River Mail マンスリーダイアリーカバー ~ISHIBE KOJI~

River Mail マンスリーダイアリーカバー ~ISHIBE KOJI~
River Mail マンスリーダイアリーカバー ~ISHIBE KOJI~

仕事の方法を選択する時に、感覚的に好きな方を選びたいけれどそれはあくまでも感覚的なものだから、それを選択する理由を人に上手に説明できない。
理論的だったり、数字の裏付けがあったりの常識的な正論に対して、こちらの方が好きだからということを言い出せずにいました。

それはあまりにも子供っぽい、幼稚な思考だと自分の中の常識的な部分がブレーキをかけていたのだと思います。
でも中年と言われる年齢になって、面の皮が厚くなったのかもしれないけれど、好きだからという感覚的決断でも堂々としていようと思えるようになりました。
理論的に正しかったり、数字的な裏付けがあったとしても、そんな選択は誰もがすることだし、そのロジックが自分たちに当てはまるとは限らない。
それなら自分の感覚で判断した方が、失敗しても後悔しないのではないかと思います。

京都山科のRiver Mailの駒村氏と一緒にWRITING LAB.を始めたのもそんなただ一緒に何かしたいと思ったからという、まるで友達付き合いの始まりのような感じでした。
二人が組む理由を営業的なメリットやインディアンジュエリーとステーショナリーの融合などと説明をつけようと一応は努力はしたけれど、何か白々しい感じがする。
何せ始まりは「何となく合いそうだった」というものだったので。
今はそれも堂々と言えるけれど、始めたばかりの頃は何かお客様に説明しないといけないのではないかと思ったりしていたのです。

駒村氏は、当店、分度器ドットコム、大和出版印刷が共同で企画したオリジナルリスシオワンマンスリーダイアリーをWRITING LAB.の革封筒の中に薄いダイアリーを書類と一緒に入れたり、ベルルッティのブリーフケースに入れたり、ボロボロの手提げ紙袋に入れて使っています。

本当はウィークリーダイアリーやデイリーダイアリー、全てを使っていただきたいけれど、マンスリーダイアリーだけを愛用されている方は、多いと思っています。
あの薄さは荷物にならなくてとてもいいし、紙面のサイズはそれなりに大きく、薄さに対しての情報量が多いのです。
予定をチェックする時に見開き1か月のカレンダータイプはとても便利だと思います。
マンスリーダイアリーの愛用者の駒村氏が、自分が使いたいという理由でベラゴの牛尾さんに依頼して完成したのが、リスシオワンマンスリーダイアリー専用カバー ISHIBE KOJI です。

石塀小路は、京都高台寺近くのとてもきれいに整えられた雰囲気のある小道で、この京都らしい家並み、石畳の石塀小路はとても京都らしい場所だと思います。

ベラゴ牛尾さんがとても手間がかかると嫌がったダブルステッチ、薄く表情が出る程度に留められたパティーヌ技法による色付けなど、とても上品なものに仕上がっていて、アパレルの業界に身を置いてきた駒村氏のセンスと、もともと繊細で美しい作品を作ってきた牛尾さんの技術が融合した、ぜひ使ってみたいと思わせてくれるものになっています。

マンスリーダイアリーを愛用してくださっている方のためのカバー ISHIBE KOJI、私の企画ではないけれど私も誇りに思っているカバーに仕上がっています。

木の効用 セーラー銘木シリーズとオマスコイーバ

木の効用 セーラー銘木シリーズとオマスコイーバ
木の効用 セーラー銘木シリーズとオマスコイーバ

様々な考え方があると思いますが、万年筆と人との関わりを、仕事道具と趣味的な遊びの道具と生き様を反映するものという3つに分けて私は考えています。
人それぞれ万年筆に求めるものが違っていて、だから選ばれる万年筆が違ってくる。
木の万年筆は趣味的な遊びの道具だと思っています。
それは磨いて艶を出す楽しみをまず第一に思い描くからです。
最初はなかなか光らないけれど、我慢して磨き込むうちに少しずつ艶が出てきて、気が付くとピカピカになっている。

