長く使い続けるためのオーソドックスなデザイン オリジナルM6システム手帳

どんなものでも、奇抜なデザインよりオーソドックスなデザインに惹かれます。

振り返って考えると、手元に置いて長く使っているものは、奇をてらわないオーソドックスなデザインのものが多い。それらはスタンダードと呼ばれるものです。

様々な分野にスタンダードと呼べるものはあるけれど、そういうものをよく見て、なるべくそういうものを持ちたいと思います。

長く使い続けられている永遠不変なスタンダードは、万年筆やステーショナリーにも多く存在しています。

他にはないオリジナリティも必要だけれど、良い素材、良い作りでスタンダードと呼ばれるに値するものを形にしていきたいと思うようになりました。

先日発売したM6システム手帳がその第一弾です。

スタンダードとなるものの条件として、オーソドックスで無理のないバランスの良いデザインと考えました。そういうものは安心感があるし、いつも手に取りたくなります。

より幅広い層の人たちに使ってもらいたくて、オーソドックスなデザインで野性味と濃厚な味わいのある素材サドルプルアップレザーと、洗練されたスマートな革シュランケンカーフをご用意しました。

製作してくれた若い職人さんは、それぞれの革の雰囲気に合うようにそれぞれのベルトの形状を変えるなど、細かい所まで独自の工夫を取り入れて楽しみながら作ってくれたのも嬉しかった。

M6システム手帳は、仕事でバリバリ手帳を使う人のバイブルサイズと、筆記面が小さく趣味性が高いM5サイズの中間に位置した、ある程度の筆記面の大きさと携帯しやすいコンパクト感のある程よいサイズです。

このM6システム手帳をオーソドックスなデザイン・上質な革で作ることで、いつも持っていたくなる、長く使えるものが出来たと思います。

これらの手帳にはより革を楽しんでいただけるように、サドルプルアップレザー仕様には同素材の、シュランケンカーフにはブッテーロのペーパーリフターを最初からセットして、表紙を開けた時にすぐに中のリフィルが見えないようにしました。

他にも、ペンホルダー・ページファインダーを同革で作っていただきました。こういうものがプラスチックでなく革であることは、手帳にこだわりのある方には嬉しいものだと思います。

中紙には、智文堂の波文葉リフィルの書き味・使用感がおすすめです。手帳用紙というと薄くてツルツルした手触りの紙質のものが多いですが、智文堂さんの紙は書き味に心地よい手応えがあって、紙質も丈夫なので安心して筆圧をかけることができます。

智文堂さんのリフィルの罫線は、変化のあるこだわったものが多いですが、難しく考えずに普通の方眼や横罫と同じように使えばいいのだと思います。

デザイナーのかなじともこさんが波文葉を発売したので、当店もM6システム手帳に目が向いて今回の企画につながりました。

今回のM6システム手帳製作で目指した、オーソドックスなデザインによるスタンダードステーショナリーコンセプトで王道のデザインのいいものができました。今後も同じコンセプトで色々なモノを企画したいと思っています。

⇒オリジナルM6システム手帳 サドルプルアップレザー

⇒オリジナル DRAPE M6サイズシステム手帳 シュランケンカーフ

時計作家が作るボールペン

ラマシオンの吉村恒保さんが作った時計を毎日着けています。

夕焼けの空を見てきれいだと思った時に、ふと時間を確かめるために見たくなる時計を作りたい、と吉村さんは雑談の中で言われていたことがあります。

多くの人がスマホで時間を確認する時代、時計作家としての時計の存在意義と吉村さんの童心を伴ったダンディズムを表した言葉だと思いました。

私は文字盤の造形からか、針の指す向きによっての景色の違いを感じさせてくれる時計だと思っています。それぞれの時間に心象風景を見出す、感傷的な私に合っている時計だと思います。

