思考の道具 キャップレス

思考の道具 キャップレス
思考の道具 キャップレス

大して難しいをことを考えるわけではないためか、机に向かって考えながら書くよりも、立ったまま書く方が集中力が発揮できるような気がします。
これは立った姿勢の方が体中の血のめぐりが良いからなのではないかと思っています。
外山滋比古先生が「思考の整理学」の中で言われていた、脳も体の一部なので体の血の巡りがよくなると脳も活性化されて当然だという説を信じているということもあります。

立ったままで書くことに一番適した場所だと私が思っているのは電車の中です。
電車の中で書き物がはかどると言う人は多く、周りの人皆が知らない人なので話しかけられたりせず、思考を妨げられず書くことに集中できるからなのだと思います。

同じ理由でカフェなども書き物に適した場所なのかもしれませんが、カフェで立ったまま書き物をしているのはあまりにも奇異に見られてしまう。
そういえば最近では勉強を禁止しているカフェもあるようです。
書き物が勉強にあたるかどうか議論しても仕方なく、そういうお店ではやはり書き物はし辛い。

ちなみに電車の中で書き物をするときに車両の揺れで文字が乱れるのを気にしてはいけません。机に向かった状態と同じわけにはいかないのですから。
また、電車で座席に座ることができて、これでいつもの状態に近いコンディションで書き物ができると安心してはいけない。
例えば膝の上に机のように鞄を置いて、その上に大判のノートを広げて書こうとしても、電車の振動が紙面に伝わって非常に書きにくい。
ノートなどは手に持ったままで書く方が電車の中での書き物を少しでも快適にするための必要条件です。

立った姿勢であるいは座っていても書きやすいノートとしてWRITING LAB.のメモノートは非常に使いやすいし、私はそのためのノートだと思っています。
短い辺が綴じてある縦長で、ハガキサイズという表紙も中紙も後ろに折り返せるしなやかさのある最小のサイズ、底革は厚くしっかりしたものを使っているなど、立ったままで書くという目的のために全ての素材サイズが機能を持っている。
電車の中で立ったまま書くためには吊革を持たずに揺れに耐えられる足腰と足の位置取りも大切なことです。
無闇に踏ん張らず膝を柔らかく振動を吸収するようにする。
理想的な足の位置取りは走っている時は進む方向に向かって、止まる時や走り出す時は進行方向に垂直にすると、かなり快適に電車の中で快適に書くことができます。
足の位置を移動させることが無理なら、進行方向に対して斜めに構えるとカーブの揺れにも、発車停車のショックにも耐えられる。
ちなみにこういう時の鞄はシュルダーストラップ付に限りますね。

余計な話が続いてしまいました。
電車の中や立ったままの姿勢で使いやすいメモ帳/ノートとして、WRITING LAB.のサマーオイルメモノートがあるわけですが、同じくそのような条件で使うのに適した万年筆はパイロットのキャップレスだと多くの人も同意して下さると思います。
キャップを外さなくてもいいということは片手でノートを持った状態でも書き始めることができ、仕舞うことができる。
キャップレスシリーズは何種類かのものがありますが、それぞれ役割が違うと私は思っています。

立ったままや電車の中などで書くための携帯用にはキャップレスデシモが最適で、キャップレスが50年近い歴史の中でたどりついた答えだとさえ思えます。
スリムで軽いアルミ製のボディを採用していて、持ち歩くことが前提に考えられているのは、このキャップレスデシモだけなのです。
今まで中間の色のボディだけでしたが、黒、赤など定番売れ筋の色や極細のペン先の追加など、キャップレスデシモの商品力はかなり高まっています。

キャップレスの機能の効用は外出時だけではありません。
例えば会議や打ち合わせの席で人の話を聞いて書く、また聞いて書くということを繰り返すような時。
でもそういう席でガチャガチャと音を立ててペン先をノックして出すのが無粋だと思う人にはキャップレスフェルモがあります。

