作り込まれたスマートなものも洗練されていていいですが、濃厚なまでの素材感を感じさせるものに私は魅力を感じます。
いくつかの製品でカンダミサコさんに作っていただいていますが、プルアップレザーのミラージュ革が今私が最も魅力を感じる革です。それらは新しい時から既にコードバンのような美しい艶のある革ですが、使い込むうちにさらに色気のある艶を帯びてきます。
昨年まで、生々しい素材感があって、使い込んだり磨いたりすると劇的にエージングする革ダグラスで様々なものを作ってもらってきましたが、ダグラス革も廃番で入手できなくなってしまいました。
ダグラス革の違う色を使うという選択肢もありましたが、革の色気のようなものを一番感じる色、濃い茶色にこだわりたかった。
ミラージュは、ダグラス革の次の革として当店が選んだ革で、艶の美しさからくる革の色気という点ではダグラス革よりも上だと思っています。
ミラージュ革で作っていただいているものは、1本差しペンシース、バイブルサイズシステム手帳、正方形カバーです。
1本差しペンシースやシステム手帳、正方形カバーの革を丸めた折り返し部分の艶と質感は、眺めたり、さすったりしているだけでも楽しめるほど艶やかです。
タンニンなめしの革のこの艶やかさは、クロムなめしの革にはない魅力だと思っています。
最近は、このミラージュ革と相性が良いと思えるボールペンを手に入れて使っています。
長くファーバーカステルエボニーのボールペンを使ってきましたが、最近S.Tデュポンのディフィボールペン・マットブラックコンポジット&ブラッシュコッパー(以下ディフィコッパー)というボールペンを使い始めました。
生々しい素材感を感じさせる銅を骨格のように使用したこのボールペン、発売された時からずっと気になっていました。
精巧なモノ作りに定評のあるS.Tデュポンが作ったボールペンは、筆記部側に重心を持たせていてバランスが良く、滑らかでヌルヌルとした書き味で有名な油性のディフィ芯を採用しています。
リフィルは金属のチューブを通してセットされていて、内部で芯が遊ぶことなくしっかりとしホールドされる構造で、書くことが楽しいボールペンに仕上がっています。
ディフィのデザインは斬新ですが、シンプルで長いクリップはデュポンの代表作クラシックのデザインを意識しているようにも見えます。新しいデザインのデフィですが、伝統に背を向けたモノではないと感じています。
銅は様々なモノ作りの分野で取り入れられ、その素材感を生かした様々なものがつくられています。昔からある現代の素材だと言えます。
ボールペンが気に入ったモノであると仕事が楽しくなります。ディフィコッパー、新しいデザインの魅力的なペンで、仕事がさらに楽しくなるものだと思います。
以前はこういったモノは男性だけが好むモノでしたが、最近は女性の方も使われるようになってきました。そもそも性別で分ける時代ではとっくになくなっているし、そこに存在するのはどういうモノが好みかという趣向だけだと思うようになりました。
ミラージュ革のステーショナリーも、ディフィコッパーも素材感を生かしたものであることは間違いなく、良い素材とそれを生かす技術があるから、こういうものが生まれたのだと思っています。