もう2年以上着けているけれど、いまだにその印象は変わっておらず、新鮮な気持ちで文字盤を見ることができる。いい時計だと思う。

吉村さんは柔軟で創作欲旺盛な人で、ル・ボナーの松本さんと知り合って、ベルトのバックルも作るようになりました。

当店では吉村さんの時計も扱っているけれど、当店と関わるようになったことがきっかけでボールペンを作り始めました。

M5手帳と合わせて持てるような小振りなボールペンで、こだわりのある良いものがないという私の見解に応えて、小さなボールペンを開発してくれました。

ただ小さくてよく書けるだけでなく、メカ好きの遊び心をくすぐる仕掛けのあるボールペンです。

「ボルトアクションボールペンgate811」と名付けられたそのボールペンは、車のシフトゲートをイメージした機構で、ギアチェンジをするようにレバーを操作して芯をノックして出します。

替芯の交換は、レバーを替芯交換用のゲートに入れて、天ビスを外して、シフトレバーを引き抜くと内部パーツが外れて、替芯が表れます。

これらの細かなパーツやボディは、時計の部品と同じように一つずつ金属から削り出して作られています。

時計作家さんだけあって、とても精密に作られたそれらのパーツの組み合わせでできているボールペンはシンプルなデザインにまとめられています。

替芯は滑らかで自然な書き味のパイロットのBRFN-30を使っていて、実用性にもこだわって作られています。デザイン性だけでなく、正確さを要求される時計の世界で生きてきた吉村さんにとっては当たり前のことなのかもしれません。早くも吉村さんの作る次作のペンも楽しみです。

*gate811の真鍮仕様は現在品切れしていますが3月中旬再入荷いたします。ご予約承っております(こちらのお問い合わせフォームからどうぞ)

*真鍮ボルトアクションボールペン Gate811 ロジウム仕上げ

*真鍮ボルトアクションボールペン Gate811(予約受付中)

小さな店の生き方

また小説関ヶ原(司馬遼太郎著)を読んでいます。

大きな勢力が西と東に分かれたことで、大多数の小さな勢力は自国の継続を願って得だと思う方につき、ほんの一部の武将が正義という理想のもとに信じた側につく。

戦国末期の淘汰の時代、力の大きな者はさらに大きくなり、力のない者は大きな者に吸収されていきました。それは今の時代にも全ての分野で起っていることで、関ヶ原が競争社会の縮図だと言われるところだと思います。

でも万年筆の業界においては、私たちのような力のない小さな存在でも生きる場所があるのではないかと思います。

品揃えの多い大きな店を好む人もいれば、小さなお店でそのお店の品揃えを楽しむという人もいます。お店に対してお客様は様々な好みがあって、自分が買いたいと思えるお店で買われているのだと思います。

小さな存在でも万年筆の世界で生きていくことができると思ったから、私は万年筆を扱うこの小さな店を始めようと思えたし、続けてくることができました。

当時それを理論的に考えることはできなかったけれど、それまでの経験で直感が働いたのだと、今なら説明できます。

関ヶ原でも、勝たないまでも力の小さな小大名がそれぞれの考え方を持っていて、信念を貫く面白い存在として描かれています。それは所領の小ささからくる自由さかもしれません。

当店のような小さな店にも、理想を追うことができる自由さ、気楽さがあります。業績は良いにこしたことはないけれど、それほど大きな売り上げを狙わなくてもいいので、一般的にならずに自分たちが良いと思うもの、面白いと思うものだけを扱うことができます。

万年筆と上質な革を使った革製品とのコーディネートもそのひとつで、当店の特長だと思っています。

画像にありますが、カンダミサコさんに作ってもらっている長寸用万年筆ケースとセーラーエボナイト彫刻万年筆の組み合わせは、侍の刀を思わせるようで気に入っています。そしてイルクアドリフォリオさんが作っているペンケースDUEトリムドロッソは、全体が黒でコバの部分にだけ赤を使っているので、黒のモンブラン149を2本入れるとものすごくかっこいい。