キャップレスフェルモはノックではなく、尻軸を回転させることでペン先を繰り出しますが、ノック音を出さずにスマートにペン先が出てきます。
ボディのバランスも先端に重心があって立てて筆記するのに向いているノック式のキャップレスに対して、フェルモは少し後ろに重心がありますので中心部周辺を握って寝かせて筆記する人にも向いています。
ボディカラーも落ち着いた色のものが用意されていて、思考のためという個人的な道具であるキャップレスデシモに対して、フォーマルなものに仕上がっています。

万年筆を使いだすと何でも万年筆で書きたくなりますが、すぐに書き出せる機能性が増えると、ますます万年筆を使えるシーンが多くなったと思います。

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Cigarのある生活 オマスのローカル色

Cigarのある生活 オマスのローカル色
Cigarのある生活 オマスのローカル色

当店5周年を記念したオリジナル万年筆“Cigar”を手に入れて1ヶ月近くが経ちましたが、毎日嬉しく使っています。

スターリングシルバーに金張りの金キャップにこだわったため、キャップの重い万年筆になりました。
どうしてもキャップをつけて書きたいと思っている私は、握る場所を色々試行錯誤の末に、首軸のグレカパターン(ラーメン模様)上辺りを握ると良いことが分かりました。

こんな表現をしていいのか分かりませんが、乗りこなすのに時間がかかる車を乗りこなせたような喜びを万年筆で味わいました。

万年筆は自動車とともにそのお国柄をよく表している製品のひとつだと思っています。そしてイタリア製の万年筆は、さらに地域性も現れていると思います。

例えばアウロラのあるイタリア北部の古都トリノは、イタリア最大の工業都市で、フィアットなど世界に名立たるイタリア企業が軒を連ねています。
アウロラの万年筆作りはイタリア製らしい美的感覚に優れたものになっていますが、インテリジェンス漂う抑えた感覚を持ったものに仕上がっていると思っていて、そこにスイス国境に近いトリノという街らしさ、半分イタリアらしく、半分スイスやドイツの物作りに似た部分が出ている。

それに対して南部ナポリにある、私が最もビジネスの上手い会社だと思っているデルタは一目で伝わる美しい色合いと形を持っています。
北部の万年筆メーカー、アウロラ、モンテグラッパにない明るさがそこにみとめられます。
大陸内にあるトリノほどではないけれど、イタリア半島の北部に位置するボローニヤにあるオマスも、北イタリアらしい物作りをしていますが、アウロラのそれとは少し感じが違います。

抑えの利いたわずかな装飾に独自の機能やこだわりを盛り込んだオマスの万年筆は、中央政府から独立した考えで独自の発展を遂げた工業都市ボローニヤの街の感じやイタリア人の機能へのマニアックなこだわりを感じ取ることができて面白いと思っています。

例えばオマスのトレードマークである12面体のボディは、机の上に置いた時に転がらないというメリットがあります。
六角形や八角形の断面を持つ万年筆は角が手に当たる感じがありますが、12面体では断面が丸のものに近い握り心地です。

角があることで、ペン先の向きが安定するというのもメリットで、角数が多いとその微調整が利きやすい。
製造効率的には、断面は丸の方が作りやすく、角が多くなるほど難しくなると思いますが、この12面体のボディの恩恵は非常に大きくオマスの万年筆の魅力に寄与しています。

クリップも魅力のひとつです。
日本や他の国万年筆でいつも不満に思うのはクリップの機能性です。
クリップの形状がジャケットやシャツの布地を傷めそうですし、その硬さも硬すぎる。
イタリアのメーカーはクリップの形状と硬さが良く、服を傷める心配がない。
オマスの万年筆もクリップ先端にホイールをつけて、ポケットに通すときにそれが回転するようになっていますし、硬さも硬すぎず、柔らかすぎず適度な力でポケットを挟んでくれます。

それらは書く機能においてあまり関係のないことかもしれませんが、万年筆を日常的に使う時に、その日持って出掛けるかどうか決定付ける大切な要因のひとつだと思っています。
夜リラックスした時間を過ごしている時に、旅行で完成した旅ノートとCigarの万年筆を片手にGoogle Earthでボローニヤの街を懐かしく見ることがあります。
市中に世界最古のボローニヤ大学が点在していて学生たちが行き交う、夕方になると大人の男たちがお洒落をして街に出てきて、そこここで楽しそうに立ち話をしている。
そんなボローニヤの街の適度なローカルな感じと、モンブランやペリカンのように世界中で何百万本も万年筆を売っている大規模メーカーとは違う、万年筆の世界において適度にローカルな存在であるオマス、こういうところにも私は味わいを感じます。

