モンブランとペリカンはよく比べられて語られることが多いと思います。
世界にはたくさんの万年筆があるけれど、この2つの会社に関してだけは、売上が1位と2位というわけではないのに、ペリカン派とモンブラン派に分かれて論争されている。・・と言うとさすがに大げさだけど、お客様と話をしていると両派に分かれる気がしています。
どちらもドイツの老舗メーカーで、現在もハードな仕様にも耐えうる良い万年筆を作っています。
しかし2つの会社が辿ってきた道はあまりにも違っていて、対照的にさえ思えます。
モンブランは早い段階でファッションブランドの傘下に入って、筆記具のメーカーと言うよりもファッションブランドと言える存在になっています。
ペリカンはあくまでも文具メーカーであり、多くの一般ステーショナリーや学童用万年筆も作っています。
モンブランが目指す万年筆のあり方はファッションのアイテムにもなる万年筆で、ペリカンは文房具の中のひとつとしての万年筆を示してきました。
私たちはもしかすると、モンブランというブランドに対してエリートの象徴を見て、対するペリカンに庶民性を見ているのかもしれません。
ペリカンの定番モデルには、縞模様やクリップにあしらわれたくちばしなど遊び心があって、シンプルで真面目な雰囲気のモンブランとは少し違います。大人の余裕のようなものが感じられて、惹かれる方も多いと思います。
勝手に庶民の象徴に祭り上げてしまったペリカンですが、その使用感は万年筆の王道と言えるものだと思っています。
今のペリカンの最も代表的な万年筆「スーベレーンM800」は、硬すぎないガッシリしたペン先と適度な重量感のある万年筆で、最もリラックスして自然に書ける万年筆の筆頭だと思っています。
何も気にせず書くことに集中できる万年筆は、モンブランで言えば149ですが、ペリカンはそんな万年筆を149の半分の価格で作っています。
コロナ禍の影響はペリカンにも強く作用して、一時は全く流通していない状況が続いていましたが、今年になってやっと戻ってきました。
やはりペリカンのない万年筆売場は寂しいし、万年筆のお手本だと信じているM800を皆様にお勧めできないのは不本意でした。
定番モデルも少しずつ揃うようになってきましたが、最近の話題は限定生産品M800グリーンデモンストレーターです。
M800の縞模様は、生産の効率化・耐久性の向上を目指して透明部分がブラックに変更され、インク残量が見えなくなりました。インク残量を確認しながら万年筆を使いたい人にはM800グリーンデモンストレーターの発売はとても有難いと思いますし、何よりも大量のインクの存在を感じながら書く安心感を味わわせてくれます。
万年筆は豊かでラグジュアリーな雰囲気を味わえるモノが多く、その部分に憧れる人も多いかもしれません。しかしペリカンは万年筆は書くための道具、筆記具であることを常に忘れず、自分の手を動かして仕事している我々庶民のものであり続けようとしているように思います。