こういう異なるブランドを組み合わせたコーディネートは、楽しみながら今後も続けていきたいと思っています。

当店の強みであり特長なのはやはりペン先調整だと思いますが、最近ペン先調整の需要の高さをより感じています。

ペン先調整のために来店されるお客様、全国から送られてくる万年筆の多さで、いかに多くの人が万年筆に対してこうあって欲しいという希望を持っているかということを感じています。

お店の仕事もありますので一日に数本しかできないため、お送りでの調整依頼の場合、現在一ヶ月ほどお待たせしています。

私は一人一人の書かれるところをイメージしながら、そして書きやすくなった万年筆を使って喜ぶお顔を想像しながらペン先調整をします。

そういうことができるのも当店のような小さな店の強みだと思っています。

当店も独自の考え方を持って、自由に生きるユニークな存在でありたいと思っています。

⇒長寸用万年筆ケース・シュランケンカーフ(ブラック)

⇒WRITING LAB. IL Quadrifoglio (イル・クアドリフォリオ)シガーケース型ペンケース・ Due(ドゥエ)ネロ×トリムドロッソ

理想のシステム手帳をつくる

試作品まで完成して、納品を待っている新しいシステム手帳があります。

昨年、智文堂のかなじともこさんがM6サイズシステム手帳リフィル 波文葉(なみもよう)を発売されました。万年筆でも書ける紙に淡いブルーの罫線もきれいで、かなじさん独特のページの景色になる罫線のリフィルです。当店もそれに合わせてM6手帳本体を作りたいと思いました。

お願いできる職人さんを探していたけれど、忙しい時期でもありなかなか見つかりませんでした。

そんな頃、休日妻とブラブラと街を歩いていると革製品を作っている工房に行き当たり、若い職人さんと出会いました。その辺りの話はまたいずれお話ししますが、改めて連絡してお会いする約束をしました。

まだ作ってもらえるか分からなかったけれど、作ってほしいもののスケッチを持って、後日工房にお邪魔しました。

どんなものを作りたいかなどお話しすると、すぐに試作を作ってくれることになりました。私よりも一回り以上若い人たちは、明るくやる気に満ち溢れていて、様々な提案をしてくれる。話していて本当に楽しかった。

今まで特に新規開拓をしてきませんでしたが、開店して15年、そろそろこういう人たちとも仕事をして刺激をもらうべきだと思いました。

神戸は街の規模の割に革職人さんが多くいる場所だと感じますが、何気なく入ったお店で出会えるなんて、幸運だったと思います。

ガラスペンの作家さんを探していた時も、倉敷を旅行中にたまたま新しくできていたお店に入ったら、ガラスペンの作家aunの江田明裕さんのお店だったということもありました。やはり街を歩くということは私の仕事において大切なことなのだと思います。

試作品まで仕上がっているM6サイズシステム手帳は、均整の取れたオーソドックスな形をしています。そして革は長く使える良いものを選びました。M6サイズをこれから使ってみようと思う人にも、すでにお使いの人にも使っていただける上質な手帳です。

M6サイズシステム手帳の特長は、持ち歩きしやすい適度な大きさと、必要なことは書き込める紙面の大きさを両立しているところで、仕事用の手帳としてもお使いいただけると思います。

私はM6に長期に渡る事項の覚え書き、年間、月間、週間、1日のダイアリーを挟んで日々使っています。長期の覚え書き、というのは既製では存在しないので自分で線を引いて作りました。

これ一冊で自分の仕事も暮らしも円滑に回すことができる箇条書き日記を加えて、スケジュールと日記だけを書く手帳にしています。

バイブルサイズシステム手帳、M5サイズシステム手帳どちらもそれぞれの良いところがありますが、M6サイズシステム手帳は仕事や暮らしを円滑にする役に立てるものだと思います。

製品が完成しましたら、またご報告いたします。

智文堂 M6システム手帳リフィル・TOPへ波文葉(なみもよう)