⇒限定生産品Pen and message.オリジナル万年筆「Cigar」
*少量ですが在庫ございます。

旅ノートのススメ

旅ノートのススメ
旅ノートのススメ

一昨年のヨーロッパ旅行の時、ライフの本麻ノートに書き込んだり、地図を貼ったりしていた旅ノートはいまだに宝物です。

そのノートのページをパラパラとめくると当時の旅のシーンや気持ちが鮮明に思い出され、もしかしたら写真よりも自分には合っている記録なのかもしれないと思っています。
ヨーロッパの旅ノートが一番充実しているのはプラハのページで、一人で別行動をしたので、公園のベンチやファーストフード店でノートを書く時間ができたからでした。

プラハの街には私が探すステーショナリーを見つけることはできないと諦めて、散策に切り替えて街中歩き回りました。
フリータイムの締めくくりに訪れたタワーは観光市街地から遥か遠くに見えていて、そこまで冒険しようと、闇雲に路面電車を乗り継いでたどり着いたダウンタウンの中にありました。

タワーからの眺めを1時間くらい東西南北くまなく見て、プラハの街の景色を目に焼き付けたいと思いました。

ヨーロッパ旅ノートの成功は、ノートは用途別の方が良いということを私に教えてくれました。
たどり着くのにものすごく時間がかかった答えだったけれど、厚く立派な手帳に人生の全てを書き連ねるのではなく、用途によってノートを替える方が自分には合っていると悟りました。

ゴールデンウィークに旅を計画されている方も多いと思いますが、特別な旅のために、それが特別に思えない旅でも、旅ノートはその旅を特別なものにしてくれるのではないかと思いますので、ぜひお勧めします。

ノートはあまり大きくない方が手荷物に入れやすいのですが、あまり小さいと地図や切抜きを貼ることができないので、B6からA5サイズ辺りが適当かと思われます。
ライフのポケットノートはページ内にあるポケットが、バラバラになるチケットなどの小紙片を入れておくのにちょうど良いし、本文がポケットによって3つのセクションに分かれているので3つの旅の記録にしても良いし、目的地別に分けることもできる。
紙質は大変滑りがよく、気持ちよく書くことができますが、インクによってはわずかに裏抜けするものがありますので、気になる方はブルーブラックなどのインクを使う工夫が必要ですが。

大和出版印刷のCIROの正方形ノートなどはしっかりとして製本とモノとしての魅力から、何かに使いたいと思っていましたが、1つの旅だけでなく、出る度に持っていくような長い年月付き合えるような用途である旅ノート適しているかもしれません。

こういった旅ノートに書く万年筆は、やはりプラチナのブライヤーです。
プラチナのブライヤーを旅ノートに使い出したのは、(1)インクとの相性によってはにじみが出る本麻ノートににじまず書けるプラチナのブルーブラックを、手軽に持ち運べるカートリッジで使うことができるということ、(2)キャップの仕様が、取り出してサッと書いてすぐにしまえる勘合式であるなど、実用的に考えた結果でした。
でもそれに加えて、ブライヤーという木の風合いなども旅に合っていると思い、私にとっての旅万年筆はプラチナのブライヤーと決まっているのです。

