モンテグラッパ エンブレマ

モンテグラッパ エンブレマ
モンテグラッパ エンブレマ

万年筆の価値は書き味や実用性だけで決まるわけではなく、そのデザインなどから来る「持つ喜び」もひとつの価値だと考えています。そういう意味からも、モンテグラッパの言うライティングジュエリーという言葉に共感しています。

「ライティングジュエリー」というコンセプトに近いことを数々のメーカーが挑戦してきた経緯もありますが、なかなか定着するまでには至っていないように思います。しかし、モンテグラッパはライティングジュエリーと堂々と言える、数少ないブランドだと思います。
モンテグラッパはそういう意味でも気になるブランドで、このペン語りではネロウーノに続き2回目の紹介になります。

先日、大和出版印刷さんが出品する商業ポスターのコンテストに、当店を題材とすることが決まった時、モンテグラッパの万年筆を使いたいと思いました。
モンテグラッパのその物たちが放つ力強い魅力と華やかさが写真映えすると思ったことに加え、当店もモンテグラッパのように独自の道を行く存在感を持ちたいと思ったからでもあります。
時代や流行を追いかける訳ではなく、他のブランドを真似るわけではなく、モンテグラッパはいつもモンテグラッパらしくありました。
そんなモンテグラッパの中でも、最もモンテグラッパらしいのがエンブレマです。

実際のペンやカタログを見ていても、このエンブレマが最も強烈な個性を持っていることが分かっていただけると思います。そのインパクトがエンブレマをポスターの中心に据えた理由だと思いますし、私がモンテグラッパらしさを感じるところです。
エンブレマはスターリングシルバーの金属部分とマザーオブパールを練りこんだ美しいセルロイドのボディを持っています。
スターリングシルバーは、モンテグラッパのポリシーでもある表面加工をしていないもので、時間を経過するごとに、使い込むごとに渋い色合いへと変化していき、とても良い風合いに変わります。
美しく輝くセルロイドは、他のメーカーでは見られないもので、シンフォニー、ミヤなどにも使われています。
モンテグラッパのセルロイドからは、万年筆黄金期へのノスタルジーなどは感じられない、その輝きを実現するために必要な現代の素材という想いを感じ取ることができます。
ペンは非常に小さな工芸品なので、細部に目を凝らさないと意匠の違いとか、特長を掴みにくいところがありますが、エンブレマにはそんな顕微鏡的な見方は必要ないと思っています。
離れて見てもその美しさは伝わってきますし、セルロイドの輝きが人目を引くのに充分なものだと思います。

あえて実用面に関するリポートは何もしておりませんが、インクの引っ張りの良いエボナイトのペン芯とともに必要十分な性能を見せる硬めのペン先のフィーリングは、書き味ではなく、万年筆を持つ喜びを見出す人のためのペンだというメッセージが込められているように感じます。

試筆用紙を作りました

試筆用紙を作りました
試筆用紙を作りました

当店で試し書きしていただくための用紙を作りました。
お店で万年筆を試す時に、売場に備えられている紙が日頃使っている紙とかけ離れているので、戸惑われた経験をお持ちの方は多いと思います。
万年筆売場などにある紙は、調子の悪い万年筆でも書き易くしてしまいますし、インクの出も多く感じます。
表面に不自然な加工がされているものが多く、言わば万年筆を売るための紙になっています。
それでは万年筆の調子が分かりませんし、買って帰って家で試したら、全然違っていたということもよくあるようです。
当店オリジナルの試筆用紙は大和出版印刷さんの協力を得て作りました。
ペンの引っ掛かりが少なく、インクにじみが適度で、不自然な感じでないものという万年筆用の紙としての希望に適うものを大和出版印刷の多田氏にお願いして、いくつか候補を挙げてもらい、その中から選びました。