大人の女性のためのステーショナリー・アンティークレースノート

コロナ禍になってから休みの日はあまり遠くに出掛けなくなりました。

私は用心していればいいのではないかと思うけれど、妻が県外に出たがらなくなったので、たいていは三宮・元町の店を回るか、地元で過ごしています。

そんな休日なので家に帰る時間もわりと早く、ダイニングテーブルでそれぞれ好きなことをする。そんな静かな時間の過ごし方にも慣れて、楽しめるようになりました。今思うと、休日だからでかけなくてはいけないと、忙しく過ごしすぎていたのかもしれません。

どこかに出掛けてお店など見ることは、考えるきっかけになったり、刺激になってインスピレーションが湧くことがよくあって、仕事にとっても必要な休日の過ごし方でした。

でも今は狭い行動範囲での生活が続いているので、本を読んだり、近くの歩いたことのない道を歩くことで考えるきっかけにしたり、刺激を受けたいと思っています。

ダイニングテーブルでの午後の時間はそれぞれ手帳を書いていることが多くて、スタンプを押したりして手帳をカスタマイズするのが、妻と唯一話が合う共通の楽しみになっています。

私たちの年代になると、子供さんのおられるご家庭なら子供が手を離れて、夫婦二人だけの静かな休日を過ごしている人は多いのではないかと思います。

自分たちのような静かな時間を過ごしている人たちのための、特に同年代の女性のためのステーショナリーもなるべく揃えたいと思っています。

少し前から若い女性のお客様がインクやガラスペンなどを買いに来てくれるようになったけれど、もう少し大人の同年代くらいの女性のお客様が平日の昼間に来てくれるようになったら理想的だと思っています。

自分たちのような静かな時間を過ごしている人のダイニングテーブルの上に、アウロラやフェリスホイールプレスのインクなどがあって欲しいし、システム手帳やノートを書くことも楽しんでもらいたい。

アウロラは軽めのものが多くて女性でも使いやすいし、何よりデザインが華やかで美しい。それは大人の女性に気に入ってもらえると思っています。フェリスホイールプレスのインクボトルのデザインはそんなアウロラによく合っています。

そんな雰囲気によく似合う、大和出版印刷さんのアンティークレースノートが入荷しています。

18世紀ベルギーフランダース地方で作られた繊細なレースの柄をノートに印刷したもので、淡いグレーの表紙、パステルブルーの罫線やレースの模様など、今までのノートではあまり見られなかったデザインです。

当店に来られる大人の女性のお客様にはぜひ使っていただきたいノートです。

万年筆のインクではにじみや裏抜けがあって、ゲルインクのボールペンやペンシルなどの方が合っているけれど、ヌードラーズインクのブラックやプラチナブルーブラックなどのにじまず裏抜けしない強者インクなら使うことができます。

健康のために万歩計の歩数を気にしながらなるべく歩くようにしたり、代謝が落ちていることを実感して食べる量を減らしているような同年代の人の生活に、万年筆ほどピッタリ合うものはないのではないかと思っています。きっと万年筆でモノを書くという静かな楽しみは、その生活の中にすんなりと定着するだろうと思っています。

当店は今後もこういうものにも力を入れていきたいと思っています。

→Antique lace note book

ひと味違う限定万年筆〜セーラー万年筆限定品プロフェッショナルギア2021-21〜

万年筆に求めるもの。私の場合は、使いたいと思わせてくれるデザインや佇まい、つまりモノとしての魅力です。そして書き味が良くないとせっかく手に入れても結局使わなくなるので、書き味が良いというのは絶対条件です。

書き味が良いというのは、ペン先の硬い・柔らかいに関係なく滑らかに書けるということで、そうでないと愛用する気にはなれません。万年筆は長く使い込んで自分の手に合っていくと言われていますが、最初が良い状態である方が早いに決まっている。