数ヶ月前、アウトドア雑誌Be-PALに当店が紹介されましたが、旅=冒険と万年筆は決して無関係ではないと思っています。

大切な毎日のために~工房楔・デスクトレー発売~

大切な毎日のために~工房楔・デスクトレー発売~
大切な毎日のために~工房楔・デスクトレー発売~

朝、少し余裕を持って早めに準備ができた時、その日の服装選びに時間が掛けることができるのと同じように、その日1日使うペンを選ぶのにも時間を掛けることができます。
時間がないと、昨日と同じペンを胸ポケットに差すことにもなるし、インクがちゃんと入っているかどうかを確認する余裕もなくなります。
インクがなくなって書けない状態にしたままにしておくのはとても辛いので、インクが少なくなるとすぐに入れたいと思いますし、朝胸ポケットにペンを差す前に確認もしておきたい。
朝自分の机に向かって、その日1日の行動や会う人などから、胸ポケットに差すペンを選ぶ。
時計など、決まって身に付けたり、ポケットに入れるものを入れたりする。
時間に余裕がないと、忘れ物をしてしまうこともあって、そんな日は1日中不愉快な想いをします。
とても短いけれど、大切な時間。
それは家にいる時の自分から、外での自分にギアチェンジするためのとても大切な時間なのではないかと、最近いい大人と言われる年齢になってから気付きました。

そんな朝の大切な時間のために、工房楔のトレーは役に立つ良い時間を提供してくれるものだと思います。
机の上にペンが11本並ぶワイドトレーがあって、所有万年筆の中からその日の1本を選ぶ。
11本ワイドトレーの上に重ねたフリーのスリムトレーやハーフトレーの上に、前の日帰宅した時に置いた時計やポケットの中のものを忘れずに入れる。
トレーの横に置いている香水も香りを選んで少し吹き掛ける。

置くスペースが少なければ、ハーフの5本用ペントレーとフリートレーを使うと省スペース化が可能なので、トレーを重ねて朝の時間のための場所を作ることができます。
楔の銘木デスクトレーは夜一人の時間のためだけのものではなく、朝の時間のためでもあります。

出かける直前に起き出して大急ぎで支度をするのではなく、余裕を持って起きて、銘木ペントレーに向かって1日をイメージしながらペンを選ぶ時間、持ちたいものですね。

⇒工房楔 銘木デスクトレーcbid=2557546⇒工房楔 銘木デスクトレーcsid=5⇒工房楔 銘木デスクトレーpage=2″ target=”_blank”>⇒工房楔 銘木デスクトレー

WRITING LAB.オリジナルインク Quadorifoglio(クワドリフォリオ)

WRITING LAB.オリジナルインク Quadorifoglio(クワドリフォリオ)
WRITING LAB.オリジナルインク Quadorifoglio(クワドリフォリオ)

私たちがボトルインクの売り場に行くとつい気になって見てしまったり、他の人が使っているインクの色がいつも気になるのはなぜなのだろうと思います。
人によって理由が違うのかもしれませんし、何か決まった理由があるのかもしれない。

でもひとつ言えるのは、私たちは常にもっと良いと思える、今の気持ちに合ったインクの色を探しているということなのだと思います。

万年筆メーカーやインク専業メーカーからたくさんの種類のインクが発売されていて、インクの色は本当にたくさんあります。今のところ存在しないインクの色は、万年筆用として作ることのできない金銀白くらいなのではないかとさえ思えます。
日本中の万年筆を扱っているお店からオリジナルインクも発売されていますので、とうの昔に万年筆の筆記に適した色は出尽くしていると思っています。

でもこのオリジナルインクは、販売する側としてもぜひ企画したいものなのです。

オリジナルインクは、自店のこだわりや、万年筆においての世界観を表現する重要なものだと思っています。
色の選択、名前、ラベルのデザインなど。
オリジナルインクに込められたこだわりからお客様はそのお店の世界観を感じとることができる。
当店と山科のインディアンジュエリー・ステーショナリーショップRIVER MAILとの共同企画のブランドWRITING LAB.もとうとうインクを作りました。

先述の私のオリジナルインク観通り、そこにはWRITING LAB.のこだわりや世界観が込められています。
インクの名前Quadorifoglio(クワドリフォリオ)はイタリア語で四つ葉のクローバーという意味です。
私たちがWRITING LAB.の色とした色は葉の緑だったし、幸運のお守りとしての四つ葉のクローバーのイメージが、仲間たちで集まってひとつひとつのモノについて話し合って作り出したり、そういった集まりにおいての出会いからモノが出来上がるWRITING LAB.の感じをよく表していると思っています。