もちろん実用的な効用も木のボディにはあります。
寒くなってくると、万年筆のインク出が多くなってきたとか、キャップの中にインクがついているという相談を受けることが多くなります。
冷たい外気の中にあった万年筆が温かい室内に入った時にインクタンクの中の空気が温まり、膨張してインクを押し出そうとします。
現代の万年筆のペン芯は、その溢れそうになるインクを受け止めるようになっていますが、どうしてもインクの出は多くなってしまいます。

また持ち運び時のショックで、空気膨張によってペン芯に溜まったインクがキャップ内に落ちてしまうこともあります。
一番多い万年筆のボディの素材、アクリルやプラスチックは熱を伝えやすいのは否めず、エボナイトや木は熱伝導率が低く、万年筆内の温度が変わりにくいと言われています。
セーラーの伝統のある万年筆のシリーズ、銘木シリーズがこの時期に復活したのは、木の温かみを冬の方が感じやすいということもあると思いますが、冬のインク出量の変化対策に木のボディが有効だということも理解してのタイミングなのだと思っています。

この万年筆の用途は、細字のみの設定、勘合式のパッチンキャップ、小型のボディなどから手帳やメモに書くための万年筆。
ポケットにいつも差していて、一番手が触れる機会の多いペンを使うほどに味わいの出る木で作りたいというセーラーの意図があります。
旧銘木シリーズは中字のみのペン先、大きく重ため(28g)のボディで、ゆったりと机に向かって書くイメージだったので、万年筆が一番よく使われるシーンの時代による変化に合わせたコンセプトの変更です。

木の万年筆は趣味的な遊び道具と申し上げましたが、銘木シリーズは趣味的な部分とポケットに差して、メモなどの使い易いという仕事道具としての機能性を兼ね備えたものになっています。
オマスコイーバは、最近では見られなくなってしまった遊び心のある面白い限定万年筆で、こういうものが久し振りに発売されたと、個人的にはとても喜んでいます。

面白い木目のボディはジリコテウッドで、その色合い、サイズもコロナサイズの葉巻そのものです。
ジリコテウッドのボディとバーメイル(スターリングシルバーに金張り)の金属部を持つボディは遊び心に溢れていますが、箱も凝っています。
葉巻のヒュミドール(保管庫)として使うことができるように、湿度計が内蔵されていて、鍵までついています。
この万年筆は間違いなく趣味的な遊びの要素を持った万年筆だと言えますが、イタリアの万年筆にはそのような余暇を楽しむような、仕事から離れたところで使うような万年筆、仕事中であっても遊び心を忘れないようなものが多く存在します。
イタリア製の万年筆に、多くの人がそれを期待したからだと思いますが、きっとイタリア人のライフスタイルが反映されたものなのではないかと思っています。
長い昼休み仕事場から家に帰って食事の後何か書き物をする時、週末日本のようなレジャー施設のないイタリアでは家で過ごす時間も長く、そういった時間をより楽しむためのもの。
そのようなイタリアでの生活も思い描くことができるのが、イタリア製の限定万年筆で、オマスコイーバはその期待に応えた万年筆です。
どちらの万年筆もそれぞれのメーカー、社運を賭けた勝負に出たものだと思うけれど、万年筆の世界を遊び心のあるものにしたいという願いがこもったものであるような気がして仕方ありません。

書店の理想と書皮

書店の理想と書皮
書店の理想と書皮

WRITING LAB.の活動を一緒にしている駒村さんの山科のお店River Mailから、以前駒村さんの伯父さんとお母さんがされていた本屋さんのブックカバー 書皮(しょひ)が出てきました。
River Mailは10年ほど前に閉店したその本屋さん「本のこまむら」を改装してできたインディアンジュエリー/ステーショナリーのお店で、京阪電車京津線四宮駅から南すぐの場所にあります。

今昔の面影を偲ぶのは難しいけれど、四宮駅から南方向に四宮商店街があって、道の両側に商店が軒を連ねていました。
「本のこまむら」ができたのは昭和40年代前半で、商店街も賑やかに人が行き来していたそうです。
小さな駅、小ぢんまりとした商店街に、四宮神社があり、山が近くに見える京都と大津という都市に挟まれた田舎町の風情が感じられる町が四宮です。

