私が車の免許を取るために自動車学校に行っていた時は、ミッション車が標準的で、オートマチック車に乗れる時間はわずかでした。オートマは操作がとても楽で、ミッションのようにクラッチ操作をミスしても、ロデオのようにノッキングすることがないので、その時間を楽しみにしていました。
でも乗っていた車は2台目までミッション車で、それは運転を楽しむというよりも、オートマよりも値段が安いから、そして燃費が良かったからでした。
オートマの性能がそれほど良くなかったのかもしれませんが、ミッション車に乗るのが普通の時代でした。
しかし、気がついたらオートマ車がほとんどで、ミッション車の方が珍しいくらいになっていました。
車を走らせるために変速レバーをガチャガチャと動かしたり、渋滞の時はクラッチを調整する足が疲れるミッション車が当たり前だったのに、今ミッション車は趣味で乗る車になっている。
書くことも似たような状況かもしれません。
昔はパソコンなんて職場になく、商品を発注するにも紙に手書きをしてファックスを送らないといけなかった。何かする時は手書きをするということが普通でした。その時はもっときれいな書面でファクスを送りたいから、活字にしたいと思っていたし、はじめて自分が書いた文章をプリンターで印刷した時は、別人が書いたようにきれいで、とても嬉しかった。
でも仕事ではコンピューターに打ち込みすることが当たり前になって、手書きの書類を見ることはほとんどなくなりました。
気が付いたら手書きをしなくても生活は成り立つようになっていて、日常的に手書きをする人は、好きで書く人・書くことが趣味だと言える人がほとんどになっていました。
私もそうですが、書くことが好きな人は万年筆だけでなく、どんな筆記具を使ってでも書いていたいものです。
むしろたまにボールペンを使ったりするのも気分が変っていいと思いますし、仕事中は私でも万年筆よりもボールペンの方が使いやすいと思います。
だから当店はボールペンも提案したいと思います。
時計作家のラマシオンの吉村恒保さんが作るボールペン ペンスポットgate811が久し振りに入荷しました。
ハンドメイドの時計やジュエリーの製作もしながらなのでなかなか出来上がらず、前回から1年近くの月日が過ぎてしまいました。以前軸中央にあったリングがなくなって、継ぎ目のない一体型構造にモデルチェンジしています。
芯を出す時は、車のシフトレバーを操作するようにノックして芯を出します。そして芯を交換する時はレバーを取り外します。
全てのパーツが吉村さんの時計作りのように1つずつ削り出して作られていることを知ると、このボールペンがいかに手間を掛けて作られているか分かります。
適合する芯は、絶妙な滑らかさを誇るパイロットアクロインクボールペン芯が使われていて、吉村さんはよく分かっている方だなと思います。
小振りなサイズはM5手帳のペンホルダーに収まることを意識したからですが、このサイズ感がこのペンを小気味のいいものにしていると思います。
ミッション車を思わせるボールペンgate811は、私たちの時代のミッション車ではなく、趣味で乗るスポーツカーのシフトゲートを思わせるものであることは言うまでもありません。