皆様がよく使われる一般的な上質紙と何ら変わりなく、万年筆の良否を判定するのにとても適した紙だと思います。
中央下に小さく当店のロゴを1枚1枚全てに印刷し、その入り方もとても気に入っています。
B5サイズで、長辺をレポート用紙のように糊綴じしています。
この手のものは短辺を綴じるものが多く、非常にユニークなものになっていますが、ペンを試すのに良い大きさだと思います。
店でペンを選んでいただくための試筆用紙ですが、販売もさせていてだくことにしました。
価格は300円で100枚綴じです。
こういった用紙を机に置いておくと、メモ用紙代わりに使うことができて、ご自分の万年筆の調子を確認する時にちょっと書くのにもとても便利です。
そんな光景が他所で見られるのかどうかは分かりませんが、自分が持っている書きやすい万年筆を他の人に書いてもらって、その書き味に共感してもらうといった時にもとても便利だと思います。

Pen and message.オリジナル試筆紙

ラミー サファリの価値観

ラミー サファリの価値観
ラミー サファリの価値観

サファリは価格が安く、ドイツ本国では学童用に作られたということで、初めて万年筆を使う人だけのペンと考えがちですが、それだけでは惜しい気がします。
サファリには独特の価値観、スタイルがあり、特にデザインにこだわりを持っている若い人には重厚ではないこのペンのあり方は共感できるものだと思います。
価格は安いけれど、好きで使っている、こだわりを感じさせるペンがサファリです。

サファリと言えば、価格が安いのに全く売れない万年筆というのが4,5年前までの販売側のイメージでした。
ラミーはドイツではモンブラン、ペリカンなど数々ある筆記具メーカーを凌ぎ、最も多くのペンを売っているメーカーであることを聞いていましたが、何かピンと来なかったのを覚えています。
サファリが長い間日本で売れなかったのは、万年筆を使う年齢層に関係があるのだと思います。
万年筆といえば、年配の人のためのペン、エグゼクティブのための高尚なものというイメージが万年筆を使わない人にはあったと思われますし、実際に万年筆を使っている人はある程度の年齢になっている人ばかりで、万年筆といえば金ペン先の柔らかい書き味が醍醐味だという固定観念があったのかもしれません。
そんな万年筆の土壌の中では、サファリは売れないと思いますし、理解されないのかもしれません。

しかし近年、発売後20年以上経っていたサファリの人気に火がつきました。
サファリのようなペンが売れるというのは、ペンの業界として非常に喜ばしいことで、万年筆を使う若い人が増えているということを裏付けています。
やっとサファリのデザインを使いこなすことのできる新しい感覚の人たちが万年筆を使うようになったと思いました。
サファリには機能的な工夫がいくつもあり、それが見所でもあります。
グリップのくぼみはそこに指を沿わせると、正しい位置で持つことができ、ペン先も最も書きやすいところが紙に当たるようになっていますし、ボディに空けられた楕円形の穴はインク残量を確認することができる窓になっています。
針金のようなクリップは厚手の生地、例えば鞄のストラップ、デニムのポケットに挟んでも広がらない頑丈さを持たせています。
ターゲットを正確に設定し、それに合った商品開発をすることで発売から短期間での目標達成を目指すラミーの考え方が、製品の価格を引き下げるのにも役立っていると思われます。
日本のメーカーがこの価格で万年筆を作ると、ユーザーに妥協を強いることが多いように感じてしまうのはとても残念です。
プロダクトデザインの考え方、マーケティング、対象マーケット全てが違うのかもしれませんが、万年筆の文化を広める気持ちの違いを感じずにはいられません。

ペリカン「ポーラーライト」と大人たちとの時間

ペリカン「ポーラーライト」と大人たちとの時間
ペリカン「ポーラーライト」と大人たちとの時間

とても有り難いとことですが、この店には本当に素敵な方々が万年筆を買いに来てくれます。
そんな毎日の中で、この青年のことは私だけでなく、そこに居合わせたお客様方全員がもう一度会いたいと思ったのではないかと思います。