「本のこまむら」の書皮にはおもしろい逸話があります。
オープンの告知に配ったチラシの中に伯父さんは長新太さんが「星の牧場」という絵本で描いた絵を入れました。
そのチラシがどう廻ったのか分かりませんが、東京におられた長さんの知るところとなり、長さんから絵を無断で使っていることを指摘する手紙が届きました。
伯父さんは長さんに参考書、百科事典や絵本の子供の本中心の本屋を成功させたいと長さんに夢を語り、それに共感した長さんが絵を書皮に使うことを承諾してくれました。

その話を駒村さんから聞いて、伯父さんの情熱、それを意気に感じた長さんの心の広さ、その時代のおおらかさ全てに心を打たれました。

私たちが高校生くらいの頃までは、たくさんの本屋さんがありましたが、様々な娯楽が出来て本を読む人が減り、コンビニができてジワジワと減っていきました。
とどめはインターネットで、安く、早く本を買うことができるようになったことで、個人経営の本屋さんが激減しました。

個人経営の本屋さんそれぞれに理想があって、それを目に見える形で表現したのが書皮で、お客はその書皮を纏った本に誇りを持って、例えば電車の中で鞄の中から取り出す。
世の人の大半はいつしかどこで買ったという誇りのようなものを持たなくなって、店の提案ではなく、インターネットの情報や人気投票というランキングで本を選ぶようになって、少しでも安くて早い本を読むようになりました。

こだわりがあって提案のある個性的な本屋さんで本を選ぶ機会を逸したのは、私たちがそういう本屋さんを利用しなくなったのが原因で、私も大変後ろめたく思うのです。
本のカバーで最も使いやすいのは、本屋さんが掛けてくれる書皮で、何の出っ張りもなくて、手の収まりが良い。

余談ですが、書皮を片側のページだけ表紙にはめて、反対側は巻き込むだけで客に渡す本屋さんが多くなりました。
時間がかかるし、ハードカバーなどは特に手間なのも分かるけれど、私は両側の表紙にしっかりと書皮を通してもらいたいと思います。
学生時代垂水東口の本屋さんで4年間アルバイトをしていたけれど、書皮はかならず両側の表紙に通してお客様にお渡ししていました。

話は戻りますが、誇りを持って使うことができる書皮が私の周りに少なくなって、それではとWRITING LAB.で革で書皮を作ろうということになりました。
栃木レザーの上質な、色合いもWRITING LAB.らしい色気のあるクリーク革を極限まで剝いて、薄くしたものを張り合わせています。
反対側は本の厚みによって折り目を入れる場所が異なりますのでフリーにしています。
折りたい所に指で少量の水をつけて折っていただくと折り目がつきやすく、ついた折り目も水をつけて押さえていただくと消えやすくなります。
上質な革をあえて薄く紙のように使うのは、とても贅沢な使い方ですが、革を使うことでしか、個性的な本屋さんのこだわりの書皮に代わるものを作ることは不可能だと思いました。

ブックカバーとは少し違う素材感をぜひ試してみて下さい。

司法試験の万年筆・2

司法試験の万年筆・2
司法試験の万年筆・2

司法試験の受験生の方ほど万年筆の性能の限界まで使う人たちは少ないと思いました。
1日5時間の筆記テスト、そしてそれまでの一日の大半にも及ぶ日々の勉強。
彼らが半年後、1年半後、あるいはその次の年の試験のために当店を訪れ、万年筆を誂える光景は、いつもの風景になっています。

来られたお客様が試験用の万年筆を探していると言われるとお出しする万年筆が決まっていて、その中からご自分の手に合うものを選ばれます。

どれが一番手が疲れなさそうか、どれが「瑕疵(かし)」という字を潰れずに書くことができて、一番滑らかかなどを見極めます。
当店にはもちろん試筆用紙がありますが、勉強で使われている答案用紙と同じ罫線の入った紙をお持ちでしたら、それで試された方が見極めやすいと思いますので、それを使われるようにお勧めしています。

大学や法科大学院、予備校、インターネットなどで情報交換がかなり活発に行われていて、そういった情報から当店を知り、来店して下さるのはとても有難いことです。
ほとんどの方が万年筆を使ったことがないと言われますので、今までどんな筆記具を使われているか興味本位でよく聞くことがあります。
一番人気があるのはゼブラのゲルインキボールペンのサラサで、字幅は好みによって、かなり細めから太目まで様々でした。
このように少しでも早く、きれに書くことができるペンを追求している受験生の皆様から教えてもらうことは非常に多く、その知識は私の宝になっています。

