若い頃はスーツの胸ポケットに万年筆を挿していました。
アウロラはキャップを閉じると短くなって、胸に挿すとちょうどよく収まって恰好よかった。
ペリカンM800は少し長いので胸ポケットからキャップが出るけれど、クリップはポケットに挟むことが出来たので、やはり胸ポケットに挿していました。
ある時スーツの胸ポケットの布地がほつれていることに気付いて、すぐに万年筆を挿しているからだと思い当りました。
ペリカンもアウロラもクリップの内側はスムーズになっているものだと思っていましたが、実はどちらも内側に継ぎ目があって、布によっては引っかかることが分かりました。
クリップはペンをポケットに挿すためのものではなく、机上に置いた時の廻り止めもしくはデザイン上のアクセントではないかと思い始めて、クリップで布地を挟まなくなりました。
服を傷めたくなかったからですが、それ以上に万年筆のクリップが広がってしまう気がして、なるべくクリップで何かを挟むことはしたくないと思い始めました。
服のポケットにペンを入れる時は、1本挿しのペンケースに入れてからポケットに挿すようになりました。
当店で3万円以上のペン(中古・委託商品は除く)を買って下さったお客様にプレゼントしているサービスペンケースは、そのためのものでもありました。
サービス品ではなく、お買い求めいただけるものでカッコイイものを作りたいとずっと思っていました。
刀の鞘をのように片方が閉じていて、収めやすく取り出しやすいシンプルなデザイン。イメージして描いたスケッチを、当店オリジナルの革製品を作ってくれている革職人の藤原さんが形にして下さって、オリジナルのレザーケースが出来上がりました。
シンプルでオーソドックスなデザインと、どちらかのサイズに大抵のペンがピッタリ収められる、ちょうどいい大きさのものを作りました。
Sサイズは細めのペンを収めるのにいいサイズで、ボールペンやシャープペンシルを収納するためのものになっています。
Mは見た目よりも太めのペンも入る、モンブラン149・M1000も収まる万年筆用のサイズです。(リザード革は内張りがあるため146・M800サイズまで)
今はサドルプルアップレザーとクードゥー革で作っていますが、昨年発売してすぐ完売した、ゴージャスなリザード革が再入荷しました。
ペンをより優しく包み込むための柔らかい内張り革には、ピッグスエードを使っています。藤原さんはそのピッグスエードを裏表逆に使うことで、中のペンが滑りにくいようにしています。
とてもシンプルでオーソドックスなものかもしれませんが、そういうもので上質なものは意外と少なく、ずっとこういうものを作りたいと思っていました。
最近よくご紹介している綴り屋さんのペンはクリップがないデザインですが、こんな風に1本挿しレザーケースを使うと胸ポケットに入れて持ち運ぶこともできます。