羽織、袴の若い男性がご来店されたのですが、その場に居合わせた大人たちは彼に対する興味を隠さず、今出会ったばかりのその青年に気さくに話しかけていました。
後から考えるとそれは彼がその店の雰囲気に馴染むのにとても役立ったと思います。
万年筆を選び始める前に、彼はこの店の雰囲気にも周りの大人のお客様にも慣れて、とてもリラックスできるようになっていました。
私は彼の和装を見て、日本製の和の趣がある中屋万年筆、漆塗り万年筆の元祖パイロットのカスタム845、予算の幅を考慮してセーラープロフィット、若者が好みそうなビスコンティなどを選んで彼の前に並べました。
比較的太めのペン先のものを考えているとあらかじめ聞いていましたので、中字の万年筆を用意しました。
彼はそれらをゆっくりと試しながら、一本ずつそのペンの良いところをコメントしていましたが、そんなところにも彼の若者にはなかなかできない気配りを感じました。
そんなやり取りの中で分かったのは、デザインに関しては若者らしくカラーのあるきれいなものがいいと思っていることと、ずっと使うことのできるしっかりとした実用性を持っているもの、書き心地、持ち心地の良いものを選びたいと思っていることでした。
彼が最後の最後まで、迷ったのはカスタム845と彼のリクエストでリストに加えたペリカンポーラーライトでした。

パイロットカスタム845はとてもオーソドックスなデザインで、黒色のボディに金色の金具という万年筆らしい重厚さに憧れたということと、一見するとプラスチックに見えるボディが実はエボナイトに漆塗りという日本的な美学のあるところに惹かれたようでした。
でも、ポーラーライトの素直にきれいと思えるボディと書き味の良さによって、気持ちが固まったようでした。
そのポーラーライトのMはペリカンのコンディションの良い万年筆がそうであるように、紙に触っていないかのような一切の抵抗のない滑りの良さと、インクが湧き出すような感覚がありました。
ボディにもアルミ素材が使われていて、金属なのにその絶妙なカーブによって柔らかいと錯覚する持ち味がありました。
北欧から見える美しいオーロラを表現したというボディカラーは様々な緑色で描いていますが、彼が持つとその緑色の一番濃い部分がとても渋い日本的な色に感じ、茶道具のように見えました。
よくお客様と話していて、その万年筆のことがとても好きになってしまうことがありますが、彼が選んだポーラーライトがとても好きになりました。

万年筆が決まった後、彼は居合わせた大人たちを相手に彼が早くもライフワークにしたいと思っている香道や自分のことについて話しました。
大人たちは17歳という若さでこんなにもしっかりとしていて、自分の意見をはっきりと言えて、でもとても爽やかでかわいいとさえ思える若者らしさも持っている彼にすっかり魅了されていました。
彼が、自分の話をこんなに聞いてくれた人たちに会えたのは初めてでとても楽しかったと言って帰った後も、私たちはその快い余韻に浸り、自分たちが17歳だった頃の思い出までいつまでも話していました。

ル・ボナーのペンケース

ル・ボナーのペンケース
ル・ボナーのペンケース

タフで骨太な仕様のものに強く惹かれますが、このペンケースの魅力はそれだけでなく、使い込むことで分かる、使っていくうちに増してくる愛着というものも持っています。
私が今まで見てきたペンケースは、ほとんどが高価で上質で繊細な革は使っていましたが、その作りは頑丈だとは言えないものでした。
新品の時、とても美しくしっかりとしたものが、1年もするとクタっとしてしまうことにがっかりしていました。
ペンケースというものは使い込むとただ古くくたびれてしまうものだと思っていましたが、作る人が変わると一生ものにもなり得るということを知りました。
それは革小物職人と鞄職人の違いということよりも、目指すものの違いなのかもしれないと思うようになりました。
どこかの下請けで仕事を請け負っているわけではない独立系の職人は、自分の名前をかけて作るその作品が全てで、その作品の評価が運命を分けてしまいます。
それだけ物作りに真剣になり、全身全霊をかけて行われます。
その独立系の鞄職人の物作りの姿勢がこのペンケースの一番の見所になっているとも言えます。