万年筆の書き味を良くするのは私の仕事で、それぞれの万年筆の正しい状態にしてあげれば、ペン先の素材に関係なくどれも滑らかに書けるようになると思っています。その正しい状態が書き慣らすスタートに立った状態です。

万年筆が正しい状態になって、滑らかに書けるようになった上で、それぞれの万年筆の書き味が存在していて、それはペン先の素材や形状、ボディのバランスなどで違ってきます。

メーカーごとのその書き味の違いを味わうということも私は伝えていきたい。

昨年セーラー万年筆が発売した「2021-21」は、セーラー万年筆のアイデンティティとも言える21金のペン先を2021年にちなんで発売した1500本限定の万年筆で、21金の書き味の味わい深さを改めて再認識してもらいたいという想いで作られました。

セーラー万年筆は、2020年に大手文具メーカープラスの傘下に入り、それまで経営的に苦しかった状態を脱し、様々な万年筆を次々と発売するようになりました。

コーポレートカラーもブルーから「セーラーブルー:黎明」と名付けられたブルーブラックのような色に変更され、会社の新たな歴史の幕開けを印象付けています。

その新たなコーポレートカラーであるセーラーブルーとキラキラ光る加工がされたボディの2021-21は、ペン先にもこだわっています。

そもそも、万年筆のペン先は刻印が多くなるほど硬くなっていきます。だから刻印が少ないスッキリとしたペン先は柔らかい。

良い例がパイロットカスタム742、743のフォルカンのペン先です。それが慣れが必要なほど極端に柔らかいのは、ペン先サイドの切り込みや薄さとともに、刻印を必要最小限にしているからです。

セーラー万年筆の2021-21も、大きくデザインされた21の文字や21金表示はレーザーで描かれていて、字幅表記のみ刻印で、非常に刻印の少ないペン先になっています。そのため書き味も定番品よりも柔らかい。

ペン先にも限定品としての価値が持たせてあって、かなりこだわりが感じられる限定万年筆です。面白いものだと思い飛びついて発注しましたが、年が変わっても在庫があると聞いて、さらに仕入れました。

セーラーの万年筆は、ペンポイントの研ぎの形状から、美しい文字が書ける万年筆だと思っています。そのセーラーでさらに違う書き味を持ったこの万年筆を、できるだけ多くの方にご紹介したいと思っています。

⇒プロフェッショナルギア万年筆 2021-21K Limited Edition

銘木美学〜虹紙製作所のステーショナリー〜

東大阪の会社「虹紙製作所」のステーショナリー部門、虹紙分室さんの銘木ステーショナリーの取扱いを始めました。

虹紙製作所は主に革職人の道具などを受注製作している会社です。

存じ上げていなかったけれど東京ペンショーにも出展されていて、昨年の神戸ペンショーの際にお声がけいただき、お取り扱いさせていただくことになりました。

不思議なもので、木製ステーショナリーを探していた時には見つけることができませんでしたが、諦めた途端出会うことができました。

一番の変わり種は銘木の鉛筆です。

本来、銘木の文具は触ったり磨いたりして大切に育てて経年変化を楽しみますが、削って使う消耗品の「鉛筆」にしたところに虹紙製作所の美意識がよく表れていると思います。

何てかっこいい思想を持った筆記具だと思って、私もすぐにこの鉛筆を使いたくなりました。納品まで待てず、無理を言ってその場でサンプルを売っていただきました。

硬い銘木なので小さな鉛筆削りでは歯が立たないけれど、たくさん削るのはもったいないので、電動鉛筆削りではなく肥後守のようなナイフで削るか、ハンドル式の鉛筆削りで少しずつ削りたい。