受験生の方にお勧めする万年筆は、実用的に完璧な国産メーカーの2万円クラスが最も良いと思っていて、頑なにこれをお勧めしてきました。
ですが、受験生の方々の反応やご意見をお聞きして、認識を新たにしたところもありますので、当店で評判の良い司法試験受験生のための万年筆を数点挙げさせていただきます。

国産万年筆の場合、どの万年筆も「細字」が答案用紙の罫線の太さには、一番文字がきれいに見えて使いやすいと思いますが、筆圧があまり強くない人は「中細」を使った方が、滑らかさが増して書きやすいと言われることがあります。

セーラープロフィット21はやはり一番人気がある早書き万年筆だと思います。
適度なペン先の硬さと握りやすいボディが評価が高い理由だと思います。
同じセーラーのプロフィットスタンダード21はペン先が小さい(穂先が短い)ため、なるべく万年筆の下の方の紙に近いところを握って書きたい人に向いています。
同じサイズでプロフィットスタンダードというものがありますが、3000円の違いで書き味の良い21金ペン先仕様が買うことができますので、こちらの方がお勧めです。
セーラーの上記の2本は、乾きが早くてにじみが少ない(詰まりやすいというデメリットもあります)顔料インク「極黒」をカートリッジで使うことができますので、それも利点になっています。

パイロットカスタムヘイリテイジ91は1万円クラスの万年筆ですが、太目のボディで握りやすいと言われる方も多くおられます。
書き味が良く完成度の高い万年筆カスタム742とともにハードな筆記を担うだけのポテンシャルを持っていますが、中にはペン先の柔らかさが向かない人(筆圧の強い人)もおられるようです。
カスタム743くらいになるとペン先の弾力も強くなり、安心して使うことができるタフさも兼ね備えています。

ペン先のタフさでいうとペリカンM800を超える万年筆は少ないと思います。
今まで吸入式の万年筆を受験生の方にお勧めすることはありませんでしたが、気にされない方も意外に多く、少し書いただけで、M800と他の万年筆との歴然とした違いを実感されるようです。
同じペリカンのM400は軽く、細めのボディで他の筆記具から持ち替えた方にも違和感なく使うことができて使いやすい、ともよく言われます。
ペリカンはドイツのメーカーで、国産の万年筆よりもインク出が多く字幅が太くなりますので、M800もM400も「EF(極細)」が最適です。

最後に、ご予算の都合で万年筆に二の足を踏んでいる人は、万年筆としては安めのLAMYサファリから使ってみてほしいと思っています。
金ペン先の弾力のあるような耐久性はないけれど、紙に置くだけでインクが出てくれて、ボールペンよりも必ず早く、きれいに書くことができると思います。

*画像は当店のメッセージノートに書いて下さった文章です。2008年司法試験にストレートで合格され、現在は検事としてご活躍されています。

工房楔の万年筆スタンド「パラーレ」

工房楔の万年筆スタンド「パラーレ」
工房楔の万年筆スタンド「パラーレ」

完璧に自分をコントロールして、教科書通りの生活、健康的なライフスタイルを送ることは素晴らしいことだと思いますが、皆がそうでなくてもいいと思いますし、自分はそうではないと恥ずかしながら告白しなければいけません。

意思の弱さなどからついつい夜更かしをして次の日辛い思いをしたり、様々な欲望と戦って負けたり勝ったりするのも、人間味があるのではないか。
正論通りだけではない二面性があってもいいのではないか。でも自分が譲れない仕事の領域で前向きであればいいのではないかと、自己弁護したりしています。

机の上がいつもとても片付いている人もいると思いますし、逆にとても散らかっていて、ある時それが自分自身で許せなくなって狂ったように片付ける人もいて、後者の人はとても人間味溢れる人で、面白い人だったりすることもある。
楔の新作、ペントレイ兼スタンドパラーレは、そんな人間味を理解して深みを増した永田氏の遊び心が込められているような気がして仕方ありません。