それは革の縁の処理にも表れています。
革小物職人が作ったものの多くは、へり返しという革を薄く削いで折り返して縫う処理をしていますが、このペンケースはコバ磨きという処理をしています。
へり返しは新品の時、繊細で美しく見えるかもしれませんが、薄くした革は擦り切れやすく、縁が擦り切れてしまうと修復が難しく、使えなくなってしまいます。
コバ磨きの処理でしたら、染料を塗って磨き上げることで、縁を元通りに復元することができます。
このペンケースに使われているブッテーロという素材は滑らかな手触りと使い込むごとに艶を増す上質で強い素材で、こまめに磨くことで表面がとても艶やかになり、美しい光沢を放ちます。
乾いた布で日常的に磨くことも有効ですし、濡らした布を硬く絞って磨き上げるのも革の艶を復活させるのに役立ちます。
そんな風に大切に使うことにも、無造作にハードに使うにも耐え得る素材だと思います。
そんな素材、ブッテーロを背中合わせに2枚重ねて、ペンケースとしては最高の強度を持たしています。
オーバークオリティとも言える仕様のため、フラップ部などは硬くさえ感じますが、使って馴染ませていく楽しみがあります。

私はこのペンケースの3本差しを2つ持っていて、それぞれにお気に入りのペンを入れて、毎日交換して使っています。
そう考えると3本差しというのはちょうど良く、細字、中字、太字と持って歩くことができるので、仕事に行くときこのペンケースを1つ鞄に入れるといいわけです。
自分の持っているペンを全て持ち出すことのない私にとって、この3本差しのペンケース、なくてはならない存在になっています。
モンブラン149までの大きさを入れることができるスペースがありますので、このペンケースに入らないペンは少なく、どのペンも適度にホールドしながら、取り出しもしやすくなっています。

直して使うことが前提になっている鞄職人のペンケース、大切な万年筆を安心して預けることができる、長年使うのに値するクオリティのものだと思います。

ル・ボナー ペンケース

プラチナ ブライヤー

プラチナ ブライヤー
プラチナ ブライヤー

あまりコレクションする習慣のない私が、初めて字幅を揃えて持ちたいと思った万年筆がこのプラチナブライヤーでした。

私が万年筆を仕事にするようになった時にはすでにあって、特に目立った存在ではなくあまり省みられることのないものでしたが、使ってみてその良さが分かりました。

それはデザインなどからは想像することのできなかった満足感、使うたびに喜びを感じることのできるものでした。
私にとってこの万年筆はあまり人が使っていないものを使いたいと思って使い始めた、憧れの存在というものではありませんでしたが、万年筆観を変えてくれるものになりました。
プラチナの万年筆はどれも、文字を書くのに必要最低限のインク出で、硬めのペン先で滑りを出すという味付けが頑なに施されています。
それはもしかしたらお店での試し書きでは良さが分かりにくいものかもしれませんが、万年筆を実用の道具として使っている人の多くが、ご自分の万年筆のインク出が多過ぎることに多少なりの不満を感じていることを考えると、とても実用的な仕様だと思います。

ヌルヌルといった書き味は持ち合わせていませんが、使うための万年筆を頑固に作り続けているのがプラチナです。
ブライヤーという素材は、多くの万年筆メーカーが取り組んできた比較的よく使われてきたものですが、現在継続して定番品として作っているのはプラチナだけだと思います。

シャクナゲ科の植物の杢の部分は、木目が複雑に渦巻いていて面白い模様を呈しますが、硬さもあるため、万年筆などの筆記具にも適している素材だと言われます。
ブライヤーは熱にも強く、筆記具に使われるずっと以前からパイプのボウル(葉をセットする部分)に使われる素材でした。
強度だけでなく、使い続けることで手の油で磨かれてとても美しい光沢を見せることから、見て、磨いて、吸って楽しむパイプ文化を形作ったのはブライヤーという素材があったからだと思います。
この万年筆に使われるブライヤーは拭き漆という技法によって仕上げられています。
漆を布につけて、拭くように素材に馴染ませる技法で、手触り、光沢が自然な風合いに近いこの万年筆の良さに一役かっている技法です。
実用的な文字を書くためのプラチナのペン先システムと、見て、磨いて楽しむことができるブライヤーのボディ、女性のお客様は実際少数ですが、男性のための万年筆がこのプラチナブライヤーだと思います。