削って短くなっていくものだけど、磨いて艶も出したいし、削り方にもこだわりたい。そこまで気にして使った鉛筆は、きっと宝物のような存在になるだろう。

良い素材でずっと使えるものを作るモノ作りとは違う、「モノにはこだわるけれど執着しない」モノに対するダンディズムをこの鉛筆に感じます。

ウッドグレインユーティリティーナイフは、シンプルなカッターナイフで、角を落とし過ぎていない造形に洗練されたセンスが伺えます。

革職人さんは革包丁という専用のナイフで革を裁断しますが、それは歯の断面が直角三角形の片刃で、扱いにくいと思う人もいるようです。

カッターナイフは歯の断面が二等辺三角形の両刃で、革包丁よりも小回りが利いて使いやすい。

大型のL刃を使ったレザーユーティリティーナイフは、そんな職人仕様のカッターナイフで、細部の作り込みに遊び心を感じます。

刃を固定するダイヤル部分に木をあしらい、尻部パーツにハンドルと同じ木を使って締めるという凝りようです。

細部まで作り込まれたカッターナイフは、使うだけでなくただ触ったり、眺めるだけで楽しい。銘木を所有する喜びだけでなく、作り込まれた道具を手にする喜びもあります。

カッターナイフ類は大阪のNTカッターから正式に供給を受けて製作されていて、メーカーからも認められたモノ作りがされています。

虹紙製作所の、美意識や遊び心を感じさせてくれる銘木をモノに仕立てるセンスがとても好きで、今後の品数が増えるのを期待しています。

⇒虹紙製作所 TOP

デザインで選ぶインク・フェリスホイールプレス

当店のお客様の男女比率は、店を始めた頃は男性のお客様が多かったけれど、今は半々くらいになっているかもしれません。

それは当店に限ったことではなく、万年筆を趣味とする女性が増えたことを表しているのだと思います。

でも考えてみると、当店は女性のお客様や取引先さんにも助けられてきました。

店を始めたばかりで苦しかった時に当店を見つけてくれて、口コミでたくさんのお友達を連れてきてくれたのも女性のお客様が多かった。

加古川の写真家SkyWind さんも女性の方で、作品を当店に卸してくれて、お店に個性を与えてくれています。SkyWindさんの知り合いやファンの方の来店も多い。

「暮しの手帖」に記事を書いてくれたのも女性のライターさんで、その記事の影響で全国から大人の女性のお客様が来てくれました。私が勝手に師と仰いでいる狂言師の安東先生と出会うことができたのも、この暮しの手帖の記事を読んだ奥様と一緒にご来店されたからでした。

昨年末の蓮見恭子先生の小説「メディコ・ペンナ」も当店に多大な恩恵をもたらしてくれていますし、普段来てくださるお客様も女性の名前をたくさん挙げることができます。

女性のお客様にとって、当店は決して華やかなお店ではなかったと思います。それを少しずつ女性が好むような商品も扱うように増やして行きました。

昔から当店を知る万年筆が趣味の男性には、当店が軟弱な店になってしまったと言われたけれど、私は今のこの店の状態が「いずれこうなったらいいな」とイメージしていたものに近いと思っています。

女性は万年筆をスペックや評判ではなく、好みのデザインのものをそれぞれの方の価値観で自由に選ばれることが多い。男性のお客様にもそのような万年筆選びをとずっと訴えてきました。

気が付いたら男性でもモノをファッション的に選ぶお客様が増えていた。

カナダのフェリスホイールプレスのインクは、自由にモノを選ぶ当店のお客様に間違いなく喜ばれる商品だと思いました。

このインクを扱うためには初回導入数が決まっていたので、それなりのスペースも金額も確保する必要があったけれど、このインクを楽し気に手に取られているお客様を見ていると頑張って導入して良かったと思います。

フェリスホイールプレスのインクは、香水の瓶と言っても通るほど美しいデザインのボトルで、しかも外箱のデザインは色によってそれぞれ違う凝ったデザインのイラストが描かれています。

