎日書かなくてもいい、書くことがある時だけ記入してもらう。
気楽に長く続けて使っていただけるようにと思っています。

その日の予定、するべきことを管理して、その日にあったことを記録するという、予定帳と日記機能の両立したものを目指しています。
万年筆でダイアリーを書くという楽しみと、充実した1日をサポートできるものになっていると思っています。
デイリーダイアリーの罫線は正方形の紙面を4分割にしてレイアウトしています。
これは何の根拠もありませんが、思考をシンプルな平面的な形にすると、正方形4分割になるような気がして、その形にしています。
正方形という書く紙としては特殊な紙面がこれによって書きやすくなり、時系列で書いた記録を後から探す時、視覚的、直感的に見つけやすいフォーマットだと思っています。
左側の上は、その日にやらなければならないこと、この日の予定を書くことができて、このダイアリーの中で唯一未来について書く部分になっています。
左下MEMO欄は、覚書欄で、キーワードや連絡先など、メモ帳に書くように書き込みます。
ラフに書いても場所が決まっていますので、すぐに見つけて後から活用することができるスペース。
右側の2段は、どちらもドキュメント、記録のためのスペースです。
上段、下段にそれぞれ役割を持たせてもいいし、つないで大きなスペースとして使うこともできます。
ダイアリーを書き込む時、多くの方が細字を使うと思います。
書くスペースに制約がありますし、細いペンで書く方が文字がくっきりして後から読みやすい。
太字に比べると、細字の万年筆はどうしても引っ掛かりが出やすいですが、オリジナルダイアリーの紙は大和出版印刷さんが理想の万年筆用紙を追究して開発した紙、リスシオ1を使用していますので、これもまた書くことを楽しくしてくれる条件のひとつだと思います。
ダイアリーを変えただけで、仕事はそう簡単に変わらないかもしれないけれど、仕事を良くするために1日1日を大切にする役に立つもの、仕事をより楽しくしてくれる役に充分立つものだと思います。
ちなみに正方形ダイアリー用の革カバーは、大和出版印刷さんと同じ六甲アイランドにある鞄店ル・ボナーさんが担当して下さっていて、10月上旬の完成を目指しています。

⇒オリジナル フリーデイリーノート
⇒オリジナル商品一覧トップ(2013ダイアリー)gid=2127777″ target=”_blank”>⇒オリジナル商品一覧トップ(2013ダイアリー)

進化する「こしらえ」

進化する「こしらえ」
進化する「こしらえ」

多くのものを均一に作らなければならない大メーカーの物作りと、職人による物作りとは、根本的な考え方が違うことは言うまでもありません。
質感・エージングともに素晴らしいけれど、個体差のある素材というのは大メーカーの選べないものですが、それを使って、最大の技術で不均一でありながらもそれぞれに魅力を感じさせるのが、職人の仕事だと思っています。

素材的にも加工的にも安全策を取る量産品と、少量製作の職人の品との違いは、使い手の楽しみ方、見方が違います。
職人の仕事に均一さを求めるのはその物の見方が違っていると思うし、量産品の中から個体的に優れたものを求めるのにもどこか無理がある。

量産品だけど許容範囲があって、その中でバラつきがあるペン先をより厳しい目で見て、メーカーに交換を要求する私はメーカーからするとかなりうっとおしい存在だと自覚しています。
ただペン先の優劣はその万年筆に私たちが期待する書き味に影響するから譲れないところですが・・・。

量産品である万年筆を職人仕事のボディと組み合わせたのが「こしらえ」です。
こしらえはパイロットの書き味、性能ともに優れた万年筆、カスタム742、カスタムヘリテイジ912の首軸から先を装着して、使うことができる銘木製のボディです。
書き味の良いことで定評のある国産万年筆におもしろいボディが付いて欲しいという多くの人の願望を実現したものです。
ペン先を刀の刀身に見立て、万年筆のボディを刀の柄や鞘などの装束である拵えに見立てています。
こしらえには、刀身に見合った良い素材と高い技術で作られたものでなくてはなりません。

工房楔の永田さんの素材選びと仕事はそれに見合って、余りあるものだと思っていて、とても良いものが出来たと思っています。

「ボディがもう少し太い方が、キャップとのバランスは良くなりますよ」1回目にこしらえが出来上がって、お客様方からお聞きした内容であり、私も思っていたことを伝えていました。
作り手の都合は全く考えていませんでしたが、永田氏は本気で聞いて取り組んでくれていました。
口で言うのは簡単ですが、一度決まったフォルムを破綻なく構築し直すのは本当に大変だったと思います。