Quadorifoglioの名前は革製品を一緒に企画して作っていこうとしている久内(きゅうない)さんご夫妻の工房の名前で、お二人との出会いもこのインクの名前の由来になりました。

久内さんご夫妻はフィレンツェで革製品作りの修行をして、現在神戸に工房を構えて活動されています。
ご主人の淳史さんは靴職人、奥様の夕夏さんは絞り技法の革小物を作っておられます。

久内さんとは、当店の本当に近くの旧居留地にベラゴというアトリエ兼工房を構える鞄職人牛尾龍さんを通じて知り合いました。

ル・ボナーの松本さんに教えてもらって、RIVER MAILの駒村さんとともにベラゴさんに飛び込んだのが昨年の夏で、少しずつ親交を温めながら、久内さんを紹介していただくに至りました。
ちなみにベラゴさんの商品も少しずつ扱っていきたいと思っています。

ベラゴの牛尾さんとQuadorifoglioの久内さんご夫妻は、4月18日(水)~24日(火)神戸大丸1Fで開催されるイベントに出展されていますので、ぜひ見に行ってみてください。
カンダミサコさんも5月2日(水)~8日(火)、同イベントの後半に出展されています。

出会いがあって新しく立ち上げたWRITING LAB.の標榜する世界観は、笑顔になれるもの、幸せを提供されるものとしてこのオリジナルインクに込められています。

⇒WRITING LAB.オリジナルインク クアドリフォリオ

工房楔の机上用品 ペントレー

工房楔の机上用品 ペントレー
工房楔の机上用品 ペントレー

WRITING LAB.で工房楔の永田さんに依頼して作ったもらった机は、木工家永田篤史のこだわりを表現したモニュメントのような存在になっています。

この机の存在が永田さんがライフワークとしている木の良さや杢のおもしろさを多くの人に伝えるために一役かってくれると私は思っています。
この机は、ここで仕事もできるし、趣味を楽しむこともできる。コンパクトな一人の時間を楽しむための空間をこの机が作り出せたらと思っています。

当店が関係しているものなので、万年筆をより楽しむための仕掛けをしていきたいと、もちろん考えています。

ひとつの机の理想的な形を作っておいて、それを活用するための机上用品を今後作っていこうと、机を作ってもらう時に話し合っていましたので、今回ご紹介するペントレーはその机で遊ぶための机上用品第1弾ということになります。

天板が開くライティングデスクの収納スペースの中にこれらのトレーを組み合わせて入れることによって、収納スペースをトレーできっちりと埋めることができます。
このペントレイも、今後発売していくつもりの机上用品もこの机にあることをイメージして作りますが、それぞれ単体で使うことも可能です。

ただ机上用品を企画する上で、何の机もイメージせずに作るよりも、こういった実際に存在する机をイメージしながら作っていった方が良い結果が得られると思っています。
トレーは、ウォールナットの無垢材でできていて、コンプロットなどに見られる刳りもの(くりもの:材料をくり抜いて作る)ではなく、指物(さしもの:組み合わせて作る)で作られています。
平面に革を敷いて、ペンなどのそこに置くものに傷がつかないようにしていますが、ここにはピッグスエードを貼りました。

ライティングデスクの天板裏に仕組まれたブッテーロのデスクマットがウォールナットの材質に合わせてワイン色になっていますので、このピッグスエードもワインにしています。

また、トレーにはいくつか種類があります。

ペンを11本並べることができるものは、万年筆店として当店が永田さんに最も熱望していたもので、万年筆を何本も持っている方には必需品だと言えます。
11本以上お持ちの方も、これを何段でも重ねることができますのでお重箱のようにペンを保管することができます。
仕切りのついていないフリーのトレーも大変便利です。
万年筆以外の、例えば時計やアクセサリーなどのものを保管しておくにの便利ですし、フリートレーを机上に置けば、そこで万年筆の手入れなどする時にも便利だと思います。
フリーのトレーにはワイドとスリムがあり、スリムは机上で使用中のペンを仮置きするペントレイとして使うことができます。
ちなみにこれらのトレーは、WRITING LAB.のライティングデスクには2段重ねて入れることができるようになっています。