手帳書きにインク出をさらに絞ってペンポイントを細くした細字、ノート書き用に中字、太い文字が欲しい時に使う、インク出をできるだけ多くして、筆記角度に合わせてペンポイントに面を作った太字と用意して、どのペンも布でピカピカに磨き上げて、3本差しのペンケースに入れて持ち歩きたいというイメージを持たせてくれる万年筆だと思っています。

プラチナ ブライヤー

アウロラ オプティマ

アウロラ オプティマ
アウロラ オプティマ

多くの人がこのペンのデザインを気に入って使い出したのではないかと思います。
というのも、私自身がこのオプティマの控えめな華やかさから香るインテリジェンスを強く感じるデザインに惹かれて使い出したからです。
他のイタリア製の万年筆と違って、強烈すぎない、とてもスマートで洗練されたセンスをアウロラの万年筆に感じていますが、オプティマは最もそれを端的に表している万年筆だと思っています。

そんなスマートな洗練された万年筆をアウロラが作ることができたのは、アウロラがあるトリノという土地柄なのかもしれません。
フィアットの本拠地であり、ピニンファリーナ、ベルトーネ、イタルデザインなど多くのカロッツェリアが存在し、OA機器で一時代を築いたオリベッティも拠点を構えたイタリア有数の工業都市であり、世界的に成功を収めた多くの製品を生み出し、イタリアがデザインに優れた工業製品を作る国だという印象を与える役目を果たした街、それがトリノでした。

歴史的な遺構が残る過去に生きる街にある他の万年筆メーカーと違い、優れた工業製品が街中で作られていた街で繁栄していったアウロラが、洗練されたセンスの良いもの作りをしているのも当然なのかもしれません。
パーツメーカーから供給を受けて、アッセンブリーしたものを製品として発売しているメーカーも多く存在する中、全てオリジナルパーツで作り上げているアウロラというメーカーはとても貴重な存在であり、安心してmade in Italyを手にしているということが言える数少ないもののひとつだと思います。
全て自社で製作されたオリジナルパーツを使って製品作りをしていることは、アウロラの書き味や使い勝手が独特で、他のどのメーカーにも似ていないところにも表れています。
オプティマをデザインが気に入って使い始める人が多いのではないかと言いましたが、その使い勝手は意外に硬派で、本当に使い込んでいく人のための万年筆といった、一筋縄では馴染まない道具を連想させるところがあります。

エボナイトのペン芯は使い出したばかりの時、なかなかインクがしっかりと出てくれないことがあります。
2週間(目安)ほど我慢して使うとインクが安定してしっかりと出るようになり、さらに馴染むと豊かにインクが流れてくれるようになるという、使い込んで馴染ませる過程が必要です。
アウロラが硬いペン先をこのエボナイトのペン先に組み合わせている理由は、オプティマがここまで育って、初めて分かるのかもしれません。
そんな難しいところのあるオプティマですが、使い込んで愛用のものになった時、手放せない何物にも代え難い物になってくれると思います。

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硬派な道具 「シルバーン」

硬派な道具 「シルバーン」
硬派な道具 「シルバーン」

机に向かって一日を振り返りながら手帳に書き込むための、私なりの手帳用の万年筆をいろいろなものから検討しました。
自分の中に蓄積された知識を引っ張り出して考えましたが、パイロットシルバーンになるとは私自身も意外に思いましたが、今ではこの万年筆で文字を書くのがとても楽しく感じられます。

シルバーンはどちらかと言うと地味な印象の万年筆で、話題になることもありませんし、あまり持っている人を見たことがありません。
しかし、あるパイロットのペンドクターが愛用しているのは知っていましたので、きっと玄人好みの渋い万年筆だというイメージはずっと持っていました。
私はもともとシルバーンのような、古臭いデザインのものに惹かれる性質で、そんな中に何か別格のものを宿しているものが好きです。