永田氏は努力はしたけれど、それほど変わったとは思っていなかったようでしたが、わずかなボディのふくらみがこしらえにかなりふくよかな印象を与えてくれていて、フォルムの変更が成功していると思いました。
きっと永田氏は私が言わなければボディのアールを変えたことを自分からは言わなかったと思います。
かなり苦心したと、後で告白されましたが、そういうことをアピールしないところに永田氏の職人としてのプライドと奥ゆかしさが感じられ、面白く思いました。

⇒万年筆銘木軸「こしらえ」一覧へgid=2125748″ target=”_blank”>⇒万年筆銘木軸「こしらえ」一覧へ

*画像は花梨リボン杢です

革の深遠な世界の入り口 ル・ボナーデブペンケース

革の深遠な世界の入り口 ル・ボナーデブペンケース
革の深遠な世界の入り口 ル・ボナーデブペンケース

社会人になってすぐに買ったシステム手帳を大切にしていましたが、革の手入れの仕方を知らず、ただひたすらミンクオイルを塗っていたので、表面が固まったようになってしまいました。
油の塗りすぎは革の毛穴をふさいで呼吸を妨げてしまい、革を殺してしまうことになることを知らなかったのです。
それは私にとってかなり辛い、悔いの残る経験でしたので、それ以降靴を含めた革製品の手入れに対して、臆病になっていました。

ル・ボナーの松本さんと知り合って、正しい革製品の手入れの仕方を教えてもらいました。
使い込んで手入れすることで益々良くなる、エージングする革の良さを知ることができましたし、そういう革を私は使っていきたいと思うようになりました。

革の種類やタンナーの存在も知りました。
動物による革の違いや、カーフとかステアなど牛の年齢による原皮の違いは知っていましたが、同じ原皮であっても、そのタンナーの違いなど、なめし方の違いによって様々なものがあることには思い至っていませんでした。
でもそれらの製品になる前のなめされた革も立派な作品であることを知って、革というものの深遠な世界に魅力を感じるようになりました。
それらを知って、違いを味わうことが革を嗜むという、より大人の革の楽しみ方なのかもしれません。

本革製とうたっているけれど、それ以上でもそれ以下でもないもの。私がそれまで見てきた革製品は大切に革を育てながら使うということを教えてくれるものではなかったので、そういう革の楽しみ方があることに気付きませんでした。

名のあるタンナーの名作革は、普通鞄やハンドメイドの革小物などの高額なものに使われることが多く、私たちが最も身近だと感じられるステーショナリーで使われることは、それまでの私の経験ではありませんでした。
しかし、デブペンケースには世界を代表するメジャーな名作革が使われていて、大切に育てるに価する上質な革の扱いを身に付けるのに最適なのかもしれません。

今回デブペンケースに使われた、ブッテーロとシュランケンカーフはともにル・ボナーさんがその製品によく使われるものですが、非常に対照的な性質を持っています。
ブッテーロは張りのある厚みを感じられる革で、油分を多く含んだタンニンなめしの革です。使い込むとかなり表面に光沢が出てきます。
張りはありますが、表面は柔らかいので傷が付きやすい。でも傷がついたらブラシで磨くと、浅い傷なら目立たなくなります。
ブッテーロの革の手入れはブラシ掛けだけでほぼよいのではないかと思っています。
それで艶が出てきますし、キラキラとした表面になって、とてもきれいに変化してくれます。

シュランケンカーフは柔らかいけれど、とても丈夫で扱いやすい革です。
傷や水にも強いのでエージングは少ないけれど、細かいことを気にせずにどんどん使うことができるし、汚れたら水拭きできれいにすることができる。
柔らかいカーフの革を薬品で縮れさせていますので、自然の状態よりも密度が高くなり、丈夫な革になっているようです。

ブッテーロとシュランケンカーフ、形は同じですが革の違いで全く異なるものになっている。
デブペンケースのブッテーロとシュランケンカーフ。
深遠な革の世界の入り口にあるものだと思っています。

⇒「ル・ボナー商品」サイトトップgid=2125743″ target=”_blank”>⇒「ル・ボナー商品」サイトトップ