このような形のペントレーは他にもありますし、万年筆を並べて保管する形態としてはオーソドックスなものかもしれませんが、質の良いウォールナットは使い込んだ時に美しい艶を持ちます。

長く愛着を持って使うことができる、というのも永田さんが作る机上用品の良いところだと思っています。

*今回の発売は11本ペンを並べることができる「ワイド・11本用」です。フリーのものやサイズ違いは4月中の入荷予定になっています。
*画像はWRITING LAB.オリジナルライティングデスクに組み合わせたものです。サイズがぴったりと収まるようになっています。

⇒工房楔 ペントレー・ワイド(11本用)

アウロラ マーレ・ティレニア

アウロラ マーレ・ティレニア
アウロラ マーレ・ティレニア

万年筆メーカーは、ルパンⅢ世の峰不二子のようだと思うことがあります。
特にアウロラは万年筆メーカーの中でも峰不二子度合いが一番高い。

どういうことかと言うと、例えば先日発売されたばかりの480本限定のマーレ・ティレニアは、前作マーレ・リグリア、85周年記念レッドとベースは全く同じで、色違い、装飾違いのモデルですが、マーレティレニアに魅力を感じる人は多い。
もちろんマーレ・ティレニアの万年筆自体の魅力もありますが、レッド、マーレ・リグリアを持っている人なら尚更マーレ・ティレニアが欲しくなる。
内容は全く同じだと思っていても、色違いで持ちたい、揃えたいと思ってしまう。

万年筆を実用で使いながらも、でも趣味のものとも言える人の弱いところを熟知している。そしてお客様は万年筆メーカーがそれを知って、突いてくることを知っている。
峰不二子は最終的に欲しいものだけ手に入れてどこかにいってしまうことを知りながらも、次元と五右衛門になじられながらも騙される振りをするルパンとの関係。
峰不二子には、ルパンをそういう気持ちにさせるだけの魅力があって、ルパンにはそれに乗っかってやれるだけの大人の男の余裕がある。

それは筋書きが分かって楽しんでいる大人の男女のプレイで、万年筆メーカーとお客様方との限定品をめぐる関係もまたそのように感じます。
マーレ・ティレニアのベースとなる万年筆は、バランスやフィーリングにおいて相当高いポテンシャルを持っていて、アウロラもそれに自信があるから同じ筐体で大切な限定品のシリーズを出してきているのだということは、言うまでもありません。

しかしアウロラは、定番の万年筆を少し変えるだけでとても魅力的に見せる方法をよく知っています。
代表的なオプティマと男っぽいシンプルな88とは、ペン先をはじめとする多くの部分でパーツを共用しながらも、全く違う性質のものに見せていて、製品の安定性と同時にモデルの充実をそれによって実現しています。
そういう感覚に優れたメーカーなのかもしれません。

レッドやマーレ・リグリアの色違いと言われても仕方ないマーレ・ティレニア、明るすぎず深すぎないグリーンのチョイス、ハードな使用でも滑らかな良い書き味を損なわない適度に硬いペン先など、非常に優れた万年筆で名品だと多くの方が賛同してくださるのではないでしょうか。

オリジナル万年筆「Cigar」とインク

オリジナル万年筆「Cigar」とインク
オリジナル万年筆「Cigar」とインク

当店5周年の記念としてオリジナル万年筆「Cigar」を発売します。

「Cigar」は一昨年ル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんとともに訪問した、最も思い入れのある万年筆メーカー、イタリアボローニヤに工房を構えるオマスが製作しました。
オマスの代表的なモデル、アルテイタリアーナのミロードを少しコンパクトにして、スターリングシルバーに金張りのバーメイルのキャップが外観上の強烈なアクセントになっています。

以前から、今では少なくなってしまった男っぽい万年筆を作りたいと思っていました。
それは時代遅れとか、オールドスタイルなのかもしれませんが、時代に流されない頑固な男でありたいという想いを反映したものだと思っています。

私が仕事を始めた頃、まだ1980年代の残り香があって、そのような雰囲気をカタログや本などで見つけると嬉しかった。
明らかに古臭いけれど作り手の夢やロマンを感じる、長く使われることを期待した、消費物ではない物たち。