シルバーンの場合、その大きなペン先がとても魅力的に感じられました。
その特徴的なペン先は首軸の半分はあり、そこにとても力強い骨太な書くための道具といった印象を持っています。
そのほとんどがボディに貼りついているペン先の形態からは、見た感じの印象からすると硬い書き味に思いますが、使ってみると意外にも動きの大きいペン先で、柔らかい書き味だと分かりました。
柔らかい味わい深い書き味と筆圧に応じてインクの出かたをコントロールできるところは、この独特な形のペン先の恩恵だと思っています。

ボディはスターリングシルバーです。
最近のスターリングシルバーのボディのペンはコーティングされているものが多く、最初の輝きをいつまでも保つ意味ではそれは非常に有効なのかもしれませんが、それは銀の良さを半減させていると思っています。
純銀のボディを使い込んで、だんだん渋い風合いに変わっていくところも銀の楽しみだと思いますので、銀の万年筆にはあまりコーティングはして欲しくないと思います。
それに銀独特の粘りのある触感が損なわれ、コーティングによって滑りやすくなってしまいます。
パイロットの万年筆の多くに言えることですが、キャップの尻軸への入りが深いところもこの万年筆の良いところです。
それは書いている時にキャップがグラつかず安定しているということにも役立っていますが、バランスの良さにも非常に貢献しています。
バランスの良さは長時間の筆記でも疲れないということになるのですが、思った通りに操ることのできるコントロールのし易さにも繋がります。
コントロールのし易さと言えば、シルバーンのペンポイントはボディを断面的に見た中心に位置しています。
これはコントロールのし易さと言う点で、結構重要なことなのかもしれないと思っていますが、けっして多数派ではないようです。
パイロットにはコンバーター70という他社のものに比べて容量が多く、片手で操作できるプッシュ式のものがありとても便利ですが、カスタムシリーズ全てに使うことができるこのコンバーター70をシルバーンでは使うことができません。
ボディ尻軸付近がかなり絞ったデザインになっているところが災いして入らないようで、ゴムチューブの入ったコンバーター20とインク容量の少ないコンバーター50しか使うことができません。
実用的にはカートリッジの方が使いやすいと思います。
私はインクの色にあまりこだわりのない方なので、迷わずカートリッジで使っています。
デザインの華やかさやスマートさ、趣味的な要素などは持ち合わせていませんが、実用的に万年筆に必要な要件を全て高い次元で満たしているシルバーンのような万年筆が私はとても好きですし、多くの方に使っていただきたい万年筆のひとつだと思っています。

パイロット「シルバーン」

手帳用の万年筆を選ぶ

手帳用の万年筆を選ぶ
手帳用の万年筆を選ぶ

先日、ほぼ日手帳に書き込むための万年筆として、パイロットのシルバーンを選びましたが、シルバーンを選ぶまでにいくつかの候補がありました。

私の手帳用の万年筆の条件として、細くくっきりした線が書けて、インクの出を少なく絞ることのできるということが第1の条件でした。
第2には机に向かって、座った状態で書き、ペンケースに入れて持ち歩こうと思っていたので、細軸ではなく持ちやすい太軸のものを選びたいと思いました。
それらの条件に合う万年筆として、シェーファーレガシー、VLR,パイロットカスタム845、プラチナブライヤー、セルロイドなどの細字を挙げて、毎日楽しく思い悩んでいました。
最終的にシルバーンにしましたが、どの万年筆も机上の手帳書きに適したものだと思っています。

シェーファーレガシーとVLRは首軸に埋め込まれたペン先の形が独特で、硬い書き味をイメージさせますが、細字のものでもサラッとした爽快な書き味を持っていて、いつも気になる存在のペンでした。
特にレガシーはキャップの尻軸への入りが深く、先端に近い所を握って書く人にもバランス良く持つことができます。
カスタム845は名品とも言える、パイロットの定番万年筆の最高峰で、非の打ち所のない万年筆だと思っています。
エボナイトのボディに漆塗りというのも魅力で、手にピッタリと着くような手触りの良さがあります。
この太軸で、大きな堂々とした万年筆を細字で手帳に小さな文字を書くという欲求も耐え難いものでした。
机上で、ペンケースに入れて携帯するという私の都合の手帳用万年筆選びでしたが、手帳用万年筆というとシステム手帳などのペンホルダーに入れることのできる細軸のものが選ばれることが多いと思います。
最近細軸の万年筆で良いものが少なくなってきましたが、パイロットのデラックス漆はかなり古くからあるモデルですが、しっとりとした書き味と漆塗りのボディを持つなかなか味わい深い、渋い万年筆だと思います。
漆塗りのボディを持ちながら、1万円台という価格を実現しているのは、漆塗り技法の量産化ができたパイロットならではのものです。
あまり取り上げて話題にされることのない地味な万年筆ですが、手帳用にもお勧めの万年筆です。