ペンを斜めに立てるためだけであったら、ここまで素材を厚く使う必要はありません。
今までの楔作品であれば、もっと薄く実用性と見た目のバランスのみを追求したストイックなものになっていたと思います。
しかし、パラーレは厚すぎるくらいに良材であるウォールナットとメイプルを使って、独特の存在感のある遊び心のあるものに仕上がっています。

万年筆置きですが、パイプを置いてもサマになりそうな男っぽい雰囲気もある。
散らかった机の上でも、このような万年筆の避難場所があれば、万年筆を書類の山の下から発掘しなくてもいいし、他のものと当てて傷つけたりしなくてもいい。
こういったペンスタンドは意外と実用的だと、机が散らかる人ほどその有用性を知っているのではないかと思います。

万年筆収納具は本当にたくさんの種類が世の中にあります。
その中で楔のものは間違いなく、5年後、10年後と歳月が経つほどに、ウォールナットは光沢を帯びて杢が浮き上がってくるように見えるようになるし、メイプルは色に深みが増し、艶が出てきます。
良いエージングを見せてくれるものは、良い素材を使って、表面処理を施していないものでなければなりませんので、個体差が出ることが恐い大量生産のものではこの真似はできません。

今年の楔のイベントは、今まで以上に遊び心を感じさせるものが多かった、これからはそれを皆様に永田さんに代わって、私が伝えていかなければいけないと思っています。

イベントが終わって、私は祭りが終わってしまったと寂しい気持ちになって、スタッフKはそれなりにお客様方が来てくれてホッとして、永田さんはやり遂げたと使命感からの解放を、それぞれ感じています。

⇒工房楔机上用品トップへcbid=2557546⇒工房楔机上用品トップへcsid=5″ target=”_blank”>⇒工房楔机上用品トップへ

手帳・ダイアリー用の万年筆

手帳・ダイアリー用の万年筆
手帳・ダイアリー用の万年筆

2013年版オリジナルリスシオダイアリーが完成しています。
当店、分度器ドットコム、大和出版印刷が共同で企画し、万年筆で書くことを前提に作り、今回で4年目を迎えました。

当然、私は愛用しています。1冊だけでもスケジュール、記録を兼ねてしまうカレンダーのようなマンスリーダイアリー。
使い方の自由度が高く、行動予定・仕事の期限などを管理しやすく、計画、立案にも役立つウィークリーダイアリー。日記代わりにも使え、仕事などの記録に特化したフリーダイアリーであるデイリーダイアリーを代わる代わる使っています。

毎年リスシオダイアリーの次年度版が出来上がると、これに合う万年筆は何か考えます。
ノートや原稿用紙、便箋もさることながら、ダイアリーこそ万年筆で書きたいと思っていて、それは筆圧をかけずに書くことができるということもありますが、後から読み返した時に見やすいということもあります。

最初から最後まで同じ色のインク、同じ線の太さで書かれているダイアリーは何とも美しいと思います。
それは人によって違い、私がたまたまダイアリーに書く文字は全て揃っていないと嫌なだけなので、これからの手帳への筆記を担う万年筆についていつも考えます。
手帳に仮にペンホルダーがついていても、傷がついたり、落としたりすることが怖いので、手帳用の万年筆でさえ、ペンホルダーには差しません。
そんな私がお勧めする手帳、ダイアリー書き用の万年筆はボディの大きさなどは関係なく、どれが手帳をきれいに気持ちよく書くことができるかという条件しかありません。

でもそれはとても大切なことだと思っていますし、もしかしたら手書きの中で一番多い用途である、手帳、ダイアリー書きの万年筆をペンホルダーに入るからという理由だけで選びたくないということです。
握りやすい大きさもあって、ペン先のフィーリングも細字でも滑らかで良いものを使いたい。

オマスアルテイタリアーナミロードは、ペリカンM800、パーカーデュオフォールド、モンブラン146と競合する万年筆ですが、ペン先のしなやかさ、気持ちいい書き味は他社よりも優れていると思っています。