そんな中に必ず黒いボディに金キャップの万年筆は存在しました。

万年筆で見ると80年代はニューヨーク近代美術館に永久所蔵されているアウロラアスティルに代表される先鋭的なデザインのものが隆盛した70年代の反動で、40年代、50年代を回顧した時代だったと思っています。

万年筆は色鮮やかな色をボディに纏い、デザインを面白くすることで90年代を乗り切り、そして現代も生き残って新しい客層をとらえています。
それは否定しないし、そういう万年筆にも魅力を感じますが、当店がオリジナルとして万年筆を作る意味を考えると、当店の心から生まれた自分たちらしいモノ、そしてメーカーから発売されていないモノを作りたい。
「Cigar」はまさにそういうものになっていると思っています。

この万年筆の名前「Cigar」という言葉には、雰囲気や味わいを楽しむ男っぽい、でもオールドスタイルなものという意味合いを込めています。

葉巻のシガーが個人的な楽しみであるなら、万年筆もまた個人的な楽しみの部分が大きく、そのモノのあり方に近いものを感じています。

キャップの金張りの下地をスターリングシルバーのバーメイルにすることによって、時間が経つごとに色合いが変化して落ち着いてくるエイジングするものにし、オマス独特の柔らかい書き味を得て、この万年筆はより個人的な楽しみのあるものだと思っています。

個人的な楽しみをより演出するものとして、オリジナルインク「Cigar」も発売します。
書いたばかりの時は深い緑色で、時間が経つと焦げ茶色に変化していくインクです。
緑色のシガーの葉が乾燥して枯れた色になっていく様をインクで表現しています。

5年という、重ねてきた年月に重さを感じています。
4周年までは今年も迎えることができて良かったということで、素直に年月を重ねてこれたことを喜ぶことができましたが、5年という歳月はその店の成果を試されるようなプレッシャーを感じています。
5周年の記念としてこの万年筆を発売することができたことをとても誇らしく思いながらも、でもまだまだこれからも他にも自分たちが作りたいものを作っていきたいと思っています。

40本のみ製作の「Cigar」は4月上旬に入荷します。
ご予約いただいたお客様には4月のお渡しになりますので、よろしくお願いいたします。


⇒オリジナルインク Cigar

サマーオイルメモノート、革封筒に新色追加

サマーオイルメモノート、革封筒に新色追加
サマーオイルメモノート、革封筒に新色追加

WRITING LAB.企画のサマーオイルメモノートと革封筒に新色を追加しました。

サマーオイルメモノートには、ベージュ色のピーナツ、ブルーグリーンのピスタチオ、オフホワイトのエッグの3色で、クロスのステッチを入れています。

昨年末に発売しましたサマーオイルメモノートでしたが、冬に選んだせいか、私と駒村氏の好みのせいか、暗めの重い色ばかりになってしまいましたので、今回はWRITING LAB.の女性陣による革のチョイスとステッチのデザインになっています。

サマーオイルメモノートは今まで革ヒモでメモを綴じる仕様になっていましたが、より柔軟で結びやすく、丈夫な靴ヒモに変更しました。
本当は最初から完璧なものを出すことができればいいのですが、こうやって少しずつでも改良を加えていきたいと思っています。

ブログの下書きや覚書など、A4サイズ1枚以内のちょっとしたものなら、このサマーオイルメモノートのA6サイズで充分用は足りて、電車の中など移動中でも今までで最も使っている紙製品です。
立ったままで書いて、転記したり、パソコンに入力したりすると千切って捨てていく。

整理したいから仕事を片付けていく。ただ好きで書いただけでは自己満足で終わってしまう。コンピューターに入力して、活用できる状態にしないと私の仕事として不完全だといういましめにもなります。
紙をただヒモで綴じただけのシンプルなメモ帳ですが、シンプルな仕様でその機能を満たすために素材にこだわっています。

革封筒はB5サイズの原稿用紙や当店の試筆紙、大学ノートなどをまとめて持ち運ぶことができるようにB5サイズを少し幅広にしたサイズで、取り出しなどを考えてフタがついていない仕様になっています。