手帳用の万年筆と言っても、特に決まった定義があるわけではなく、それは使っている人の事情によって様々な条件があると思います。
日々のビジネスにおいて、手書きよりもキーボードに向かっている時間の方が多い方がほとんどで、手書きができる貴重な機会が手帳を書く時間です。
書いていて楽しいものを選びたいですね。

デルタ ドルチェビータ ピストンフィリング登場

デルタ  ドルチェビータ ピストンフィリング登場
デルタ ドルチェビータ ピストンフィリング登場

様々なバリエーションがあるドルチェビータシリーズに新製品ピストンフィリング(吸入式)が発売されました。

これまでドルチェビータには様々なバリエーションがありましたが、今回のピストンフィリングは正統進化版とも言えるもので、愛用者の人たちの声に答えるものになっていると思います。
このピストンフィリングの一番良いところはドルチェビータのスタイルを変えず、ピストン吸入機構化を実現しているところです。ボディサイズは以前製造されていたオーバーサイズとほぼ同じで、ミディアムよりひとまわり大きくなっています。
吸入式だから万年筆として優れているということは全くなく、その良さはおもしろいということに尽きると思います。
それは自動巻きの時計とクォーツの時計との違いに近いかもしれません。

万年筆が好きな人で今やドルチェビータを知らない人は少ないと思います。
ドルチェビータミニが女性をターゲットにしたペンとして発売された時、そのとてもインパクトのあるボディカラーとシンプルで分かりやすいコンセプトで、万年筆に興味を持っていた女性たちにすぐに受け入れられた記憶があります。
この万年筆を持つと生活が楽しくなるというドルチェビータのメッセージは、物によってライフスタイルを変えることができると信じられていた当時の世相と重なって大ヒットしました。

確かにドルチェビータは持ってみたいという、「物」としての魅力と生活を変えてくれるのではないかというインパクトを持っていました。
ミニで女性たちの心を捕らえたデルタはすぐにミディアムサイズを発売し、男性たちの心も捕らえました。しかしドルチェビータが商業的に本当に成功し、多くの人に知られることになったのはこのミディアムの発売後しばらく経ってからだったと思います。
このドルチェビータシリーズが注目されよく売れた時、他の万年筆メーカーはきっと大いに悔しがったのではないでしょうか。
特に新しい試みや工夫があるわけではなく、デザイン的にも新たなものがあるわけではないですが、鮮やかなオレンジ色のボディとドルチェビータという今までの万年筆にはなかった印象に残る名前で十分でした。
オレンジ色のボディカラーの万年筆は以前にも存在していましたが、当然ドルチェビータほどの人気は得ていませんでした。
ドルチェビータの成功は、目の付け所を変えた単純な施策によってより大きな効果を得たように感じ、そこにイタリアらしさを感じました。

ドルチェビータはそのデザインばかりが取り上げられていますが、実用的にもとてもまとまった堅実な印象の万年筆だと思っています。
ペン先が柔らかいわけではなく、どちらかというと硬めで、極上の書き味といった味わいではありませんが、しっかりとしていて、ビジネスシーンでも使うことのできる実用性を持っています。
ミディアムの太いボディはデザインにおいても安定感のある印象を与えてくれますが、実用的にも持ちやすく、愛用のペンとしていつもペンケースに入れている方も多くおられます。
それはデザインだけが飛び切り良いイタリア万年筆の代表のように述べられがちですが、M800,146、オプティマなどと並んで、万年筆の定番と言っても恥ずかしくない存在感を身に付けていますし、一本は持っていたい万年筆です。