オマスの精神を受け継ぐASC(アルマンドシモーニクラブ)

ASCのペンを扱い始めました。

老舗であり、マニア受けするペンを作っていたオマスが2016年に廃業して、セルロイドなどの部材を引き継いだのがASCの創業者カルタ・ジローニ氏でした。

本当はオマスの名前も引き継ぎたかったそうですが契約の関係で叶わず、ブランド名をオマスの創業者の名前をもらいアルマンド・シモーニクラブとしました。

ちなみにOMASという名前もオフィチーナ・メカニカ・アルマンドシモーニの頭文字をとったものです。

カルタ・ジローニ氏をそこまで駆り立てたのは、他のメーカーとは一味違う、尊敬に値する万年筆メーカーオマスへの愛情だったのでしょう。

ASCはアメリカの会社で、メイドインイタリーのオマスとは違う、各部品を専門業者で製作する分業による現代のペン作りをしています。しかし、オマスへの愛情、イタリアのペンへの憧れには変わりなく、オマス愛を隅々まで行き渡らせたゴージャスなペンを世に送り出しています。

ASCのペンはオマスのペン作りの精神を受け継いだメーカーだと分かるのは、それぞれのペンの書き味の味わい深さから窺うことができます。

柔らかいペン先にエボナイトのペン芯の書き味は、大量生産品では出せないいい味を持っています。

スチールペン先の最も安価なスタジオシリーズでも、そのデザインのまとまりの良さ、透明感のある素材を使ったその姿はオマスのペンを彷彿とさせます。

ボローニャシリーズは、まとまりの良いデザインをセルロイドを使って高級感を与えたオマスらしいASCならではのシリーズで、非の打ち所のない完璧な仕上がりの代表的なシリーズです。

オマスの三角形の断面を持つ衝撃作360を現代流にアレンジしたのがトリアンゴロです。

360はシンプルな装飾のほとんどないペンでした。三角形というインパクトのある姿に装飾は必要なかったのでしょう。

トリアンゴロは、透明なセルロイドを使って細部を洗練させた、ゴージャスでインパクトのある姿のペンに仕上がっています。

当店もオマスへの愛情は強かった。

オリジナル万年筆を作ったり、イタリアの本社を訪ねたりするほど力を入れていましたので、オマスの廃業は当店にとってもショックな出来事でした。

私がオマスを知ったのは、1990年代でした。

他社がしていない木軸のペンにも積極的に取り組んでいましたし、イタリアの上質な革を使ったペンケースも作っていました。

ほとんどのブランドが、黒、青、ブルーブラックのインクしか作っていない時代に、様々なカラーインクを発売していました。

他のメーカーの一歩も二歩も先を行っていた、取り組み方が全く違うメーカーで、それがオマスらしさになっていました。

私は主に万年筆を扱っていますが、昔からインクはもちろん革製品についても、万年筆と組み合わせて考える習慣があり、今思うとオマスの影響かもしれないと思います。

そうやってオマスの影響を受けて、オマス愛を持っている業界関係者はたくさんいるだろう。

今でもオーバーサイズのパラゴンの書き味を覚えています。ライバルはモンブラン、と自信満々で言ったオマスのCEOの言葉に、味のあるパラゴンの筆記感が重なりました。

私たちに影響を与えた万年筆メーカーオマスはASCのペンの中に生きていると信じています。

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