袋なのでしなやかな性質は必要ですが、腰がないとモノとしてつまらないし、口の部分がヒラヒラしてしまう。
そんな用件を機能的に、質感的に満たしてくれたのがボーノアニリンという革でした。

駒村氏の言う「色気のある革」で、しっとりとした手触りがありながら、しっかりとした革質に惚れ込んで革封筒の素材に採用させていただきました。

アマーロのダークブラウンの深い色合いは、確かに色気を感じさせるものではありましたが、あまりにも男性的すぎる。
女性の方やカジュアルな服装の方でも使っていただけるものを作りたいということで、同じボーノアニリン革のナチュラル色(ドルチェ)で革封筒を作りました。
今までのアマーロの色では重厚すぎましたので、ナチュラルカラー(ドルチェ)は軽快な感じがして、これからも季節にも良いかもしれません。

ところで、革封筒の色名、こげ茶をアマーロ(苦い)、ナチュラルをドルチェ(甘い)としたのはフィレンツェ帰りの靴職人久内(きゅうない)さんの助言によるもので、とても気に入っています。

久内さんは、近々発売するWRITING LAB.オリジナルインク「クワドリフォリオ」の名付け親でもあります。


禁断のキャップレス

禁断のキャップレス
禁断のキャップレス

パイロットのキャップレスという、ボールペン並みの手軽さを持った仕事の強い味方であるこの万年筆に、「禁断の」という背徳的な言葉は最も似つかわしくないはずです。
しかしキャップレスについて考える時、私はどうしても「禁断」という言葉を思い浮かべずにはいられません。

私にとってキャップレスのどこが禁断かというと、その使いやすさによって他の万年筆を使わなくなってしまう怖さがあるからです。
キャップレスは尻軸をノックして、ペン先を出すことによって筆記できる万年筆です。

ちなみにペン先は出たり引っ込んだりするだけでなく、ペン先の動きに伴って空気を遮断するシャッターも内部で開閉しているので、ペン先が乾くことがありません。

キャップレスとよく比較されるというか、一緒に話題にのぼるスティピュラダヴィンチは、ペン先を引っ込めた時に扉は閉まりますが扉にパッキンがなく空気が隙間から通る感じですのでペン先が乾きやすい。
でも乾いても許せるデザイン性があり、もしかしたらキャップレスと非常に対照的な万年筆なのかもしれません。

キャップレスが乾かないのは、実はそのインクの性能にも秘密があります。

私はキャップレスはカートリッジインクで使うことをお勧めしたいと思っていますが、パイロットはキャップレスに使うことを意識して、今の乾きにくいインクを開発したという話もあります。

ボールペンを使うのと何ら変わらない使いやすさがあって、書き味の良さと、インクの筆跡を持ったキャップレスは、特に手帳には使いやすいと思います。
私がキャップレスの存在によって他の万年筆を使わなくなってしまうのではないかと思ったのは、私の万年筆の用途の大半がメモ書きだからです。

机に向かった姿勢ではない立ったままで書くことも多いメモ書きにおいて、キャップを開ける動作のない、片手で書き始めることのできるキャップレスは最もメモを書くのに適した万年筆だと言えるでしょう。

メモ書き用の万年筆にとって、携帯性というのは非常に重要で、ポケットに差しても嵩張らなくて、軽いことは条件のひとつになります。

そんな中、キャップレスシリーズで唯一軽いアルミ製のボディを採用し、細軸のキャップレスデシモこそ最もキャップレスの用途を追求したものだと言えると思います。

今までキャップレスには、細字、中字、太字しかありませんでしたが、新たに極細が追加されたのは、手帳書きをより快適にするキャップレスの特長をより生かす、とても意義のあることだと思います。
字幅の追加と同じくして、ボディカラーに今までなかったことが不思議だったシンプルな色も追加されています。

私はキャップレスを使いたくない。なぜならあまりにも使いやすくて他のたくさんある万年筆を使わなくなってしまう可能性があるから。
そう言わざるを得ない、他の万年筆にとって脅威となる究極に使いやすい万年筆がキャップレスデシモです。

⇒パイロット キャップレスデシモ