字幅の種類も豊富で、極細もあって、これが手帳など細かい文字を書かなければならないものへの筆記に一番向いています。
細い字幅を揃えている他の万年筆では、アウロラオプティマもダイアリー書き用の万年筆としても素晴らしいし、シェーファーの細字の滑らかさは伝統的なものでこちらも定評がありますが、オマスミロードは線は細くても、柔らかいペン先を持っていますので、非常に気持ちよく書くことができます。

ところで、オマスミロードはブラックボディがプラスチックのペン芯、マルーンボディがエボナイトのペン芯になっていて、このペン芯の違いが書き味に微妙な違いを持たせています。

プラスチックペン芯のブラックボディはハード目のしっかりした書き味で、エボナイトペン芯のマルーンボディは柔らかい書き味という違いがあり、ペン芯の違いで両者の違いが出ているのか、そして敢えて違えているのにはどういった狙いがあるのか、分かりませんが、自分の求める書き味によって選ぶことが出来るのはユニークだと思います。

最近、オマスを使う人が増えてきたと実感していますが、実用的にも使う理由のあるオマスアルテイタリアーナミロードは、手帳、ダイアリーを書くという用途にもぜひ使っていただきたい万年筆です。


*オマスアルテイタリアーナミロード ブラック/ゴールドフィニッシュは現在サイト作成中です。しばらくお待ち下さい。

万年筆を教えてくれたオプティマ~新色ブラックパール発売~

万年筆を教えてくれたオプティマ~新色ブラックパール発売~
万年筆を教えてくれたオプティマ~新色ブラックパール発売~

自分で買った2本目の万年筆は、アウロラオプティマクラシックグリーンでした。
当時、マーブル模様のセルロイドを現代流に復刻した「アウロロイド」という素材でできものをオプティマクラシックと言い、単色のモデルと区別されていました。現在は単色のモデルはなくなって、オプティマは全てマーブル模様になりましたので、クラシックの名前はなくなっています。
確かにマーブル模様の方が、アウロラらしく、このオプティマの個性を際立たせています。

それは今でも良い選択だと思っていますが、1本目の時は、一般的に良いと言われているペリカンM800を選びました。
2本目の万年筆は、自分の好みや用途に合うものをよく考えて選べ、その時の自分の感覚に一番近かったのが、アウロラオプティマでした。

1本目のペリカンM800のMはお客様への手紙用によく使っていましたが、一番万年筆をよく使ったのは、手帳への筆記でしたので、Fのペン先を選びたかった。
立ち仕事でしたので、スーツの胸ポケットやYシャツのポケットに差しても底が当たらない、短めのボディでないといけない。

当時まだ30歳になったばかりだったので、本当はシルバーの金具のものが欲しかったけれど、当時のオプティマには金色の金具しかなく、でもそれもまたアウロラらしさだと思えました。
今では本数が増えて、同じ万年筆ばかり使うことはなくなったけれど、手に入れたオプティマグリーンのFでシステム手帳にいつも何か書いていました。
オプティマは私に様々なことを教えてくれた先生でもありました。

使い始めたばかりの頃はインクが薄くしか出なかったのが、2週間程経って急にインクがスムーズに流れるようになり、エボナイトのペン芯は馴染むのに時間がかかるということ、そして長く使い続けるともっと書きやすく変化してくれるということ。
ペリカンなど他の万年筆に比べるとオプティマはインクの性質に書き味が大きく左右されます。
それによって書きやすくも書きにくくもなる、インクと万年筆との相性について考えることになったのも、オプティマを使っていたからだと思います。

祖父の葬儀で長野に帰った時、通夜の夜更けに整形外科医の従弟と万年筆を見せ合って、同じオプティマグリーンを使っていたことを知って、不思議な縁を感じてとても嬉しく思いました。
服や靴などが同じだと何となく居心地悪く感じたりしますが、万年筆が同じだと何か共感し合えたような、仲間意識のようなものをもたらしてくれ、それは定番の息の長いモデルならでは喜びだと言えます。

オプティマにバーガンディが新色として追加され、銀色の金具がオプティマにも採用されたことにショックを受けてから7年以上経ち、オプティマに新色ブラックパールが加わりました。
これからもオプティマはアウロラの代表作として、そして万年筆の定番として作り続けられ、それを使う人に万年筆というものについて、それを使う喜びについて教えてくれたりする先生であり続けるのだと思います。

