先週末に、神戸ペンショーが行われました。
今年10回目となる神戸ペンショーは、毎年少しずつ規模が大きくなって、毎年1000人もの来場者数を記録するようになっています。
これも運営の方々の努力によるものだと思います。運営の方々はボランティアで神戸ペンショーの計画から実行まで、事故が起こらないように努力してくれています。だから私たちはお客様の応対、販売活動に専念することができて、お客様もペンショーを楽しむことができる。このペンショーに参加できていることをありがたく思っています。
規模が大きくなって注目されるようになった神戸ペンショーを運営することは、想定外の苦労や難しい問題もあると思いますが、頭の下がる想いです。本当にお疲れ様でした。
ペンショーのようにたくさんのお店が集まるイベントでは、当店らしさということについていつも考えることになります。
ペンショーのお客様の傾向を見て、そこに合わせた品揃えにしようとしていたけれど、それは本来当店が目指している姿とは少し違うと最近思い始めました。一度原点に戻る必要を感じています。
当店はペン先調整をして万年筆を販売する店で、お客様にもそれを望まれていると思うし、そうあるべきだと思いますので、今後は今までより打ち出して行きたいと思います。
最近時間があれば、辞書から気になった言葉をM6手帳に書き出して、その意味を書いています。
言葉は太めに、意味は小さめに。日本語らしく縦書きで書きます。
なぜそんなことを始めたかというと、言葉をもっと知りたいと思ったのと、知らない言葉の中に座右の銘を見つけられたら、面白いと思いました。
狂言師安東伸元先生が、会津弥一の書から「獨往(どくおう)」という言葉を私に教えてくれました。誰も行かない道を草をかき分けながらゆっくり進む印象がこの言葉にはあり、自分の目指す姿だと思いました。座右の銘にしていますが、他にもこのような座右の銘にできる言葉を見つけたい。
どうせ書くならできるだけ美しくトメハネハライを利かせて、筆文字のように書きたい。
そういう文字を書くのに、キレのある文字が書ける三角研ぎが合っているのではないかと思います。
私が三角研ぎと言っているものはものは、他の調整士さんがやっているものと少し違うかもしれません。
最初は教科書通りの形で始めたけれど、お客様の要望を聞いてやっているうちに少しずつ変わっていき仕上がった形です。この研ぎで美しい日本字が書きやすく、書き味もヌルヌルと気持ちよく書くことができます。
立てて書くと細字くらいにはなりますので、文字の太さを変えて使うこともできます。
小さなペンポイントの僅かな研ぎの違いで、文字がこんなに変わるのは不思議な気がしますが、例えばペン先にたてよこ差があまりないアウロラに三角研ぎをしてみると、キレのある文字が書けるようになります。
完売してしまいましたが、タレンタムデダーロには、セーラー長刀研ぎのような研ぎを施したカーシブニブというものがありました。そのカーシブニブより細い線も書けるイメージです。
三角研ぎはもともとの字幅が太いものから研ぎ出した方が細い線と太い線の差が出てこの研ぎらしさがでますので、太めのものをベースに作ります。そこで、まずはタレンタムデダーロに三角研ぎを施したものを作ってみました。
1本研ぎあげるのに結構時間がかかるのでたくさんは作れないけれど、常に何かの三角研ぎなど、特別な調整を施した万年筆が店にあるようにしたいと思っています。
日本に万年筆が入って来て、多くの人が使うようになった戦前から、万年筆の調整士たちは様々な研ぎを生み出しました。
私たちがやっていることも100年ほどの日本の万年筆の歴史の中で行われてきたことの繰り返しだけど、今求められていることなのだと思います。