38mlと85mlの2種類があり、85mlの球形のボトルは、そのインクの色に合わせた巾着に入っています。

通常の万年筆用インクとガラスペンにお勧めのラメ入りのインクがあり、どちらも淡い色のものがあって、時流を捉えていると思います。

店をする醍醐味は、お客様が楽しそうに商品を選ぶところに立ち会えるところですが、このインクを選ぶ方々はとても楽しそうで嬉しくなります。

インクもある程度集まったら、次は机に置いておくだけでも気持ちがわくわくするものを選ぶというのも選択肢だと思います。

フェリスホイールプレスのインクは、新しいインクの選び方として当店からのお勧めインクとして、なるべく揃えておきたいと思えるものです。

このインクには、今までのインクとは全く違う、作り手も楽しんでいるような世界観と楽しさがあります。

⇒フェリスホイールプレスボトルインク 38ml

⇒フェリスホイールプレスボトルインク 85ml

マンスリーダイアリー用木製フレーム完成

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

今年当店は15周年を迎える節目の年なので、今までとは一味違うより良い年にしたいと思っています。その動きが今年結実するか分かりませんが、新しい展開のために考えていることを実現させたい。

昨年は色々な締め切りに追われて、それをこなすだけでやっている気になっていてはいけないと思いながら1年が経ってしまいました。

私の仕事は目標を定めて周りの人も動かしていくことだけど、それができていない。たまたま運が良いからいい感じで物事が自然に流れているけれど、自分の締め切りをこなすのに精一杯で、マネジメントとはほど遠い状態でした。

自分の役割は、諸葛孔明のいない劉備玄徳やタイプは違うけど本多正信のいない徳川家康のようなもの、あるいは昔のプロ野球でたまにあった監督と選手を兼任するプレイングマネージャーで、成功した例はあまり多くない難しいものだと思っています。

考えてみると、軍師にも色々なタイプがいることが分かります。主君の定めた目標を実現するために自ら様々な働きをする軍師、陰で主君にアドバイスを授けて自身は下がったところから全体を見ている軍師。

石田三成の軍師島左近は、器の大きな人で三成を大きな心で見守り三成の性格的な偏りも諌めていた。三成の軍師を引き受けた時点で、三成が家康と対立して戦いになることも見通していて、命を捨てる覚悟もできていた。

島左近を自分より多い取り分で雇った三成もすごいと思いますが、左近がいたことで三成は家康と天下を決して戦うことができるまでになったとも言える。

話を戻すと、自分で店を始めたのもいつまでも現役でいたいという想いもあったからで、難しいことではあるけれどやるしかありません。自分の仕事の締め切りや普段の仕事をしながら、店全体の様々な事が予定通りに進むように管理する必要があります。

そのために必要なものは、目的を達成するという気持ちの次には、スケジュール帳だと思っています。

何か長期の計画を考える時に、1年間を見渡せるようなダイアリーやカレンダーが必要になり、スケジュールを具体的に落とし込んでいくときにはマンスリーダイアリーやカレンダーが必要になってきます。

見開き1週間や1か月など、ダイアリーには様々な見開き日数のタイプがありますが、当然ですが見開き日数が少なければ1日当たりの書くスペースが大きくなり、見開き日数が多ければ書くスペースが小さくなります。

見開き日数が多くて、1日当たりの書く欄が大きいものが完璧なダイアリーということになりますが、紙を大きくしていかない限りそんなことは難しい。

新年も始まっていますが、オリジナルマンスリーダイアリーについて語ると、スケジュールの把握しやすさと、無理なくレイアウトされている書き込み欄を持った良いダイアリーだと自信を持っています。

このマンスリーダイアリーの可能性を広げて、もっと多くの人に使っていただきたいといつも思っていました。

これだけ毎年リピートで使っていただいている方が多い、ダイアリーの中身に手を入れることは憚られるという認識が私にもあって、思いついたのがこのマンスリーダイアリーをダイアリーとカレンダー両方で使うということでした。