⇒AURORA オプティマ ブラックパール

5回目のお礼

5回目のお礼
5回目のお礼

9月23日(日)、開店5周年を迎えます。
今年もまた開店記念の日を迎えることができて、時世を考えると本当に幸せなことだと思っています。
新しくできた事業の半分以上は3年も持たずになくなっていると言われていることを知らず、良い結果だけを信じて始めた店で、今から考えると冷や汗ものの開店でしたが、皆様に支えられて今まで続いて来ることができました。

何度も言っていることですが、今まで続いてくることができたのは、何の取柄もない、未熟な私を支えてくれたスタッフと、応援してくれている取引先の人たち、そしてもちろんお客様方のお蔭以外の何ものでもありません。

当店のような小さなお店にとってお客様の次に大切なことは、魅力的な商品を作って納めてくれる職人さんたちとのつながりであり、このつながりがあるからこそお客様が立ち寄って下さる店となっています。

ル・ボナーの松本さん、工房楔の永田さん、カンダミサコさん、イル・クアドリフォリオの久内ご夫妻、Sky Windさん、これから商品を納めてくれることになっているベラゴの牛尾さんや万年筆、文具メーカーの人たちには助けてもらってばかりで本当に感謝しています。
これからもそのつながりを持ち続けていきたいと心から願っています。

たくさんの商品がなくてもいい、限定品がどこよりも早く入らなくてもいい。
(本当はそうだといいのですが)そういったことよりも、作り手の顔の見える、私自身が使いたいと思えるもの、楽しいと思っているものを提供することが当店の価値なのだと、最近思えるようになりました。

自分が使いたいもの、使っているものを皆様にご提案できることにとても喜びを感じています。
そういったモノづくりや、楽しんでいる事をお客様に見てもらったり、自分の書いた文章でお伝えしたりする。
ある意味大きいお店では絶対にできないやり方なのかも知れませんが、とても幸せだと思っています。

5周年と言ってもほんの少しだけ特別に感じられる節目となる日くらいに思っていますが、これからも今までと同じように続いていくために、今まで以上に何かしていこうと改めて思う日になりました。

そのひとつとして、以前からぜひやりたいと思っていた、文集を作りました。
テーマは「はじめての万年筆」。
ブログや店頭で原稿を募集したところ、40人の方々がそれぞれの「はじめての万年筆」について書いて下さいました。
読むたびにそれぞれの情景が見えるような文章ばかりで、味わい深いものが揃っています。
また、最後のページには当店の略年表や4コマ漫画のキャラクターのイラストが載っています。

当店はマイペースでこれからも続けていきたいと思っています。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

*文集「雑記から」~はじめての万年筆~は、9月22日(土)から販売致します。1部200円(メール便の場合280円)となっています(製本代実費の一部負担)。文集をご希望される方は、メール penandmessage@goo.jp にて承まりますのでぜひお申し付け下さい。
ホームページでもご紹介させていただく予定です。

IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催

IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催
IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催

イル・クアドリフォリオの工房は、久内さんご夫妻がフィレンツェに修行に渡る前に在籍していた革学校の仲間たちと共同で借りている一軒家の中にあります。

外観は昭和40年代に建てられた民家ですが、内装は自分たちで壁や天井を変えて間取りも作り替えられている、今の感覚のクリエイティブな空間になっています。
ここでご夫妻は仲間たちと刺激し合いながら、日々革小物・靴の製作をされています。
仕事を始めて1年半しか経っていないので、暮らしは決して楽ではないと思うけれど、お二人はとても明るく、そして好きなことを仕事にできる幸せを噛みしめながらマイペースな毎日を送っておられるようです。

私はお二人からイタリア人の職人のライフスタイルを見ますし、実際お二人はフィレンツェの工房でのライフスタイルが染み込んでいるようです。
イル・クアドリフォリオのブログ http://ilquadrifoglio.blog53.fc2.com/ 「La Dolce Vita~気ままな生活」というタイトルはあまりにもはまり過ぎている。

私たちは久内さんたちにいつまでもそんな風に暮らして欲しいけれど、作品はなるべく早く見たいと思いますし、お願いしている新製品をどんどん出してもらいたいと思っていますので、イル・クアドリフォリオのお二人について考える時、とても複雑な気持ちになります。

イル・クアドリフォリオのお二人とは、昨年12月頃旧居留地に工房兼ショップを構えるベラゴの牛尾さんから紹介されてお会いしました。
WRITING LAB.として作ってもらいたいと牛尾さんに打診したものがイル・クアドリフォリオの久内さんたちの作るものと合うのではないかと、牛尾さんが気付いて紹介してくれたのです。

今は革製品作りに専念しているけれど、お会いした時久内さんご夫妻はそれぞれアルバイトをされていました。
副業しながらというと、何か悲壮感のようなものがあるのではないかと私の感覚では思いますが、アルバイトをしていることも笑い話にしてしまうような明るくポジティブなお二人と一緒に仕事をしたいと思いました。

その出会いから第1作目のペンケース「SOLO」が出来上がるまで半年近くの時間が経ってしまいましたが、7月にWRITING LAB.とIL Quadriofoglioの共同企画商品として発売することができ、趣味の文具箱vol.23でも取り上げていただきました。
イル・クアドリフォリオの革小物を作る技法「絞り」は木型に革を巻きつけて固めていきます。
巻きつけるのは染色されていない革なので、色を重ね塗りしていく「パティーヌ」技法で色付けしていきます。
この作り方は型の精度がポイントで、試作を繰り返しながら型を修正していくのに労力も時間も掛かりますので、初回ロットが出るまでがとても大変だということが分りました。

パティーヌ技法はイル・クアドリフォリオの革小物に雰囲気を与えています。
奥行きのあるムラと透明感が同居していて、革製品ではないような色合いを感じ、私がイル・クアドリフォリオの製品に惹かれる一番のポイントとなっています。
「SOLO」のペンケースは個人的にも大変気に入っています。
蓋と胴の締まり具合が絶妙で、閉める時に空気が抜けていくのが分ります。
サイズがピッタリ合う、ペリカンM1000、アウロラ88、オマスミロードを収めていることが多く、これらの万年筆の使用頻度が高くなります。

9月15日(土)16日(日)にイル・クアドリフォリオのイベントを開催しますが、革小物の新製品の発表も予定していて、またご報告できると思います。

*画像は前回のイベント時の様子です

インクと香水

インクと香水
インクと香水

昨年から使い出して、とても気に入っていつも使っている香水がなくなってしまったので買いに行きたいと思っていますが、最近の休みの日は他の用事があって(先週は靴を買った!)京都のショップに行くことができずにいます。

インターネットの通販でもしかしたら買えるのかもしれませんし、大阪の百貨店内にあるショップでも買うことができますが、仮に毎回同じ香水を買うにしても気に入っているその空間である京都のお店に行って、一応メニューを見て、何種類かの香りを試してから買いたいと思っています。

当店に来られて、インクを選ばれている方も同じようなお気持ちなのだろうかと思います。
毎回選ぶインクは一緒だったとしても、一応色見本帳で他の色も見て、迷ってから買いたい。あるいはまた違った色を選んで気分を変えてみたい。

香水はサンタマリア・ノヴェラ薬局の香水を使っています。
修道院の一角にある、とても厳かで静かなフィレンツェ本店の雰囲気に気後れしながら香水を選んだ思い出も含めて、その香水を使う理由になっています。

京都のお店は小さいけれど、フィレンツェのお店の雰囲気と京都らしさが良い感じでミックスされていてとても好きなので、なるべくそこに行きたいと思う。
サンタマリア・ノヴェラの香水はとても有名で、多くの人が知る存在だと思いますが、そういうものがよりたくさんの人と共感し合えて楽しいと最近思うようになりました。

万年筆でも定番のものの方が、良いものを見つけた時に多くの人に勧めることができる。
香水とインクはどちらも液体で、なくなっていくもの、瓶の形や素材も重要な選択基準になっているところが、面白いくらいに似ています。
ちなみに私はほとんどの万年筆に当店オリジナルの「朔」のインクを入れています。
まだまだ暑さは厳しいけれど季節は確実に変わりましたので、次は秋の色「山野草」のインクでも使ってみようかな?と思っています。
オリジナルインク山野草は定番としていつでもありますので、多くの人と紫と青の中間のこの色の味わいについて共感し合えると思います。