持ち運んで使うことがダイアリーの普通の使い方ですが、普段は据え置きあるいは壁掛けのカレンダーとして使えるよう、木製フレームを作ってもらいました。

このフレームに入れることで、マンスリーダイアリーをカレンダーとして使うことができます。

脚は取り外し式で背面に2つの穴が空いていますので、立てられない場合はプッシュピンなどで壁やパーテーションに掛けることもできます。

自分の仕事は手元の手帳でできるかもしれないけれど、もっと大きく物事を動かす道具として、マンスリーダイアリーも使っていきたいと思っています。

⇒オリジナル正方形マンスリーダイアリー用フレーム

⇒オリジナル正方形ダイアリーマンスリー2022年

ル・ボナーさんと590&Co.さんとのプエブロ革のデブペンケース

先日、590&Co.の谷本さんに誘われてお客様のAさんと閉店後に食事に行きました。

谷本さんに言われて気付いたけれど、前に谷本さんと食事をしたのは1年前でした。お店も近いし、文具イベントでもよく会っていたので気付かなかった。

今年は今までの年と違う色々なことが起こって、私なりに気忙しい時間を過ごしていたし、谷本さんも店を移転させたりして、お互い忙しく過ごしていたと思います。そんな中で、会ってゆっくり話していないことに気付きませんでした。だから先日はAさんも交えて、久しぶりにゆっくり食事をしながら楽しく話すことができました。

夕食は1年振りだけど、ル・ボナーの松本さんと3人では2回ほど昼食を一緒にしています。デブペンケースの別注品プエブロとサドルプルアップレザーを作ってもらうための打ち合わせで、谷本さんとル・ボナーさんのお店がある六甲アイランドを訪れました。

1回目の発注ではその需要を少なく見積もり過ぎていたため、590&Co.さんも当店も1日で完売してしまって、多くのお客様から再販のリクエストをいただきました。

すぐに2回目の注文をお願いしましたが、それはかなり思い切った数の注文になりました。谷本さんの「バブル期のおっさんのような発注をしてしまった」という言葉の通り、ものすごい数で、職人さんや松本さんは大変だったと思います。

かなり人気があって売れるものだとは思いますが、両店の在庫が膨大で、プエブロはまだ在庫があります。でもこれは宝物だと思っています。

11月初めに当店に泥棒が入った時、高価な万年筆とともに、プエブロとサドルプルアップレザーのデブペンケースも盗まれていないか気になって、真っ先に確認しました。

万年筆は20本近く盗まれていたけれど、デブペンケースは盗まれていなかった。

よくよく考えてみると、セコムさんが急行するわずかな時間にカサ張るペンケースを盗むはずがないけれど、真っ先に思い付いた自分が可笑しい。

定番のブッテーロ革も乾いた布やブラシをかけたりして丁寧に扱うと、キラキラしたきれいな艶を出してくれるけれど、オイル分の多いプエブロも手入れすると劇的な艶を出してくれます。

表面をヤスリのようなもので擦ってマットな質感に仕上げられている革なので、余計にその艶の出方に驚く人も多いと思います。

ル・ボナーさんやカンダミサコさんの革製品でよく使われている、同じタンナーバタラッシィのミネルヴァボックスも劇的に変わる革で、艶の塊のようになります。グリージョなどは最初緑みのかかったグレーですが、使い込むうちに焦茶色に変化します。もともとは同じ革であるプエブロも変化しないはずがありません。

万年筆を1本ずつ入れる仕切りのついたル・ボナーさんの絞りペンケースも使うけれど、やはり一番使うのはデブペンケースのような、雑多なペンや文房具をたくさん入れて持ち運ぶことができる大きなペンケースです。

そういう日常的によく使うものを普段作らない特別な革で作ったプエブロのデブペンケースは、多くの人に革の面白さを知ってもらうのにすごくいいものだと思っています。

今回が今年最後のペン語りになります。皆様今年一年も読んでくださり、ありがとうございました。次回の更新は1月7日(金)です。良いお年をお迎えください。

⇒ル・ボナー デブペンケース(ペンケースTOP)